【チラシより】カレンダーの裏 1□【大きめ】

108名無しさん@おーぷん2014/08/08(金)13:15:23 ID:qmd1Iw6zi

私が小学校の頃「感謝の日」が毎月あった。
普段は給食なんだけど、その日はおうちの人と一緒に弁当作って
毎日ご飯を作るって大変!作ってくれる人に感謝しましょーって
だいたいそういう主旨だったと思う。
アラフィフの私が小学生だから、もう大昔の話なんだけど
当時から既にシングル家庭もあってそれに配慮されてたらしく
自分の机で自分だけで食べる決まりだった。

同じクラスのAちゃんはきれいな女の子で頭も良くて
グループは違っってたけど、憧れの子だった。
ある感謝の日の朝に下駄箱でAちゃんに会ったら
Aちゃんはロッカーに自分のお弁当を隠そうとしていた。
「昨日大人の人が誰もいなくてちゃんとしたお弁当作れなかった。
仲良しの子たちと席が近いから絶対に見られちゃう。恥ずかしい。
いっそ忘れたって事にしようと思って……」
私は自分のお弁当と交換しようと提案した。
私の席は先生が近いので他の弁当を見ようとする子はいないだろうし
いたとしても仲良しは他のクラスにいるから大丈夫。
これは言わなかったけど、憧れのAちゃんのお弁当も食べてみたかった。
Aちゃんはほっとした表情で交換してくれた。




109名無しさん@おーぷん2014/08/08(金)13:15:56 ID:qmd1Iw6zi

お弁当の時間に開けてみたら、確かに大人の手が入っていない感じ。
半分以上がごはんとふりかけで、後は玉子焼きと魚肉ソーセージだけ。
でもこの玉子焼きがとてもとても美味しかった。
ちょっとだけ焦げてたけど、甘じょっぱくて我が家の玉子焼きとは違う味だった。
帰りにお弁当箱を交換する時に「玉子焼きすごく美味しかった!」と言ったら
「私が焼いたんだよ」って嬉しそうに教えてくれた。
「今まで食べたどの玉子焼きよりも一番美味しかった。また次も交換して!」
そうお願いしたらちょっとびっくりした後にオッケーしてくれた。

感謝の日の朝は早めに来てさっと交換する。帰りもささっと交換。
私は憧れのAちゃんに食べて貰いたくて自分の時は適当に冷食で埋めてたのに
母や姉に習ってお弁当作り頑張った。
Aちゃんのお弁当はいつも同じ玉子焼きとソーセージとふりかけ。
玉子焼きは相変わらず美味しくて嬉しかった。

何回目かの感謝の日、いつものようにお弁当を交換してお昼に開けたら
硬そうなご飯の塊がいくつか入っていただけだった。
今考えると、仏壇か神棚にあげたやつだったと思う。
私の大好きな玉子焼きもなく、お線香の匂いのご飯だけ。
その日の朝もいつも通りだったAちゃん。一度もこっちを見なかった。
呆然と番頭を眺めてたら食べださない私を見て先生が覗きに来た。
咄嗟に蓋して隠したけど見られてしまって、でもベテランの先生だから
何かを察してくれたんだろうね。
「具合悪いなら保健室に行ってきなさい」って助け舟出してくれて
教室から逃げ出した。昼休みが終わるまでトイレで泣いて顔洗って戻った。




110名無しさん@おーぷん2014/08/08(金)13:16:47 ID:qmd1Iw6zi

放課後、どんな顔していいかわからなかったけど待ち合わせ場所に行ったら
Aちゃんが怖い顔して立っていた。
中身が入ったままの弁当を返したら、私の弁当箱を投げて返された。
「カワイソーな子に恵んで気分よかった?」って冷たく言われた。
返された弁当を開けたらあちこちつついてあったけどほとんど残ってた。
また涙が出て来て、言葉が出ないうちにAちゃんは帰ってしまった。
中身が入った弁当持って帰ったら、何があったのか聞かれるだろうから
一人で手づかみで残りの弁当を食べた。
Aちゃんの玉子焼きより美味しい物は一個もなかった。

私はそれからAちゃんに完全に無視され、やがてAちゃんは転校した。
Aちゃんは美人で複雑な家庭だったのでいろんな噂があったけど
どれが本当かわからないので、全部嘘だと思うようにした。
私は地元で進学、就職し結婚もして子供も生まれた。
ほんの数年前、Aちゃんと偶然に再会した。
私はおばさんになっていたけど、Aちゃんは相変わらずきれいだった。
そしてあの交換弁当の事も覚えていてくれていた。
自分がとても子供だったとAちゃんが詫びてくれた。
「交換して貰ったお弁当がとてもかわいくて美味しくて悔しかった」
「お返しにかわいいお弁当作ろうと思っても冷蔵庫に何もなかった」
「あなたに貧乏だって思られるのが恥ずかしくて堪らなかった」
私は、こちらこそずっと子供だったと謝った。
無知な子供でAちゃんの悩みに何も気が付かなかった。
「私、あなたの事が好きだったと思う。好きだったから恥ずかしかった」




111名無しさん@おーぷん2014/08/08(金)13:20:06 ID:qmd1Iw6zi

こうして文章にすると芝居みたいな台詞だけど、Aちゃんが言うと格好良かった。
私たちは握手をしてさようならを言った。連絡先は聞かなかった。

そして今日、娘が私に玉子焼きを焼いてくれた。
私が教えた通りの出汁巻き風でAちゃんの玉子焼きとは全く違うのに
私はこれが一番美味しい玉子焼きだと思った。

Aちゃんの玉子焼きも、大好きな人の玉子焼きだから美味しいかったんだ。
あれは私の初恋だったんだな。もうAちゃんに会う事はないだろうけど。




112名無しさん@おーぷん2014/08/08(金)18:42:56 ID:ziT1IgpA8

Aちゃんに一体何が?!と思ったらそう言う事か〜
和解できたし謎も解けて良かったね




113名無しさん@おーぷん2014/08/08(金)19:33:55 ID:oHnY7Jmiy

読んでて泣きそうになった。
切ない話をありがとう。




1141082014/08/08(金)20:36:05 ID:qmd1Iw6zi

おばさんの昔話を読んでくれてありがとう。

初恋って言葉、気持ち悪く思う人もいるかなと思って
書くをの迷ったんだけどね。
大袈裟かもしれないけど、Aちゃんの玉子焼きを
世界で一番美味しいとあの時は思っていたんだ。
Aちゃんが世界で一番好きな人だったから一番美味しかった。

手も握らなかった恋だけど、握手で終わらせてあげる事ができて
良かったんだと今は思います。

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引用元:【チラシより】カレンダーの裏 1□【大きめ】
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