41 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/01(金) 13:22:13.85 ID:pYCHjcI2P

「あれ……急に、空が……灰色に……」
「え、何、なにこれ……雲?やだ、雨降るのかしら……」
「……何か、聞こえないか?」

ブゥウウウン……

「やだ、何の音、これ……」
「おい、あれ……!!」
「きゃあ、空に……!?」

魔王「…… ん、よ。… 人間、よ」
魔王「我が声が聞こえるか?」
魔王「……我が名は、魔王」

「お、王様、王様……大変です、大変でございます!」バタン!
王「どうした、騒々しい!」
「空に……北の空に……!!」
王「………!!」バタバタ……バタン! ビョオオゥ…
王「く……ッ 風が……北の、空…… あ、 …れは!?」

魔王「繰り返す……我が名は、魔王」
魔王「私は、魔王……この腐った世界を支配し、滅ぼす存在」

王「魔王……だと!?」




61 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/01(金) 13:26:19.56 ID:pYCHjcI2P

魔王「私は、最強の盾となる。この、世界を滅ぼす為に」
魔王「この世界は、私の物だ!我ら、魔族の物だ!」
魔王「弱き人間共よ、我が足下に跪け!」
魔王「灰に染まった、絶望の空の下で」
魔王「己が不運を憂うが良い!」
魔王「私は、これを持って、宣戦布告とする」
魔王「この空が灰から闇へと変じる時」
魔王「全ては私の物となる!」
魔王「泣き叫べ、人間共よ!己が不運を呪え!」

王「………」
「お、王様……」
王「案ずるな、大丈夫だ」
王「世界が魔王に滅ぼされんとする時……必ず、勇者が現れる」
「勇者……様……」
王「そうだ。光に導かれし、運命の子……勇者が必ず……魔王を倒してくれる!」

……
………
…………

魔王「………ねぇ、ちょっとこれ、台詞臭すぎない」ポコポコ
魔王「ほら……勇者もそう思うって」オナカナデナデ
闇の手「これぐらいの方がインパクトあって良いんですって」
青年「そんな事良いながら、ノリノリだったじゃないか、魔王様」
魔王「……まぁ、それは」ヒテイデキナイ
闇の手「練習の時みたいに、噛まなくて良かったですね」
青年「………」プッ




71 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/01(金) 13:33:07.87 ID:pYCHjcI2P

魔王「笑うな、青年……最初もっと長かったんだよ」
闇の手「魔王様ってば、紙見ながら読むとか言うから……諦めたでしょ」
魔王「……覚えられないよ、それで無くても妊娠中って、ぼけーってしてるんだし」
青年「しかしまぁ、お腹大きくなったよねぇ」
魔王「ローブ着てたら解らないけどね」
闇の手「姿を見せた方が効果的なんですよ、こういうのは」
青年「不可能を可能に出来るのは恐怖の対象になるって事ね……ま、確かに?」
闇の手「あっと、魔王様。その仮面返してくださいね」
魔王「ああ、うん……はい。これ、殆ど前見えないよ?」
闇の手「そりゃそうです。魔王様の姿を見せて怖がらせようって時に」
闇の手「……貴方の金の瞳を見せつけて、どうするんですか」
青年「考えたね、闇の手……しかし、君本当に良く働くよねぇ」
闇の手「何を暢気な事言ってるんですか、青年さん。勇者様が産まれて来るまで」
闇の手「もう、後半年も無いんですよ!?」
青年「……まあ、そう……だけど」
魔王「はぁ、疲れた……ちょっと休んでて良い?」
闇の手「あ、すみません魔王様……横になります?」
魔王「ううん、ここに座ってる……」
闇の手「紅茶、用意しますね」スタスタ
青年「……見れば見るほど、けったいな光景だな」




10名も無き被検体774号+2013/03/01(金) 14:01:19.97 ID:S9T3Sl6cO

>>1
おつんこ!
見てるよ!
あとちょっとだ!
頑張れ!




291 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/02(土) 09:22:30.63 ID:Oldthz1JP

魔王「御免、青年……ローブ、かけといて欲しい……何がけったい、って?」モウタチタクナイ
青年「はいはい……いや、そりゃそうでしょ……人に宣戦布告だとか言ってさ」
青年「……これじゃ、まるで三文芝居だ」クスクス
魔王「悪かったね大根で……」ポコポコ。ホラ、オコッテルヨユウシャ
青年「そんな事言ってないでしょ」オナカウゴイテル。ゲンキダネ

闇の手「お待たせしました……青年さんもどうぞ」
青年「ああ、ありがとう……で、闇の手、今日の予定は?」
魔王「んー、良い匂い」イタダキマース
闇の手「はい、今日は……魔王様には引き続き、魔石の生成をして貰います」
闇の手「……無理は禁物ですよ、魔王様。出来る範囲でいいですから」
魔王「はーい」

闇の手「青年さんは……偵察の小鳥、お願いできますか?」
青年「ああ。今日は何処に飛ばすんだい?」
闇の手「取りあえず、始まりの街へ」
青年「様子を見るんだったら……僕が行こうか?」
闇の手「直接……ですか?」
青年「ああ。まだ勇者様が産まれるまで半年あるし……そこから」
青年「勇者様をあそこへ送り届け、旅立つまで16年だろ」
青年「……ちょっとした仕込みもしたいしね」

闇の手「……お言葉ですが、貴方の風貌は目立ちますよ?」
闇の手「それに仕込みって何です……」
青年「変装していくさ………まあ、任せなって」
闇の手「面倒な事しないでくださいよ?」
青年「大丈夫。僕を信じなよ?」
魔王「大丈夫だよ、闇の手……青年なら」
魔王「何を企んでるか知らないけど……プラスになることなんだよね?」
青年「当然でしょ……僕は魔王軍の参謀だよ?」
闇の手「はぁ……まあ、良いでしょう。任せます」
闇の手「魔王様のお力は魔石に分散させているとは言え……」
闇の手「エルフの敏感な血には……毒であることには変わりませんしね」




301 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/02(土) 09:34:04.94 ID:Oldthz1JP

魔王「そうだね……勇者が育つにつれ、力が強くなってるのは、自分でもわかる」
魔王「闇の手に言われて魔石に魔力封じ込めてるけど……」
青年「前にも言ったけど、僕は特に何も感じないんだけどね……」
青年「母さん程エルフの血が濃い訳じゃ無いし……それより、身重の魔王様の」
青年「負担にならないかって方が心配だ」
闇の手「備えあれば憂い無し、ですよ……それに僕が無茶させるはずないでしょ」
闇の手「それこそ、信じてください」
魔王「うん。私も無理はしないって約束したし」
青年「……オーケィ。そうだよね」
闇の手「それに、色々役に立つんですよ。流石魔王様の魔力の魔石……です」フフ
青年「……君こそ何企んでるんだか」
魔王「ふふ……」
青年「何さ」
魔王「いや、仲良くなったなぁと思って」ニコニコ
闇の手「………」
青年「………」

魔王「で、青年は……何時行くの?」
青年「準備が出来たらすぐにでも。馬車を借りていく訳にいかないしな」
闇の手「あ、じゃあ……これ、使ってください」コロン
青年「これは?」
闇の手「あ、まだ触らないで……魔王様の魔石で作ってみた転移石です」
闇の手「握って願えば、行った事のある場所になら行けるはずです」
青年「そりゃ便利……だけど」
闇の手「使い捨てですよ。一個だけ、後で渡すので……帰りは自力でお願いします」
青年「……けち」
闇の手「試験段階なんです。まだ一個しか無いんですよ」
青年「………僕、実験台?」
闇の手「はい」ニコ

青年「………」ホントイイセイカクシテヤガル、コイツ
闇の手「成功したら多分、力に耐えれなくて割れちゃうと思うので」
闇の手「身体の負担にはならないと思います」
青年「……思う、って」

闇の手「試験段階なんで」ニコニコ




311 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/02(土) 09:54:33.12 ID:Oldthz1JP

青年「……まあ、良い、もう良い……信じてるよ」ハァ
魔王「じゃあ、私もそろそろ始めるね。紅茶ごちそう様、闇の手」
闇の手「どういたしまして……じゃあ、僕も仕事に戻りますね」スタスタ
青年「じゃあ、僕も行く……魔王様、何かあったらすぐ僕か闇の手を呼ぶんだよ」
魔王「はーい」

パタン

青年「闇の手、手伝って貰っても良い?」
闇の手「元よりそのつもりですよ」
青年「……熱、無い?」
闇の手「貴方ねぇ……」
青年「染め粉を用意して欲しいんだけど」
闇の手「染め粉?」
青年「ああ。僕の金髪は目立つからね」
闇の手「変装ですか、解りました……服もご用意しましょう」
青年「ありがとう……手伝ってくれるつもりって、その事だろ?」
闇の手「まあ、なんと言いますか……後で言います」
青年「?」




321 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/02(土) 10:24:12.37 ID:Oldthz1JP

闇の手「取りあえず、僕の部屋へ……染め粉をお渡しします」カチャ
青年「ああ」
闇の手「えーと……何色が良いです?」ゴソゴソ
青年「染まれば何でも良いよ」
闇の手「じゃあ……はい、これ。奥の浴室使ってください」
青年「サンキュ」ゴソゴソ
闇の手「服を取ってきますね」スタスタ

……
………
…………

青年「……どうだい?」
闇の手「まあ、ましでしょう」
青年「……マシ、って」
闇の手「どうやったって目立つんですよ、貴方は」
青年「……自覚無いんだけど」
闇の手「癒し手様もそうでしたけど……身が、とても軽やかなんですよ」
青年「それで……騎士っぽい装いか」
闇の手「魔法があるから、どうにかなるでしょう……はい、剣もお渡しします」
青年「剣、か……ん、重いなこれ」ズシ
闇の手「……側近様の残された剣ですよ」
青年「……父さんの?」
青年「はい……始まりの街の、王国の印が刻まれています」
闇の手「……良い身分証明になりますよ」
青年「成る程ね……」
闇の手「僕がなんの考えも無く……魔王様が妊娠される前に、貴方に剣の手ほどきなんて」
闇の手「お願いすると思いますか?」
青年「……ありがとう」
闇の手「……いいえ」




331 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/02(土) 10:36:21.98 ID:Oldthz1JP

青年「じゃあ、行くよ」
闇の手「魔王様に、挨拶していかなくて良いんですか?」
青年「今生の別れじゃあるまいし」
闇の手「……やはり、辛いですか?」
青年「………」
闇の手「今……色々、研究してますから……待っててください」
闇の手「すみません……」
青年「君が謝る事じゃ無い」
闇の手「………」
青年「魔王様には言わないでくれ。それに……魔石の生成を思いついてくれたおかげで」
青年「それほど……苦痛には感じない」
闇の手「……わかりました」
青年「さて……じゃあ、転移石とやらを渡してくれるか」
闇の手「駄目です」
青年「は?」
闇の手「……いえ、魔王様の手前ああ言いましたけど」
闇の手「僕が、持って発動させた方が良さそうですから」
青年「……そうか」
闇の手「目を瞑って……行きたい場所をイメージしてください」
青年「……信じてるぜ」
闇の手「大丈夫です。僕が作ったんですから」
青年(イメージ……始まりの場所の、すぐ近くの……)
闇の手「……行きます」グッ
青年「………!」

パアアアア……ッ
シュゥン……
パリン……ッ

闇の手「成功、かな……」フゥ
闇の手「魔石の欠片……これだけでも、凄い魔力を感じますね」
闇の手(……ご無事で、青年さん)




341 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/02(土) 10:59:42.02 ID:Oldthz1JP

……
………
…………

バッシャアアアアアアアアン!

青年「冷た……ッ ここは」
青年(始まりの街のすぐ近くの……川の中、か)
青年「……川のせせらぎなんか思い出すんじゃなかったな」バシャバシャ
青年(誰も居なくて助かった……か……)

ガサッ

青年「!」
「あ、あの……大丈夫ですか……?」
青年「……あ、ああ」
青年(しまった……見られたか?)
「水の魔物に引き込まれたのでしょう、お怪我は……無いですか?」
青年「……ああ、大丈夫だ。ありがとう……君は?」
「始まりの街に帰る途中で……あの、どこかの国の騎士様、でしょうか……?」
青年「……否、旅人…かな。でも……君は、一人で?危なくないの」
「……ええ、あの……魔王が復活した、んですよね」
青年「……らしい、ね」
「ここら辺の魔物は、まだそれほど力をつけていないので、大丈夫なんですけど」
青年「ああ……魔王の居城は北の果ての果て……らしいね」
「はい……北の空から徐々に灰色に染まって……るんですよね」
青年「……ここはまだ、青空が見える」
「ええ……でも、ここも、何れ……」
青年「……始まりの街に帰る、と行っていたね」
「あ、はい」
青年「案内してくれないかな?はっきりと場所が解らなくて」
青年「うろうろしてる所に、魔物に襲われてね」
青年「……いつのまにか水辺に近づきすぎたんだろうね」
青年「……護衛を兼ねて、さ……駄目かな?」
「いいえ、とんでもない……!助かります」
青年「ああ……じゃあ、日が暮れる前に。行こうか」
青年(助かった……道すがら、この娘の話を聞いておくか)




351 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/02(土) 11:00:49.76 ID:Oldthz1JP

……
………
…………

青年「色々と教えてくれてありがとう」
「いいえ、お役に立てたなら何よりです。こちらこそ……ありがとうございました」
青年「じゃあ、ね」スタスタ

青年(さて……先に宿取らなきゃ)
青年(……謁見を申し込むのは明日だな。日が暮れたし)
青年(王城の入り口は……兵士が立ってる。流石に厳戒態勢か)
青年「もう少し……情報を集めるかな」キィ

イラッシャイマセー

青年(旅籠……変わって無いな)
「ご注文は?」
青年「ええと……スープと、ホットラム」
「……あら、貴方髪が濡れてるわ」
青年「ああ……ちょっと、水辺で魔物に引き込まれてね……川に落ちちゃったのさ」
「えぇ!? 大丈夫だったの……あ、タオル!タオル持ってくるわ!」パタパタ
青年「……あ、ああ」
「はい、風邪引いちゃうわ」フイテフイテ
青年「……ありがとう」フキフキ
「アンタ、旅人?」
青年「まあ、そんな所……取りあえず、身体暖めたいんだけど」
「あ、御免……!」オカミサーン、ゴチュウモーン!

青年(旅人風の人間がちらほら居るな……)
青年(話、聞いてみるか)

「御免ね、はい、どうぞ!」カチャカチャ
青年「ありがとう……ああ、暖まるよ」ニコ
「……アンタも、魔王の噂を聞きに来たんだよね?」
青年「噂?」
「あれ、違うのかい? …北の空に、魔王の恐ろしい姿が突如現れて」
「世界を滅ぼすとか、なんとか……」
青年「ああ……否、違わないよ」
「やっぱりね……今日はずっとそんな冒険者の連中ばかりだよ」
青年「……さっき、ここまで案内して貰った娘に」
青年「北の空から、灰色に染まって行ってるって聞いたけど……」
「さぁ、私は……そこまでは」

「それは確かだぜ」




401 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/02(土) 13:45:28.82 ID:Oldthz1JP

青年「確か?」
「ああ、俺は港街の方から来たんだ。あそこはここよりも……北にある」
「そうだ。俺も確かめた」
青年「………」

青年(二人組の冒険者か……)

青年「君たちは……港街から?」
「魔王の姿は俺たちにも見えた……恐ろしい仮面の……姿だ」
青年(……確かにあの仮面、趣味悪かったな)
「……恥ずかしい話だが、逃げてきたんだよ」
青年「それほどに恐ろしかった……のか?」
「お前、見てないのか……まあ、ある意味ラッキーだったかもな」
「ああ……あんな、恐ろしい姿……」

青年(紅茶飲みながらお腹さすってるけどね……普段は)

「……こっちの空は、まだ明るかったからな」
青年「そうか……」
青年(勇者の旅立ちの街だから、って訳では無いのか)
青年(だが……魔王城より遠くて、大きな城下町って立地を考えると……)
青年「お前達は、勇者の伝説を知らないのか?」
「魔王が復活すれば、勇者が産まれるって奴か……」
「だが……今復活したって事は……まだまだ先だろう?」

青年(まだ6ヶ月だからなぁ……)
青年「それまでは……どうなるんだろうな」
「さあな……小さな街や村は滅ぼされるかもしれんな」
「そうなると……何処に逃げれば良いんだ?この辺の魔物はまだ……」
青年「………」
青年(やはり、この街が最適、かな)ガタン
青年「ごちそう様……色々話聞かせてくれてありがとう」
「あ、ああ……お前も、気をつけた方が良いぞ」
「そうだ、南だ。南へ行こう!」

青年(南……ね。何かあったか部屋で確認するか)




421 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/02(土) 14:11:04.50 ID:Oldthz1JP

宿屋

青年「さて、と……まずは……」
青年(街の人達の話を総合すると……)
青年(北から迫ってくる灰色の空)
青年(始まりの街周辺の魔物は、魔王城から遠いからまだそれほど強く無い)
青年(……まあ、徐々に力はつけていくだろうけど)
青年(娘が一人で歩けるぐらいだしな……暫くは。最低でも生まれる迄は)
青年(後は………明日か)プチ
青年「さて……頼んだよ、小鳥」テガミムスンデ、ト

パタパタパタ……

青年「王様は……どう出るかな」
青年(まあ、今日は……休もう)
青年(魔王様……無茶、してないと良いけど)

……
………
…………

魔王「………ふぅ、こんなもんかな」
闇の手「お疲れ様でした……結構大量ですね」
魔王「青年、何してるかな」
闇の手「始まりの街にいると思いますけど……」
魔王「場所がハッキリわかんないと、見えないしなぁ……」
闇の手「……遠見、聞くんですか?」
魔王「多分……」
闇の手「……まあ、そうですよね。魔王様の魔石使ったとは言え」
闇の手「姿、見せれた訳ですし……世界中に」
魔王「あれ凄いよね!どうやったの!?」
闇の手「……今更ですね。魔王様の魔石を媒介にして」
闇の手「風にビジョンを映したんです。幻視の術の応用版ですかね」
魔王「うん、さっぱりわかんない」
闇の手「……じゃあなんで聞くんですか」
魔王「や、何となく……」

闇の手「2.3日中には小鳥が戻りますよ、多分」
魔王「ああ、そうだね……可愛いよね、青年の小鳥」
魔王「黄色で、ヒヨコが飛んでるみたいでさ」

闇の手(無事にたどり着けると良いですけど……)

魔王「闇の手?」
闇の手「……あ、すみません、考え事を。さて……魔王様はそろそろ休んでください」
闇の手「僕も部屋に戻ります。何かあったらすぐ呼んでくださいね」
魔王「ん……ありがとうね」
闇の手「……世界を救う為、ですから」デハ……パタン

魔王「本当に……私は、喜ばないといけないんだなぁ……」




431 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/02(土) 14:14:06.85 ID:Oldthz1JP

……
………
…………

謁見の間

王「その方が……謁見を申し出たと言う、旅人か……」
王「この様な時に何用じゃ……」

青年(王様……疲れてるな)

青年「……出来れば、お人払いを」
王「……それは出来ぬ。そなたを怪しいと見る訳では無いが……この様な時に」
王「一国の王として、不用心は出来ぬのじゃ」

青年(まあ……当然だな。しかし……)

王「先に一つ訪ねたい。この国の騎士長がそなたをここに通した理由を」
青年「……如何によっては、先の私の願い、叶えて戴けますか?」
王「………考えよう」
青年「では、これを」……ス
王「……これは? ……我が国の、騎士剣か……随分古い物の様だが」
青年「父の形見です……父は、先の魔王討伐の一員でありました」
王「! ……誠か?」
青年「はい」
王「………確かに、傷だらけだな。過酷な戦いを……くぐり抜けてきたのであろう」
王「しかし……勇者一行の帰還は聞いておらぬぞ」
青年「……父は、命からがら帰還した一人に御座います」
青年「私にそれを託して………」
王「……では、勇者殿は……」
青年「……前魔王の命と引き替えに」
王「そう……じゃったか……」

青年(嘘は言ってない。言ってないけど……こうもアッサリ信じるかな…)
青年(ちょっと……後ろめたいな)

青年「しかし、残念ながら魔王は復活を果たしてしまった様で」
王「うむ……お主も見たであろう。あの……恐ろしい姿を……」
青年「……はい」

青年(笑っちゃ駄目だ……)

王「不気味な仮面に、漆黒の外套……あれぞ、まさしく……闇の化身、死の使いぞ」

青年(堪えろ、堪えろ……僕……ッ)

王「……すまん、辛い話をさせたな……肩が震えて居る。まだ……涙はつきぬか」

青年「………は、い……」

青年(御免、王様……)




451 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/02(土) 14:25:23.13 ID:Oldthz1JP

青年「……ここから先は、どうぞ。私の願いを叶えて戴いた後に」
王「……良いだろう。皆の者、下がれ!」パタパタ……パタン
青年「ありがとうございます」
王「うむ、面を上げるが良い」
青年「……はい」
王「続きを聞こう」

青年「……魔王の復活に際し、勇者様もまた、この世に復活されるでしょう」
王「うむ。光に導かれし運命の子……しかし、まだその様な話は聞いておらん」
王「必ず、救いは訪れるであろう……だが、何時になるのか……」
青年「……勇者様の命は今、とある……高貴な姫の身の内に」
王「………何?」
青年「後半年程の後、この世にお生まれになるでしょう」
王「何故……」
青年「信じて戴くしか、ない話で御座います」
青年「ですが……真実です。私は、血に誓って嘘はつけません」

青年(エルフは嘘をつけないからね……)

王「……父の、騎士の血に……か」
王「……その、姫は今どこに?」
青年「……ここからは遠い、城にて養生されております」
青年「結論から申します。お生まれになった際には……この国で、保護をして戴きたいのです」
王「………」
青年「姫は……勇者様を産み落とした後は……多分、身が……持たないと思われるので」
王「……ふむ」
王「それが、今ここに居らぬ理由と言う訳か」

青年(決して嘘、では無いんだが……さて、どうなるかな)
青年(駄目だったら……産まれてから、連れてくるしかない)
青年(まあ、どっちみちそうなったら信じる、しかないだろうけど。王様も…)




461 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/02(土) 14:37:55.81 ID:Oldthz1JP

王「あいわかった!」
青年「!」
王「誠に勇者であるのならば、その身に印を戴いているのであろう」
青年「はい。右手の平に、輝く剣の印……勇者の印を抱いてお生まれになると聞いています」
王「見れば解るであろうものを、今嘘と申しても意味はあるまい」
王「……半年の間、儂は、国は……何を準備しておけば良い?」

青年(……旨くいった)

青年「はい。出来れば、勇者様に知と武を授けられる環境を」
王「そなたは……師とならんのか」
青年「……恥ずかしながら、この平和の最中にありましたので」
王「……そうか。訓練場や、勉学の場で良ければ心配することは無い」
王「勿論、生活に必要な金銭や住居もじゃ」
青年「ありがとうございます」

王「……儂は、嬉しい。世には絶望しか残されておらぬのでは無いかと……憂いておった所じゃ」
王「光の勇者が……必ず救ってくれようとの伝承も、誠か否かは判断のしようが無い」
青年「…………」
王「この国には、代々勇者が旅立っていったとの記述があっての」
青年「はい……」
王「住んでおったと言う家も、残ってはおる……が」
王「目で見るまでは、やはり……な」

青年(用心深そうな割には……あっさり信じたな)
青年(……闇の手の刻みつけた魔王様の恐怖はでかいな。流石……と言える、か)

王「儂は、国は……人は、喜ばねばならぬの……勇者の誕生と、その旅立ちを」
青年「………はい」
王「では……半年後、そなたが……勇者を連れて参るのだな」
青年「はい。そのつもりです」
王「うむ……何かあればすぐに言うが良い。力になれる限り、惜しまぬ」
青年「……ありがとうございます」

王「そなた、名は?」
青年「青年と申します」
王「青年か……覚えておく。大義であった!」




491 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/02(土) 15:31:28.94 ID:Oldthz1JP

……
………
…………

青年(取りあえず、生活の基盤は確保……と。次は……)
青年「………」キョロキョロ
青年(登録所……懐かしいな。未だあったか)キィ
事務員「いらっしゃいませ……何か、仕事をお探しですか?」
青年「……ああ、何か、あるかい?」
青年(成る程ね……仕事斡旋所か……魔物の討伐、人捜し……フゥン)
事務員「はい……ええと、貴方は……旅のお方?」
青年「ああ……まあ、そんな感じ」
事務員「でしたら、一つ良い仕事があるのですが如何です?」
青年「内容は? ……見たところ、この街周辺でのものばかりみたいだけど」
事務員「ええ、壁に貼りだしてある分は……そうですね」
青年「極秘の仕事か何か?」
事務員「いえ、そんな物騒な物では……ありません」
事務員「ここから陸伝いに北へ行った所に小さな港があるのですが」
青年「……北」
事務員「……やはり、貴方も北の方から……南へ向かう方、ですか?」

青年(昨夜酒場でそんな奴が居たな……)

青年「いや……そう言う訳じゃない」
事務員「そうですか……」ホッ
事務員「北へ、と言うだけで……皆、怖じ気づいてしまいますので」
青年「まぁ……そりゃそうだろうね。で……それ、港街への船が出るところだよね」
事務員「よくご存じですね」
青年「……まあ、平和な世の中……だったしね」
事務員「そうですね。この大陸からから出る唯一の窓口ですから」
青年「で……あそこがどうしたの?確か……街と呼べる様な物でもなかったと思うけど」
事務員「ええ、簡単な話です。そこに、この……魔除けの石を」
青年「ああ……成る程。魔物に占領されちゃ困るって事ね」
事務員「はい……置いてさえ、来て戴ければ結構です」
青年「………確かめないの?」




501 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/02(土) 15:45:01.60 ID:Oldthz1JP

事務員「向こうにも、この街の職員が居ますので」
事務員「書類はお渡しします……これと引き替えに、報酬を受け取ってください」
青年「ふぅん……まあ、良いか。どうせ港街に行くつもりだったし」
事務員「……あの街も、今混乱状態にあると聞きますよ?」
青年「引き受けなくて良いのかい?」
事務員「………お願い致します。ここにサイン戴けます?」
青年「はいはい……と、これで良いね……それから、さ」サラサラ
事務員「はい?」
青年「何か、情報無いの?」
事務員「そうですね……ここは、北の果ての果てと言われる場所よりは……随分遠いですから」
青年「……だよね」
事務員「では、魔除け石をお渡ししますね」
青年「……随分な数だね」
事務員「備えあれば……です」
青年「発つのはもう少し先だけど、良い?」
事務員「はい……旅の都合で結構です。無事を祈ります」
青年「ああ……ありがと」パタン
青年(この街じゃ大した収穫はないだろうな……明日にでも、出るか)

ピィイ……

青年「ん……?」
青年(小鳥……戻ったのか)
青年(ここじゃまずいな……宿に戻ろう)スタスタ

……
………
…………
宿屋

青年「……僕はここだ」マドアケテ、ト……オイデ

ピィイ……

青年「良し……あれ、何だお前……手紙は?」

シュウウン…ッ

青年(う……ッ)ズキン
闇の手「青年さん」シュウン
青年「……闇の手? ……転移、か」イタタ…
闇の手「……大丈夫ですか?」
青年「ああ、もう……平気だ……しかし」
闇の手「……遠見です」
青年「小鳥の気配を追ったか」
闇の手「はい……随分と、力をつけていらっしゃいます」
闇の手「魔王様も多分……青年さんの手前……」
青年「控えていたんだな……何かあったのか?お前直々に……」




511 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/02(土) 15:54:25.79 ID:Oldthz1JP

闇の手「これを……中は、見ないでくださいね」
青年「……なんだこの汚い毛布」
闇の手「……貴方と魔王様が使ってたおくるみだそうですよ?」キタナイッテアンタ
青年「………」
青年(微かに、母さんの気配が……する)
青年「……で、それが何だよ」
闇の手「……中に、魔王様の魔石が入ってます」
青年「………で、見るな、か。しかし……」
闇の手「魔力が漏れ出さない様に防護の術はかけてあります……長くは持ちませんけど」
青年「……何するんだよこんな物」
闇の手「その魔除けの石の代わりに、これを……港に配置してください」
青年「……おい、そんな事したら」
闇の手「ええ、あの港は機能しなくなります」
青年「……道を発つのか?」
闇の手「そこをくぐり抜けないと、魔王様の居城まではたどり着けません」
闇の手「……勇者様は、必然的に強くならざるを得ない」
青年「強引だな」
闇の手「この大陸の魔物の強さは、元々しれてますから大丈夫ですよ」
青年「……すっかり魔王の手下らしくなったな、お前……」
闇の手「僕は魔族ですから」
青年「……そう、だったな」
闇の手「それに、手下じゃ無いです。仲間……でしょ」
青年「……ああ」
闇の手「それから、これを貴方に」
青年「……サークレット?」
闇の手「魔王様の魔気から、少しは……守ってくれる筈です」
青年「……防護の術とか、こいつとか……お前もすっかり規格外だな」
闇の手「できる限り延命して貰いますって言ったでしょ」




521 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/02(土) 16:05:05.20 ID:Oldthz1JP

闇の手「僕も水の加護、受けてますから……」
闇の手「覚えていますか、癒し手様の、浄化の石が……割れたの」
青年「当たり前だろ」
闇の手「……その欠片から、魔力を抽出して、防護の術を完成させたんです」
青年「……できるのか、そんな事」
闇の手「願えば、叶うんでしょ……時間はかかりましたけど」
青年「……この、サークレットについてる石は……」
闇の手「はい。浄化の石の欠片ですよ……奇跡的に、残っていたので」
青年「………そう、か」
闇の手「以前、城にあった物はすべて……前魔王様に吸収されたか、魔力にあてられて……」
青年「散った、か……」
闇の手「はい。どこにも……残っていませんでしたから」
闇の手「それは、貴方と、魔王様が持っていた分の一部です」
闇の手「……同じ物は二度と生成できません。僕は……回復魔法は使えませんし」
青年「一部、とは?」
闇の手「魔王様のあの仮面に……使います」
闇の手「できる限り……自我を保って貰わないと」
青年「………そうか。解った。大事にするよ」
闇の手「お願いします」
青年「では、明日……発つよ」

闇の手「はい……小鳥は、もう使わなくても大丈夫です」
闇の手「負担も目立つ事も……控えた方が良いでしょう」
青年「……あの小鳥、目立つか?」
闇の手「魔王様が……ヒヨコが飛んでるみたいで可愛いって」
青年「………は?」
闇の手「ヒヨコ、飛びませんしね……」ハァ
青年「……解った」フゥ
闇の手「では、僕はこれで」スタスタ

青年「何だ、転移石使わないのか?」
闇の手「離れて使いますよ……浄化の石、壊れちゃ困りますし……」パタン
青年「……心配してるって、言えばいいのに」クス
青年「ありがとう……」
青年(母さん……守ってくれてる、と……思って良いよね)




531 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/02(土) 16:21:05.12 ID:Oldthz1JP

……
………
…………

魔王「ご苦労様、闇の手」

シュゥゥン……

闇の手「……良く解りましたね」シュゥン
魔王「気配でね」
闇の手「……産まれたら、貴女の魔力はどうなるのやら」
魔王「言った筈だよ、最強の魔王になると」
闇の手「母は強し……ですか」
魔王「……青年、大丈夫かな」
闇の手「元気そうでしたけど……って、見てたんでしょ」
魔王「うん……いや、そうじゃ無くて」
魔王「ここに、戻ったら……」
闇の手「……防護の結界、それまでに完成させます」
闇の手「使用人さんから受け継いだ、知は……伊達じゃありません」
魔王「君の探求心とその努力もね」
闇の手「……出来る事は全てやりたいんです……やる、義務がある」
魔王「ああ……そうだね」
闇の手「お加減、如何です?」
魔王「ん、大丈夫だよ?」
闇の手「では、ご相談が……この、地図見てください……」
魔王「……うん?」

……
………
…………

「うむ、確かに……ご苦労だったな、旅人よ」
青年「いいえ……」
「しかしこれが魔除けの石か……黒く光って綺麗だな」コロン
青年(早くしまえよ、糞ッ ……鈍い人間ってのは、もう……)ズキズキ
青年「……船の時間もありますので、私はこれで」
「ああ、すまなかったな。これが報酬だ」チャラン
「しかし……汚い布だな、真っ黒じゃないか……辛い旅だったんだろう」
青年「はい……いいえ。では」スタスタ

青年(本物の魔除け石は……殆どがここに来るまでに砕け散った)
青年(残りは……気休めだが貰っておくか)
青年(置いていっても仕方ないな……どうせ、役にも立たないだろうしね)
「船がでるぞー!」
青年「ああ、御免僕も乗るよ……はい、券……って」
青年「……随分人が多いな」
「こんな時に好き好んで北へ向かう奴は、阿呆か強突く張りさ」ニヤニヤ
青年「強突く張り?」
「商人共さ。武器や防具の類が飛ぶように売れる」
青年「……人間ってのは逞しいね」
「アンタは阿呆の部類だろう?」
青年「……随分失礼だな」ムッ
「何言ってんだ、そんなでっかい剣ぶら下げて……腕試しも良いが」
「命は一つしかないんだぜ?」
青年「成る程……そういう風に見えるのか」
「違うってのかい?」
青年「さてね……船室はあっちかい?」
「ああ、そこの階段を下りな……明日には着くさ。精々力、蓄えておくんだな」
青年(こんなご時世にわざわざ船を出そうってのは、阿呆にならないのかね……)
青年(……ああ、強突く張り、の方か。そういえば……随分高かったな、船代)




541 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/02(土) 16:28:18.41 ID:Oldthz1JP

船室

青年(……おくるみ、か。出来れば返して貰いたかった、が……)
青年(港に着くまで、二週間……蒼くて綺麗だったのに、真っ黒に染まってた)
青年(………気にしても、仕方ないな)

ザワザワザワ……
バタバタバタ……

青年「……? …随分騒がしいな」スタスタ
青年(甲板に出てみるか……ん?)

「燃えてる、なんで……!?」
「どうして……!?」

ザワザワ

青年「……港が、燃えてる……?」
青年(……魔物の咆哮、か、この……声は)
青年(魔気に寄せられた、か……随分早い)
青年「………」スタスタ、パタン
青年「……高い金払った割には、狭い部屋だ」
青年「強突く張りか阿呆だけ、か……さて、港街はどうなっているやら」
青年「魔王様、見てるかい? ……気分は、どうだい」
青年「僕は、港街から北の大陸に渡る。それから……帰るよ、君の傍に」
青年「………後、二ヶ月ってとこかな。帰ったらすぐ、だね……」
青年「……光に選ばれし、運命の子……汝の名は、勇者……か」
青年(………複雑、だな。今更……だけど)




551 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/02(土) 16:48:34.47 ID:Oldthz1JP

……
………
…………

魔王「成る程ねぇ……でも……残りはどうする?」
闇の手「……怒りません?」
魔王「……何企んでるの……あ」
闇の手「どうしました?」
魔王「……青年、港街に着いたね」
闇の手「そうですか……では急がないと行けませんね」
魔王「で、企みの内容は?」
闇の手「……僕は、何です?」
魔王「へ?」
闇の手「僕は……魔王様の、何ですか?」
魔王「大切な……仲間、だよ?」
闇の手「はい。貴女の手足でもあります」
魔王「……言い方は気に入らないけど、まあ……そうだね」
闇の手「信じてください」
魔王「……教えてくれないの?」
闇の手「見ててください……青年さんの所に、行きます」
魔王「解った……」

……
………
…………

青年(宿もぼったくり、とはね……路銀はあるから良いけど)
青年(……生活の為には仕方ない、んだろうな)
青年「しかし……おもしろいな」
青年(この港街は活気に溢れてる……売ってる物は随分高価だけど)
青年(昔より、あの……始まりの街よりも、流石に物は良い)
青年(……港は、魔物の巣窟だろう。流通も止まる)
青年(……成る程な。確かに、強くならざるを得ない)

青年「………ッ」ズキンズキン
闇の手「……すみません。離れた所に、と思ったんですけど」
青年「……石、壊れたらお前の所為だぞ……」ウゥ…
闇の手「これほど人が多いと……」
青年「否……それは良い……が、行った事ある所にしか来れないんじゃ無かったのか?」
闇の手「魔王様が見てますから」
青年「……本当に何でもありになってきたな」
闇の手「あの人以上に規格外な人居ませんって」

青年「で……今回は何だ?」
闇の手「北の街……解りますか?」
青年「……? 否」
闇の手「ここから、船が出てます。北の小さな街のさらに北に、朽ちた塔があります」
青年「……ああ、入り口の無いあれか」
闇の手「ご存じなんですか?」
青年「存在だけな。母さん達が、魔導将軍と対峙した場所だと」
闇の手「そうですか……」

青年「で?今度は僕に何をやらすんだい」




561 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/02(土) 17:02:50.40 ID:Oldthz1JP

闇の手「光の剣を封印します」
青年「………何?」
闇の手「魔王によって封印された、光の剣……勇者様の手に戻ったとき、魔王は倒される」
青年「……伝説を作るのか」
闇の手「はい。僕たちの手で」
青年「……その頃には、剣に相応しい勇者に成長して貰う、か」
闇の手「……そうです」
青年「で……それを、僕にやれと?」
闇の手「いえ……僕が行きます。扉も作らないといけませんし」
青年「………はぁ」
闇の手「できるのか、と言いたいのですか?」
青年「願えば叶う、ね」
闇の手「それもありますけど……魔王様の魔石の力を使って、塔の壁をねじ曲げて入り口にします」
闇の手「勿論、門番も設置しますし」

青年「……だんだん本当の悪役になってきた気分だ」
闇の手「悪役ですよ……魔王様の仲間なんですから……人間にとっては」
青年「勇者にとっても……だな」
闇の手「……勇者様は人間ですから」
闇の手「………」
闇の手「もう一つ、お願いがあるんです」
青年「何だい……もう、何聞いても驚く気がしない」

闇の手「青年さん、嘘をついてください」
青年「……は?」

闇の手「驚かないんじゃなかったんですか」
青年「………」
闇の手「今じゃ無いですよ?」
青年「……どういう意味、だい」
闇の手「勇者様が産まれたら……始まりの街に行きますよね」
青年「ああ」
闇の手「ここまで、導いてあげてくれませんか?」
青年「……手助けをしろと?」
闇の手「まあ、そうですけど……それだけじゃ無くて」
青年「………」




571 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/02(土) 17:23:47.16 ID:Oldthz1JP

闇の手「……壁になってください」
青年「壁?」
闇の手「はい……勇者様が打ち倒す、壁に……そして、魔王様の盾に」
青年「………」
闇の手「……勿論、僕もそのつもりです」
青年「約束は出来ない」
闇の手「………」

青年「嫌なんじゃない……解ってくれ」
闇の手「……寿命、ですか」
青年「旅立ちまで見守れるかどうかも……正直、解らないんだ」
闇の手「……可能、ならば」
青年「………解った」
闇の手「ありがとうございます」
青年「……母さんの夢だ。魔王様の……願いでもあるからな」
闇の手「はい……」
青年「それだけ、か?」
闇の手「……今のところは」
青年「……ああ」

闇の手「僕は今から、船で塔へ向かいます」
青年「転移しないのか?」
闇の手「正確な場所は誰も解らないでしょう」
青年「ああ……そうか」
闇の手「では……長居は辛いでしょうから、これで」

青年「闇の手」
闇の手「……はい?」
青年「否、良い……」
闇の手「………」パタン

青年「………」
青年「嘘をつけ、か……」
青年(簡単に言ってくれる……)




651 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/02(土) 22:40:20.88 ID:Oldthz1JP

青年(……言えば、良かったか?)
青年(否……次に確かめてからで……良い)

……
………
…………

魔王「嘘をつけ、か……」

魔王(闇の手……言いにくかったんだろうな、私には……否)
魔王「反論できない方法……取ったんだね」
魔王(それだけ……皆、必死なんだな)

魔王「……魔王を倒す為に。平和を……美しい世界を、守る為に」

魔王(私も、頑張らないと)
魔王(本当に……私達は、喜ばないと……行けない)

魔王「……闇の手の気配は……」キィン……
魔王(………居た)

……
………
…………

北の塔

闇の手(これ、か……)
闇の手(高い………天辺が見えない)
闇の手「まぁ……最強の武器を封印するには、うってつけ、ですけどね」
闇の手(まずは……入り口、か)キョロキョロ
闇の手(この辺で良いか……簡単に見つかってもおもしろくないな)
闇の手(魔王様の魔石を置いて………物質を変化させる……)グッ
闇の手(………良し。後は……もう少し魔石を置いて、と)
闇の手「……後は、集まった魔物に頑張って貰うとしますか……ん?」

グルルルル……

闇の手「流石……魔王様の居城に近いだけあるな………早い」
闇の手(数は……結構居るな。群れか……)

グルルルル……

闇の手(……様子を伺ってる。多少の知能が窺えるな……ふむ)




661 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/02(土) 22:48:39.67 ID:Oldthz1JP

闇の手(リーダーは……あれか。一回り、身体の大きい……うん。間違いない)
闇の手(……人間の時であれば。腰抜かしてたな……僕)
闇の手「……氷よ」パキイイィン!

グルル……ルル……

闇の手「怖がらなくて良い……お前の、味方だ」
闇の手(良し。魔王様の魔石を……もってくれよ)グイッ

キャイン、キャイン……ッ

闇の手(流石に体内に埋め込まれると辛いか……今暴走されても困るな)
闇の手「氷よ……もう一度!」キィンッ
闇の手(……悪いね。リーダー……)
闇の手(良し……こうして、魔石を埋め込んだ魔物毎、門の所に氷漬けにしておけば)

グル……グルル……

闇の手(門番にもなるし……仲間は、命の炎を感じ取って、リーダーを守るべく)
闇の手(ここを動かないだろう)
闇の手「僕の氷の魔法はそう簡単に溶けないよ……精々、お前達のリーダーを守ってくれよ」
闇の手(……北の街への被害も、多少は防げるだろう)
闇の手(いくら魔王様の為だと言っても……街の人にまで危害を加える訳には……いかないしな)
闇の手「さて……と、魔王様、見てます?」
闇の手「力……貸してくださいな?」
闇の手「塔の中を透視してください。おあつらえ向きの部屋でもあれば、そのビジョンを送って欲しいんです」
闇の手「そしたら、転移しま………ッ」ウゥッ




681 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/02(土) 23:09:20.96 ID:Oldthz1JP

闇の手(……これは……最上階、部屋の中央に……小部屋……)
闇の手(仕事が早いなぁ……良し、転移石、は……と)シュゥウン

グルルル……

……
………
…………

青年「……ごちそう様、美味しかったよ」
アリガトウゴザイマシター
青年「腹も膨れたし……どうするかな」

青年(あれから一週間……ここから、北の街までは船で三日ほどだったか)
青年(闇の手の仕込みも終わって……もう城に帰ってるだろうが)
青年(北の街に寄って……戻るかな、僕も)
青年(塔には近づかない方が無難だよな……用事も無いし)
青年(徐々に空が灰色に染まって……)
青年(魔物が力をつけ始めてる、ぐらいしか……情報も無いしな)

青年「……船の券、手に入れとくか」スタスタ

青年「すみません、北の街行きの船って……」
「……アンタ、あんな場所になんの用事があるんだい?」ジロジロ
青年「……まあ、好奇心、かな」
「旅の剣士……か?やめときな、あそこは……灰色の空の下だ」
青年「……そんなにやばいの?」
「元々凶暴な魔物がうろついてるのさ」
青年「でも、街があったよね、確か……」
「大方、腕試しのつもりなんだろ?悪い事は言わん……やめとけ」
青年「金ならあるんだけど……駄目かい?」
「こっちだって、命は惜しいんだよ。一週間前最後の便を出して……やめたんだ」
青年(……闇の手は、ぎりぎり間に合った、のか)
「あの時だって随分な目にあった。帰ってくるまでに、何度海の魔物に襲われたか」
青年「………」

青年(あまり強くは言えないな……見え透いた嘘を……つくわけにも行かないし)

「……今、恐れずに船を出すのは海賊ぐらいのモンだよ」
青年「海賊?」
「そうさ……あいつらは金の亡者だからね」
青年「……どこに行けば、海賊に会える?」
「……アンタも、物好きだね」
青年「こんなご時世、物好きは阿呆と強突く張りぐらいの物なんだろ?」
「………酒場に、それらしいのが居たよ」
青年「ありがとう……感謝するよ」スタスタ
「死んでもしらないからね!」

青年「……大丈夫。二度は死ねないさ」
「………?」




691 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/02(土) 23:17:24.97 ID:Oldthz1JP

青年「……僕は、嘘はつけないからね」
「何だ、あいつ……頭がイカレてるのか?」

……
………
…………

青年「酒場……ここ、かな」キィ
青年(昼間から酒をあおって大騒ぎ……成る程、阿呆に強突く張り、ね)
青年(……リーダーらしいのは……彼、かな?)スタスタ
青年「失礼……ちょっと聞きたいんだけど」
??「ん……なんだ、お前?」
青年「君たちは海賊?」

シィン……

??「……ハッハッハ!聞いたか?お前ら!こいつ、俺たちに海賊かと聞きやがった!」
ハハハハハ……!
青年「それらしいのに、そうかと聞いただけで笑いを提供できるとは驚きだね……で?違うなら他を当たるけど」
??「……フン、肝が座ってるのか阿呆なのか……」
青年「さてね……どっちでも良い。応えてくれる気にはならない?」
??「もし俺たちが海賊だったとしよう。で、お前はどうしたいんだ?」
青年「北の街へ行きたいんだが、船は出せないとさっき言われたのさ」
青年「こんな海へ好んで出て行くのは、海賊ぐらいの物だ、ともね」
??「……で、その話を鵜呑みにしてやってきた訳か」
青年「金ならある……このご時世、北へ向かう奴なんてのは阿呆か強突く張りのどちらかなんだろう」
??「お前はどっちだ?」
青年「君ならどちらかを選ぶかい……?」
??「………」
青年「僕なら、両方欲しいね……まぁ、金銀財宝、には興味無いけど」
??「……北の街に行って、何をする?」
青年「……難しい質問だな。僕は嘘がつけない」




701 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/02(土) 23:25:15.78 ID:Oldthz1JP

??「だったら素直に言えば良いじゃネェか」
青年「……仲間でも無い奴に秘密はばらせない」
??「……」
青年「……」
??「本当に金はあるんだろうな?」
青年「ああ……ここに」ドン……ジャラ
??「うお……ッ」

青年(目の色が変わったな)

??「……全部寄越せ、と言ったら?」
青年「別に構わないよ……もう使う当ても無い」
青年(……魔王様に怒られない………と、思……いたい)
??「……その、額飾りもだ」

青年「サークレット?……これは駄目だ」
??「ならお断りだ」
青年「………」フゥ
??「……どうする?」ニヤニヤ
青年「どうする、と問われてもね……渡せないものは渡せない」
青年「……これは、大事な物だから」
??「………」
青年「邪魔したね……話を聞いてくれた事には感謝するよ」クル
青年(やれやれ……強突く張りもここまで来れば立派だな)

??「待ちな」
青年「……何だい?」
??「……良いぜ、連れて行ってやる」

センチョウ!?
ホンキッスカ!?
ザワザワ……

青年「……どういう風の吹き回しだい?」
船長「気が変わった。ただし……金は寄越せよ」
船長「俺たちだって、ただで命は捨てれネェ」
青年「……ああ、それは構わないけど」




72名も無き被検体774号+2013/03/02(土) 23:28:26.93 ID:PcZDHvQPP

船長きたーーー!




741 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/02(土) 23:36:23.11 ID:Oldthz1JP

青年(金に目が眩んだか?否……)
船長「お前の所持金のきっちり半分だ」
青年「……そんなんで良いのか」
船長「仲間が……居るんだろう、お前にも」
青年「………」
船長「大事な物は譲れない……そのハッキリとした所は、気に入った」
青年「そりゃ……どうも。しかし……」

船長「何だ。海の男に二言はネェ……ちゃんと連れて行ってやるよ」
青年「……それはありがたい、が……それだけか?」
船長「なんだ、疑り深いな」
青年「そりゃそうだろう……平和な世の中では既に……無いからな」
船長「俺のばぁさんも良く、拾ったんだとさ、人をよ」

青年「……はぁ?」

船長「好戦的で勝ち気なばぁさんでな……結構な美人だったらしいが」
青年「ちょっと待て。そのばぁさんと何の関係がある?」
船長「まあ、最後まで聞けよ……で、そのばぁさんの情夫だった男の逸話が」
船長「……俺たちの間に残ってるのさ」
青年「……はぁ」




751 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/02(土) 23:41:04.57 ID:Oldthz1JP

船長「闇色の瞳に、漆黒の髪を持つ男……そいつは、不思議な魔法を使ってたらしい」
船長「……しかも、加護に囚われず様々な魔法を、だ」

青年「………!」

船長「驚くだろ?多分……魔族の類だったんだろうな」
青年「それは……何時の話だ?」
船長「さっきから言ってるだろ、俺のばぁさんが若い頃の話だよ」
青年「何かの……間違いじゃないのか?」
船長「否……その時の船員全てが見てる。覚えてる……そうして、受け継がれてきた話だ」
青年「……まあ、良い。それと……僕となんの関係がある?」
船長「そいつは人とは思えないほど綺麗な顔をしていたんだとよ」
青年「………」
船長「お前の様に、だ……人とは思えない様な……な」

青年「……僕にそっちの趣味は無いぞ」
船長「阿呆か!俺だって無いわ! ……そう言う話じゃネェよ」




761 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/02(土) 23:47:29.70 ID:Oldthz1JP

青年「……君の言いたい事が、今ひとつ解らないんだけど」
船長「……思い出したってだけさ。その話をな」
青年「………」
船長「さっき、お前が言っただろう。阿呆と強突く張り……どちらを取るのかと」
青年「あ、ああ……」
船長「俺も、両方だ……まあ、俺は金が欲しいがな」
船長「ちなみに、お前は金がいらないなら、何が欲しい?」
船長「阿呆ってのは……まあ、出で立ちを見りゃわかる。力、だろう」
船長「強突く張り、は何に比喩する? …女か」
青年「……あえて言うなら、世界の謎。世界の秘密」
船長「成る程……違いネェ。お前はとんだ強突く張りだな」

青年(……そうだ。僕は世界の謎を……知るために、旅をしたかった、のに)
青年(いつの間にか……忘れてた)

船長「ばぁさんは何時も言ってた」
船長「……平和になった、世界の海を渡ってみたいと」
青年「………」
船長「生きてる間には叶わネェ。それが残念でならんってな」




77名も無き被検体774号+2013/03/02(土) 23:58:36.06 ID:7Q08zkPvO

孫来たなw




781 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/02(土) 23:58:36.32 ID:Oldthz1JP

青年「その……ばぁさんは?」
船長「とっくに死んださ」
船長「……船の上で、老衰。海の魔物に食われちまう奴も多いのに、運の良い女だ」
青年「で……その人の話を思い出して、僕を連れて行ってくれる気になった、て言うのか?」
船長「……まあ、そうだな」
青年「良く解らないね……」

船長「直感って奴だ」
青年「直感……?」
船長「……気があいそうだ、って事さ」
船長「言ったろ? …気に入ったんだよ。お前みたいな考え方の奴をな」
青年「………」
船長「最近は腑抜けばかりさ。南へ南へ、逃げて行きやがる」
船長「……おもしろそうな事にも、飢えてんのさ……俺らはな」
青年「まあ……連れて行ってくれると言うなら、断る理由も無い、けどさ」

船長「ただし」
青年「……まだ何かあるのか」ウンザリ
船長「船が出るのは一週間後だ」
青年「……そんなに?」
船長「急に海の魔物共が強くなったからな……船の補強と食料の積み込みが必要なんだよ」
青年「ああ……成る程ね」
船長「一週間後に、ここに来い」
青年「わかった……感謝する」

船長「前金置いて行けよ」
青年「……本当に強突く張りだな」
船長「約束の金額の半分だ」
青年「良いだろう……ほら」




801 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/03(日) 00:07:44.06 ID:Ranpq84uP

船長「……確かに。ああ、お前名前は?」
青年「青年……君は、船長、で良いのか?」
船長「ああ、構わネェ……一週間、やる事が無いなら娼館にでも行ってな」
青年「……間に合ってるよ」

船長「娼婦の情報網を甘く見るなよ? ……世界を股にかける男共に股を開いているんだぜ」
青年「………下品だな」
船長「事実だよ」
青年「……一応、覚えておくよ」スタスタ……パタン


青年(娼館……嫌な事思い出した)
青年(…………)スタスタ
青年「………ここか」
青年(………生きている、筈は無い)

……
………
…………

闇の手「どうやら、足は確保できた様ですね」フゥ
闇の手「駄目なら迎えに行こうかと思っ……… ……ま、魔王、さま……?」
魔王「……え?」ブルブルブル
闇の手「やめてください……カップ、割れますから」ニギリツブサナイデ
魔王「………」カチャ
闇の手「だ、大丈夫ですって!青年さん、娼館なんか行かないですよ!」
魔王「……情報、集めに行くかもしれないじゃん」
闇の手「で、でも、ほら……その……し、しませんって!魔王様、居るのに……」コワイヨウコワイヨウ

魔王「……闇の手」
闇の手「は、ハイ……?」ビクビク
魔王「私……青年が好きなのかな」
闇の手「……今更、何言ってんですか」
魔王「……さっきの船長の話、多分……剣士、だよね」
闇の手「確証は……無いですけど、多分……まあ、不思議では、ない、かも……しれ、ないかも……その」モゴモゴ

魔王「…………」
闇の手「…………」

魔王(……複雑。これ、多分……嫉妬)
魔王(でも……どっちに、だろう。ううん……どっち、にも……)
魔王(………駄目、だなぁ……私……)




811 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/03(日) 00:15:53.81 ID:Ranpq84uP

……
………
…………

船長「来たな……好みの女は居たか?」ニヤニヤ
青年「間に合ってるって言っただろ……行かないよ」ハァ
船長「なんだよ、つまんねぇな」
青年「うるさいよ……今はそれほど、知りたい情報も無い」

青年(本当は聞いてみたかったけど……魔王様に見られてる事考えると、な…)ムリムリ

船長「……ここから南に、小さな大陸があるのは知ってるか?」
青年「始まりの街の……大陸の事か」
船長「ああ。あそこには……着港できんそうだ」
青年「……魔物に占拠されたか?」
船長「あの大陸の魔物はそれほど強く無いんだが……数が、な」
青年「そんなに?」
船長「ああ……だが、港に集まってて」
船長「街や王国にはそれほど被害は無いらしい」
青年(魔王様の魔石に……惹かれて離れないのか)
青年「詳しいな」

船長「お前の代わりに聞いて来てやったのさ」
青年「……女を抱きたかっただけだろ」サッソクカネツカイヤガッタカ
船長「黙秘だ……さて、行くぞ。そろそろ帆を上げる」
青年「……ああ」
船長「まだ……あれからそれほど経たんと言うのに」
船長「見ろよ……北の空は、真っ黒だ」
青年「……灰が闇に変じれば」
船長「その前に、勇者様とやらが現れるんだろ?」




821 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/03(日) 00:26:24.11 ID:Ranpq84uP

青年「ああ……魔王を倒し、世界を救う為に」
船長「……言ってなかったが」
青年「?」
船長「………否、良いか」
青年「何だよ、言えよ」

船長「ちょっとだけ、な……俺は、お前が勇者なんじゃ無いかと思ったのさ」
青年「……僕が?」
船長「こんな時に、北に行くとか言うし、物怖じしネェし……」
船長「……立派な剣もぶら下げてるじゃネェか」
青年「………僕は、勇者じゃない」
船長「そうか……そうだな。だが……残念だ」
船長「勇者を乗せたとなれば、箔も付くのにな……俺ら」ハッハッハ……

青年「……もし」
船長「あン?」
青年「僕が、勇者を連れてきたら……その時は、乗せてくれるかい?」
船長「……ハッハッハ!本当にお前はおもしろい男だな!」
船長「良いだろう、約束だ!」

青年(……信じてないな。まあ、無理も無いけど)

船長「で、実は僕が勇者でした、とか言うんじゃないだろうな?」ニヤニヤ
青年「言わないよ……勇者の瞳は光の宿る金だ。僕は……違う」
船長「そうだな……髪や肌の色は変えられても、瞳の色は変えられない」
青年「………」ドキ

船長「ばぁさんの情夫とやらも……そうだったんだろう」
青年「昨日の話か」

青年(……吃驚した。ばれた訳じゃ……なさそうだな)

船長「色んな人間を見てきたが、闇色の……紫の瞳なんて聞いた事がネェよ」
青年「……そうだな。確かに珍しい」

青年(僕は……知ってる。前魔王……そして………剣士)




831 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/03(日) 00:32:15.06 ID:Ranpq84uP

青年(剣士……か。まさか……思い出さされるとは、ね)
青年(魔王様………)
青年「……船室に戻ってて良いか?」
船長「あ? おう……魔物が出たら手伝ってくれよ?」
青年「回復が必要なら呼んでくれ」スタスタ
船長「……剣を振れて回復も出来るのか、あいつ」ビックリ
船長「良し、お前ら!気ぃ抜くなよ!」

アイアイサー!

……
………
…………

魔王(凄いね、青年は……ちょっとずつ、足がかりを増やしていってる)
魔王(闇の手も、色々やってくれてるし)
魔王(私は……)
魔王(青年………剣士)
魔王(剣士が ……あの夢に出てきて、宣戦布告を決めた)
魔王(でも……これで、良かったのかな)
魔王(お母さん、お父さん………私、断ち切れる、かな)
魔王(………否!)ブンブン
魔王(私は、決めたんだ……!)
魔王(迷っちゃ……駄目だ!)ポコン
魔王(そうだ………この子の、為にも……)ナデナデ

……
………
…………




841 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/03(日) 00:39:22.96 ID:Ranpq84uP

北の街

青年「ありがとう……助かったよ」
船長「ああ……気にすんな。で……これからどうするんだ?」
船長「本当に……港街に戻るまで、待って無くて良いのか」
青年「ああ……当てはあるんだ。ここからはね」
船長「しかし……船が無いと何処にも行けネェぞ?」
青年「………」
船長「まあ、良いさ……詮索は、時に身を滅ぼすからな」フゥ
青年「……すまない」
船長「謝る事じゃネェ。ま……頑張んな」
青年「ああ……君たちはどうするんだい?」
船長「そうさなぁ、折角ここまで来たし、ちょいとこの辺探検して」
船長「港街の方に帰るかなァ」

青年「……北の塔には行くなよ」
船長「………お宝の匂いが!」
青年「聞けよ! ……凶暴な魔物が居るって話だ」
船長「マジ?」
青年「マジで。 ……確かな情報網からの、情報さ」

青年(これも……嘘、では無いな)

船長「そう聞くと………黙ってられネェなぁ」
青年「……おい」
船長「そんな怖い顔すんなよ………よっぽどやばいんだな?」
青年「……ああ」

青年(ついでに噂を広めてくれると助かるんだけどね)




861 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/03(日) 00:58:03.19 ID:Ranpq84uP

青年「じゃあ……僕は行くよ……くれぐれも無理するなよ!」
船長「あいよーぅ」
青年「……死ぬなよ」スタスタ
船長「……お優しいこって」フゥ

青年(街、とは名ばかり……何も無いな)
青年(宿、と……小さな武器屋か……ん?)
青年(意外と品揃え……数は少ないが……物は良いのを置いているな)
青年(……居城に近ければ、魔物の数も、力も……か)
青年(成る程な……さて)
青年(流石にもう……これ以上は船で進む訳には)
青年(……巻き込む訳にも、な)
青年(頼るしか……ないか)

……
………
…………

闇の手「迎えに行った方が……良さそうですね」
魔王「そうだね……流石に」
闇の手「お体は、大丈夫です……?」
魔王「うん……お腹重くて、動きたくは無いけど」
闇の手「……では、今の内、ですね」
魔王「……青年の身体は……大丈夫?」
闇の手「……どう、でしょうね……そろそろ、辛いかもしれません」
魔王「そっか……」フゥ
闇の手「……一応、彼の部屋には防護の結界を張っておきました」
魔王「うん………ありがと」
闇の手(何処まで役に立つか……青年さん、頑張ってくださいよ)
闇の手「では……行きます」シュゥウン
魔王「青年………」

魔王(やっと会えるのは、嬉しい。でも……彼を思うと、傍に……来させちゃ駄目、なんだよな)
魔王(私は魔王で……彼は、エルフの血を引いてる……から)
魔王(………ここからが……正念場……!)




871 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/03(日) 00:58:55.17 ID:Ranpq84uP

……
………
…………

青年「………ッ」ウゥ……
青年(く……なん、だ……この、感覚……ッ !?)

シュゥウン

闇の手「……青年さん?」
青年「……闇の手、か……」ハァ

闇の手「やはり……察知してしまうんですね」
青年「今のは……魔王様の、魔気………か……?」
闇の手「……そんなに、辛くなってしまいました、か……?」
青年「否……」

青年(辛い……否、確かに……辛い、と言えばそう……だが)
青年(……まだ、言わない方が良いな)

青年「構わない……大丈夫、大丈夫だ」ハァ
闇の手「しかし、お顔の色が……」
青年「まぁ、多少は……ね。そういうのも見越して、こうして」
青年「……町外れの人目の着かない所に居たんだ」
青年「行こう……長居は無用だろ?」
闇の手「ええ……そうですね」
闇の手「ちょっと辛いと思いますが……我慢して下さいよ」
青年「……ああ」

青年(もう一度……確かめる、しかないな)

闇の手「貴方の部屋へ……防護の結界を、張っておきました」
闇の手「……気休め、かもしれませんけど」
青年「……ありがとう。だが……帰ったら魔王様を抱きしめたいんだけどな」
闇の手「……辞められた方が、身のためです」
青年「もう……そんなに?」
闇の手「何時産まれてもおかしく無いですよ」
青年「……そうなのか?」
闇の手「はい……ですから、話は、後に」シュゥウン
青年「ぐ………ウゥッ」
青年(やはり、これは………ッ !! 僕、は……ッ)




1181 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/04(月) 09:34:09.34 ID:kU+LdNwdP

闇の手「………大丈夫、ですか?」シュゥン
青年「……… ……… ッ」ハァ、ハァ
青年「……ここ、は……」
闇の手「貴方の部屋ですよ、城の……気分、少しはましだと思いますが……」
青年「結界か……」
闇の手「はい」
青年「……魔王様は?」
闇の手「寝室に。城の者がついてます……が、僕ももう行きますよ」
青年「ああ………もう、産まれるのか?」
闇の手「いえ、まだ大丈夫だと思いますけど」
青年「……じゃあ、僕も行く」
闇の手「……しかし」
青年「大丈夫だ。思ったほど……気分は悪くない」
闇の手「それは……」
青年「結界の中、だからか」
闇の手「………」
青年「最後だろう……産まれてしまえば、多分」
闇の手「……解りました。なるべく僕の傍離れないでください」
闇の手「出来るだけ、防ぎますから」
青年「……ありがとう」

……
………
…………

魔王「………」ウーン、ウーン
闇の手「……失礼します、魔王様?」カチャ
魔王「……ぅ、? …あ、あ……闇の手……」
闇の手「……陣痛、ですか!?」ハヤクナイ!?

青年「魔王様……」
闇の手「青年……おかえ、り……ぅ」イタイイタイ、イタイヨウ
青年「だ、大丈夫……? …グッ」ウゥ
魔王「………青年、出て……部屋」
青年「……嫌だ」
闇の手「お湯、沸かして、えっと……」バタバタ
魔王「……顔色、わる……ぅッ」イタイー!
青年「大丈夫だから、傍に……居させてくれ」
魔王「駄目…… 青年、ここで……寿命消費しないで……」

青年「……魔王様!」
魔王「……この子、導いて、ちゃんと……イタ…ぃ、うぅ」
魔王「ここで……こんな、と、こで……青年を、失う訳に……はッ」
闇の手「青年さん、そこ、退いてください!」バタバタ




1191 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/04(月) 09:51:28.59 ID:kU+LdNwdP

魔王「イタイ痛い、闇の手、もう無理……ッ」
闇の手「まだです、魔王様!我慢して!」
青年「………」
魔王「お願い、青年……ッ 産まれたら、抱いて、 ……ね?」
青年「……君を?それとも…… 痛ッ」ドンッ
闇の手「すみません、でも邪魔です!」バタバタ
青年「………」クル、スタスタスタ

パタン

青年「……まあ、そりゃそうだよね」ヤレヤレ
青年「……とうとう、か」ヘヤニモドロウ、スタスタ

カチャ…パタン

青年(とうとう……産まれる)
青年(僕と、魔王様の子……勇者、が。産まれる)
青年(勇者が産まれれば、魔王様は……復活準備に入る)
青年(……すぐに離れる方が賢明だろうな。王様は……何でも準備してくれるだろう)
青年(魔王様は心配無い。母は……強い)
青年(……問題は、僕だ)
青年(………)

バタバタバタ……!バタン!

闇の手「おめでとうございます!男のお子様ですよ!」
闇の手「金の髪と金の瞳……そして輝く印を持つ……勇者様の、誕生です!」
青年「産まれた……のか!」




1211 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/04(月) 10:13:34.05 ID:kU+LdNwdP

闇の手「はい……魔王様、そっくりです」
青年「そうか……会える、かい?」
闇の手「勿論です」ニコ
闇の手「あ、でも……」
青年「君の傍を離れるな、だろ?」
闇の手「はい……折角の親子の対面ですけど……」
青年「良い……解ってるよ」

……
………
…………

魔王「……青年、見て!私と同じ顔してるよ!」ニコニコ
青年「ああ……お疲れ様、魔王様……随分テンション高いな」
闇の手「大仕事の後ですからね……そりゃ、興奮もしますよ」
青年「よっと……うわ、ちっちゃいな」ダッコ
魔王「青年……」
青年「ん?」
魔王「勇者、任せる……お願いね」
青年「……ああ、解ってる」
魔王「私は……なるべく、自我を保つ為に……頑張る」
青年「そんな事……出来るのかい?」
魔王「魔石を作るのとか、色々、ね……」
闇の手「僕も、色々考えてるんです」
青年「……僕は、ここに居ない方が良いんだな」
魔王「追い出したい訳じゃ無いよ?」
青年「……御免、意地の悪い言い方をしたな」
闇の手「青年さんは、青年さんで……役目が、あるんですよ」
青年「解ってる……勇者とは言え、まだ小さい。傍に居させない方が良いだろう」
青年「一ヶ月……とか言ってられない、んだな」




1221 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/04(月) 10:23:56.01 ID:kU+LdNwdP

魔王「うん……ちょっと、勇者にはかわいそうだけど」
青年「手は打ってある。始まりの街の王様に、伝えてあるよ」
闇の手「……仕込み、ってそれですか」
青年「一ヶ月で連れて行くにしろ何にしろ、乳飲み子と僕のコンビじゃ、どうしようもないだろ」
青年「……以前までは母親と一緒だったから、二人でもどうにかなったけど」
闇の手「そうですね……失念してました」
青年「こんなんでも……父親、さ」
魔王「……ごめんね、青年」
青年「何故謝る?」
魔王「………」
青年「……まあ、良いさ。さて……闇の手、旅の準備を手伝ってくれ」ハイ、ユウシャ
魔王「あ、うん……」ダッコ
青年「最初で最後だ。ちゃんと……おっぱいあげて。寝かしておいて?」
魔王「ふふ……くすぐった…」チュ、チュ……
闇の手「おっと……すみません、見るとこでした」クル
魔王「……取り上げといて今更だなぁ」

闇の手「そう言う問題じゃ無いです!」
青年「……ほら、行くよ」グイ
闇の手「ちょ、引っ張らないでください……!」ズルズル

パタン

青年「………」フゥ
闇の手「大丈夫、ですか」
青年「……感傷的にもなるさ」
闇の手「お体、ですよ……」
青年「……言ってられない。だからこそ……僕は離れるんだ、ここを」
闇の手「………」
青年「心配するな。勇者はちゃんと育てる」
青年「……最強の魔王を倒す為に、最強の勇者に」
闇の手「……はい」




1231 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/04(月) 10:38:16.34 ID:kU+LdNwdP

闇の手「で、僕は何を準備すれば良いんです?」
青年「取りあえず、勇者に必要なものと……この間の、染め粉をありったけ」
闇の手「えっと……茶色でしたね」
青年「……まあ、今更違う色に染める訳にもいかない」
闇の手「……でも、まだ取れてないですね」
青年「数ヶ月は大丈夫だろうが……16年、だ」
青年「勇者との血縁を匂わす訳にはいかないしな……目立つだろ、金髪が二人も居たら」
闇の手「……ええ。それに」
青年「解ってる。僕は目立つ……んだろう」
闇の手「……はい」
青年「それから……僕の弓を」
闇の手「それはもう用意してあります」
青年「……そうか」
闇の手「その剣は、是非……勇者様に」
青年「考える事は皆同じ、か」
闇の手「……それで全部、ですかね」
青年「後、転移石をいくつか準備してくれ……量産してるんだろう?」
闇の手「それは……数はありますけど。でも……行くときはちゃんとお送りしますよ?」
青年「僕の身体なら心配しなくて良い」
闇の手「………」
青年「……緊急事態に備えて、だ」
闇の手「……わかりました。防護術かけた袋にでも、入れておきます」
青年「ああ……頼む」
闇の手「では、一刻後に魔王様の部屋で」
青年「……解った」

……
………
…………

魔王(勇者……寝ちゃった)
魔王(可愛いなぁ……どんな子になる、かな)
魔王(できれば……私を、魔王を、怨んで怨んで……)
魔王(強く、なってね)
魔王(………ごめんね)ギュ




1241 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/04(月) 10:50:45.41 ID:kU+LdNwdP

コンコン

魔王「はい?」
闇の手「失礼します、魔王様」カチャ
青年「準備が出来た……行くよ、魔王様」
魔王「うん……青年に、勇者を……闇の手」
闇の手「はい………」
青年「………」スタスタ……ギュ!
魔王「青年……!近づいちゃ駄……んッ」
青年「……ッ う……ッ 魔王、様」チュ
魔王「……青ね……ッ」ンー!
青年「……心配するな。勇者と共にここに戻る。約束する。また後で、だ」
闇の手「………」
魔王「………」

青年「………ッ グゥ……ッ」ドクンッ
闇の手「青年さん!?」
青年「………闇の手、頼む」ユウシャ、ギュ
魔王「青年……出来るだけ、勇者に私を憎ませて」
魔王「出来るだけ、強い子に育てて……最強の剣に。育てて」
青年「………」

魔王「この腐った世界の、腐った不条理を断ち切る為に」
青年「ああ……大丈夫だ。勇者は……魔王を倒す」

闇の手「………行きます、青年さん」グッ
青年「ああ……また、後で。闇の手……魔王様」シュゥゥン
闇の手「………」
魔王「………」ポロポロポロ
闇の手「魔王様……」

魔王「大丈夫……さぁ、私達も準備しよう」
魔王「私達にとって16年なんて……瞬きほどの間でしかない」
魔王「……手伝って、闇の手。できる限り、私の自我を保つ為に」
闇の手「はい……!」

……
………
…………

始まりの街

シュゥウン

青年「………っと……ここは……」
青年(……城の裏手、か)キョロキョロ
青年(誰も居ないな……勇者は……寝てる)
青年(兵士は……ああ、居た居た)

青年「すみません」
兵士「なんだ、現在城は立ち入り禁止だ」
青年「……以前、王様の謁見を許して戴いた者です」
兵士「もう一度言う。現在城は立ち入りが禁じられている!」
青年「……では、これを。この赤子の……手をご覧下さい」ス…
兵士「何……! こ、これは……!」
青年「厳戒態勢はこの為とお見受けします。王様との約束通り……勇者をお連れしました」
兵士「し、失礼しました……お待ちしておりました、勇者様!」

……
………
…………




1261 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/04(月) 11:04:23.14 ID:kU+LdNwdP

謁見の間

王「よくぞ戻った、青年よ! ……儂は、この日を半年間……待っておった!」
青年「はい……どうぞ、勇者の印をお確かめください」
王「……うむ、確かに! ……おお、眩いな……金の髪に金の瞳、そしてこの……勇者の印!」
王「その者こそ、輝かしい勇者の証! ……して、その赤子の母である姫とやらは……」
青年「………」
王「……否、すまん、言わずとも良い……ここにこうして、そなたと勇者殿が居る事が」
王「何よりも……事実じゃな」
青年「……はい」
王「町外れの小屋を使える様にしてある。街の者も知らぬ場所じゃ……そこで」
青年「恐れながら、王様」
王「なんじゃ?」
青年「……勇者様は、産まれて間も無く。そして私は……男に御座います」
青年「できれば乳を与えられる者を。それから……街の中で、勇者様を育てる事は」
青年「叶いませぬでしょうか?」
王「し、しかし……」
青年「広く勇者の名を広める事は、確かに危険も御座いましょうが……勇者は、私が必ず守ります」
青年「できれば、人に触れ暖かさに触れ……人としても立派に」
青年「他者を守る優しさや、強さを身につけて貰いたいのです」
王「ふむ……」
青年「勝手を申しているのは百も承知。ですが……この子には、魔王を倒すという」
青年「……大きな、使命を背負わせてしまうのです」
青年「どうか……お聞き届けください」
王「……そなたの言う事はもっともじゃ」
王「あい解った! ……この城の一室を与えよう」
青年「! …良いのですか」
王「うむ。ここならば騎士も常駐して居る。そなたの危惧も負担も減るであろう」
王「乳母の数も足りて居る……それに」
王「そなたも、城の騎士の血縁であろう?」
青年「……ありがとうございます」
王「長旅……そして、不幸に疲れたであろう。すぐに案内させよう」
王「ありがとう……青年よ。礼を言う……これで、世界は救われる」
青年「……はい。ご助力賜り、必ず……立派な勇者に育てます」
王「うむ……期待して居るぞ、青年……そして、勇者よ!」
王「血に近い嘘はつけぬと申したそなたの言葉……信じておった!」
青年「……はい」
青年(嘘、か……そうだ。僕は……エルフの血で。嘘はつけない)
青年(ならば……僕は、なんだ?)




1271 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/04(月) 11:12:52.14 ID:kU+LdNwdP

――時は、流れ……5年後

勇者「青年!」バタン!
青年「おかえり勇者……何だい、騒々しいな」
勇者「さっき王様に聞いたんだ……城を出るってどういうこと!?」
勇者「僕を……おいていくの」ウル
青年「……落ち着きな、勇者」
青年「僕は町外れの小屋に引っ越す許可を貰っただけさ」
勇者「どうして!?ここに……居れば良いじゃない」
青年「どうにも慣れなくてね……それに、同じ街の中だよ?何時でも会える」
勇者「青年……」
青年「君は幾つになった?」
勇者「……五歳」
青年「そうだ。随分大きくなった」
青年「でも……もう少し食べた方が良いな。細すぎる」
勇者「け、剣の稽古も魔法の練習も頑張るよ!だから……!」
青年「駄目だ」
勇者「青年……ッ」
青年「何時までも僕に甘えていちゃいけない……だけどね、勇者」
青年「僕は何も遠くに行くわけじゃ無い」
青年「……小屋の場所は、解るね?」
勇者「うん……偶に散歩に連れて行ってくれた、あの……丘の上でしょ?」
青年「そうだ……寂しかったら、勇者が会いに来れば良い」
勇者「……え、良いの?一人で……行って良いの!?」
青年「街の外にはでちゃ駄目だよ……あそこは、町外れだけど」
青年「この国の中だ……駄目な理由はないだろう」
勇者「ま、毎日でも!?」
青年「ああ……構わない。丁度鍛錬にもなるだろう」クス
勇者「……もしかして、それが理由?」
青年「それもある、かな」




1281 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/04(月) 11:25:32.11 ID:kU+LdNwdP

勇者「……御免、青年……青年は、僕の事……考えて」グス
青年「泣くなってば……男だろ」
勇者「……うん」ゴシゴシ
青年「城の暮らしってのが慣れないのは本当……嘘じゃ無いよ」
勇者「うん。青年何時も言ってる……僕は嘘はつかない」
青年「そうだよ」
勇者「わかった……運動がてら、毎日小屋に行く!」
青年「オーケー……約束だ」
勇者「うん、約束ね!」
青年「……一人で寝れるな?」
勇者「……が、頑張る!」
青年「寂しいって泣くなよ」クスクス
勇者「お、男だもん!それに……僕は、勇者だ!」
青年「ああ……」
勇者「強くなって……魔王を倒すんだ!ちゃんと……青年の事も守ってあげるからね」
青年「………期待してる、よ」クス……
勇者「信じてないな……?」プゥ
青年「そんな事はない……信じてるよ。君は……勇者は、魔王を倒すんだ……必ず」

……
………
…………

勇者「青年!起きてる!?」バターン!
青年「……何時だと思ってるんだい、もう夕方だよ?」ソウゾウシイ……
勇者「この間夕方来たとき寝てただろ」
青年「……お前が泊まって行った次の日だろ……僕のベッド占領してたのは誰だよ」
青年「でっかい男と一緒に寝るのは御免だ……全く」
勇者「はは、なんだ眠れなかったのか」
青年「もう少し申し訳なさそうにしろよ……で、今日は何だい?」
勇者「あ、そうそう。今日、俺初めて騎士長に剣で勝ったんだぜ!」
青年「へぇ……そりゃ凄い」
勇者「もう青年にも勝てるかなー」フフン
青年「あのね、何度も言うけど僕は剣が専門じゃ無いの」
勇者「嘘ばっか……じゃあ、そのでっかい剣なんだよ」
勇者「凄く使い込まれてるじゃないか」
青年「これは、僕の父親の……形見さ」
勇者「……え」
青年「何だよ」
勇者「………ご、ごめん……俺…」
青年「………」フゥ
青年「気にする事じゃ無い……それに、僕は何時も言ってるだろう」
勇者「……嘘は、つかない」
青年「そういうこと」




129名も無き被検体774号+2013/03/04(月) 11:32:32.34 ID:0jO2hBClO

いいよ、いいよ~!




1301 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/04(月) 11:39:37.18 ID:kU+LdNwdP

青年「しかし…君は何時も僕と勝負しようとするな……」
勇者「父親に勝ってこそ、男だろ?」
青年「……父親?」
勇者「みたいな者、だろう……青年は」
勇者「俺は……父も母も居ないけど……青年が居た。だから……寂しくなかった」
青年「……で、僕を負かしい、ってか」
勇者「そうだ。俺の目標だった。青年みたいに……青年より、強くなるって」
勇者「……青年がここに引っ越した頃は、まだ全然歯が立たなかったからさ」
青年「今じゃ、勝負にもならないよ……あの頃は僕程度で丁度良かったからね」
青年「相手になってただけさ」
勇者「でも……」
青年「……勇者、幾つになった?」
勇者「15だ」
青年「……僕は、負ける勝負はしたくないんだけどね……」ヤレヤレ
勇者「……?」
青年「だけど、僕に勝つ事で君の自信になるのなら」
青年「……勇者として、強さになるのなら……受けてたとう」
勇者「!! ……本当に?」
青年「僕は嘘はつかない……ほら、剣を持って表にでな……日が暮れる前に始めよう」
勇者「………良し!」

……
………
…………

青年「……だ、から……言った、だろ……」ゼェゼェ
勇者「……勝った……俺が……青年に……」ハァハァ
青年「圧倒的に負けるのは……流石に格好悪いから、ね……」ガンバリスギタ…イタタ
青年(魔王様に手ほどき受けといたのが役に立ったな……)
勇者「いや、でも……青年……やっぱ強いよ……騎士長より……苦労した、ぜ?」
青年「……そりゃ言い過ぎだ」
青年(騎士長と僕の差は……ただの実戦経験の差……)
青年(……ま、面目は保てた……かな)
勇者「ありがとう、青年……俺、頑張る」
青年「……ん」イタタ
勇者「じっとして……」カイフクマホウ
青年「……立派になったもんだ」
勇者「回復魔法も青年が教えてくれたんだったな」
青年「教会の僧侶の授業も受けただろ?」
勇者「そうだけど……いや、でも……青年は、やっぱり凄いよ」
青年「……勇者」
勇者「ん?」
青年「もうすぐ、旅立ちだな」
勇者「………うん」




1311 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/04(月) 11:50:42.49 ID:kU+LdNwdP

青年「誕生日まで……1ヶ月、か」
勇者「ああ……そうだね」
青年「……今日は泊まって行くか?」
勇者「良いのか!?」
青年「疲れただろう……僕は構わないさ」
勇者「じゃあ、俺布団取ってくる!」
青年「……ああ、そりゃ助かる、けど」
勇者「その間にご飯準備しといてくれよ!」
青年「手伝おうって気はないのかな」
勇者「青年の飯旨いんだよ……じゃ、ちょっと行ってくるわ!」バタバタ
青年「……疲れてるだろうからって提案したのにな」ヤレヤレ
青年「まあ……でっかい男と一緒に寝るのは御免だしな」イイカ……
青年「で……ご飯ね……」ヤレヤレ、ボクハオツカレナンダケドナ

……
………
…………

勇者「あー!旨かった!」
青年「お粗末様……しかし良く食べるな」
勇者「誰かさんが細いとか言うからな」
青年「……良く覚えてるね」
勇者「あの時は本当に捨てられるかと思って必死だったんだよ」
青年「本当に毎日来てるもんな……」
勇者「約束したからな。約束は守らないと駄目だろ?」
青年「……お利口さんな事で」
勇者「今なら解るさ……青年が、城から離れた理由」
青年「………」
勇者「聞いても、良いのか?」
青年「その前に、僕の話を聞いてくれるかい?」
勇者「……ああ」




1321 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/04(月) 12:00:18.23 ID:kU+LdNwdP

青年「……これ、僕の父の形見だと言ったな」
勇者「……鋼の剣?」
勇者「そうだ……ここに、この王国の印が刻まれている」
勇者「青年のお父さんは……この国の騎士だったのか?」
青年「いや……違う。父は……昔の勇者一行の一人だった」
勇者「!」
青年「この話は王様も知ってる……嘘じゃないぜ?」
勇者「疑ってなんか居ない……青年は、嘘を吐かない」
青年「ああ……そうだったな」
勇者「……じゃあ、青年のお父さんは……魔王に、殺されたのか」
青年「……まあ、そう言う事になるのかなぁ……語弊はあるけど」
勇者「……? でも……形見、なんだろ?」
青年「まあね……確かに、父はもう死んでるから」
勇者「ん、ん……?」
青年「まあ、良いさ。で……ついでに言えば母も、その仲間だった」
勇者「……え、じゃあ……青年のお母さんも……?」
青年「二人とも……もうこの世には居ない」
勇者「………」
青年「僕の専門は弓だ……母の、形見の……この弓」ガサゴソ
勇者「……こんな弓、見た事無い」
青年「そうだろうな……これは、エルフの弓だ」
勇者「エルフ!?」
青年「小さいときに、聞かせたエルフの御伽噺は覚えているか?」
勇者「ああ……エルフのお姫様のお話……だな」
青年「ああ。あれはただの御伽噺だけどね……僕の母は、エルフの血を引いていた」
勇者「……そうか、青年の見た目が変わらないのは」
青年「まあ……そりゃ気付いてたよな」




1331 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/04(月) 12:08:14.72 ID:kU+LdNwdP

勇者「……だから、あの時……城から、出てったのか」
青年「お前は絶対会いに来ると言うと思ったからね」
青年「鍛錬に丁度良いだろうと思ったのさ……良い言い訳になる」
青年「僕は人に姿を見られずに済むし」
勇者「……そう、か」
青年「………」
勇者「でも、青年は青年だ……血は繋がっていなくても、俺の……父親だ!」
青年「父親代わり、だろ」
勇者「……呼んで良いなら、父さんって呼びたかった」
青年「………」
勇者「でも、何時か……俺が、両親が居ないと……他の子を見て泣いてるときに」
勇者「青年が……俺たちは家族だって言ってくれたからさ」
青年「……ああ」
勇者「血が繋がって無くても、青年が居てくれたから……寂しくなかったよ」
青年「……あの時のお前は大変だったなぁ」
勇者「え?」
青年「涙と鼻水で顔べちゃべちゃにして、僕に抱きついてくるんだもの」
勇者「………ッわ、悪かったよ!」カオマッカ
青年「はは……それがこんなに、大きくなっちゃって」
勇者「青年!」
青年「……僕たちは、喜ばなくてはいけないんだ」
勇者「………?」
青年「立派な勇者様の誕生を……さ」
勇者「うん……俺は絶対に魔王を倒すよ。それで……世界を平和にしてみせる!」
青年「ああ……勇者は、魔王を倒すんだ。お前なら……やれる。願えば叶う……必ず」
勇者「……ああ!」




1351 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/04(月) 12:20:34.59 ID:kU+LdNwdP

青年「……お前に、この剣をあげるよ」
勇者「……え、でも、これ……」
青年「使ってやって欲しい」
勇者「………」
青年「僕は専門じゃ無い。強い敵を相手にするのに……剣は厳しいんだ」
青年「僕には……この母さんの弓がある」
勇者「解った……俺は、この、青年のお父さんの形見の剣で……魔王を倒す!」グッ
青年「……否、それは無理だから」
勇者「へ?」ガク
青年「……どこかに、光の剣が封印されているらしい」
勇者「光の……剣?」
青年「そうだ……それが無いと、魔王は倒せない」
勇者「どうして……青年はそんな事を知っているんだ?」
青年「……僕の本当の年を、お前は知らないだろ?」
勇者「あ……そ、そうか……」
青年「……世界の謎を探るには、少なすぎるけどね」
勇者「……幾つ、なの」
青年「90年には届かないな」
勇者「………」ポカーン
青年「……口閉じなさい」モウ
勇者「あ、でも……!」
青年「ん?」
勇者「……弓を使う、って事、は……」
青年「ああ……僕も一緒に旅に出るつもりだけど?」
勇者「え、え……まじで!?」
青年「不服か?」
勇者「とんでもない!青年が一緒なら心強いよ!」
青年「……まだまだ鍛えてやらないといけないしな」
勇者「……ですよね」
青年「それに……お前が旅立ってしまえば、僕がこの国に留まる理由は何もなくなる」
青年「飽きる迄は、一緒に行ってやるさ」
勇者「も、勿論だ! ……できれば」
青年「ん?」




1371 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/04(月) 12:26:41.02 ID:kU+LdNwdP

勇者「青年と一緒に……魔王を倒したい」
勇者「その手で……青年のお父さんとお母さんの敵を、うって欲しい」
青年「魔王を倒すのはお前だよ、勇者……」
勇者「でも……」

青年「大丈夫だ。勇者は必ず……」
勇者「……魔王を倒す」

青年「ああ」
勇者「わかった……必ず!」
青年「良し……じゃあ、休もうか……あと一ヶ月だ」
青年「準備はきっちり、整えておかないとな」
勇者「ああ……そうだな」
青年「お休み、勇者……良い夢を」

勇者「……なぁ、青年」
青年「ん…?」
勇者「魔王を倒してさ、世界が平和になったら」
青年「………」

勇者「お父さん、って……呼んでも良いか?」
青年「……ああ」

勇者「……ありがとう。良し!寝るよ!」
青年「ああ……おやすみ、勇者」




1491 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/04(月) 13:04:46.31 ID:kU+LdNwdP

……
………
…………

闇の手「魔王様………とうとう明日、勇者が旅立ちますよ」
魔王「………」
闇の手「青年さんも一緒です……」
魔王「………」
闇の手「……僕たちは、喜ばないといけないですね」
魔王「………」
闇の手「僕は、彼らがここに……たどり着くまで」
魔王「………」
闇の手「……この場を、貴女の傍を……離れませんから」
魔王「………」
闇の手「もう少し……我慢して下さいね」
魔王「………」

……
………
…………

勇者「良し………じゃあ、行ってきます、青年」
青年「わざわざここまで来なくても良かったのに……王様に謁見してからで良いだろう?」
勇者「良いの。俺がそうしたかったの。 ……待ち合わせは、街の入り口で良いの?」
青年「それだけどね……ここから、少し行った所に小さな村がある」
勇者「村?」
青年「うん、半日も歩けば着くだろう」
勇者「……そこで?」
青年「そう……街の入り口じゃ、僕の顔を知ってる人もいるだろうしね」
勇者「そっか……わかった」
青年「ちゃんと仲間を連れてくるんだよ?」
勇者「一緒に……選んでくれないのか?」
青年「お前は勇者だろう……直感で選びなさい」
勇者「直感……」
青年「そう……時として、一番正しい道を示してくれる」
勇者「……青年がそう言うなら」
青年「ああ……じゃあ、待ってるからな」
勇者「……ん。また、後で!」パタン
青年(また、後で、か………)
青年「………」スタスタ

パタン…




1511 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/04(月) 13:13:52.44 ID:kU+LdNwdP

青年(街中を歩くわけには行かないな……城の裏手から、否)
青年(……転移石、使うか)
青年(僕の身体は……不思議だな。否……魔王様の力、かな)
青年「……まさか、たどり着けないとは思わないけど」
青年「頑張るんだよ、勇者……昔に比べて、魔物は随分と強くなった」
青年「ここで……死ぬなら。世界は……滅びるだけだ」
青年「君の肩に掛かる負担は重い。この世界……そのものだ」
青年「……耐えろ。この腐った世界の腐った不条理を……断ち切る為に」

シュゥゥン…

……
………
…………

謁見の間

王「良く来た、勇者よ……そうかしこまる必要は無い、面を上げよ」
勇者「は……」
王「魔王が蘇って久しい。前魔王が前勇者によって倒されてからも同じく、じゃ」
勇者「はい」
王「今日は……青年が、そなたを連れてやってきた日じゃ」
勇者「……はい」
王「あの者も辛い思いをしたのじゃろう……そういった人々を、増やしてはならぬ」
王「そなたのその小さな身に、世界の重みを背負わせるのは忍びない……だが!」
勇者「……必ずや、魔王を倒してごらんに入れます。この、勇者の印にかけて、必ず……!」

王「うむ……頼んだぞ、光に選ばれし、運命の子……勇者よ!」
王「……そなたは、全き光の化身じゃ。金の髪に金の瞳……そして、金に輝く勇者の印」

王「世界を……この美しい世界を、守ってくれ!」
勇者「……はい!」




1571 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/04(月) 13:24:57.93 ID:kU+LdNwdP

……
………
…………

勇者「さて……」
勇者(青年も王様も、登録所で仲間を集めろって言ってたな)
勇者「ここか……」コンコン

ユウシャサマ!ユウシャサマキタ!
ユウシャサマーワタシハココデスー
ドケ!オレガイクーワタシガイクー!

勇者「……凄いな」
事務員「お待ちしておりました、勇者様」
勇者「ああ、えっと……お世話になります」
事務員「はい、それでは早速……人員のご希望は?」
勇者「ええと……そうですね、前衛一人と、魔法を使える人……が、良いかな」
事務員「はい……それから?」
勇者「え?」
事務員「え? ……あ、あの。もうお一方ぐらい……」
勇者「あ、いえ……えっと、二人で良いんです」
事務員「……そ、そうなのですか?もう一人ぐらいお連れになった方が……」
勇者「いえ……大丈夫です」キョロキョロ
事務員「そうですか……?では……こちらが、リストに……」
勇者「君……名前は?」
??「私? ……私は魔法使いよ。炎の魔法が得意」
勇者「そっか……じゃあ、一緒に行こうか」
魔法使い「……お言葉だけど、勇者様……そんなアッサリ決めて良いのかしら」
勇者「……直感を信じただけだよ」
魔法使い「そう……勿論、異論は無いわ。いい目、してるわね」ニコ
勇者「後は………」キョロキョロ
勇者(うーん)
勇者「……魔法使いだけで、良いや」
事務員「え?」
魔法使い「え?」
勇者「え? ……駄目?」




1591 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/04(月) 13:33:59.80 ID:kU+LdNwdP

魔法使い「え、えっと……勇者様? 私と二人で……魔王を倒すおつもり?」
魔法使い「私……自信はあるけれど、まだレベル1よ?」
勇者「俺のレベルも1だよ?」
事務員「そ、そうです。勇者様……この大陸の魔物は、元々そんなに強く無いとは言え」
事務員「魔王の影響で、随分力はつけています、それに……」
魔法使い「港も魔物に襲われて、封鎖されてしまっているわ……あれもどうにかしないといけないのよ?」
勇者「人員には当てがある……だから、二人連れて行こうと思ったんだけど」
勇者「……御免、君以外にピンと来ないんだ」
魔法使い「……そりゃあ、選んで貰えただけありがたいお話ね。だけど……」
勇者「大丈夫だ……この先の村で、もう一人と待ち合わせしてる」
魔法使い「そこまでは……私達、二人で行くの?」
勇者「歩いて半日って聞いてるけど」
魔法使い「……その村なら知ってるわ。確かに距離的にもそれぐらい、だけど」
勇者「戦いながらじゃもう少しかかるかな」
魔法使い「そうね……って、そうじゃなくて!」
勇者「俺と二人じゃ……着いてきてくれない?」
魔法使い「そ、そう言う訳でも無いけど……」
勇者「じゃ、決まり。ね?」ニコ
魔法使い「……解ったわよ、もう」
勇者「良し……じゃあ、早速出発しようか!」

ユウシャサマー…イマカラデモ……
アア、イッチャッタ……

事務員「ご、ご武運……お祈りいたしております……」ダイジョウブナノカシラ

……
………
…………




165名も無き被検体774号+2013/03/04(月) 15:01:52.29 ID:PM71H+FY0

続き楽しみにしてるよ




1901 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/05(火) 09:31:19.53 ID:XBqEIPyXP

勇者「んー……」キョロキョロ
魔法使い「どうしたの、勇者様」
勇者「この細い道を行けば近いって、町の人言ってたよね」
魔法使い「そうね……魔物は多いだろうけど」
勇者「水辺の魔物も居るしな……迂回する方が、安全は安全か」
魔法使い「時間は掛かるわよ?」
勇者「でも……俺たちレベル低いしなぁ」
魔法使い「……二人だしね」

勇者「えっと……怒ってる?」
魔法使い「え? ……あ、ご免なさい、そうじゃ無いわ」
魔法使い「貴方は世界を救う、勇者様ですもの」
魔法使い「……ちょっと不安だけど、そりゃ」
勇者「……そうだよね」
魔法使い「でも……直感だったんでしょ?」
勇者「うん。君は……何故か一緒に行かなきゃいけないと思った」

魔法使い「さっき、自信はあるって言ったけど」
勇者「うん?」
魔法使い「……私で良いのかしら、って思いは勿論あるのよ」
魔法使い「でも、折角……お眼鏡に適ったんだもの。頑張るわ、勿論」
勇者「ああ……でも、無理だけはしないで。できるだけ……守るから」
魔法使い「……ええ」
勇者「俺の足りない所を補って欲しい。俺も……そうできるように頑張る」
魔法使い「……」コクン

勇者「取りあえず、青年と合流しよう……行こうか」スタスタ
魔法使い「青年……さん?」スタスタ
勇者「ああ……俺の父親みたいな人だ。強くて、優しい……頼りになる人だよ」
魔法使い「この先の村で待ち合わせしてるって言ってたわね」




1921 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/05(火) 09:41:11.86 ID:XBqEIPyXP

勇者「ああ……俺の剣の師でもあるし、魔法の師でもある」
魔法使い「……へぇ……あ、勇者様……!」
勇者「……ッ 一匹か……ッ 援護、頼むよ!」
魔法使い「はい!」ホノオヨ!

……
………
…………

村の入り口

勇者「………」ハァハァ。ヤットツイタ、モウダメ。グッタリ
魔法使い「………」ゼェゼェ。マリョクキレタ、アシイタイ…グッタリ
青年「……今日中に着いたのは褒めてあげる、けれど」
青年「何で二人なの、勇者……」ヤレヤレ。タテルカイ?
勇者「………」ブンブン。ムリ
魔法使い「………貴方が、青ね……ええええええええええええ!?」ガバ!
青年「……君は元気だね」ソレダケオオゴエダセリャリッパナモンダ
魔法使い「……だ、だって……勇者様の父親代わりって……ええ!?」
青年「また誤解される様な言い方を……」
青年「とにかく、宿を取ってある。一度湯に浸かっておいで」
青年「……汗と魔物の血だろうけど……君達、臭い」
勇者「……はい」ヤッパクサイヨネ
魔法使い「………」クサイッテイワレタ、ショック

……
………
…………

魔法使い「はああ、暖まる……」スープオイシイ
勇者「食った……!」
青年「……あのね、何日も食べてなかった訳じゃないだろうに」ミテルダケデハライッパイ
勇者「悪かったな、青年……待たせて」
青年「否?思ったより早かったよ?」
魔法使い「……そうなの?」
青年「ああ……一晩ぐらい野宿してくるだろうと思ってた」
勇者「……まじで?」




1931 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/05(火) 09:53:03.95 ID:XBqEIPyXP

青年「……全く、お前は色々と期待を裏切ってくれる」クス
勇者「………」シュン
青年「何で落ち込むんだよ……褒めてるんだよ?」
魔法使い「え?」
青年「良い意味で、裏切られるのは嬉しい限りだろう……父親代わり、としてはね」
魔法使い「あ……! そ、そうだわ……貴方、本当に……?」
青年「何が?」
魔法使い「……父親、って言うから、もっと……その、老けた人を……」モゴモゴ
青年「まあ……そりゃそうだよね……まあ、でも」
青年「僕の話より、先にどうして二人でここまで来たのか聞かせて貰う方が先」
勇者「青年が直感で選べって言ったんじゃないか」
勇者「それに、青年が一緒に行ってくれるのは解ってたし……」
青年「ああ、それはそうだけど……でも、もう一人ぐらい」
勇者「ピンと来なかったんだよ」
青年「………」
勇者「彼女……魔法使いしか、連れて行く気になれなかったんだ」
青年「成る程ね」
勇者「それで……町の人にここまでの道を聞いて」
勇者「ちょっと遠回りになるけど、安全な道の方を選んだ」
魔法使い「……それでも、結構時間掛かっちゃったけどね」
青年「否……正しい判断だっただろう」
青年「三人で近道の方を選んでいると、多分明日になっても着かなかっただろう」
青年「……良く解っただろう?この大陸の魔物は、そんなに強く無いとは言え」
勇者「ああ……それでも、手強かった」
魔法使い「私達のレベルが低いって言うのもあるでしょうけど……」




1941 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/05(火) 10:04:58.12 ID:XBqEIPyXP

青年「それでも君達は、戦う術を知っている者達だ」
青年「レベルが低いとは言え……戦う術を知らない人達に比べると雲泥の差だよ」
青年「……これが、魔王の力だ」
勇者「行商人とかは……安全に旅する事もできない、か」
魔法使い「そう言う人達はまだマシよ。護衛を雇えば……良いんだもの」
青年「そうだ……一般人なら、街から街への移動も容易じゃ無い」
青年「さっきもいっただろう?例え三人居ても、近い方を通っていたら……」
青年「ま、明日の今ぐらいかなって……僕は想像していたんだ」
青年「だけど、君達は……言い風に僕の予想を裏切った」
青年「……安全な道を選んだとは言え、たった二人で、あの時間でたどり着いたんだ」
青年「そりゃ、喜ばない筈ないだろう?」
勇者「……うん」
魔法使い「レベルも……信じられないぐらい上がったわ」
青年「そう言う判断が出来るってのは、重要な事だよ、勇者」

青年「……この腐った世界の、腐った不条理を断ち切る為には、ね」

魔法使い「……?」
勇者「青年は良く、その言葉を口にするよな」
青年「何れ解る……僕が教えてあげる事じゃない」
青年「自分の……自分たちで見て、知って……感じるんだ」
青年「……たった一日だ。だが解っただろう?」
青年「魔王の……この世界に及ぼす影響と言う物を」
魔法使い「………」
勇者「……ああ」
青年「確かに、君達は未だ弱い。だが……強くなる。必ず」

青年「そして……勇者は、魔王を倒すんだ。必ず……倒すんだ」

勇者「……ああ!」
魔法使い「そうね……平和を取り戻さなきゃ!」




1951 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/05(火) 10:15:41.72 ID:XBqEIPyXP

青年「しかし……三人じゃ心許ないのも時日だな」フゥ
勇者「……青年が居るだろ?」
青年「何時までも僕に甘えるんじゃ無い、勇者……お前は何だ?」
勇者「……勇者、だ」
青年「そうだ……勇者は、お前だ。僕じゃ無い」
青年「僕は……手助けをするだけだ。お前達を導く者じゃない」
青年「……この旅のリーダーはお前だよ、勇者」シッカリシナサイ。ポンポン
勇者「……ん!」
魔法使い「……見た目の年が変わらないのに、本当に親子みたいね」クスクス
勇者「だから……父親代わりっていっただろ」ムゥ
魔法使い「お兄さんって言う方がしっくり来るけど……勇者様が甘えてるのは良く解った」クスクス
勇者「な……ッ」
青年「こんなでっかい男に甘えられてもなぁ?」ニヤニヤ
勇者「青年までなんだよ!」カオマッカ
青年「事実だろ」
勇者「そりゃ……信頼はしてるよ。確かに頼ってる所も甘えてる所も……ある、けど」
青年「まあ、良いさ……今はまだ、ね」

勇者「……頑張るよ。俺は……勇者だからな」
魔法使い「はい。一緒に頑張りましょう、勇者様」
勇者「ああ!」
青年「……ま、取りあえず、君達今日はゆっくり休みなさい」

青年「明日は港の様子を見に行くよ」
魔法使い「あ……魔物に占領されてるって……」
青年「そうだ。あの港が利用できない限り」
青年「物資も届かなければ、向こうの大陸にも渡れない」
青年「……目の前の事から、片付けて行こう」
勇者「ああ……じゃあ、お休み、青年……魔法使い」カタン
魔法使い「おやすみなさい……勇者様」カタン
青年「ああお休み……二人とも」




1961 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/05(火) 10:29:41.00 ID:XBqEIPyXP

青年(……あの少女、后様に……似てる)
青年(血は争えない……か)クス
青年(……しかし、少々予定が狂ったな……まさか一人だけ、とはね)
青年(確実に、違う……何もかも)
青年(……僕たちは、喜ばなくてはいけない)
青年(早急に一人……必要だろう、が……)
青年(勇者の直感か……)
青年(僕が負担を負うわけにはいかない……彼らには成長して貰わないとな)
青年(しかし……これも……運命、なのか)
青年(………まあ、良い。何れ……知る、か)
青年(僕も……彼らも)

……
………
…………

勇者「………すっげぇ数」
グルルルル……
魔法使い「………こ、これ……全部、倒すの!?」
グルルルル……
青年「怖じ気付くんじゃない、二人とも……群れのボスを探せ」
勇者「ボス……?」
青年「束ねてるのが居るはずだ……よく見ろ、勇者」
グルルルル……ッ
魔法使い「あ ……あれ、じゃ無いかしらあの……血色の目の……」

青年(……完全に正気を失ってるな。元は群れて移動する……野犬の魔物の類か)
青年(魔王様の石の力は凄いな……)
青年(……長居は……まずい……ッ)ドクンッ

勇者「……青年?」
青年「大丈夫だ……目を反らすな、勇者……隙を見せたら襲いかかられる」
青年「魔法使い、詠唱の準備を……この手の魔物は火に弱い」
魔法使い「は、はい!」……ブツブツ
青年「僕が風の魔法で魔法使いの炎を加速させる……手前の数が減れば」
青年「……飛び込んで、あのリーダーを伐て」
勇者「わ、わかった!」
魔法使い「炎よ!」ゴッォォ
青年「……くッ ……風よ!」ビュオオオオッ

ギャアアアアアアアアッ

青年「今だ、勇者……行け!」
勇者「……ッ わああああああっ」ダッ ……ザシュ!

ギャアアアアア
キャインキャイン……ッ グルルルル

魔法使い「駄目、浅い……ッ  勇者様!」
勇者「……ッ」

勇者(糞、向こうの方が……早い……ッ 噛まれる……ッ)

青年「……ッ 魔法使い、散った奴を仕留めろ!勇者に近づけさせるな!」
青年「……勇者、動くなよ……ッ」キリキリキリ………ドシュ!

ギャアアアアアアアアアアアアア!!

キャイン、キャイイン………




1971 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/05(火) 10:39:51.84 ID:XBqEIPyXP

勇者「……ッ うわッ」ドサッ
勇者(……青年の、弓……凄い。急所に……一発)
青年「ぼさっとするな、勇者! ……一掃するぞ!」ドシュ!ドシュ!
魔法使い「……くッ まだ、行ける…ッ」ホノオヨ!ホノオヨ!
勇者「あ、ああ……ッ」ザシュ! …ザシュ!

……
………
…………

魔法使い「………」ゼェゼェ。グッタリ
勇者「………」ハァハァ。グッタリ
青年「……流石に、きつかったな」ハァ……スタスタ

青年(魔石の欠片……殆ど砕けてるな……っと、これも…)グリ、パキンッ
青年(……簡単に壊れた? ……殆ど、魔物に吸い取られたか)
青年(だが……まだ微かに残ってるな……感じる)グゥ……
青年(……やはり、僕の身体は……)クル、スタスタ

青年「魔法使い、立てるか」カイフクマホウ…
魔法使い「……な、何とか……」アリガトウ
青年「……まだ、魔力は残っているな?」
魔法使い「殆ど無いわよ、もう……」
青年「……一回で良い。炎を呼べるか?」
勇者「何を……する、んだ……青年……」
青年「……助力はする。この土地を……焼くんだ」
魔法使い「!? …そんな……!」
勇者「青年!?」
青年「……睨むな。この土地には……まだ魔気が残ってるんだ」
青年「炎で清めるだけだ」
魔法使い「炎で……清める?」
青年「そうだ……不浄な物を焼き尽くす」
青年「そうしないと、また繰り返す……魔物が集まり、また……同じ事になる」
勇者「……そう、か」
魔法使い「でも、本当に私、力が……もう」
青年「助力する……願え。そうすれば叶う」
勇者「………」

魔法使い「願えば……叶う?」




1981 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/05(火) 10:49:52.56 ID:XBqEIPyXP

青年「ああ……浄化するんだ。炎で焼いて清めるんだ」
青年「……大地の力は残っている。全て焼けても、緑の風は暖かさを運び大地を包む」
青年「そうすれば……何れ、再生する」
魔法使い「……わかったわ」ホノオヨ……ボゥ
青年「少しずつで良い……風よ」フワア……

パチパチパチ…

勇者「………森が、焼けていく」
青年「死んでしまった土地には草も生えなくなる……が、こうして、清めておけば」
魔法使い「何れ……美しく、また……咲くのね」
青年「ああ」

パチパチパチ

青年(魔王様の黒い炎が……魔法使いの炎に、溶けていく)
青年(……心が、痛い)ズキン
青年(喜んでいる……んだな)ズキン……ズキ……

魔法使い「………」スタスタ
勇者「ま、魔法使い!?何するんだ、火が……!」
青年「大丈夫だ」グイ
勇者「で、でも……!」
青年「昔教えただろう。彼女は……優れた加護を受けている」
勇者「あ……」
魔法使い「そうよ、私は……魔法の炎で焼かれる事は無いわ」
青年「………」
魔法使い「……喜んでる。炎が……これが、清められる……と言う事なのね……」
青年「ああ。大地の歓喜の声も聞こえる……ありがとう、魔法使い」

勇者(炎の中で踊ってるみたいだ……魔法使い……綺麗だな……)ハ!
勇者(……な、何考えてるんだ俺は!)ブンブン

青年「……何やってんの、お前は」
勇者「な、何でもないよ!」カァ

パチ……パチ…

勇者「……随分見晴らしが良くなっちゃったな」
青年「これで良い……港は、人の手が再生するだろうし」
魔法使い「大丈夫よ、船さえ着岸できれば……すぐに復興できる」
魔法使い「……喜びのエネルギーは大きいわ。希望があれば何よりの活力になる」
勇者「そうだな……」




1991 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/05(火) 10:58:52.20 ID:XBqEIPyXP

魔法使い「願えば叶う……か。凄いわね」
青年「魔法を使うというのはそういうことだ……さて、一度戻ろう」
勇者「え?戻るの?」
青年「ここに居たって仕方ないだろ? ……村に戻って伝えておけば」
青年「近い内に船が……」

ボオオオオオォ

魔法使い「………あれ、船じゃ無いかしら」
青年「………随分でかいな」
勇者「あれ、誰か手、振ってる」

ボォオオオオ

船長「やっぱりお前かー!青年ー!」ハッハッハー!マッテロー!
青年「………船長?」ウソダロ
魔法使い「え、知り合い!?」
勇者「……あれ、どう見たって……海賊船だろ」

……
………
…………

青年「……海賊船が堂々と着岸するか」ヤレヤレ
船長「感動の再会だろ?もうちょっと喜べよ!」バンバン!
青年「痛いよ……!」ゲホッ
勇者「………」ポカーン
魔法使い「………」ポカーン
船長「あんだけでっかい目印あげたんだ。港街でも噂は広まってるだろうよ」ニヤニヤ
青年「商売再開できるってか……全く、本当とんだ強突く張りだな」
船長「素直に喜んでるんだよ……俺は約束果たしに来たんだぜ?」
青年「約束?」
船長「勇者が産まれたら乗せてくれ、ってな……16年間、忘れやしなかったぜ」
青年「……律儀だな」
魔法使い「……16年!?」
勇者「あー、えっとそれは……」
青年「………」ハァ
船長「……お前は変わらないな、青年」
青年「君は随分老けた……もう、ややこしいのばっかり……」ハァ




2001 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/05(火) 11:09:40.85 ID:XBqEIPyXP

青年「……驚かないんだな」
船長「俺か? …そりゃな」ニヤニヤ
青年「やれやれ……面倒事増やしてくれちゃってさ……」
魔法使い「え。え?どういう事!?」パニック
勇者「ま、魔法使い……落ち着いて……青年」チラ
青年「解ったよ、説明するよ」ハァ
船長「お?俺も是非聞きたいね」
青年「……君は良いだろう、別に」
船長「驚きゃしネェが、絡繰りはさっぱりわからネェからな」
青年「ああ、もう、解ったよ! ……でも取りあえず、村に帰らないと」

船長「ん?報告って奴か? ……なら、誰か走らせてくるぜ……オイ!」
アイアイサー!
船長「足の速い奴と腕に覚えのある奴!ひとっ走り報告してこいや!」
アイアイサー!
勇者「………」
魔法使い「………」
青年「………」

船長「ほら、さっさと乗れよ。勇者様とそっちのお嬢ちゃん、くたくたなんだろ?」
船長「旨い飯、用意してやるよ」

……
………
…………

魔法使い「信じられない……信じられない、何これ!?」
船長「フフン」ニヤニヤ
魔法使い「これ……本当に海賊船!?」ゴウカスギル!
勇者「……城みたいだ」
青年「この顔でセンス良いって詐欺だよね」オドロイタ
船長「しばくぞお前……」カオハカンケイネェ




2011 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/05(火) 11:18:33.77 ID:XBqEIPyXP

青年「僕が前に乗せて貰ったときは普通の船だったよな」
船長「あれから16年だぜ? ……勇者様を乗せるとなっちゃなァ?」
青年「……相当儲けたんだな」
船長「マァ、な……しかし嘘じゃネェぜ?」
青年「何がだい」
船長「お前達が……勇者様が魔王を倒しに行くとなりゃ、船は必需品だろ?」
船長「海の上での生活は慣れない奴にゃ辛いからな」
青年「……素直に礼を言っておくよ、ありがと」
船長「おう」

青年「……だからって、別に城みたいにこんな豪華にしなくても良いじゃないか」
船長「趣味だよ趣味」
青年「その顔でか」
船長「……海に放りこまれたいのか?」
青年「遠慮しておくよ……でも本当に……良いのか?」
船長「俺たちは俺たちで、お前達が居れば安全に航海できるってメリットがある」
青年「……成る程ね」
船長「取りあえず、二人を休ませてやれよ……三時間後に食堂に来い」
青年「ああ……」クル、スタスタ
船長「しかし、まぁ……まさか本当にお前とはな、青年……」




2021 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/05(火) 11:32:07.47 ID:XBqEIPyXP

船長「……これが俺の運命、かねぇ」

……
………
…………

魔法使い「凄いご馳走」
勇者「こ、これ全部食って良いの!?」キラキラ
青年「……はしたない」ガク
船長「ハッハッハ!遠慮すんなよ!」
青年「しかしまぁ……確かに豪華だな」
船長「そりゃお前、これから魔王倒しに行こうってのにな」チカラツケネェト
青年「……ありがとな」

船長「もう聞き飽きたぜ……それより」
青年「ああ……」
魔法使い「……どうして、二人は知り合いなの?」
勇者「まあ……それは俺も聞きたい」
青年「簡単だよ、勇者が産まれる前に……旅をしてて知り合った」
船長「まァ…そうだな」
魔法使い「それよ! ……青年さん、勇者様や私と……それほど変わらなく……見えるわ」

青年「……僕は人間じゃないからね」
魔法使い「……え」
青年「僕の母はハーフエルフ。父は………人間。エルフの寿命は、人間よりも遙かに長い」
勇者「……正確にはどれぐらい生きる、んだ?青年はもう……90年程生きているんだろ」

魔法使い「ええ!?」
青年「純粋なエルフで300年程って聞いてるよ……母は……150年程で死んだ」
勇者「でも……青年の母さんは……魔王に、殺されたんだろう?」

魔法使い「えええ!?」
船長「お嬢ちゃんさっきからそれしか言ってネェな」
魔法使い「……だ、だって……」
船長「まぁ……気持ちは分かるがな」
魔法使い「……その割りには落ち着いてるわね」

船長「……慣れってのはでかいさ」
魔法使い「……?」




2031 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/05(火) 11:40:00.37 ID:XBqEIPyXP

青年「エルフは元より、ハーフエルフについての記述なんて殆ど存在しない」
青年「ましてや……僕の中のエルフの血は1/4だ。人とさほど変わらないんじゃないかと」
青年「思ってた……けどね」
勇者「見た目は……ずっと変わって無いのか?」
青年「そうだな……20歳前後から……変わって無いんだろうな」

魔法使い「……その蒼い瞳も、エルフの特徴なの?」
勇者「え?だって青年の加護は……あ。そっか……風の魔法……」
魔法使い「そうよ。風を使役できるって事は、大地や緑の加護……なのに」
青年「……さてね。僕は母以外、エルフなんて名の付く者は知らないからな」

船長「印象を残す色の瞳が多いってだけだろ?」
魔法使い「そうだけど……滅多に居ない筈よ」
船長「俺はそう言う奴を知ってる……否、見たわけじゃ無いが」
勇者「どういうこと?」
船長「昔、紫の瞳を持つ男が乗ってたって話が受け継がれてんだ、この船にはな」
船長「そいつは、どんな加護の魔法でも使えた。加護に縛られずに生きてた」

魔法使い「そんな……あり得ないわ!」
船長「俺のばぁさんの情夫だったからな。間違いねぇよ」
船長「そいつも、青年の様に……見た目が変わらなかったらしい」
魔法使い「その人も……エルフ?でも……加護に囚われないって……」
青年「………」
勇者「……じゃあ、船長はその血を引いてるのか?」
船長「否?俺のじぃさんはそいつじゃねぇよ」

船長「ばぁさん曰く、世界を救う為にこの船を下りたって言ってたな」
勇者「世界を……救う……」
船長「そうだ。魔王を倒すんだ、ってな」




2071 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/05(火) 12:20:19.02 ID:XBqEIPyXP

青年(やはり……間違いない、剣士の事だ)
青年(……何の因果かな、全く……否)
青年(これも……これが、運命、か……)

船長「ばぁさんは本気で惚れてたみたいだがナァ……」
魔法使い「引き留めなかった……の?」
船長「お嬢ちゃんなら引き留められるか? …でっかい目標持ってる奴に」
船長「たかだか惚れた腫れた……でさ?」
魔法使い「………」

勇者「しかし……魔王を倒すって……」
青年「勇者の旅の仲間にでもなりたかったんじゃないのか?」
勇者「あ……そうか」
魔法使い「それは……いつ頃の話なの?」
船長「さぁなぁ……俺が産まれる遙か前だ、ばぁさんの若い頃ってぐらいしか」
魔法使い「前の魔王が復活した時…なのかしら」
勇者「不思議じゃないね、別に」
船長「……まあ、だからって青年と関係あるわけでもネェだろうがな」

青年「君がその……男の子でないって確証はあるのか?」
青年(まあ……剣士だったのなら……そんな事は不可能だろうけど)
船長「ああ、じぃさんと結婚したのは遅かったからな」
青年「そうか」
勇者「まあ、世の中に確実、なんてものは無いよ」
青年「そんな事は無い、勇者」
勇者「え?」

青年「勇者は、魔王を倒す……必ず」

魔法使い「……そうよ。今までは封印しかできなかったかもしれないけど」
魔法使い「今度こそ、確実に」
勇者「ああ……そうだね」
船長「で……お前達は今から、何処に向かうんだ?」




2091 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/05(火) 12:32:33.47 ID:XBqEIPyXP

青年「取りあえずは港街だな……情報を集めないと」
船長「……そういえばな、俺はあの後、北の街の当たりをうろうろしてたんだが」
魔法使い「北の街……?」
青年「……最果ての街へ行くには、あそこを通る必要がある……んだが」
船長「この船がある限り、すぐにでも魔王の城まで行けるぜ?」
青年「可能は可能だけどね……まだ僕たちにはやる事がある」
勇者「……光の剣、か」
青年「……そうだ」

船長「光の剣……だったら当てがある」
青年「……何?」
船長「話の続きだ……お前が言ってた北の塔とやらに行った」
青年「行くなと言ったんだ、僕は」ハァ
船長「正確には近くまで、だな」
青年「………で?」
船長「近くまで行って解ったが……天辺が見えネェ」
勇者「……雲の上まで……続いてる、のか?」
船長「陸に上がってはネェが、魔物は山ほど居たな」
魔法使い「……ここよりも北、魔王城に近い……って事は」
青年「……今の君達じゃ無理だ。レベルが足りない」
船長「傍で確かめた訳じゃネェが……どうやら入り口は凍り付いてたっぽいな」

青年(闇の手の魔法か……しかも、あいつの事だ。どうせご丁寧に……)
青年(魔石を蒔いているに違い無い)

勇者「………光の剣、なんて魔王から見たら物騒な物を」
勇者「封印するにはうってつけ、だな」
青年「……だからって、じゃあ行こう、とは言えないぞ」
船長「まぁ……それは確かだナァ」
船長「俺も流石に、戦闘には加わってやれネェ」

魔法使い「え?」
勇者「え?」

船長「………なんだよお前ら」




2101 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/05(火) 12:42:29.98 ID:XBqEIPyXP

勇者「ええええ、た、助けてくれないのか!?」
魔法使い「そ、そんな……」
青年「……勇者、魔法使い」ハァ
船長「……い、いや、俺別にそんなお前達みたいに強い訳じゃネェぞ!?」
船長「それに、俺が守れるのは精々この船ぐらいだ。世界を守るのは……お前達三人だろう?」

青年(僕は………違う)

勇者「し、しかし……そうか……船長だと思った……んだけどな」
船長「何がだ?」
勇者「……仲間は、直感で選べって……青年が、さ」
勇者「だから、俺は……青年と、魔法使いと……船長、かなって」
青年「……大事な仲間には違いないだろう」
魔法使い「そう……そうね。船長さんが居ないと……確かに、たどり着けない……」

青年「不可能ではないだろうが、困難にはなる……が」
船長「おい青年……水射すなよ……」
青年「事実だよ……だが、誰もあんな場所まで船なんか出してくれないだろうしね」
勇者「……仲間だ。確かに……大事な仲間だよ。船長は」
船長「……おう。協力は惜しまないぜ」

青年「凄い絵面だよね。勇者一港が、海賊船に乗って魔王を倒しに行くって」
魔法使い「あら、良いじゃないの。海賊すら仲間にしてしまう勇敢な勇者様、よ」

青年「どっちかって言うと押しかけだけどね……船長の」
船長「……お前はさっきからナァ」ムッ
青年「感謝の言葉は聞き飽きたんだろ?」ニヤニヤ
船長「……お前にゃ勝てネェよ、ったく……」フッ

魔法使い「なんだかんだで仲良いのね……」
勇者「……そうだな」

勇者(でも……これは、俺の力じゃ無い。青年がいてくれる、からだ)
勇者(……俺もしっかりしなきゃ!)ぐッ




2211@もしもし ◆6IywhsJ167pP 2013/03/05(火) 16:27:54.00 ID:Yxm6zbRII

……
………
…………

青年「船長」
船長「おう……何だ、眠れないのか?」
青年「……何で、僕を見て驚かなかった?」
船長「慣れさ……」
青年「ばぁさんの情夫か……それでも、だ。 言葉が足りなかったな…何故それが僕にあてはまっても、だ。」
青年「……お前、言っただろう。やっぱり僕だと思った、と」
船長「お前は嘘はつかないんだろう」
青年「……ああ」
船長「お前は16年前に言っただろ。勇者様を連れて来たら乗せてくれるのか、と……だからさ」
青年「連れて来る、と言い切った覚えは無いけど?」
船長「そうか? ……俺にはそう聞こえたぜ……勇者様とお嬢ちゃんは?」
青年「ぐっすりだよ……流石に疲れたんだろ」




2221@もしもし ◆6IywhsJ167pP 2013/03/05(火) 16:34:34.18 ID:Yxm6zbRII

船長「そうか……なら一杯やらないか? 良い酒がある」
青年「…………まあ、良いか」
船長「何だ、俺じゃ不服か?」
青年「飲む前から絡むな……そんなんじゃない」
青年「……昔を思い出しただけだ。もう一度飲みたかった奴を、かな」
船長「妬けるネェ」ニヤニヤ
青年「……ぶん殴るよ」キモチワルイ
船長「部屋に持って行ってやるよ。流石にこのまま甲板で飲んでりゃ、潰れる事も出来ネェ」スタスタ
青年「おい……自分の部屋で寝ろよ!」ドンナケノムキダ

……
………
…………




2231@もしもし ◆6IywhsJ167pP 2013/03/05(火) 16:50:16.40 ID:Yxm6zbRII

青年「で、さっきの話の続きだけど」
船長「何だよ、まだ何かあるのか?」
青年「あれじゃ答えになってないだろ」
船長「つってもナァ……何となく、としか」
青年「…………」
船長「お前は見た目の割に落ち着いた、てェか……肝の座った態度だったしよ」
船長「……あの情夫みたいだな、と思ったってのはあるかもな」
青年「お前は……知らないんだろう?」
船長「本人をか?当たり前だろ……ばぁさんの若い頃の話だ」
船長「……俺は加護がどうとか、魔法がどうとか……さっぱりだけどな」
船長「お前見てると、その話を思い出すのさ」
青年「…………」
船長「……その女みてぇな細い身体に、似合わネェ厳つい剣ぶら下げてたしな」
青年「……良く見てるな」
船長「人を見るのは商売の基本だぜ?」
青年「お前は海賊だろ」
船長「商談はかかせねぇんだ。略奪してまわってる訳じゃあるまいし」




2241@もしもし ◆6IywhsJ167pP 2013/03/05(火) 17:03:31.85 ID:Yxm6zbRII

船長「今……勇者様が持ってる、だろ」
青年「ん? …ああ、あの剣か」
船長「ああ……お前より余程しっくりくる」
青年「剣は専門じゃないからな」
船長「だろうな……不思議な奴だな、お前は本当に……人に見えん」
青年「エルフの血が混じってるって言っただろ」
船長「いや、そりゃわかってる。そうじゃなくてな……何て言うかな」ボリボリ

船長「……お前、生きてるのか?」
青年「……お前には僕の足が見えないの」
船長「いや……すまん。その……何て言うかナァ」
船長「人に……見えネェんだよ。純粋な人間じゃネェって意味じゃ無くてな……」
青年「…………」
船長「……生き物に、見えネェ」
青年「……僕は、二度は死ねないよ」
船長「……すまん。変な事言った」
青年「良いさ……別に」

青年(生きてるのか……か)
青年(……さて、ね)




231名も無き被検体774号+2013/03/05(火) 23:24:32.57 ID:YQQvtmmrO

+   +
  ∧_∧  +
 (0゜・∀・)
  ワクワクテカテカ
 (0゜∪ ∪ +
 と__)__) +




2471 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/06(水) 09:42:02.47 ID:KppQ/BUMP

青年(僕は……嘘はつけない。エルフは、嘘がつけない)
青年(じゃあ……僕は何だ?)

青年「………」
青年「ところで…… …… ……おい」
船長「………」グオー……ムニャ
青年「……自分の部屋で寝ろって言っただろ」ゲシ
船長「おっぱい……」ムニャ
青年「何の夢見てんだよ、全く……」アキレタ

……
………
…………

食堂

勇者「おはよう、青年!」
魔法使い「おはよう」
青年「ああ、おはよう……二人とも。船長は?」
勇者「もうご飯済ませて甲板に行ったよ……行き先が決まったら教えてくれって」
青年「そうか」
魔法使い「昨日、結構遅くまで飲んでたんですって?」
青年「ん? ……ああ、そうでも無いよ?」
青年「僕の部屋で潰れたから廊下に蹴り出したけど……その後は知らないよ」
勇者「……それで首が痛いって言ってたのか」
青年「自業自得さ……それより、今日だけど」

魔法使い「……北へ、は行かないのよね」
青年「昨日も言ったが、まだ君達のレベルじゃ無理だ」
勇者「そうだな……もう少しレベルを上げた方が良いな」
青年「ついでに情報収集と、道具とかの補充も済ませる」
魔法使い「……時間があるなら、魔導の街へ寄りたいんだけど」
青年「ああ、港街からはそれほど遠くないけど」
勇者「何かあるのか?」

魔法使い「……あの街には、魔法に優れた一家が住んでるの」
青年「………」
魔法使い「優れた加護を持つ家系なのよ……それに、珍しい魔導書とかも」
魔法使い「手に入れられたら、って」
勇者「へぇ……良いよね?青年?」
青年「お前が決めれば良いよ、勇者」
勇者「うん……じゃあ、港街へ行って、魔導の街へ寄ろう」
勇者「その周辺でちょっとレベル上げて……そうして、北へ向かうか」

青年「ああ、後は……」

バタバタバタ!バタン!




2481 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/06(水) 09:48:36.44 ID:KppQ/BUMP

船長「青年!」
青年「何だ?」
船長「急いで甲板に来い……勇者様と、お嬢ちゃんもだ!」

バタバタバタ……

青年「………」
魔法使い「何か……あったのかしら」
勇者「急ごう!」

……
………
…………

甲板

勇者「………! あれは!?」
青年「北……」
魔法使い「……燃えてる!?」
船長「さっき火柱が上がったんだ……距離はだいぶん遠いが……」
船長「方向的に、北の街……塔のすぐ傍にある街だな」
船長「……16年前、お前さんを下ろしたあたりだ、青年」

青年(闇の手……街への被害を考えなかった?……否)
青年(魔王様の力が強くなってるとみる、べきか)

魔法使い「……空、真っ黒ね」
勇者「……空が灰から、闇へと変じる時」
船長「そうだ。魔王は……随分力をつけてきているらしいな」
青年「……時間が、無い」
勇者「……青年?」チラ
青年「…………」

青年「船長、ここから北の街まではどれぐらいかかる」
船長「ぶっ飛ばして……一週間」
魔法使い「そんなに!?」




2491 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/06(水) 09:56:56.39 ID:KppQ/BUMP

船長「近く思うだろ?そうでもない……ここでも見える程の炎の勢い、だ」
船長「街が燃えてる所の騒ぎじゃネェだろう、ありゃ」
魔法使い「そんな……」

船長「今は海に出てる船は殆ど居ネェ。この船は馬力もあるし……」
船長「……ガンバりゃ、もうちょっと早く着くかもしれネェが……」
青年「それでも5,6日はかかる……それに」
青年「こことは比べものにならないほど強い魔物が居るはずだ。今のお前達じゃ……」
勇者「見捨てろって言うのか!? ……ま、まだ……生存者がいるかもしれないじゃないか!」
魔法使い「……で、でも……」

青年「……港街や魔導の街に寄って、レベルを上げる方が賢明だ」
青年「この侭すぐに向かったところで、どうせ……間に合わない」

青年(ここで……勇者を失う訳には……いかない)

勇者「………ッ やってみなきゃ解らないだろう!?」
船長「勇者様……俺は、青年の案に賛成だ」
勇者「船長まで!」
船長「お前さんを犬死にさせる訳にはいかないだろう」
船長「……お前さんは、世界を背負う……勇者様、なんだ」
勇者「………ッ だから、って見捨てろって言うのか!?」
勇者「こうしている間にも……誰かが、死んでいってるかもしれないんだぞ!?」

青年(闇の手……は、魔王様の傍を離れられない)
青年(僕一人が……あそこへ行ったところで……無理だ)
青年(僕は、まだ……やることがある)

魔法使い「……私は、魔法の炎で焼かれる事は無いわ!」
魔法使い「私が盾になる……だから、行きましょう!勇者様!青年さん!」
船長「お嬢ちゃん……」




2501 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/06(水) 10:10:08.76 ID:KppQ/BUMP

青年「………」
勇者「青年!」
青年「……リーダーはお前だ、勇者。お前が決めなさい」
青年「そう言いながら……僕もつい、口を出しすぎてた」
勇者「……青年」
青年「100%……確実な正解なんてものは無いかもしれない」
青年「だけど……お前の信じる道を進むべきだ。お前は……誰でも無い、勇者だから」
勇者「……ああ! 船長、すぐに北の街に出発して欲しい!」
船長「……良いんだな」
勇者「勿論だ……俺は世界を救う」
勇者「ここで……あの街を、見捨てたら……俺は」
勇者「……そんな事を選ぶ俺には、世界なんて救えない。そんな資格は無い」
魔法使い「………」

青年(……ここで、勇者が失われれば……世界は、それまでだ)
青年(……しかし、そこまでと言う……事でもある、のか)
青年(世界が、存在を許されるなら……きっと……)

勇者「魔法使い」
魔法使い「……はい」
勇者「死ぬなよ」
魔法使い「……当たり前よ!」
勇者「出来る範囲で良い……信じてる」
魔法使い「はい! ……私も、勇者様を信じます!」

勇者「船長……お願いします!」
船長「野郎共!全速力だ……北の街へ向かえ!」
アイアイサー!
船長「大砲の準備もだ!ありったけ火薬用意しとけ!」
アイアイサー!




2511 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/06(水) 10:21:11.13 ID:KppQ/BUMP

船長「お前達はなるべく身体休めておけよ」
青年「……いや、僕たちも甲板に居よう」
船長「おい……」
青年「海の魔物が襲ってきたら、出来るだけ僕たちで対応する」
勇者「……レベル上げてやる……!」
魔法使い「一石二鳥ね」
船長「……まあ、それで良いなら良いけどよ」
青年「足止めを喰らう訳にはいかないだろう」
船長「……良し!銛持って来い!俺もやるぞ!」
青年「……戦えるんじゃ無いか」
船長「必要最低限はな……北の街に近づいていきゃ、糞の役にも立たネェよ」

マモノダー!

青年「早速か……!」キリキリキリ……ッドシュ!
青年「……空からのは弓に弱い、僕がやる……! 後は、勇者、魔法使い!」ドシュ!
勇者「任せろ!」ダダダ……ッ
魔法使い「行くわよ!」ホノオヨ!

ギャアアア!

船長「お前ら、続け!勇者様達ばかりに手柄、取られんなよー!」
アイアイサー!

青年「船長、雑魚には構うな!突っ切れ!」
船長「おうよ………ッ 青年、後ろ!」
青年「………ッ ……グゥ……ッ」バシャアアン!!
魔法使い「青年さん……ッ 炎よ……ッ 焼き尽くせ……ッ」

ギャアアアアアアアアアアアアアアア!

勇者「青年、大丈夫か!?」
青年「あ、ああ……大丈夫だ……」ポタポタ……

青年(な………ぜ、だ?)ポタポタ……

魔法使い「ずぶ濡れよ……着替えてきた方が……ッ」グラグラ
魔法使い「揺れるわね……っと」
勇者「……振り切った、な」

青年(僕は……水の加護を……)ポタポタ

勇者「今の内だ、青年……着替えてきなよ。少しぐらいなら、俺と魔法使いで大丈夫だ」
魔法使い「ええ、海賊さん達も居るし」

青年「………ああ」スタスタ……ポタポタ……




2521 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/06(水) 10:28:20.58 ID:KppQ/BUMP

青年(……僕は、優れた水の加護を受けている筈だ)
青年(何故、水の魔法で……)
青年(魔王様の力の所為か……? 否……)
青年(やはり……僕は……)

青年「……この格好をすると、昔に戻ったみたいだな」クス…久しぶりだ
青年(魔王様が勇者様だった頃……一緒に旅をしていた頃の、ローブ)
青年(……やっぱり、動きやすいな)スタスタ

勇者「あ、青年……なんだ、随分印象が違うな」
魔法使い「……そんな格好してると、本当にエルフに見えるわ」
青年「これしか持ってなかったんだよ……まあ、動きやすくて良いけどね」
勇者「あんまり動き回るなよ……」カイフクマホウ
青年「……本当に、立派になって」クス。アリガトウ
勇者「……茶化すなよ」

青年「喜んでいるんだよ……僕たちは、喜ばなくてはいけない、からね」
魔法使い「……立派な勇者様を?」クス

青年「……腐った世界の……」
勇者「腐った不条理を断ち切るから、だろ……?」クスクス

青年「ああ……そうだね……船長は?」
勇者「向こうだよ……舵取ってる」
青年「そうか……」スタスタ
魔法使い「………?」
勇者「どうした?」
魔法使い「いえ……青年さんの髪って、あんな色だったかしら?」
勇者「え?」
魔法使い「もっと……濃い茶色じゃなかったかしら」
勇者「服の所為じゃ無い?」
魔法使い「そうかしら……」

勇者「それより、魔法使い」
魔法使い「はい?」




256名も無き被検体774号+2013/03/06(水) 11:20:02.88 ID:YqejjqnwO

いってら~
ホント先週から仕事中にケータイとにらめっこしてばっかだw




257名も無き被検体774号+2013/03/06(水) 12:08:44.35 ID:KcZ065TsO

>>256
おなじくw
仕事手につかねえwww




2591 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/06(水) 14:36:55.14 ID:KppQ/BUMP

勇者「さっきの、君が盾になるって話だけど……」
魔法使い「? …ええ。勇者様も見たでしょう?あの、港で……」
勇者「ああ、うん……その、どんなに強力な物でも……大丈夫なの?」
魔法使い「ええ、魔法の炎である限り、私の身は焼かれる事は無いわ」
勇者「そうか………」
魔法使い「勇者様……?心配、してくれるのはありがたいわでも……信じて頂戴?」
勇者「あ……いや、違うんだ。君の事は……大丈夫。ちゃんと……信じてる」
魔法使い「………?」

勇者「………青年の加護、ってさ」
魔法使い「え……緑か、大地じゃないの?」
勇者「……否、水だった筈なんだ」
魔法使い「え!? ……だって、風の魔法を……」
勇者「ああ……俺は……あんまり深くは考えなかったんだけど」
勇者「確か、水の加護を受けているから、回復魔法が使えた筈なんだよ」
魔法使い「……勇者様の勘違いじゃ無いかしら?緑や……大地の加護を受ける人も」
魔法使い「回復を得意とする人は多いわ」
勇者「……だったら良い、んだけど……」
魔法使い「思い違い……では無い……自信があるの?」

勇者「気がついたら傍に居て、あの蒼の瞳を見て育ってきたんだ、俺」
勇者「深く考えなかった、のは認める。本当に」
勇者「だけど……その、加護とかさ。魔法についての知識は、青年に教えて貰ったんだ」
魔法使い「ええ、勇者様言ってたわよね。剣の師であり、魔法の師でもあるって」
勇者「そう……青年は剣は専門じゃ無いって言ってたから否定するけど」
勇者「でも、回復魔法とか、魔法が、ほら……願えば、叶う、とか」
勇者「そういうの、ずっと聞いて育った」
勇者「勿論、始まりの街の僧侶とかにも習ったけど……」
勇者「水の魔法も見せて貰った事がある」
魔法使い「聞いた事無いわ、二つの加護を持つなんて……」

勇者「いや……もう一人、居るよ……船長のおばあさんの」
魔法使い「………あ!」




2601 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/06(水) 14:45:27.81 ID:KppQ/BUMP

勇者「だから……まあ、この際、あり得ない話じゃないと仮定しよう」
魔法使い「………」
勇者「で、だ……俺が気になってるのは、さ」
魔法使い「……ええ」
勇者「青年は、水の魔法で濡れたり、怪我を負ったりしなかった」
勇者「青年は……彼は、優れた加護を受けている筈なんだ」
魔法使い「え!?でも………」
勇者「ああ……さっき、君も見た、よね」
魔法使い「それで……どんな物でも大丈夫なのか、と……私に聞いたのね」
勇者「………そうだ」

魔法使い「その、優れた加護……て言うのは、風の方では無くて?」
魔法使い「……あり得ない話じゃ無い、て仮定の下で」
勇者「違う。僕に魔法のなんたるかを教えてくれたとき、青年は」
勇者「僕の前で水の魔法を使った。青年は濡れもしなかったし、勿論……」
魔法使い「怪我も、しなかった……でも」
勇者「……ついでにって、風の魔法も見せてくれた。青年は、自分の腕を切っていた」
魔法使い「………」
勇者「自分の放った魔法だから、てのは……これで成立しなくなるよな?」
魔法使い「ええ……それは元より関係ないわ……」
勇者「昨日、船長と君に青年が……自分がエルフであると説明したときに」
勇者「そんな話をしていただろう?瞳の色がどうとか」
勇者「……加護との関係、とかさ」
魔法使い「ええ………」

勇者「俺は……教えては貰ったけど、詳しくは無いから」
勇者「違和感は感じてたんだけど……さっき、見て……はっきり、思い出した、んだ」
魔法使い「………寿命、と言うのは?」
勇者「え?」
魔法使い「青年さんの……寿命。だって……エルフの血は、1/4で……」
魔法使い「……既に、90年程、生きているんでしょう?」
勇者「……老いと共に、加護の力ってのは……弱まるのか?」




2611 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/06(水) 14:52:24.32 ID:KppQ/BUMP

魔法使い「体力とか力と一緒よ……勿論、衰えては行くわ」
魔法使い「でも……優れた加護が、無くなるなんて……聞いた事が無い」
魔法使い「けど……青年は、人では無いから……」
勇者「…………」
魔法使い「ご免なさい、自分から言い出して……矛盾してる、わよね」
勇者「いや……謝る事じゃ無いよ」
勇者「思い出した、とか言って……俺の勘違いかもしれないし……」
魔法使い「……思っても無い事、言わないでよ勇者様」ヒドイカオヨ…
勇者「……御免」ウン…

魔法使い「……青年さんは、気がついて……居るかしら」
勇者「魔法の水に濡れた……原因?」
魔法使い「違うわよ……私達が、それに気がついた……って事」
勇者「どうだろうな……でも、青年は聡いから」
魔法使い「……聞かない方が良いのかしら」
勇者「わからない……けど、今は……そう、かも」

魔法使い「………」
勇者「青年は……嘘はつかない」
魔法使い「え?」
勇者「……エルフは嘘をつけないんだそうだよ。優れた加護を受ける代わりの制約なんだって」
魔法使い「……不便ね。私達人間は、そんな制約を受けないのに」
勇者「ああ……そうか。そうだよね」

勇者「だけど……俺や魔法使いが問うたとしたら……話さざるを得なくなるから」
魔法使い「……そうね。違う、とは……言えない、のか」
勇者「ああ……だから、今は……聞かない。魔法使いも……聞かないで居て欲しい」




2641 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/06(水) 15:17:49.29 ID:KppQ/BUMP

勇者「俺は……青年から話してくれる迄、待つよ」
魔法使い「ええ……そうね」

……
………
…………

コンコン

勇者「はい?」
青年「僕だ……良いか?」
勇者「ああ……青年か、うん。入って」
青年「……準備は出来てるか?」カチャ
勇者「もう着くの?」
青年「……夜明けまでには、て所かな」
勇者「……そうか。魔法使いは?」
青年「もう甲板に居る」
勇者「……あれから5日か……早かったな」
青年「随分、逞しくなったな」
勇者「ああ……レベルもだいぶん上がったよ」
青年「……まだ驕るなよ、勇者……昔に比べれば、海の魔物も随分と強くなっていたが」
青年「あの北の街に蔓延る奴は……もっと強いだろう」
勇者「解ってる……大丈夫だよ、青年」
青年「……なら、良い」

勇者(あれから、5日……青年、やっぱり……顔色が悪い)

青年「……なんだ?じっと見て」
勇者「んや……早かったな、と思って」
青年「寝る間も無く襲われてたからな……船長も良く頑張ってくれたさ。海賊達もな」
勇者「そうだな……船長は、やっぱり……」
青年「ああ。上陸するのは僕たちだけだ。船を失う訳にはいかない」




2921@もしもし ◆6IywhsJ167pP 2013/03/07(木) 16:18:19.67 ID:8SwXqOJ7I

>>289
なんでワクテカすんだよおまいさん(笑)
もしもしからかけたら少しだけー




2931@もしもし ◆6IywhsJ167pP 2013/03/07(木) 16:27:06.84 ID:8SwXqOJ7I

勇者「うん……そうだよな」
青年「北の塔を攻略するのは暫くかかるだろうから、船長には……」

ドン!
ガタガタガタ……

勇者「うわ……ッな、なんだ!?」
青年「……大砲か!?」
勇者「……ッ 魔法使い!」ダッ!
青年「……勇者… ……ッ …!」グラグラ……

ドン!
ドドーン!

青年(……火薬の匂い…!)タタタッ

……
………
…………

勇者「魔法使い!……船長!?」
魔法使い「勇者様……ッ きゃあ……ッ」
勇者「危ない……! 」ダキッ
勇者「だ、いじょうぶか、魔法使い……」
魔法使い「あ、ありがと……それより、あれ……見て!」




3131 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/08(金) 01:57:21.78 ID:iPCv/dKwP

勇者「黒い空が……迫って……違う!」ダッ
魔法使い「あ……勇者様……待って!!」ダッ
勇者「船長!」バタバタバタ!
船長「勇者様! 気ィつけろ、こいつは……!」ドーン!

ギャアアアアアアアアアアアアア!

勇者「……蝙蝠……!? やけにでかい……ッ」ザシュ!
魔法使い「一匹一匹倒してたら、きりが無いわ……炎よ!」ボォオ!

キリキリキリ……ドシュ!

青年「無事か……!」
勇者「青年!」
魔法使い「青年さん!」
青年「船長!!状況を……ッ」ドシュ!ドシュ!
船長「く……ッ おい、海賊!代われ……ッ タマ切らすんじゃネェぞ!」
アイアイサー!
船長「見ての通りだ、青年……ッ オイ!銛寄越せ……ッ オラァ!」ザクッ
船長「……街はどう見たって壊滅状態だ。この糞でっかい蝙蝠が」ブゥン!
船長「塔の方から……山ほど沸いて来やがる……!」ザクッザクッ
青年「……蝙蝠……ッ 糞……ッ」カゼヨ! ビユゥウウ……!




3141 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/08(金) 02:05:51.06 ID:iPCv/dKwP

船長「……青年、ここは任せる。良いか?」ブゥン
青年「あ?ああ……何する気だ」
船長「北の塔の傍に、船を着ける……お前達は塔に上れ!」
船長「……ここは俺たちが引き受ける」
青年「しかし……ッ」
勇者「うわぁ……ッ 痛……ッ 糞!」ザシュ!
魔法使い「勇者様! ……きゃあ! もう……!!」ボォォ!
船長「勇者様とお嬢ちゃんの足を止める訳にはいかネェ……」
船長「腕に覚えのあるもの多いし、この船には大砲もある!行け!」
青年「………ッ だが、こいつらは……!」ドシュ、ドシュ!

ギャアアア!
キシャアアアアアア!

青年「………ッ グゥ……ッ」ズキン……ズキ……ッ

船長「青年!?」
青年「良い……構うな……ッ」ドクン……ッ

青年(これほどの、力……魔王様……ッ)

船長「……良いか、船首を突っ込んで、大砲を塔の手前にぶち込む」
船長「その隙に飛び込め……!」ブゥン! ダダダダ
青年「船長……! ……糞、それしかないか……!」タタタタ
船長「勇者様!お嬢ちゃん……良く聞け!」
船長「船をうごかせ!船首を突っ込むぞ!」
勇者「船長……ッ わ……ッ」グイッ
青年「来い、勇者……魔法使いもだ」
魔法使い「……ッ せ、青年さん!」
青年「早く……ここは船長に任せて、先に行く……飛び込んだ先も恐らく」
青年「状況は同じだ……気を抜くな!」

青年(………ここまで、来たんだ……持ってくれよ……!)ドクンドクン




3151 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/08(金) 02:13:51.42 ID:iPCv/dKwP

青年「船が着くまで、時間を稼げ!船長に魔物を近づけさせるな!」
魔法使い「………ッ 炎よ!」ボォォオオ

ギャアアアアア!

勇者「……で、でも青年!彼らだけじゃ……!」
船長「勇者様ー!下らネェ心配すんなー!」
勇者「し、しかし……!」ザシュ!ザシュ!
船長「言っただろ!? 俺に守れるのは精々この船ぐらいだ!」
船長「お前達は世界を守れ……仲間だろ?信じろよ!」
船長「……俺も信じてる! ……今だ!打てー!」

ドォォオオン!

青年「………飛び降りる、行くぞ!」
勇者「……! 魔法使い、手を!」
魔法使い「え、ええ……!」ギュ!

ドォォオオン!
ギャアアアアアア!

青年「………ッ グ……ぅ」スタッ
勇者「……ッ!」ゴロゴロ
魔法使い「ゆ、勇者様!」スタッ
青年「立て……塔の方まで走るんだ!」

バタバタバタ………ッ

勇者「………」ハァハァ
魔法使い「………! ……あ、あ……」ハァハァ
青年「休ませては……くれないな……」キリキリキリ……

ドシュ!
ギャアア!

魔法使い「炎よ……! こっちも、相当の数ね……!」
勇者「待て、魔法使い……あそこ……」ザシュ、ザシュ!
青年(………氷漬けの、獣……闇の手の魔法か)ハァハァ
青年(あいつ……やり過ぎじゃ無いのか……糞……ッ)ドシュ!
勇者「……リーダー、か? あの氷漬けの奴を守ってる様に見える……が」
青年「だろうな……雑魚をかたづけるにしてもこの数じゃきりが無い……」
魔法使い「……魔法で、溶かすわ。ついでに……焼け死ね……ッ!」ホノオヨ!

ボォオオオオ!

青年(そう簡単に……いく、かな……)ズキンズキン




3161 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/08(金) 02:20:45.05 ID:iPCv/dKwP

魔法使い「……糞、なんで……溶けない、の……!」ホノオ……!
勇者「魔法使い!力を使い果たすなよ……!」ザシュ!

青年「……ッ ぐ、ア……!」ドクンッガク……ッ

勇者「青年!?」
青年「前を見ろ、勇者……ッ 僕の事は、良い……!」ガク…ッ
勇者「で、でも……ッ」

青年(氷の奥から……これは……ッ)ハッ

魔法使い「きゃああああ!」
勇者「魔法使い……! … ……ッ」

グルルル……ガアアアアアア!
バキ、ベチャ……ッ 
ギャア、ギャアアア!

青年「……ッ」
魔法使い「ひ、………ィ……ッ」
勇者「見るな、魔法使い……ッ」ギュ
青年「……ッ 駄目だ、勇者! ……周りの雑魚の数を減らせ!」カゼヨ!

ゴオオオオオォ!
ギャアアアアア!

勇者「あ………あ……」
魔法使い「と、共食い……し、て……」
青年「あいつは……あの、氷の奥から出てきた奴に食わせるな!」
青年「力を……蓄えてるんだ!」ゴオオオオォ!
勇者「糞……ッ 魔法使い、御免!」ダダッ ザシュ!ザシュ!
魔法使い「………ッ う、ぅえ……ッ」
青年「吐くな!体力が無くなる!」ドシュ、ドシュ!




3171 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/08(金) 02:34:29.94 ID:iPCv/dKwP

青年「……糞ッ」キリキリキリ…ッ
青年(眉間に……一発……喰らえ!)ドシュ!

ギャアアアアアアアアアア!
……グル ……ガアアア!

青年「!」
勇者「青年、危ない!」
魔法使い「勇者様、前、前!」
勇者「糞……ッ」ザシュ!
青年(……僕が倒したって、意味が……ッ 駄目だ、近い……!)グッ
青年「……水よ!」バシャアアアア!
勇者「!」
魔法使い「……ッ 炎よ! 水を巻き上げ ……ッ 火柱となれ!」ボコボコ……

ゴオオオオオオオッ

ギャアアアアアアアアア!
キャイン……ッ

青年「………」ハァハァ
勇者「……青年!青年、大丈夫か!」
青年「まだだ、勇者……ッ 仕留めろ!首を落とせ……ッ」
勇者「………! ……ッ 」ザシュ!

……
………
…………

船長「あいつらは……行ったな……良し、こっちは俺たちでかたづけるぞ……!」

ギャアア!

船長「どうしたお前らァ! 声が小さ…… ッ ……!」




3211 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/08(金) 02:38:36.48 ID:iPCv/dKwP

??「残念ねぇ、みんなもう、喋れなくなっちゃった」
??「お前さんがミンチにしたからねぇ……全く、手加減って奴を知らないんだから」

船長「………ッ な、なんだ……お前ら……オイ!?」
船長(だ……誰も、居ネェ……)フラ……ズルッ
船長「うわ……ッ」ドシンッ ……ヌル…
船長「……な、んだ、これ……」アカイ……チ?
船長(甲板一面に……魔物のか……否……ッ)

??「勇者様達は、無事に塔にたどり着けたかしら?」
??「さぁな……だが、あの坊やの置き土産は大したモンだったぜ?」
??「苦戦してるでしょうねぇ」クスクス
??「ま、青年とやらが……何処まで頑張ってくれるかねぇ?」

船長「な、な……なんなんだ、お前ら……ッ」
船長「青年を……知ってるのか!?」

??「勿論……一方的に、だけどね?」
??「そんな顔しなさんな……まあ、すぐに気にならなくなるから大丈夫だ」

船長「どういう意味だ……!」

??「貴方にはここで死んで貰う……」
??「そう言うこった」

船長「!! ……お、お前ら……魔王の手先か!」

??「……私達は、過去の産物に過ぎない」
??「亡霊みたいなもんさ」

船長「………ッ」

??「私は、魔導将軍」
??「俺は、側近だ」

魔導将軍「私達は喜ばなくてはいけない」
側近「そうだ……おい、時間が無い、魔導将軍」
魔導将軍「そうね……さようなら、船長さん?」
船長(身体が……動かネェ……ッ)
側近「これも……腐った世界の腐った不条理を断ち切る為だ」

バサバサバサ……ッ 
ゴオオオオオオオォッ

側近「……勇者には、魔王様を憎んで貰う必要がある」
魔導将軍「あーぁ、真っ黒焦げ」
側近「だからお前はもうちょっと加減ってモンをだな」
魔導将軍「今更ね? ……やるならとことん。あの坊や……闇の手も言ってたでしょ?」
側近「しかし、おっそろしい事思いつくよ」

魔導将軍「ほら、おしゃべりしてないで……大砲集めて頂戴よ」
魔導将軍「派手な目印、残しておいてあげないと、ね?」




3221 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/08(金) 02:47:06.45 ID:iPCv/dKwP

……
………
…………

勇者「……やった、か……!?」ハァハァ
青年「……ああ、そう……だな」ハァハァ
魔法使い「青年さん……ッ 顔色が……!」マッサオ……!
青年「僕は……大丈夫だ……」フゥ

青年(……魔王様の魔石……身体に埋め込んだのか……)グリ…パキン!

魔法使い「それは……?」
青年「触るな……それは、魔王の……力の、結晶……だ」

青年(……力が。想いが……流れ込んでくる)ドクン、ドクン……
青年(僕は……やはり……)

勇者「魔王の……!? ……しかし、青年なんで……」
青年「言っただろ……僕が何年生きてると思う……」
青年「お前が育つまで……ただぶらぶらとしていた訳じゃ無い」
勇者「………」
魔法使い「……勇者様?」
勇者「青年、さっき……」

ドオオオオオオオオオオオン!
ゴオオオオオオ!

魔法使い「!?」
勇者「な……ッ !! 船、が……ッ 船長!」
青年「! ……燃えてる!?」
勇者「船長……!」ダッ
青年「待て、行くな勇者!」グイッ
勇者「青年、離せ!離せよ!」
青年「戻っている時間は無い!」
魔法使い「……そ、そうよ、勇者様……ッ」
勇者「魔法使いまで!?」
魔法使い「船長さんは言ってたわ、俺は船を守るって!」
魔法使い「……な、何か……何かあったんでしょうけど……」
魔法使い「彼が、どうして私達を、ここに……行かせたか、考えて!」
勇者「………ッ 糞ッ」




3231 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/08(金) 02:57:44.89 ID:iPCv/dKwP

勇者「……街の人も、結局守れなかった!」
勇者「船長や……海賊さん達まで……今戻れば、間に合うかもしれないだろ!?」
勇者「……今度こそ!」
青年「……そう決まった訳じゃ無い……僕たちにはやる事がある筈だ」
魔法使い「……のこのこ戻る方が、船長の気持ちを無駄にすることになるわ、勇者様」
勇者「……ッ だけど……ッ」

青年(……蝙蝠達は……動く気配が無い)

青年「今のうちだ。塔に入るぞ」
勇者「青年!」
青年「ここでこんな状態でまた魔物に襲われたらどうなると思う?勇者……」
青年「それこそ、船長の……気持ちを無駄にする事にならないかい」
勇者「………」
魔法使い「………」
勇者「………」クル……スタスタスタ

魔法使い「……勇者様」
青年「世界を救うと言うのは……簡単な事じゃ無い。魔法使い」
魔法使い「……ええ」スタスタスタ
青年(船長……無事で、いろよ)
青年「また後で……だ」

……
………
…………

勇者「……階段、か」
魔法使い「真っ暗ね……上が全く見えない」
青年「上がっていくしか無い……勇者、先に行け」
勇者「……ああ」カツンカツン…
魔法使い「どこまで、続くのかしら」カツンカツン……
青年「雲の上まで、だろうな」カツンカツン…

青年(魔物の気配は……無いな)
青年(誰が立てたんだか……悪趣味な塔だ)

勇者(青年……さっき、水の魔法使ってた)
勇者(やっぱり……二つの加護を持つのか?)
勇者(……でも、話してはくれなかった)
勇者(そりゃ、そんな暇……無かったけど……)カツン…

魔法使い(勇者様……怒った、かしら……)
魔法使い(でも……あそこで戻っていたら……私達の体力では……)
魔法使い(船長さん……無事、よね?)
魔法使い(仲間ですもの……裏切る、筈が無い……!約束、したもの!)
魔法使い(船を守る……私達は、世界を守る!)




3241 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/08(金) 03:08:22.73 ID:iPCv/dKwP

青年(……長いな)
青年(無駄に体力を削りたくは無いんだが……仕方ない)
青年(魔物の気配が無いのが幸い……だけど)
青年(……僕は。何だ?)
青年(……勇者、強くなった。魔法使いも)
青年(そろそろ……か。約束……守れなかったな)

青年「………勇者」
勇者「ん……?」
青年「一度、休憩しよう」
勇者「でも、早く船長の所に戻らないと……!」
魔法使い「…… ……ッ」ハァ、ハァ……ッ
勇者「あ……」マホウツカイ…
青年「焦ってもどうしようもないだろう……このままじゃ持たないよ」
魔法使い「ご、ごめんなさい……ッ」
青年「気にする事じゃ無い……ほら、座って」
魔法使い「ええ……」
勇者「御免……」

青年「……勇者」
勇者「何だ?」
青年「……時間が無い。手短に話す」
勇者「………」
魔法使い「………」
青年「光の剣を手に入れたら、一度船に戻って」
青年「……その侭、魔王城を目指す」
勇者「……ああ」
魔法使い「今までと比べものにならないくらい……手強い、でしょうね」
魔法使い「魔王の城の……魔物」

青年「……一人、厄介なのが居る」
勇者「……?」
青年「闇の手と言う……魔導師だ。あいつは……氷の魔法を使う」
青年「炎との相性は悪いだろう……有利に立たなければ、辛いはずだ」
魔法使い「……弱点同士の属性ね」
青年「ああ……」

勇者「どうして青年は……そんなに、色々知ってるんだ?」
青年「……伊達に90年も生きてない」
勇者「じゃあ……どうして、加護を二つも持っているんだ?」
青年「………」
勇者「それに……青年は優れた加護を持っているんだろう?」
勇者「船の上で……どうして……」

魔法使い「勇者様……」




3251 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/08(金) 03:15:59.99 ID:iPCv/dKwP

青年「……二つの魔法を使えるってのは、正直僕にも解らない」
青年「父が……大地の加護を受けていた。そして僕はエルフの血を引いてる」
青年「だから……ってのも、随分こじつけだけどね」
魔法使い「……エルフには謎が多いのね」

青年「子を思う親の愛」
勇者「え……?」
青年「無意識での愛が、僕の身体に、父の力を残した……と」
青年「昔……知人に言われたな」

青年(……剣士。光の剣の一部、魔王の……闇の力の残照)
青年(光と、闇……皮肉だ)

魔法使い「……でも、貴方は……」
青年「優れた加護、か? ……さてね、こればっかりは」
勇者「青年のお母さんも……優れた加護を持っていたんだろう?」
青年「ああ」
勇者「……その。それは……無くなってしまう、もの……なのか?」

勇者(青年が……もう、寿命が近い、なんて……)
勇者(考えたくない! ……けど……!)

青年「……さぁね。それも何とも……お前が何を心配してるのか」
青年「……解らなくもないけど。でも……そればっかりは仕方が無い」
勇者「………」
青年「生きとし生けるもの、終わりは全て平等さ」
魔法使い「……どうして、エルフは嘘がつけないの?」
青年「優れた加護を易く得る代償だ……と、言われているね」
魔法使い「……嘘を、ついたらどうなるの」
青年「さぁね……前にも言っただろう。エルフについての記述は多くない」
青年「ましてや、ハーフエルフなんて存在になればなおさらだ」
勇者「青年は、殆どが人間の血……だろ?」
青年「そうだよ」
勇者「それでも……その制約は有効なのか?」
青年「……どうだろうね」




3261 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/08(金) 03:23:29.19 ID:iPCv/dKwP

勇者「……嘘、ついた事ある?」
魔法使い「勇者様?」
青年「……僕は、嘘はつけないと言った筈だけど」

青年(……否。嘘は……もう、ついた)
青年(魔王様との約束……果たせなかったら……結果、嘘になる)

勇者「ああ……否、信じてないとかじゃないんだ」
勇者「……辛かっただろうな、って」
魔法使い「……人は、生きる上で沢山の嘘を吐くわ」
魔法使い「そうして……自分を守る、のよ」
勇者「……魔法使い?」

魔法使い「私、始まりの街で……自信がある、って言ったでしょう?」
魔法使い「あれは……嘘よ。そうして……自分に言い聞かせてただけ」
勇者「……でも、それは」
魔法使い「言い続ければ……本当になるかもしれない。私は、強い。大丈夫」
青年「………」

青年(………! …そうか!)

青年「……クッ……ハハ!」
勇者「青年?」ギョッ
青年「……否、御免……なるほどな」
青年「だから……人は、強くて弱い。弱くて……強い」
魔法使い「……青年さん?」
青年「光と闇の獣……汝の名は、人間」
勇者「……表裏一体、て奴か」
青年「そうだ……人は、強くも弱くもある。闇と光、両方を選び取る権利がある」

魔法使い「……?」
青年「人は、唯一魔に変じられる生き物だ」
青年「そうして……生を長らえた人間を僕は知っている」
勇者「人が……魔に!?」
魔法使い「どうして……」




327名も無き被検体774号+2013/03/08(金) 03:30:08.14 ID:Id6guyWt0

おもしろす!




3281 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/08(金) 03:31:29.57 ID:iPCv/dKwP

青年「……何かを守りたい。誰かの傍に居たい」
魔法使い「………」
勇者「だからって、どうして魔なんかに……!」
青年「拒否権のない……場合だってあるさ」
魔法使い「……命の危険、とか?」
青年「世界の……かな?」
魔法使い「……意味が分からないわ」
青年「今は……知らなくても良い……否」
青年「君達は……知らなくて良いのかも知れない」
青年「それを……拒否する権利を持つのかもしれないな」
勇者「……さっぱりわかんねぇよ」
青年「……そろそろ、行こう。終わらせるぞ」
勇者「ああ……のんびりしてる時間は……」
魔法使い「そうね……無い、わね」

カツンカツン……

青年(……僕は、無意識の内に、嘘を……ついていたのか)
青年(そうして……それは、本当になった)
青年(……水辺の魔物に引きずり込まれて、びしょ濡れになった)
青年(結果……優れた加護を失う、とはね)
青年(……エルフの血ってのは難解だ……)
青年(人は……知らぬ間に嘘を吐く。僕は……人でも、ある)
青年(……説明が、ついた。この……胸の痛みも)
青年(魔王様……もうすぐ、だ)
青年(僕は……僕の役目を終わらせるよ)

カツン、カツン……

勇者「……! 青年、あれ ……!」
魔法使い「扉だわ!」
青年「ああ……勇者、その手で開くんだ」
青年「……輝かしい未来への……扉だ」
勇者「この奥に……光の剣が……!」
魔法使い「……気をつけて、勇者様……!」

キィ……!




3291 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/08(金) 03:37:19.84 ID:iPCv/dKwP

バタン!

勇者「………あ、あれが……!」
魔法使い「光ってる……綺麗……!」
青年「……魔物の気配はしないな」

青年(この光の中じゃ……到底、生きて行けまい)

勇者「………ッ」タタタ
魔法使い「あ、勇者様、待って……」タタタ……

青年(……魔王様。とうとうここまで来たよ)

青年「取れ、勇者……」ス…
勇者「……ッ これ、が……ッ」グ……ッ

勇者(光が……流れ込んでくる……ッ)

魔法使い「す……ごい……」

魔法使い(癒される……? これが……勇者の、勇者様の……光)
青年(立派になったな、勇者……僕の役目も、終わりだ)キリキリキリ……

魔法使い「……? ……ッ 危ない、勇者様!」ドンッ
勇者「うわ……ッ」

ドシュ!

魔法使い「きゃあああああああああああ!」ガタンッ
青年「……良く気がついたね」
勇者「魔法使い……ッ  青年!?」
青年「さあ、光の剣を構えろ、勇者」キリキリキリ……シュン!
勇者「……ッ 青年!」キィン!




3301 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/08(金) 03:49:37.49 ID:iPCv/dKwP

青年「良く弾いた」キリキリキリ ……シュゥン!シュン!
勇者「……!青年!せいね……ッ 何で……ッ 糞ッ」 カキィン!キィン!
青年「その光の剣の主に相応しいか……僕には試す義務がある」
青年「……魔王に打ち勝つ、器であるかどうか、もね」
勇者「……ど、どういう事だ……!何故、魔法使いを……!」
青年「……お前を狙ったんだけどね。まさか感づかれるとは」
魔法使い「………ウゥ…ッ」
勇者「魔法使い……!」

青年「よそ見するなんて余裕だね」クス……シュゥン!
勇者「やめ……ッ 何でだよ、青年!俺は……青年に攻撃なんて……!」ゴロゴロ
青年「……避けてばかりだな。全く……では、こうしようか」
青年「お前から来ないなら、この弓は……魔法使いを狙うよ」
勇者「な……ッ」
青年「……急所は外れているだろうが。放っておくと……取り返しのつかない事になるよ?」
勇者(……魔法使い……出血が……酷い……!)チラ

青年「ほら……そんな事してる暇があるのかい?」カゼヨ!ゴオオオ!
勇者「青年……ッ 糞! …ッ うわあああああ!」ザクザクザク……ッ
魔法使い「ゆ、う……しゃ、さま……ッ」
青年「かばったか……ほら、お前が……来ないから」
勇者「だい、丈夫……だ、魔法使い……」ポタポタポタ……
青年「もう血まみれか……不甲斐ない」
勇者「魔法使いに手を……出すな!」
青年「ならばお前が来い、勇者……僕を倒して、魔法使いを守るんだな」シュゥン!
勇者「何でだ、なんで……ッ こんな事……!」キン!




3311 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/08(金) 03:58:20.25 ID:iPCv/dKwP

青年「………」シュゥン!
勇者「青年!……ッ ウゥ!」ドシュ!
青年「ここで僕に敗れる様なら、到底魔王なんて倒せない」
勇者「本気でおいで……手加減はしてやれない」
勇者「何で、何でだよ、青年……ッ 一緒に、魔王を倒そうって……!」

青年「……僕は、魔王様に傷をつける事なんてできないよ」
魔法使い「………魔王、様……?」
勇者「だ ……騙して、たのか……?」
青年「……応える必要は無いね」シュゥン!
勇者「………ッ うわああああああああああああ!」ブゥン!
魔法使い「………ッ」
青年「………ッ ウゥッ」
青年(剣から、光が……迸る……ッ)シュウウゥッ
青年「………」
勇者「………」ハァ、ハァ…
魔法使い「ゆ、勇者様の身体が……光って、る……!?」
魔法使い「せ、青年さん……!?」

青年「……これ、は……」
青年(……染め粉が……落ちた? ……ああ、そうか。これは……闇の手の)
青年(真の光の前では……まやかしは役に立たないのか)
青年「……どうした、勇者。僕は未だ……立ってるよ」
勇者「姿まで……偽っていたのか……!」グッ
青年「……僕が、憎いか」
勇者「父さんみたいだって……思ってたのに……!」
青年「……憎めばいい。僕を……魔王を」
青年「この……腐った世界の、腐った不条理を……風よ!」シュゥウ
魔法使い「勇者様!」
勇者「させるか! ……うわああああああああああああ!」ザシュゥ!

青年「……強く……なった、な。勇者……」ガク……
勇者「あ ……あ、ぁ……ッ」
青年「……心配するな。勇者は、必ず……魔王を、倒す……」バタ…ッ




3321 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/08(金) 04:05:44.89 ID:iPCv/dKwP

魔法使い「勇者様!」ダダ……ッ
勇者「あ……青年、青年……!」
魔法使い「青年さん……!」
青年「魔法使い……傷、は……?」
魔法使い「……さっき、光の剣から、迸った光が……癒してくれたみたい……」
勇者「……俺は……ああ……ッ」
魔法使い「勇者様、早く、回復を……!」
青年「それには及ばない……勇者、これを」コロン
勇者「これ、は……?」

青年「……転移石、だ。持って行け……」
魔法使い「転移石?」
青年「行きたい場所を願えば……叶う。一つだけ……いざという時に」
勇者「青年!青年……ッ待て、すぐに回復……ッ」
青年「いらない……無駄だよ。もう……それ、より……良く聞け……」
青年「今から、お前達を船の近くまで、飛ばすから……」
青年「必ず、魔王を倒せ……!」

魔法使い「青年さん!喋らないで!……勇者様!」ポロポロポロ
青年「……持って行け、餞別だ」
青年「……叶うなら、あの、丘に……母さんの、墓に……」
勇者「青年!? 駄目だ!これは青年の弓だろう、それに何だよ、丘って……!」
青年「……ああ、もう時間が無い……行け、勇者……!」

青年「世界を……この美しい世界を……守れ!」グッ
勇者「せいね……ッ」シュゥン
魔法使い「青年さ…ッ」シュゥン

青年「………は、あ……僕も……案外、しぶとい……」
青年(まだ、生きてる……なんて、ね……)




3351 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/08(金) 04:13:34.31 ID:iPCv/dKwP

青年「魔王様……御免、戻れそうにないや」
青年「……また、嘘……ついちゃった、な……」
青年「僕は……エルフ、なのに……」

青年(気がついてた……魔王様の魔石から、流れ込んでくる魔気が……)
青年(苦痛では無く……快感になってた事……)
青年(僕の中の……人の血は……魔に変じる事を望んでた)
青年(一緒に、生きたかった……魔王、様……)

青年「……嘘をついた代償は……でかい、な」サラサラサラ……
青年(指先から……消えて、行く)
青年(人でも、エルフでも……無くなったら……)
青年(存在すら……許されないのか)サラサラサラ……
青年(僕の、全てが………消える……ちょっと寂しいな)サラサラサラ
青年(まお………う、 ……さ……)サラ……

……
………
…………

シュゥン!

勇者「青年!せい……ッ うわ!」ドスン!
魔法使い「きゃあ!」ドン!
勇者「う……ッ」
魔法使い「あ、ご、ご免なさい、勇者様……!」ウエニ…ッ
勇者「い、良い……大丈夫、だから……」イタタ
勇者「ここ、は……!」

魔導将軍「あらあら、随分元気そうじゃ無いの」
側近「お……ちゃんと光の剣を手に入れたか……二人って事は」
魔導将軍「青年君は……先に行った、のね」
勇者「……! 赤い、翼……! お前は……!」
魔導将軍「君が勇者君ね? ……しかしまぁ、そっくりね」
側近「ああ……皮肉だなぁ……さて、おしゃべりはこのぐらいにして」

魔法使い(な、何……この人の魔力……!?)
魔法使い(これが……魔王の、手下……!)
魔法使い「……!勇者様!船が!」




3361 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/08(金) 04:23:26.50 ID:iPCv/dKwP

勇者「……船長! …おま、え達が……やったのか……!?」

魔導将軍「んーそうねぇ。あ、見ない方が良いわよ?」
側近「お前、ミンチにしちゃったもんねぇ」
魔法使い「……! な、んて……酷い、事を……!」

魔導将軍「言われたんじゃないの?魔王様を憎めって」
側近「ついでに俺たちもだろ」
魔導将軍「損な役目よねぇ」
側近「仕方ねぇさ。腐った世界の腐った不条理を断ち切る為だ」

勇者「な……なんなんだ!青年も、お前達も……何で同じ事を言う!」
勇者「……許さない。俺は……お前達も、魔王もだ!」

魔法使い「船長さん……まで……」
魔導将軍「あら、怖い……でも、本気で行くわよ?」
側近「じゃなきゃ……蘇った意味ないからな」
魔法使い「蘇った……?」
魔導将軍「何れ知る……いいえ。貴方達には知らない権利もある」
側近「本当に前代未聞だよ……こんな事になるとはな」
魔導将軍「仕方ないじゃなーい。この子達の先代様にやらす訳にいかないしぃ」
側近「まあ……俺ら二人しか居ないよなぁ」
魔導将軍「そうよ……残りの二人も、ねぇ?」
側近「拒否権与えてやらないとな、あの馬鹿とその后様には」

勇者「何をごちゃごちゃと!」
側近「闇の手も……ろくな事考えないよな」
魔導将軍「良いのよ……これで」
側近「ああ……俺たちは、喜ばなくてはいけない」
魔法使い「………ッ 炎、よ!」ゴォオオオ!
勇者「許さない……! 絶対に、許さない!」シャキン!
側近「許す必要なんかないさ ……憎め!」グッ ブゥン!

魔導将軍「そう……勇者は、魔王を倒さなくてはならないのだから!」




337名も無き被検体774号+2013/03/08(金) 04:26:44.29 ID:U45qujzy0

。・゚・(つД`)・゚・。




3381 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/08(金) 04:35:22.54 ID:iPCv/dKwP

勇者「うわああああああああ!」ブン!ガキィン!
側近「お……やるね、だが……剣ってのはただブン回すもんじゃないぜ?」
勇者「何で……何なんだ!何なんだよ!青年も、お前達も……!」
側近「俺たちは……単なる闇の残照。偽りの存在さ」
魔法使い「良くも、良くも船長さんを……海賊さん達を……!」ホノオヨ!
魔導将軍「仕方ないわよ、死んじゃったモノは蘇らない……あら、じゃあ私達なんだろうね、側近」フワア
魔法使い「……炎が、消えた!?」ソンナ……
側近「命じゃないからさ、俺たちは」ブン!

勇者「さっきから何なんだ!」クラウカ!ガキィン!
魔導将軍「そうね……現魔王様の魔石に、姿を映しただけ」コッチカライクワヨーゴォウ!
魔法使い「……私の身体は炎では焼かれないわよ!」ヘイキ!
側近「何なんだろうなぁ、俺たちは」
魔導将軍「意識まで取り戻せるとは思わなかったけどねぇ」

魔法使い「炎よ……! くぅ……ッ」トドカナイ…ッ
側近「願えば叶う……恐ろしいな、最強の魔王ってのは」ソラ!ブン!
魔導将軍「母は強いのよ、側近」ワタシニモキカナイワヨ……ザンネン!

勇者「………ッ」ハァ、ハァ
魔法使い「強い……勇者様、これじゃ……ッ」ハァハァ

勇者(無駄に体力を消費するだけだ……糞……どうすれば……ッ)

魔法使い「願えば、叶う……勇者様……!」
勇者「……なんだッ」
魔法使い「……光を、放って。それに炎を……」ボソボソ
勇者「ん? ……ああ……でも」ボソボソ
魔導将軍「なぁにぃ?何の相談?」
側近「俺たちは強いぜー?なんたって……」

勇者「……行け!」グッ パアアアア
魔導将軍「え?」ナニ?
魔法使い「炎よ……!不浄な物を……清めて……!」ゴォォオオ!
側近「うわ……ッ」

ゴオオオオオォ!




3391 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/08(金) 04:41:59.77 ID:iPCv/dKwP

魔導将軍「私に炎は効かないわよ……って、あら」サラサラ
側近「眩ッ ……お?」サラサラ
勇者「……勇者の光と、浄化の炎だ……お前達が魔であれば……」
魔法使い「耐えられる……筈が、無い……ッ」
魔導将軍「……熱くないわね」サラサラ
側近「だな……つぅか、俺らえらいあっさり負けてね?」サラサラ
魔導将軍「痛いのヤダし、良いかなぁ……これでも」サラサラ
側近「……でも、これやばいな」サラサラ
魔導将軍「うん……消えちゃう、か……」サラ……サラ…
側近「……ちぇ、やっぱ損な役だ」サラ……サラ…

勇者「………」ハァハァ
魔法使い「……」ハァハァ

魔導将軍「罰よ……断ち切れなかった、罰……側近……あ……」サラ……
側近「……じゃ、仕方ねぇな……」サラ……
勇者「………」
魔法使い「………」

シィン……

勇者「……魔法使い。大丈夫か?」
魔法使い「ええ……でも……」
勇者「意味が……わからない。何も……かも」
魔法使い「……私達には、知らない選択肢があるって言ってた」
勇者「知らない方が良い……って事、か?」
魔法使い「……魔王を倒せば、解る……かしら」
勇者「………」




3411 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/08(金) 04:49:32.16 ID:iPCv/dKwP

勇者「二人に……なっちゃったな……」
魔法使い「………青年さん、船長さん……ッ」ポロポロポロ
勇者「青年……青年は、何者だったんだろう」
勇者「どうして……ッ」グッ

勇者(あの丘……弓を、どうしろって言うんだ……!)
勇者(青年……ッ)ウ……ウワアアアア……ッ

魔法使い「勇者、さま……!」ギュ…ポロポロポロ
勇者「う、ぅ……青年、青年……ッ」
勇者「馬鹿野郎! ……魔王を倒したら、父さんって呼んで良いって……ッ」
勇者「一緒に行こうって……言った、のに……ッ何が、僕は嘘をつかない、だよ……!」
勇者「……ッ 青年……ッ」ウゥウ……
魔法使い「………ッ」ギュウ……ナデナデ

勇者「……ッ 魔法使い」ヒック
魔法使い「……?」ポロポロ
勇者「船に、戻ろう……船長の守ってくれた船で……」

勇者「魔王の城に行こう」
魔法使い「ええ……魔王を、倒しましょう!」ゴシゴシ
勇者「……ミンチって言ってたな」
魔法使い「……死者を怖がる事はないわ、勇者様」
勇者「……怖いわけじゃ無いよ」
魔法使い「……全部、終わったら……焼いて、清めましょう」
勇者「ああ……そうだね」
魔法使い「ごめんなさい、船長さん……海賊さん……少しだけ」
魔法使い「待ってて……」
勇者「大丈夫だ……後で、一杯謝ろう……生きてさえいれば」
勇者「いくらでも……できる。なんでも。願えば……叶う……否」
勇者「必ず、叶えよう!」
魔法使い「はい!」




3451 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/08(金) 05:01:27.60 ID:iPCv/dKwP

……
………
…………

闇の手「魔導将軍、側近……お疲れ様でした」
闇の手「青年さん……も……」ポロポロポロ

闇の手(ねじ曲げて産まれてしまったものは……存在すら、失われるのか)
闇の手(僕も……そう、なるのかな)

闇の手「たかだか、闇を選んだ人間が……命を弄んだも同然ですから」
闇の手「……きっと、僕も……世界に許される事は、ありませんね」

闇の手(…………)

闇の手「……魔王様。申し訳ありません」
闇の手「でも、もう……すぐです。そろそろ……お目覚め、ですかね」

……
………
…………

勇者「……あれ、か」
魔法使い「そうね……ここで船を下りましょう」
勇者「そうだな……歩いて行くしか無いな」
魔法使い「………静か、ね」
勇者「魔物の気配がしないな」
魔法使い「……勇者様、ここで……」
勇者「ん?」
魔法使い「……もう、必要無いわよね?」
勇者「ああ……そうだな」
魔法使い「炎よ……」ボゥ……パチパチパチ……
勇者「……船長」
魔法使い「……ありがとう。待たせて……ご免なさい」
勇者「……行こう、か」スタスタ
魔法使い「ええ……勇者様」スタスタ




3461 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/08(金) 05:04:16.18 ID:iPCv/dKwP

勇者「魔法使い」
魔法使い「はい?」
勇者「……闇の手、だったかな」
魔法使い「氷の使い手、ね……」
勇者「……君まで、失いたくない」
魔法使い「勇者様……」
勇者「無理はしないでくれ。退路を断つために、船を燃やした訳じゃない」
魔法使い「ええ。生きて帰るため……よ」
勇者「手を出して……これを」コロン
魔法使い「これは……転移石!?でも……!」
勇者「違う……俺は、多分、くたくただろうから」
勇者「ちゃんと、連れて帰って欲しい……なんか、情けない言い方だけど」
魔法使い「……ふふ、わかりました。お預かり、するわ」
勇者「勿論、危なくなったらそれで、逃げるのもありだ」
魔法使い「お断りします」

勇者「魔法使い……」
魔法使い「拒否する権利、あるわよ……私には」

勇者「……解ったよ………着いた、な」
魔法使い「……ええ」
勇者「誰も居ない……開ける、よ?」

魔法使い「はい……あ、待って、勇者様」
勇者「ん?」
魔法使い「………」グイ、チュ!
勇者「!!」
魔法使い「……続きは、生きて帰ったら」カァ
勇者「……お、おぅ」コエウラガエッタ
勇者「ちゃんと……俺から、言うから……待ってて」カァ
魔法使い「……は、はい……ッ」

勇者「……魔王を……倒すぞ!」

ギィイ……!




352名も無き被検体774号+2013/03/08(金) 07:10:30.94 ID:MIqiXrDFO

お疲れ様でした~
あんなに強かった魔導将軍倒すとは!
そして船長…青年…安らかに




3581 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/08(金) 12:04:53.54 ID:iPCv/dKwP

魔法使い「……誰も、居ない……わね」
勇者「ああ……ここまでも道のりも……」
魔法使い「罠、かしら」
勇者「……そう考えるのが妥当、だけど」
魔法使い「……魔導将軍、みたいなのにわんさか出てこられても困る……けどね」
勇者「……行こう」スタスタ
魔法使い「……ええ」スタスタ
勇者「しかし……広い、立派な城……だな」
魔法使い「ええ……手入れも行き届いてる」
魔法使い「………船長の、船を思い出す、わね」
勇者「…………」

魔法使い「勇者様……」
勇者「ん?」
魔法使い「……いいえ」
勇者「……そうか」
魔法使い「………」

勇者「魔法使い」
魔法使い「……はい」
勇者「頼む……死なないでくれ」
魔法使い「………」
勇者「もう、誰も……死なしたくない」
勇者「無理だと思えば……出来れば、逃げてくれ」
魔法使い「……嫌だ、と言ったわよ?」
勇者「それでも……だ」

魔法使い「……信じてる。貴方は……必ず、魔王を倒す」
魔法使い「青年さんも……言ってたわ」
勇者「……彼は、何者だったんだろう」
勇者「本当に……父の様に……俺を、ここまで育ててくれた……のに」
勇者「何で……!」

??「知りたい、ですか?」

魔法使い「……!どこ、から……!」
勇者「誰だ……お前が、魔王か……!?」

??「……ご自分の手で、扉を開けて進みなさい」
??「貴方達には、知る権利がある」
??「知らない権利も……あります」
??「選択し、つかみ取るのは……己が手」
??「……その右手の刻印にかけて誤る事無きように」

魔法使い「声……どこから……!」
勇者「………消えた、な」
魔法使い「今のが……魔王?」




3591 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/08(金) 12:14:47.67 ID:iPCv/dKwP

勇者「どうだろう……解らない、けど」
魔法使い「………」
勇者「……俺たちは、進むしか無い」
魔法使い「……そう、ね」
勇者「行こう……多分、こっちだ」
魔法使い「わかる……の?」
勇者「……勇者の印が、疼く」

勇者(……熱い。燃えるみたいだ)

勇者「………なんだろう。悲しいような……嬉しいような……寂しい、ような」
魔法使い「………」
勇者「………あれだ。あの……扉の、奥……!」
魔法使い「……とうとう、ね」
勇者「ああ……行こう!」グッ

キィ……バタン!

??「ようこそ、勇者様……お待ちしておりました」
魔法使い「貴方が……魔王?」
??「いいえ……僕は、闇の手、と申します」
勇者「……お前が、か」
闇の手「……ご存じでしたか。では……話は早いですね」
闇の手「どうぞ、剣を……光の剣をお取り下さい」
勇者「……お前を倒さないと……魔王に……会えないと言う事か」
闇の手「魔王様は、この……扉の奥にいらっしゃいます」
闇の手「僕を倒せば……魔王様は、最後の復活をされるでしょう」
魔法使い「ふ……っか、つ?」
闇の手「はい……僕が生きている限り、魔王様はお眠りになっていますよ」
勇者「ど……う言う、事だ!」




3601 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/08(金) 12:24:23.91 ID:iPCv/dKwP

闇の手「言葉の侭です……僕を倒さなければ、貴方方は魔王様に会えない」
闇の手「そして……僕を倒す事で、魔王様は復活するのです」
闇の手「貴方達は……魔王様を倒しに来たのでしょう?」

勇者「……な、何故だ!お前は……どうして……!?」
魔法使い「そ、そうよ……どうしてそんな事を……!」
闇の手「知りたいですか?確かに……貴方達にその権利はありますよ」
勇者「……そして、拒否する権利も、か」
闇の手「はい……ですが」
闇の手「僕を……倒さないと言う選択肢はありませんよね?」
闇の手「……勇者は、魔王を倒すんです。必ず」
勇者「……ッ 拒否権も無いと、言いたいのか!」

闇の手「勿論です……僕を倒さなければ、魔王様も倒せない」
闇の手「……美しい世界を、守る事はできませんよ?」コオリヨ……!
魔法使い「……ッ 勇者様!」ホノオヨ!
勇者「糞……ッ くそ、くそォ!」
勇者「何なんだよ、さっぱり訳が分からない!」ギュ……ッ

ギイイイイイィン!

魔法使い「く……ッ 相殺……ッ 否……ッ」

魔法使い(闇の手の氷の魔法の方が……ッ 強い……ッ もたない!)

魔法使い「勇者様!早く……!」
勇者「うわあああああああああああああ!」ブゥン!
闇の手「そう簡単には、やられません……ッ」ギィン!
魔法使い「……氷の……剣!?まさか……ッ」

魔法使い(今の一瞬で、具現化したと……言うの!?)

勇者「うわ……ッ ぐ、ゥ……!」
魔法使い「……炎よ! ……いくらなんでも、両方は防ぎきれないわよ!」ゴォォォ!
勇者「く……そッ」ギリギリギリ……キィン!
闇の手「!」
魔法使い「弾いた……! 今よ、勇者様!」
闇の手「……残念、遅いです……そして、近い!」コオリヨ!
勇者「!!」

パリィイイイン!




3651 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/08(金) 13:05:52.96 ID:iPCv/dKwP

勇者「ぐ、ゥ ……ああああああああああ!」

魔法使い(至近距離で……勇者様!)

魔法使い「勇者様!」ダダダ……ッ
勇者「……う、冷た……ッ 大、丈夫……ッ ……だ」
勇者「剣で防いださ……しかし……これじゃ、近づけない……ッ」

勇者(……寄れば、剣に……魔法に……糞ッ)

勇者「どう、すれば……」
魔法使い「勇者様……弓は、射れる?」
勇者「え……た、多分……でも……」
魔法使い「……炎を、纏わせる……そうしたら、届くわ」
勇者「……駄目で元々か…やって見よう」ス……
闇の手「それは……! …青年さんの、弓、ですか……」
勇者「……知ってる、のか」キリキリキリ……

闇の手「……どうするんです。そんな細い弓、一本……僕には効きません」
闇の手「それに……貴方に、青年さん程の腕は無いでしょう」
勇者「こう……する、んだよ……! 魔法使い!」シュゥゥン!
魔法使い「炎よ!……矢となりて、射貫け……!」ゴオォオ

闇の手「……ッ 無駄、で……ッ うわああああ!」
闇の手(……ッ 肩を、貫いた……! ……早い)

闇の手「そうか、力……ッ」

闇の手(青年さんの細腕でも引ける程軽い弓、そして威力を増すために)
闇の手(僕が……鍛えた……!)

勇者「効いてる……魔法使い、続けるんだ!」シュン!シュゥン!
魔法使い「……ッ 炎、よ!」ゴォ、ゴオオオオ!!

ドシュ、ドシュ…… ……ドシュドシュ!

闇の手「く……ッ ま、だ……ッ」
闇の手「……こん、なもの、では……魔王様は……ッ」

ドシュドシュドシュ!




3661 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/08(金) 13:14:51.17 ID:iPCv/dKwP

闇の手「……ぐ、ア ……あッ !」フラリ……
闇の手「……腕は、遠く……及びません、ね…… 何処を、狙っている……ん……で、す…」
闇の手「こ、おり……よ……ッ」ピキピキ…ッ
魔法使い「……させないわ!」ホノオヨ!
闇の手「!」
闇の手(……炎に、溶けて……ッ ク…ッ)
勇者「……留め、だ!」スラリ……ダ……ッ 

ザシュゥ!

闇の手「あ…… ……ァ… 」バタ……カラン……
勇者「……やった……か」ハァハァ
魔法使い「……!! み、て……勇者様……ッ」

サラサラサラ……

勇者「闇の手の……身体が……消えて、行く……!?」
魔法使い「これが……魔族の、最後……?」
闇の手「……禁忌を、犯した身……です、か……ら、ね……」サラサラ…
闇の手「青年さん …今、いき……ま……」サラ……

勇者「………」
魔法使い「………どういう、事……?」
勇者「青年を……知っていた、のか……?  …ッ グ、ゥ……ッ」ガク!
魔法使い「勇者様!?」ダキッ




3671 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/08(金) 13:24:30.01 ID:iPCv/dKwP

勇者「な、ん………うわあああああああッ」グゥ……ッ
勇者「……勇者の、印が……ッ」
勇者(熱い……痛い……!)
魔法使い「……! …と、扉の向こう、から……」
魔法使い(凄まじい、魔力……ッ これが、魔王の……力……!?)
勇者「……復活する、と言っていたな……!」グッ
勇者「魔法使い、これを……ッ」ポイッ
魔法使い「え……きゃッ」ズシ
魔法使い「勇者様これ……!」コオリノケン…
勇者「持っててくれ……行くぞ!
勇者「のんびりしている暇は無い……!」ダダダッ

バタァアア………ン!

魔王「………」
勇者「………魔王!」
魔法使い「仮面の……! あれが、魔王……!」
魔王「勇者、か……ああ。闇の手は……青年も………」
勇者「……ッ お前まで、青年を知っていると言うのか!」
魔王「………夢を、見ていた」
魔法使い「……なんですって?」

魔王「……長い、長い夢、だ……」
勇者「………」スラリ…
魔法使い「………」グッ
魔王「私が生まれて、お前が産まれた」
魔王「……お前が産まれ、私が生まれた」
勇者「……何の事だ!」
魔王「光と闇は、表裏一体……私はお前で、お前は……私だ」
勇者「ふざけるな……!」




3681 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/08(金) 13:32:18.62 ID:iPCv/dKwP

魔王「……闇の手の力添えで、私は……長く眠りについた」
魔王「抑える者は居ない……世界は、失われてしまうからな」
魔王「この……美しい、世界が」
勇者「さっきから……何を言っている!」
魔法使い(仮面の所為で……口元しか、見えない……表情が、読めない…!)
魔王「……時間が無い。勇者……さぁ、来るが良い」

魔王「私は、最強の盾となる!この……美しい世界を守る為」
魔王「お前は、最強の剣となれ!この……腐った世界の腐った不条理を断ち切る為に!」
勇者「………ッ もう、良い……!ご託など、聞きたくな……ッ ゥ…!」ビリ…ッ
魔法使い「あ……か、からだ、が……ッ」ビリビリ……
魔法使い(動かない……ッ)

魔王「お前の力はこの程度か……もう、時間が無いと言うのに」
魔王「青年を倒し、闇の手を倒したのだろう!」
魔王「……この世界を、救うのだろう……勇者!」

勇者「……ぐ、う……ッ 俺は、勇者、だ……!」
勇者「こんな……ッ こんな、もの……ッ」パァッ

魔王「………ッ 勇者の、光……無駄だ。私には……ッ」
勇者「! ……ッ」ウゴイタ! …ダッ
勇者「覚悟しろ………魔王!」

ザシュ!
キィン……カラン……

魔法使い「………!」
勇者「仮面……が…… ……あ、ぁ ……ア!」
魔法使い「金の瞳……な、何故!?それに……な、んで……魔王、が……」
勇者「……俺に、そっくり………な、んだ……!?」
魔王「……言った筈だ。お前は私、私はお前……光と闇。表裏一体……ウゥ……ッ」




3691 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/08(金) 13:40:03.15 ID:iPCv/dKwP

魔法使い「どうして!勇者様は……勇者は、世界に一人しか……!」
勇者「……そ、んな……お前は……誰…… だ……!」
勇者「何で、俺と……同じ、顔を……!」
魔王「……夢を見ていた。全て……見ていた」ウゥ……
魔王「私は……勇者では無い。私は、魔王……世界を、滅ぼす……存在」

魔王「私に……拒否権は無い!勇者……お前は何の為にここに居る!?」
勇者「俺は……」
魔王「時間が無い……選び取れ!お前は……ッ う、ゥ……!」アアアッ
勇者「……俺は!勇者……勇者だ!この……美しい世界、を……!」
魔王「そう……私が死んでも……世界は、美しい……あ、ァ……ッ」ギリギリギリ
魔法使い「ま、魔王の魔力が……ッ」フクレアガッテイク……!

勇者「俺は………魔王を倒す!」

魔法使い「………あ、ァ …魔王の、瞳が……勇者様!」
勇者「闇色に……染まっていく……! これが……復活……!?」
魔王「……ぅ、ウ……アアアアアアアアアアアアアアアアア!」

ゴォォォォ!

魔法使い「あ……ッ きゃ、あああああッ」
勇者「魔法使い!」
魔法使い「熱……ッ そ、んな……闇色、の……炎!?」
魔王「………」ユラリ……ゴオオオオ!
勇者「く、そ……ッ」ブンッ
魔法使い「私の、身が……焼かれ……ッ これじゃ、炎なんて……ッ」キカナイ…!




3701 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/08(金) 13:47:44.66 ID:iPCv/dKwP

勇者「……これじゃ……近づけない……!」
魔法使い「弓も……効きそうに無いわね……」ハァ
魔法使い「私の炎じゃ……! そう、か……!」グッ
勇者「魔法使い!?」
魔法使い「……闇の手の氷の剣……ッ」グッ
勇者「何をするんだ!」
魔法使い「願えば、叶うんでしょう!  ……炎よ!その熱で氷を溶かせ!」
魔法使い「……冷えた炎と……なれ!」ゴッオオオオオオオオオ!
勇者「蒼……い、炎……!」
魔法使い「勇者様、渾身の力で……放つわ。だから、その一瞬に……!」
勇者「………ああ!」
魔法使い「行け……!」ゴオオオオオオオオ!
魔法使い(闇の手の……魔族の。魔王をも封印させた魔力……!)
魔法使い(これで駄目なら……もう………!)

パリィイイン!

魔法使い「!」
魔法使い(剣が、砕けた……!? そ、んな……!)

ゴォオオオオオオオオオオオオオ!

魔王「ぐ、ぅ ……ゥ …ッ」
勇者「……怯んだ!? ……今、だ!」
勇者「光よ、輝け! ……全力で……お前を、倒す!」パアアアアァ!
魔王「………ッ」
勇者「俺は……勇者だ!勇者は……魔王を、倒すんだ!」

ザシュウゥ!
パァ………アアアアアアアア……ッ

魔法使い「あぁ……ッ」
魔法使い(眩し……ッ 目を開けていられな……ッ)

勇者「うああああああああああああああああ!」
勇者(………光、光………一面、の……光……!)

……
………
…………




3721 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/08(金) 13:54:23.04 ID:iPCv/dKwP

勇者「………」パチッ
勇者「ここは……」
勇者(何も、無い……木も、草花も……空、も無い)
勇者(ここは……どこだ?)

??「……ここは、全て失われた世界だったもの」
勇者「誰だ……! ……あ……ッ」
??「存在を失うと言う事は……全て、無になると言う事」

勇者「魔王……!?」
魔王「そう……大きくなったね、勇者」ニコ
勇者「…………」
魔王「何のことだか解らないだろうね……でも、それで、良い」
勇者「ここ……は、どこなんだ」
魔王「言っただろう……世界だったもの。世界だった、場所」

勇者「世界は……失われた? ……滅んだ、のか……」
勇者「俺は……負けた、のか」
??「それは違う」

勇者「………青年!?」
青年「魔王は死んだ……言っただろう、勇者は魔王を倒す、と」
勇者「青年、どうして……!?」
青年「………知りたいか?」
勇者「………」

青年「お前には拒否権がある」

魔王「そう。何もかも、知らないで居る権利」
青年「お前が決めれば良い、勇者……その手で、選び取れ」
勇者「……解らない。俺には……何がなんだか……」

青年「一つだけ」
勇者「?」
魔王「勇者は……魔王を倒す。そして、世界を救う」
魔王「この……美しい世界を、守りたいでしょう、勇者」
勇者「……俺は、その為に……産まれたんだ」

青年「そうだ……金の髪、金の瞳……光輝く印を持つ、選ばれし者」

魔王「汝の名は、人間」




3731 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/08(金) 14:00:30.81 ID:iPCv/dKwP

勇者「人間……強くも、弱くもある……人間」
魔王「そう……光も闇も、選び取ることが出来る……平凡でも、特別でもある」
青年「……人間、だ」

勇者「俺は……弱い。負けた……んだろう」
青年「違う、と言っただろう?」
勇者「でも……! じゃあ、ここは、なんだ!?」
青年「信じろ……僕は、嘘は吐かない」

勇者「……!」

青年「……まだ、やることが残ってるんだよ、お前には」
勇者「やること?」
青年「そうだ……」
魔王「……私の闇は、光に包まれ飲み込まれた」
魔王「勇者……貴方は……貴方の光を……解放するの」

勇者「解放……?」

青年「そうだ。願えば、叶う」
勇者「………」
魔王「光で、世界を満たすのよ、勇者……そうすれば、世界は……救われる」
青年「この腐った世界の腐った不条理を、今度こそ……断ち切れる」

魔王「光と闇……表裏一体」

魔王「………さぁ、手を取って、勇者」ス……




3741 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/08(金) 14:05:00.08 ID:iPCv/dKwP

勇者「……お、れ……は……」
青年「お前は何だ?」

勇者「……俺は、勇者だ」

魔王「そう……勇者は、必ず魔王を倒す」
青年「そして……世界を救うんだ……手を取れ、勇者」

勇者『拒否権はないんだな』

魔王『ああ……世界は美しい』

勇者『俺は……魔王を倒す!』

青年「光を、解放するんだ……光と闇……汝の名は、人間」
青年「不可能を可能にする……光に選ばれし運命の子……汝の名は、勇者」
魔王「勇者は人間で無ければならない……人は、強くて弱い。弱くて強い……だから」
魔王「唯一であり、特別……金の光の加護を持つ……汝は……」


「勇者!」




3771 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/08(金) 14:10:20.74 ID:iPCv/dKwP

……
………
…………

勇者「!」パチ
魔法使い「勇者……! 勇者様!よかった……よか……ッ」ウワアアアアアアン!
勇者「え、あ……魔法使い!?」ガバッ
魔法使い「よか、よかった……いきて、い、いきてた……!」ギュウウウ!
勇者「イタタタタ! …痛い……ああ、本当だ……俺……」イキテル……
勇者「………」ナデナデ
魔法使い「………ッ」ヒックヒック
勇者「……どう、なったんだ?」
魔法使い「……ッ」ゴシゴシ

魔法使い「貴方が、魔王を切りつけた瞬間……光が、炸裂……して」
魔法使い「気がついたら、貴方が倒れてた。息が ……無くて……ッ!」
勇者「………ごめん」
勇者「……あ」
魔法使い「え? ……あ!」
勇者「勇者の印が……」
魔法使い「……痣、みたいになってる……もう、光って……無いのね」

勇者「……光は、解放されたんだ」
魔法使い「え……?」
勇者「この……世界を、美しい世界を……救う、為に」
魔法使い「………」

勇者「もう……俺は、勇者じゃない……勇者の役目は、終わったんだ……よ」
魔法使い「………終わった、のね」

勇者「ああ……何もかも……終わった、んだ」




3791 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/08(金) 14:14:04.38 ID:iPCv/dKwP

勇者「………」
勇者(終わった……実感が、ない。だけど……俺は、もう…勇者じゃない)

魔法使い「でも……謎は、謎の侭……ね」
勇者「……俺たちには、知らない権利もあるのさ」
勇者「世界は……守る事ができた。多分……もう、魔物も居ないだろう」
勇者「……ここに居ても仕方ないよ、魔法使い」
魔法使い「ええ……でも、動ける……?」
勇者「………」ムリ
魔法使い「言ったとおりになったわね……ちゃんと、連れて帰るわ」クス
勇者「………お願いします」
魔法使い「願えば、叶う……のよね」グッ
魔法使い「始まりの……街へ!」

シュゥン……!

……
………
…………




3811 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/08(金) 14:25:12.12 ID:iPCv/dKwP

謁見の間

王「よくぞ……よくぞ……戻った!勇者よ!」ガタン!
勇者「……はい」
魔法使い「………」

王「面を上げよ……楽にしてくれ。そなたは……そなた達は……世界を守ったのだ!」
王「空を、見たか、勇者よ……灰色の空は晴れ、青々と……世界を照らして居る」
王「風は軽やかに海を渡り、花々は美しく芽吹きをまっておる!」
王「そなたは……まことに、誠に……!真の、勇者じゃ!光そのものじゃ!」

勇者「恐れながら、王様……俺は……私は、もう勇者ではありません」
王「何、じゃと……?」
勇者「私は……仲間を多く失いました。北の街も……人も、守る事ができませんでした」
王「………」
勇者「確かに、魔王は倒しました。世界も……救ったのでしょう……ですが」
王「うむ……そういえば、青年は……姿が、見えんが」

勇者「……空へ、還りました」
王「……そ、う……じゃったか。あれほどの……者がのぅ……」
王「……辛い……旅、じゃったの」
勇者「………はい」

王「じゃが、そなたが勇者である事には変わりが無い。世界は……未来は、確かに救われたのじゃ!」
勇者「………王様、これを」ス…
王「ん? ……! 勇者の印、が……」
勇者「……勇者は、もう……必要無いのです。未来に、勇者は……もう」
王「……すまん。儂は……随分と浮かれておった様じゃの。だがの、勇者よ……」
勇者「………」

王「人々の犠牲を糧にした平和を、守っていく義務がある。責任があるのじゃ」
王「それは……そなたの肩にだけ背負う者では無い」
王「儂も、他の全ての人を含めて……皆で、背負っていくモノじゃ」
王「誇れと言うのは酷であろうが……だが、自らを……責めすぎてはいかん」
勇者「………はい。解って……います。ですが……」




3821 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/08(金) 14:30:50.32 ID:iPCv/dKwP

王「すぐに……とは言わん。ゆっくりで良い……」
王「そなたが、仲間達と……守った平和の中で……その、未来に」
王「……幸せを、見いだして欲しい」
勇者「……はい」

王「して……そなた、これからどうするつもりじゃ?」
勇者「私に、もう光の加護はありません。私は……ただの、人間です」
勇者「……私に、青年……と、名乗らしては戴けないでしょうか」

王「……勇者の名は、重荷か?」

勇者「必要無いのです。もう……勇者は、この……未来には」
王「そうか……良かろう。その名で良いのじゃな」
青年「………はい」
魔法使い「………」

青年「私は、これから……魔法使いと共に、世界を……この、美しい世界を見て回りたいと思います」
青年「復興にも力を注ぐ所存です」
王「そうか……この地に留まってはくれぬか……否。そなたの決めた事じゃ」
王「儂に止める権利は……ないの」

青年「……ありがとうございます」
魔法使い「ありがとうございます」
王「うむ……大義であった! ……ゆるりと、休むが良い」

……
………
…………

青年「良いのか?魔法使い……」
魔法使い「勿論よ……一緒に、探しましょう、勇者さ……じゃ、無かった」
魔法使い「……青年」
青年「ああ……」




389名も無き被検体774号+2013/03/08(金) 15:22:46.15 ID:voNsvpMk0

続き気になるけど終わってほしくないわー複雑




3933242013/03/08(金) 16:37:39.96 ID:CdiWNp4g0

この三部作ももうすぐ終わってしまうのか…




4161 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/09(土) 09:41:55.75 ID:xzSVNqlJP

魔法使い「ふふ……変な感じね……貴方を、青年って呼ぶなんて」
青年「……父の名を貰っただけだ。別に変じゃないさ」
魔法使い「案外、本当のお父さんだったのかもしれないわね」クス
青年「え?」
魔法使い「だって、見た目が変わらないんでしょう、エルフの血の所為で」
青年「………」

魔法使い「で……魔王が、お母さん」
青年「やめてくれよ……」
魔法使い「あ……嫌だった?」
青年「複雑だな……あれほど、魔王を憎んだのに……」
青年「仮面の奥の瞳は金色だし、俺と同じ顔してるし」
青年「否定できないのが、複雑だよ」

魔法使い「……知らなければ、良かった?」
青年「知らないも同然だよ……真相なんて、何も解っちゃいない」
青年「……知らなくて良い権利もあるとか、言っておきながら」
青年「何もかも中途半端だ……すっきりしないよ」
魔法使い「そう、よね」




4181 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/09(土) 09:56:53.41 ID:xzSVNqlJP

青年「でも……俺たちは魔王を、倒した」
青年「それは事実だ……もっと、喜んでも良い筈なんだけどな」
魔法使い「魔物も、居なくなったって言ってたわね、王様」
青年「街の人達の顔を見ていれば解るさ……みんな、信じられない位」
青年「嬉しそうな顔、してる……命の危険に怯えなくて良いんだもんな」
魔法使い「もう、武器なんていらない。防具もいらない……多分、魔法もいらなくなるのでしょうね」
青年「それはどうかな……魔物って言う…絶対悪があったからこそ」
青年「平和だった部分はあると思う……正直」

魔法使い「でも……」
青年「勿論、暫くはこのままお祭りムードが続くだろうさ」
青年「……憎んだり、畏怖したりする対象が居なくなれば」
青年「単純に平和なりました、で……終わってくれれば良いけど、さ」

魔法使い「……そう、ね」
魔法使い「過去も未来も……解らなくて当然だわ」
魔法使い「現在ですら……私達には、はっきりと……解らない。知る術ももう……ない」
青年「知らなくて良い、権利……だ」

魔法使い「……あら、青年、それ……」
青年「ん?」
魔法使い「ペンダント? ……そんなの、してたっけ」




4201 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/09(土) 10:09:09.81 ID:xzSVNqlJP

青年「ああ、これ……」チャラ
魔法使い「綺麗な……金のペンダントね。可愛いお花の模様」クスクス
青年「……似合わないって言いたいんだろ」ムス
魔法使い「そんな事言ってないわよ……」クスクス
青年「……魔王を倒して、魔法使いに起こされた時、だったかな」
青年「気がついたら……ついてた」

魔法使い「え?」
青年「不思議な夢を見た、って話はしただろう?」
魔法使い「ええ……青年さんと、魔王が……出てきて」
魔法使い「世界を、救え……って」
青年「……その夢の中で、魔王の首に掛かってた気がするんだ」
魔法使い「………」
青年「………」

魔法使い「見せて……古い、物……みたいね」
青年「うん……本当、何なんだろうな」
魔法使い「世界の謎……知りたいな」
青年「魔法使い?」
魔法使い「青年さんが言ってたんでしょう?」
青年「……ああ」

魔法使い「世界を回りましょう。何処まで……知れるか解らないけど」
魔法使い「……あの、丘……とやらも、探さないといけないし」
青年「母さんの墓……って、言ってたな」
魔法使い「ええ」




4211 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/09(土) 10:26:08.41 ID:xzSVNqlJP

青年「時間は……たっぷりあるさ。俺たちには」
魔法使い「そうね」
青年「北の街の復興も始まるだろうし……」
魔法使い「人手が居るわね」
青年「……エルフの、謎も知りたい」
魔法使い「欲張りね」クスクス

青年「そうさ……欲には勝てないよ……俺は、人間だしな」
魔法使い「欲張りな生き物……なのね、私達」

青年「もし、俺たちが死ぬまでに知れなければ」
青年「子供に……託せば良い。そいつが拒否すれば、そこまでだ」
魔法使い「子供……」
青年「魔法使い……俺と、のんびりと旅をしよう」
青年「休みたい時に休んで、どこかに家を構えたって良い」
青年「やめたくなったら、やめたって良いんだ」
青年「平和になった……この、美しい世界で」
青年「寿命が来るまで……一緒に、生きて欲しい」

魔法使い「青年……」
青年「駄目……なんて、言わないでくれる、よな?」カァ
魔法使い「……私、二人は欲しいわ。貴方にそっくりな男の子と……」
青年「君にそっくりな、女の子」
魔法使い「……ええ」
青年「……頑張って働くよ」クス
魔法使い「期待してるわ」クスクス




422名も無き被検体774号+2013/03/09(土) 10:31:37.24 ID:FXKG2IWk0

とうとう終わりなのか




4231 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/09(土) 10:37:46.12 ID:xzSVNqlJP

青年「武器を持たない世界であってくれれば良い」
魔法使い「そうね……魔法も、もう必要ないかもしれないわ」
青年「もう……勇者が産まれる事もないんだろうな」
魔法使い「……魔王は、完全に消滅したんでしょう」
青年「ああ……魔王が居る限り、勇者は産まれる」
青年「俺はもう……勇者じゃない」
青年「何よりの証拠……だろ?」

魔法使い「手、見せて……真っ黒ね……勇者の、印」
青年「ああ……光は、散って……世界を包み込んだのさ」
青年「もう、この世界に勇者は必要ないのさ」
魔法使い「そうね……真の平和、か」
魔法使い「ずっと……続けば良いな」
青年「大丈夫さ……もう、魔物の驚異に怯える事は無い」
青年「………空、青いな」
魔法使い「ええ。風も気持ちいい」
青年「良し、行こうか……」

魔法使い「どこへ……?」
青年「何れ、南へ」
魔法使い「南?」
青年「船長が言ってた……地上の様で、地上で無い、この世の物とも思えない様な楽園」
青年「そんな……島があるらしいって。海賊達の中では有名だったらしいけど」
魔法使い「……信憑性は?」
青年「だから ……確かめに行くのさ」
魔法使い「なら、船が必要ね」
青年「ああ……取りあえず、港に行って、復興を手伝おう」
青年「それから、港街に行って……」
魔法使い「魔導の街にも、北の街へも行けるわね」
青年「ああ……そして、南へ」
魔法使い「この世の物とも思えない様な、楽園……へ」

青年「ああ……平和を見、知り……感じよう、一緒に」




4261 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/09(土) 10:48:30.52 ID:xzSVNqlJP

……
………
…………

??「冗談じゃない!どうして、我らが……!」
??「私達は優れた一族なのですよ!?それが、何故……!!」
??「……愚かな人間共に解らせてやる必要があるな」
??「では……とうとう……?」
??「ああ、決起するぞ! ……王国に、反旗を翻す!」
??「見せしめだ……勇者を擁護したあの国に!」
??「この際、出来損ないでも構わん。数を集めろ……奴隷としては役に立つだろう」
??「力の強い者同士、交配を繰り返すのだ」
??「街を封鎖しろ……我が一族以外を放り出し、全国に散った仲間を呼び戻せ!」
??「壁を築き、要塞となせ……許可無く、立ち入れぬ様に」
??「時は満ちた……今こそ!」
??「まずは、あの王だ……たかが人間」
??「そうだ。魔物の居なくなった今、誰もが平和ボケしている」
??「王を殺せ」
??「我らが……この世界の覇者となる!」




勇者「俺は……魔王を倒す!」

おしまい




450名も無き被検体774号+2013/03/09(土) 20:16:29.16 ID:X+gdqpLYO

>>426
ああこれ、例の魔法使いの一族か?
あいつらプライド高い上に鬼畜だったもんな。
それが今度は世界の平和を乱し、そして魔王となっていくのか。
で、また歴史は繰り返されるってパターンか。




428 忍法帖【Lv=40,xxxPT】(1+0:8) 2013/03/09(土) 10:56:48.29 ID:8BXnE6NG0

おつ~
まだまだ続きそうな感じだな




4311 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/09(土) 12:23:59.98 ID:u30mYgpQ0

魔王「……封印、する?」
闇の手「はい……もしもの時に、止めるのが僕だけではどうにもなりませんし」
闇の手「なるべく……自我を保って居たいと、おっしゃってましたので」
闇の手「……世界に、宣戦布告したときに、使った仮面あったでしょう?」
魔王「ああ、あれね」
闇の手「はい。あれに……浄化の石の欠片を埋め込みました」
闇の手「勿論、僕の魔力と、魔王様の魔力自身も」
魔王「成る程……せっせと魔石を作れって言ってたのは、その為だったんだね」
闇の手「それもあります。魔王様の魔力を発散するのと……後は、まあ色々と」
魔王「本当……企み事が上手だね」
闇の手「……青年さんの事を言ってる、んですか?」
魔王「御免……責めてる訳じゃ無いんだよ」
闇の手「いえ……責められても良いんですよ、魔王様」

魔王「まさか……全部……この腐った世界の、腐った不条理を断ち切る為……」
魔王「寧ろ、何も出来ない私自身が疎ましいよ」
闇の手「とんでもないです、よ魔王様……貴方には、一番しんどい仕事が残ってるんですよ」
魔王「……自分の子供に、勇者に殺される、仕事……か」
闇の手「それもそうですけど……なるべく、自身の力でも……押さえ込んでください、ね」

魔王「うん……大丈夫。願えば、叶う……」




4701 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/10(日) 11:32:46.42 ID:2MLOpopmP

闇の手「母は強い……ですね」クス
魔王「そうだね……こんな私でも母親…だもんね」
闇の手「………」
魔王「で、具体的に……どうすれば良いの」
闇の手「簡単に言うと……眠ってて貰います」
魔王「寝る?」
闇の手「はい。身体も心も……実現可能、って言う前提で話しますけど」
魔王「うん」
魔王「このままだと……私は復活準備にはいる、んだよね?」
闇の手「はい……使用人さんから譲り受けた『知』を紐解くとそんな感じですね」
闇の手「魔王様の場合……今までに前例が無いので」
闇の手「何とも言えないのですが……大体、一ヶ月ですね、産まれてから」
魔王「ふむ……」
闇の手「もしかすると、すぐかもしれないし……もしかすると、ずっと自我を」
闇の手「……保ってられるかもしれない……正直、わかりません」
魔王「女の勇者も女の魔王も……今まで居なかったって言ってたね」
闇の手「はい……ですが、そんな未知数に賭けるわけにはいきません」
魔王「良い方に出れば良いけど悪い方に出たら目も当てられない」
闇の手「そういうことです……なので、確実なのは」
闇の手「今のこの状態の侭、眠っててもらう事」




4741 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/10(日) 11:45:35.37 ID:2MLOpopmP

魔王「成る程……でも、どうやったら目、覚めるの?」
魔王「自分自身の魔力と、闇の手の力と……浄化の石の力を借りて」
魔王「眠りにつけたとして、だけど……」
闇の手「今までは、抑えきれなくなって……目を覚まされている様です」
闇の手「癒し手様の魔力が足りなかった僕たちの場合は、かなり早急に」
闇の手「世代交代が行われましたよね」
魔王「ああ……うん、そうだったね」
闇の手「『知』によると、勇者と魔王が対面して初めて魔王は瞳を開く様ですが」
魔王「………お父さんの瞳は、闇の色……紫、だったな」
闇の手「……勇者は二人、存在できませんからね」
魔王「ですが……このまま眠りにつくとなると、金の瞳を持つ者が」
闇の手「二人、と言う事になります。多分……ですけど」
魔王「うん………」
闇の手「その時には……何をどう頑張ったって、貴女は自我を失うでしょうね」

魔王「………根拠は?」
闇の手「僕の推測、ですけど」
魔王「うん」
闇の手「勇者と魔王が、表裏一体……であるなら」
闇の手「光と闇で構成される、獣……イコール、命、が」
闇の手「完璧に、どちらかだけに分けた姿が……勇者と、魔王」
魔王「……私は、闇、勇者は……光」
闇の手「多分、魔王様に残る光が、全て勇者に吸収され」
闇の手「貴女は全き闇となる……それは、もう人ではありません」
魔王「………」




4751 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/10(日) 11:51:28.64 ID:2MLOpopmP

闇の手「その時までに、どれかの力が失われれば」
闇の手「貴女は目を覚ますでしょう」
闇の手「貴女の力が、大きくなりすぎるか」
闇の手「浄化の石が、限界を迎えるか」
闇の手「………僕が、死ぬか」
魔王「…………」

闇の手「一つ、賭けた位では、正気は失わないと思います」
闇の手「でも……目は、覚める」
魔王「そのタイミングは……やってみないと解らないな」
闇の手「一番良いのは、勇者達がここまで来て」
闇の手「僕を倒して、魔王様の眠りの封印を解いてくれること、ですけど」
魔王「……魔王を起こすために、魔王の封印を解くってのは……皮肉だろうなぁ」
闇の手「でも、勇者は魔王を倒すんですよ、必ず……だから」
闇の手「僕は進んで、盾になります」
魔王「………青年も、だね」
闇の手「はい………」

魔王「……どの道、私は……最後は、自我を失うんだろうな」
闇の手「……それは、多分避けられません、ね」
魔王「でも……光が、闇を倒さないと、多分救われない……この、世界は」
闇の手「………はい」




4761 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/10(日) 11:57:53.18 ID:2MLOpopmP

闇の手「ですから、勇者様には強くなって貰わないと」
魔王「……光の剣封印したり、魔物と無理矢理戦わせたり、か」
闇の手「強制的にレベル上げて貰わないと……多分、魔王様を倒す事はできませんよ」
魔王「……みんなの、願いだからね」
闇の手「そうです。皆の……世界の願いです」
魔王「……剣士、も」
闇の手「………」
魔王「………」

闇の手「……魔王様のお力は、多分……ご自分が思っているよりも、強いです」
魔王「……うん」
闇の手「闇に飲まれるのを少しでも遅くするために、魔石を作って貰ってますけど」
魔王「……無尽蔵に沸いてくる。力なんて……使っても使っても、だよ」
闇の手「はい……このままでは、眠って貰う事も難しいので」
闇の手「………ちょっと、だいぶん、無理して貰います」
魔王「……何?」

闇の手「魔王様が作った魔石を媒介に……禁忌を、犯します」
魔王「禁忌……?」
闇の手「死者を……蘇らせます」
魔王「………出来るの、そんな事」
闇の手「願えば叶います………多分」
魔王「本当に……何でもありだなぁ」
闇の手「……ま、出来たら良いなぁ、ですけど」
闇の手「それぐらい消費して貰わないと」
闇の手「僕の力で眠りにつくとか、多分無理です。貴女規格外なんで」

魔王「……本当、言う事に遠慮無くなってきたよね」




4771 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/10(日) 12:06:57.73 ID:2MLOpopmP

闇の手「褒め言葉と受け取っておきますよ」
闇の手「で……『知』を鑑みた結果」
魔王「はいはい」
闇の手「先々代の……魔導将軍と、側近に蘇って貰おうかなと」
魔王「……誰、それ」
闇の手「前魔王様と、前后様は……僕の手には余ります」
闇の手「先代の側近さんはちょっと……生きてた頃のレベル的に不安なんですよね」
闇の手「癒し手様も……これはちょっとエルフって言うのが……未知数過ぎるんです」
闇の手「先々代の魔王様、后様も……先代と同じ理由で、パスです」
魔王「ふむ……」

闇の手「そこからさらに昔にさかのぼると、前代未聞の特異点、にも接してないので」
闇の手「ある程度事情解ってて、元人間……って理由と」
闇の手「最大の決め手は……あのお二人は親では無いってのが……選んだ理由です」
魔王「親では無い?」
闇の手「はい……親ってのは、強いです」
闇の手「中でも母親は……貴女の様に」
魔王「……母は強い、か」
闇の手「そうです……だから貴女は、間違いなく……最強の魔王です」
魔王「………」

闇の手「『知』は……素晴らしいです。これを引き継ぐ事無く……僕は、死んで行くんでしょうが」
魔王「………」
闇の手「……平和な世界に、腐った世界の、腐った不条理を断ち切った後の世界に」
闇の手「……必要無いものであって欲しいから」
闇の手「僕は……独り占め、します」




4781 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/10(日) 12:14:07.66 ID:2MLOpopmP

魔王「知らなくて良い権利を……持っているんだね、勇者達は」
闇の手「はい……」
魔王「まあ、出来るだけやってみようか」
闇の手「そうですね……」
魔王「……魔導将軍と側近に、怒られる役目は任せたからね」
闇の手「え?」
魔王「私、発案者じゃ無いし」
闇の手「………わかりましたよ」チェ
魔王「……今、舌打ちしたね?」
闇の手「……してませんよ?」ボクシラナイー

……
………
…………

魔導将軍「……成る程ね」
側近「俺たちが死んでから、そんな事になってたのか」
闇の手「すみません」
魔導将軍「闇の手ちゃんが謝る事じゃ無いでしょ~」
側近「……で、現魔王様はこんな悪趣味な仮面つけて、玉座で寝てる、と」
闇の手「……思った以上に、力を使わせてしまいましたので」
側近「どれどれ……」ス

闇の手「ああああああ、駄目です、仮面外しちゃ!」
魔導将軍「えー駄目なのー?」
闇の手「折角眠って貰う事に成功したのに、アンタら僕を殺す気ですか!」
側近「けちー」
魔導将軍「けちー」
闇の手「……人選間違えたかな」グッタリ




4791 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/10(日) 12:22:22.05 ID:2MLOpopmP

魔導将軍「私達以外居なかったんでしょ?」
闇の手「まぁ、そりゃあ……そうですけど」
側近「良いところに目、つけたじゃないか」
闇の手「……そう、言って戴けると、死にそうな目にあった甲斐があります」

魔導将軍「……そんなに、強いの……現魔王様」
闇の手「貴方達が暴れたからです」
側近「そりゃお前、死んだのに無理矢理起こしといて……なぁ?」
魔導将軍「うんうん。何事かと思うじゃない~?」
闇の手「……そこは、まあ、反論できませんけど」
魔導将軍「で……私達は、この偽物の命で何をすれば良い訳?」
闇の手「……勇者様の盾になってください」
側近「盾ね……」

闇の手「勇者様達は、今……船で北の街を目指しています」
魔導将軍「あら、懐かしい……あの北の塔のあたりね?」
闇の手「はい……あそこに、光の剣を封印しています」
側近「考えたなぁ……つか、あの剣……ぼろぼろだったろ?」
闇の手「……色々あったんですよ。そこら辺は割愛しますけど」
闇の手「勇者様達が、あの塔に上ってる間に」
闇の手「……船に残ってる人達を皆殺しにしてください」

側近「……穏やかじゃねぇなぁ」
闇の手「でも船は壊さないでくださいね?」
魔導将軍「注文多いわね~」
闇の手「船壊しちゃったら、たどり着けないでしょう?」
側近「ま、良いさ……俺たちはどうせ、死人だ」




4801 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/10(日) 12:30:26.96 ID:2MLOpopmP

魔導将軍「で、最後は……勇者様に殺されろ、か」
闇の手「………」
側近「そんな顔すんな……別に責めてねぇよ」
闇の手「……すみません」

魔導将軍「謝らないの……この腐った世界の腐った不条理を断ち切れなかった」
側近「……俺たちに与えられる罰って考えりゃ、重くはないさ……もう、死んだ身だしな」
闇の手「……強く、なって貰わないといけないんです」
闇の手「僕たちを……怨んで貰わないといけないんです」

魔導将軍「……で、それ…現魔王様は知ってるの」
闇の手「……いいえ。僕の独断ですよ」
側近「損な役だな、お前も」
闇の手「その分、知れました。誰にも教えません……独り占めです」
魔導将軍「……凄いわね、この……メモの量」
側近「うわ、なんだこれ……」ペラペラ
闇の手「あ、ちょっと触らないでくださいよ!」

魔導将軍「……蘇りの術……か」
側近「俺にはさっぱりわからねぇ」
闇の手「頭の中で組み立てるには限界があるんです」
闇の手「……僕は天才じゃないですからね」
魔導将軍「じゃあ、ま……一暴れしますか~」
側近「俺にも残しとけよ。魔導将軍」
魔導将軍「あ、競争しよっか?」
側近「……飛ぶのは無しな……って、オイ!」
魔導将軍「遅い遅い、側近~」バサバサバサ……
闇の手「………」スゴクフアン

側近「……察してくれよ、闇の手」
闇の手「はい……?」
側近「俺たちに未だ、出来る事があったってのは嬉しいのさ」

側近「……俺たちは、喜ばなければならない」

闇の手「………はい」




4821 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/10(日) 13:05:34.22 ID:2MLOpopmP

側近「じゃあな……俺も行く」
闇の手「はい……」
側近「ありがとうな」ポンポン……スタスタ
闇の手「………」アタマナデラレタ…コドモジャナイノニ
闇の手「……さて、僕もできる限りの事……しないとな」
闇の手「魔王様……後は、お願いします」
闇の手「……僕たちがみんな消えて、腐った世界の腐った不条理が断ち切れれば」
闇の手「もう……何も、心配する事は……無い、んですよね?」

闇の手(『知』……僕が、独り占め、か)
闇の手(受け継がせても仕方が無い。こんなものは……新しい世界には、必要がないんだ)

スタスタ……キィイ…

……
………
…………

ワアァァァァ……

王「ここに宣言する!」
王「魔王は、勇者が討ち取った!世界は平和になったのだ!」
王「魔物の姿も消え去った!我らが畏怖すべき対象は、全て消え失せた!」
王「もう、魔王は復活せぬ!!勇者は……輝かしい勇者の役目は、終わった!」
王「これからは我らが力を合わせ、勇者の勝ち取った美しい世界を!」
王「輝かしい未来を、自らの手で守っていくのじゃ!」
王「儂は、ここに宣言する!武器を無くし、争いの無い世界を作るのじゃ!」
王「我らにもう、武力はいらぬ!魔法と言う存在を廃し、誰にも平等な」
王「素晴らしい世界を、歩んでいく事をここに宣言する!」

ワアァァァァァ……!

……
………
…………




4831 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/10(日) 13:18:50.64 ID:2MLOpopmP

青年「よっと……今日はこんなモンかなー」
魔法使い「青年、ご飯できたわよ?」

青年「ああ。今行く…… ……ッ」ズキンッ

魔法使い「……青年?」
青年「ああ、何でも無い…… ……?」

青年(なんだ……? 胸が、痛い)

青年「娘と息子は?」
魔法使い「川の方で遊んでるわ……もうすぐ帰ってくると思うけど」
青年「そうか……今日は来てない、か?」
魔法使い「……ええ」

青年「……なぁ、魔法使い」
魔法使い「………」
青年「俺は……魔王を倒して、良かったのか……な」
魔法使い「その話は……やめましょう」
青年「………」
魔法使い「……私達は正しいことをしたはずよ、青年」
魔法使い「世界を滅ぼす魔王を倒した」
魔法使い「……平和になった世界をゆっくり歩いて、見て、知った」

青年「ああ……世界は、美しかった」

魔法使い「港や、北の街の復興にも全力を尽くしたわ……」
魔法使い「そして、子供を授かった……居を構え……今、幸せよ?」
青年「……そう、だな」

魔法使い「今日は……城の騎士も来ていないわ」
魔法使い「……もう、来ないでって……言ったもの。だから……来ないわよ」
青年「魔法使い……」




4841 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/10(日) 13:30:42.84 ID:2MLOpopmP

魔法使い「確かに……王様のあの宣言はビックリしたわ」
魔法使い「武器を捨て、魔法を捨て……平等な世界を、築いていこう」
青年「……魔導の街は閉鎖された侭だったな」
魔法使い「ええ……王様のあの宣言に反旗を翻して」
青年「……もう、10年、か?」
魔法使い「そんな物かしらね……王様が暗殺されたのも、それぐらいかしら」
青年「……立派な人物だった、のにな」
魔法使い「あの時も、私達の所に来たわね……城の騎士」
青年「勇者様、どうかお助けください……て、な」

青年「……俺は、もう勇者じゃ無いのに」
青年「勇者の印は真っ黒な痣になった侭だし、俺にはもう光の魔法も使えない」
魔法使い「そうよ……勇者の光は、世界に還った」
魔法使い「平和な……世の中になるはずだったのに」

青年「……ああ」
魔法使い「でも……だからって、魔王を倒さない方が良かったわけじゃ無いわ」
青年「……そうだよな」

魔法使い「もう、勇者は産まれない……それで良いのよ」




4871 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/10(日) 13:40:54.64 ID:2MLOpopmP

青年「……魔法を捨てきれなかった人は、魔導の街に集まったんだってな」
魔法使い「そう……言ってたわね、あの騎士は」
青年「行ったところで、優れた加護を持つ奴以外は……奴隷扱いなんだろ?」
魔法使い「そうらしいけど……それでも、この何も無い美しい世界に、なじめる人達」
魔法使い「……ばっかり、じゃ無いのよ……きっと」
青年「………」

魔法使い「娘にも息子にも魔法を教えはしなかった」
魔法使い「私の選択は間違えて……無いと思いたい」
青年「良いんだ、それで……もう、剣も魔法も、過去の遺物で良い」
青年「……二人とも、遅いな」
魔法使い「そうね……迎えに行ってくるわ」スタスタ

青年「ああ……」ズキンッ
青年(さっきから……なんだ、これ……ッ)

「おとーさーん!」「おとーさん!」

青年「あ、ああ……お帰り、娘、息子……お母さんと会わなかったか?」
娘「いなかったよー?」
息子「お腹すいちゃった!」
青年「ああ、ほら、手洗って家の中入ってなさい」
青年「俺が見てくるよ」

娘「あのねー手、痛いー」
息子「僕もー」
青年「なんだ、怪我したのか……見せてみなさ……!」

青年(なんだ、これ……うっすらと、だけど……剣の様な……痣?)
青年(………まさか……うぅッ)ズキン!ガクッ

娘「お父さん?」
息子「お父さん!」

魔法使い「……やっぱりすれ違ってたのね……ッ 青年!?」




4881 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/10(日) 13:49:57.05 ID:2MLOpopmP

青年「……ぐ、ゥ……目、が……ッ」
青年(目が、痛い……胸が………ッ)
青年(何だ、これ……ッ 悲しみ、痛み、喜び……ッ)
青年(……あ、ぁ ……ッ)

バタン!

魔法使い「青年!」
娘「お父さん、お父さん!」
息子「お父さん!」

……
………
…………

青年「………」
娘「お父さん……大丈夫?」オロオロ
息子「お父さぁん……」ヒック
魔法使い「大丈夫よ、お父さん……寝てるだけだから」
娘「……うん」
息子「……お父さん……」
魔法使い「ほら、二人とも……もう休みなさい」
魔法使い「お母さん、ちゃんと見てるから」
娘「……うん」
息子「うん……いこ、娘」

スタスタ……パタン

魔法使い「………」
魔法使い(青年……どうしちゃったの……?)
魔法使い(ときどき……苦しそうに胸、押さえてた)
魔法使い(……光を、放ったから?)
魔法使い(……解らない。考えたって、正解なんて……)

コンコン

魔法使い(………?)
魔法使い「こんな時間に………どなたです?」




4891 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/10(日) 13:59:39.71 ID:2MLOpopmP

??「夜分申し訳ありません。始まりの街の騎士です」
魔法使い「……お引き取りください。もう私達には、力になれる事はありません」
騎士「……お話だけでも、どうか!」
魔法使い「……今、青年は……体調を崩して……寝ています」
騎士「お願いします!魔法使いさんだけでも……!」
魔法使い「………」キィ
騎士「ありがとうございます……! お迎えに、参りました」
魔法使い「え……?」
騎士「残念だがお前では無い……!」ザシュ!
魔法使い「………あ、ぁ……ッ」
騎士「子供が二人……双子が居たはずだ。探せ!」
「はッ」
「騎士様……勇者はどうします?」
騎士「……眠ってるのか……フン。光を失った過去の英雄に等用事は無い」
騎士「捨て置け……それより、双子だ!」
「はッ」
魔法使い「ま……ち、な……さ ……ッ」
騎士「……勇者一行の仲間とは言え、魔法を捨てた女等にもう用は無い」ザシュ!
魔法使い「…………ッ」
「子供が居ました!」
騎士「良し……傷はつけるな!生きたまま連れて戻れ!」
「はッ」
娘「いやだああああ、はなしてえええええ! おかーさ……ッ おかーさーん!」
息子「お父さん、お父さん! いやああああああああああああ!」
青年「………ぅ、う……ッ」
「騎士様、勇者が……」
騎士「……先に行け! ……勇者は私が始末する」

青年「な、んだ……お前達……ッ ぅう……ッ」ズキン、ズキン……ッ

騎士「残念だ、英雄殿……子供達と、光の剣は我らが戴く」
青年「な……ん、だと……!?」




4901 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/10(日) 14:06:27.62 ID:2MLOpopmP

騎士「……この世界が平和になるのは結構。だが……」
騎士「我ら、優れた民である魔導の民がこの世界を導くのに……」
騎士「貴方は少々、邪魔になる」

青年「お前達……魔導の街の……!?」ズキンッ

騎士「……ほう、勇者と言うのは光の加護を受けると聞いていたが」
騎士「貴方は確かに、もう勇者では無いようだ……貴方の瞳は、闇の様な色をしている」

青年「……何……?」
青年(闇色……の、瞳?俺が……?)

騎士「勇者はもう産まれない……魔王が居なくなった今、貴方はもうこの世に必要ないのだな」
青年「………」
騎士「これからこの美しい世界は、我らの物だ、元勇者殿」
騎士「………何も知らぬ侭、ゆっくりと……眠るが良い」チャキ
騎士「そこの……愛しい女と一緒にな!」ブゥン!

青年「………魔法使い……ッ」 ザシュ
青年「……ぐ、ぅ……ッ」 フラ……ボタボタボタ……パリン…ッ

青年(血……俺の、血…… あ、ァ……ペンダント、が……)
青年(娘、と…… 息子…… は……  あ、ぁ……)バタン…ッ

騎士「……フン、不甲斐ない……これが、勇者、か……所詮過去……か」
騎士「光の剣は……」ガサゴソ




4911 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/10(日) 14:13:30.70 ID:2MLOpopmP

騎士「………これ、か? 何だ……光、だとか言うから」
騎士「もっと立派な物を想像していたんだがな……ただの刃か」
騎士「こっちは……鋼の剣に……弓?」
騎士「……これは役に立たんな……まあ、良い。光の剣は戴いていこう」
「騎士様、娘と息子は、馬車に」
騎士「ご苦労……傷はつけてないか?」
「はい……少々暴れたので、早々に眠り草を飲ませました」
騎士「重畳。では魔導の街に連れ帰り……別々の場所に隔離しろ」
「はッ」
騎士「勇者とその仲間の子供だ……魔導の力は凄まじいだろう」
騎士「他人として育てた後、交配させる」
「はい……」チカ
騎士「……ん?」

チカチカチカ……ッ

騎士「何だ、光の剣、が……ッ」

パアアアアアアアアアアアアアアアアア!

騎士「な……ひ、か………りッ」

パキイイイイイインッ

「ああ、剣が……ッ」
騎士「……亀裂が……」
騎士「………フン、所詮がらくた……か」




4921 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/10(日) 14:20:42.27 ID:2MLOpopmP

「……どう、するんです」
騎士「……一応、持ち帰るさ。我が王の命令だ」
「はッ」
騎士「行くぞ」スタスタ

……
………
…………

娘「ここ、どこ!?息子は!お父さん!お母さん!」ウワアアアアアアン!
「貴女はこれから、ここで過ごすのです……大丈夫、息子様には何れあえますから」
娘「いやだよう!お母さんに会いたい!お父さん!息子ー!!」うわあああ!
「ほら、泣き止んで……お風呂に入りましょう、身体を洗ってあげますから」
娘「いやだああああ!触らないでよぅ!」ズキンッ
娘「痛……ッ」
「どうしました?手が痛いんですか? ……あら、何この痣……剣みたい……」
「ひかって………ッ」

パアアアアアアアアアアアアアッ

「!!!!」

……
………
…………

息子「離せ!離せよ! ……娘!お父さん!おかーさーん!」
「大人しくしろ、この糞ガキ……ッ」バシッ
息子「痛……ッ うわ……うわああああああん!」ブンブン!
「こら、暴れんな……ッ」ガシ!
「たく、この……ん、なんだ、この痣……剣? ……真っ黒だな……火傷か…ッ」

パアアアアアアアアアアアッ

「!!!!」

……
………
…………




4931 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/10(日) 14:25:50.19 ID:2MLOpopmP

終わりは、始まりだった。
朝と夜は繰り返され、永劫の時を生き続ける。

そこにも、願いはあった。
神が住まいし限りなく遠く、果てしなく近い最果ての地。

願いは、どこにでもあった。

命は、願いだった。

未来は現在になった。
現在は過去になった。

そうしてまた、何時しか命が産まれた。

光は、闇に包まれ、太陽が昇り、月が昇る。
星は、光だった。
命は消え、星になった。

空は青く、果てしなかった。
世界は悠久だった。

例えヒトとマが違えたとしても、同じであることを願った。

命は喜び、悲しみ、寂しさを覚えた。
命は願い、祈った。




4951 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/10(日) 14:28:00.81 ID:2MLOpopmP

共に必ず、願いがある。

共に、希望を抱き、絶望に抱かれる。

寝て見る夢、現実に見る夢。

過去は、現実だった。

未来は、過去だった。

儚い輝きは、未来へと続いていた。

命は、輝いていた。

ヒトは、強かった。

命は、儚かった。

ヒトは、弱かった。

ヒトは、雨を凌ぎ、太陽を凌ぐ術と知を身につけた。
ヒトは、獣だった。




4961 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/10(日) 14:30:20.63 ID:2MLOpopmP

命として、そこにあった。

雨に濡れ、太陽に灼かれても。
獣は、獣だった。

静かに、音も無くただ、大地を包み込んだ。
闇は夜でもあった。

静かに、音も無くただ、大地を照らし続けた。
光は星でもあった。

命は、光と闇の獣だった。

光と闇だった。
命は、命だった。

月が昇り、太陽が沈む。
命は命を作った。
太陽が昇り、月が沈む。
命は国を作った。

ヒトとマの境界は薄れ、何時しか光と闇は混じり合った。
何時しか、命は神の手を離れた。




4971 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/10(日) 14:32:55.96 ID:2MLOpopmP

神はその都度、相応しい名を与えた。
ヒトとマは交わり、様々な命を産みだした。

神はそれに、マと言う名を与えた。
それは生み出し、使役する事ができた。

それもまた、紛れも無い命だった。
一つ、命が産まれた。

神はそれに、ヒトと言う名を与えた。
それは感じ、見、知る事ができた。

それは紛れも無い命だった。
一つ、命が産まれた。

それは紛れも無い命だった。

神は光と闇を生み出し、大地を作り水を育み炎を抱き過ごした。
限りなく遠く、果てしなく近い最果ての地。

古の神との忘れられた契約。
始まりは終わりだった。




4981 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/10(日) 14:37:48.59 ID:2MLOpopmP

光は、闇だった
闇は、光だった

そのどちらを欠いても存在できぬ
全きモノの姿

それは、光と闇だった

それは世界だった

世界は美しかった

地上であり、地上で無い
この世の物とは思えない程の楽園

それが、美しく腐敗したこそ世界
決して断ち切る事のできない、腐った不条理

光と闇の獣、汝の名は人間

途切れる事無く回り続ける、表裏一体の運命の輪




4991 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/10(日) 14:38:28.73 ID:2MLOpopmP

時は、流れ、流れ―――

国王の間

王「良く来た、勇者よ……そうかしこまる必要は無い、面を上げよ」
勇者「は……」
王「魔王が蘇って久しい。前魔王が前勇者によって倒されてからも同じく、じゃ」
勇者「はい」
王「今日そなたをここへ呼んだのは……分かるな?」
勇者「……必ずや、魔王を倒してごらんに入れます。この、勇者の印にかけて、必ず……!」
王「うむ……頼んだぞ、選ばれし者よ!」




5001 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/10(日) 14:39:15.03 ID:2MLOpopmP

番外編、おしまい


勇者「拒否権は無いんだな」 へ続きます




5011 ◆6IywhsJ167pP 2013/03/10(日) 14:40:45.17 ID:2MLOpopmP

約一ヶ月、長々とみてくれた人、ありがとうございました!




503 忍法帖【Lv=36,xxxPT】(1+0:8) 2013/03/10(日) 14:41:34.06 ID:pvxE2Ekm0

まさかの無限ループ!
しかも勇者と魔王に血の繋がりが…




504名も無き被検体774号+2013/03/10(日) 14:41:44.35 ID:S9gmY4L60

つまりエンドレスループなんだ…
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B000FBG0NU/




529名も無き被検体774号+2013/03/11(月) 12:17:46.09 ID:bsZgW2PkO

コレで完結じゃないと信じてます




540名も無き被検体774号+2013/03/11(月) 20:47:53.00 ID:lvBedMbT0

今まで乙でした!
もし続編書くんだったら絶対見るからね
今まで楽しいこのSS出してくれてありがとう




次スレ:勇者「拒否権はないんだな」
引用元:勇者「俺は……魔王を倒す!」
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