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    魔王「ああ……世界は美しい」
    魔王「ああ……世界は美しい」【番外編】
    勇者「俺は……魔王を倒す!」



1名も無き被検体774号+2013/02/04(月) 14:07:46.61 ID:G6CSV7KI0

国王の間

王「良く来た、勇者よ……そうかしこまる必要は無い、面を上げよ」
勇者「は……」
王「魔王が蘇って久しい。前魔王が前勇者によって倒されてからも同じく、じゃ」
勇者「はい」
王「今日そなたをここへ呼んだのは……分かるな?」
勇者「……必ずや、魔王を倒してごらんに入れます。この、勇者の印にかけて、必ず……!」
王「うむ……頼んだぞ、選ばれし者よ!」




2名も無き被検体774号+2013/02/04(月) 14:11:41.00 ID:G6CSV7KI0

勇者宅

母「おかえりなさい、私の可愛い勇者……王様に失礼は無かった?」
勇者「ただいま母さん……そんな事しないよ」
母「ふふ、そうね……私の可愛い子」
母「……」
勇者「そんなに、寂しそうな顔をしないで。俺にはこの……勇者の印がある。必ず……生きて戻るから」
母「ええ……」
勇者「王様から支度金ももらったし、街で装備を調えたら……行くよ」
母「そう……そうね。くれぐれも無理はしないで……」ギュ
勇者「ああ……ありがとう、母さん……ふ、痛いって……」ギュ…
母「……これを、もって行きなさい」シュル
勇者「……これは?」




3名も無き被検体774号+2013/02/04(月) 14:16:15.05 ID:G6CSV7KI0

母「私の宝物……貴方のお父様がくれた、ペンダントよ」
勇者「え……でも……」
母「貸すだけ。帰ってきたら……返してね?大事なものだから。でも……きっと貴方を守ってくれる」
勇者「……わかった。じゃあ暫く借りるね」
母「つけてあげる……良く似合うわ。心配ないと思うけど、なくさないでね?」
勇者「大丈夫さ。絶対……なくさない」
母「……もう、行きなさい」
勇者「ああ……行ってきます!」

カチャ。バタン……

母「……さようなら、私の勇者きっと、もう……」
母「……」
母「……貴方、貴方の息子は大きくなりました」
母「ごめんね、勇者……」
母「……」
母「私の役目も、終わりね……」




4名も無き被検体774号+2013/02/04(月) 14:19:26.91 ID:G6CSV7KI0

16年前

??「…… ……」ウロウロ
??「……落ち着けよ、鬱陶しい」ウロウロ
??「だ、黙れよ側近!これが落ち着いてられるか!」ウロウロ
側近「お前がそこで動き回ったって、すぐに出てくる訳じゃないだろ……ったく」ウロウロ
??「じゃあお前も落ち着けよ」ウロウロ
側近「うっせぇな!これが落ち着いてられるか!」ウロウロ
??「うわ理不尽」

おぎゃー!

??・側近「「産まれた!」」




5名も無き被検体774号+2013/02/04(月) 14:22:53.78 ID:G6CSV7KI0

使用人「側近様、魔王様!お生まれになりました!可愛い男の子です!」
魔王「そ、そうか……でかした!でかしたぞ后!」
側近「で、后様は?」
使用人「母子共に健康ですよ」ニコ
使用人「さ、どうぞお二人とも……魔王様、だっこして上げて下さいな」

后「あ、魔王……ふふ、産まれたよ」
魔王「ああ……頑張ったな」
側近「うわ、お前そっくり……もうちょっと后様に似れば良かったのに……」
后「……」
魔王「……どうした?」
后「魔王、手……」




6名も無き被検体774号+2013/02/04(月) 14:25:23.88 ID:G6CSV7KI0

魔王「手? ……なんだ、つなぎたいのか」ぎゅ
后「や、うん、嬉しいけどそうじゃ無くて……赤ちゃんの手、右の手の平……見て?」
魔王「小さいな、潰しそうだ……っと…… ……嗚呼、やっぱりか」
側近「…………」
后「魔王と同じだね」
魔王「ああ、そうだな……そうか……そう、か……」
后「……一ヶ月」
魔王「……ああ」
后「一ヶ月したら、出て行くね」




8名も無き被検体774号+2013/02/04(月) 14:32:41.25 ID:G6CSV7KI0

側近「そりゃ、早すぎないか」
后「……それでもぎりぎりだよ」
魔王「そうだな……ぎりぎりだ」
側近「……ッ くそ、すまん! ……分かってたはず、なんだが」
后「もしかしたらって思ったけど……やっぱり、駄目だったね」
魔王「仕方あるまい……おい側近、俺は一ヶ月、后とチビと部屋に篭もる」
側近「は!? ……ああ、はいはいはい!その間は俺に執務丸投げね!」
后「ごめんね、側近」
側近「謝るなよ、后様 ……こいつが仕事するとか言ったって、どうせ俺がふん縛って后様の部屋に放りこむだけだし」
魔王「何ソレ酷い」
側近「……覚悟はできてるっての」
魔王「で……チビの名前は?」
后「……あれしかないでしょ」
側近「あれしかないな」
魔王「そうか……そうだな。よし!チビ、今日からお前の名前は………!」




10名も無き被検体774号+2013/02/04(月) 14:36:36.99 ID:G6CSV7KI0

始まりの街

勇者「さて、最低限の武器防具も揃えたし」
勇者「酒場で仲間を募れとか王様に言われたが……」
勇者「……いくら勇者とは言え、レベル1の俺に着いてきてくれる奴なんかいるのかね」

酒場
勇者「すみませーん」

「おぉ、あれは…」「勇者だ」「勇者!?」「来たか!」「勇者様!!!」
ざわざわ、ざわざわ

勇者「!?」

「勇者様!俺を是非貴方のお供に!」「私を!」「私だ!」

バタン!

ユウシャサマーオレトイッショニーワタシトー
ドンドン!!
オスナー!
ユウシャサマー!

勇者「……一人旅じゃ駄目ですかね」




11名も無き被検体774号+2013/02/04(月) 14:41:23.45 ID:G6CSV7KI0

勇者「いや、いくらなんでも……なんだよ、これ……」

バタン!

勇者「!?」ビクッ
??「勇者様」
勇者「は、はい……」
??「ふふ……大丈夫です、私はここの事務員です」
勇者「あ、はぁ……」
事務員「とりあえず、皆様には落ち着くように言いましたから安心して下さい」
勇者「あ。はい……すみません」
事務員「勇者様の旅立ちは王様が声高に宣言されましたからね……引いちゃう気持ちは分かりますが、許してあげて下さい」
勇者「い、いつのまに……」
事務員「数日前ですよ。今日のこの日まで、皆我慢していたんです世界の平和を、希望を……担う勇者様のお役に立ちたいと思っているんですよ、皆様」
勇者「……はい」
事務員「どうぞ、奥の部屋へ。それと……16歳のお誕生日、おめでとうございます」
勇者「あ……ありがとうございます」




19名も無き被検体774号+2013/02/04(月) 16:27:12.27 ID:QwvBKgAJI

事務員「どうぞ、おかけ下さい」
勇者「あ、どうも……」
事務員「さて……」
勇者「……」

ドケ、ユウシャサマヲミセロウワナニスルジャマダ
ザワザワヒソヒソ

勇者(……魔物より怖いかも)
事務員「皆様浮き足立っておられるだけですから」
勇者「はぁ……」
事務員「人員に希望はございますか?」
勇者「あ、えーと……俺、まだレベル1なんで…」
事務員「ふむ……回復役は必要でしょうね」
勇者「ですねぇ……」

ソウリョ!ソウリョ!ワタシ!ダマレコムスメ!
ギャーギャー、ギャーギャー!

勇者「……回復、て僧侶以外出来ないんですか?」




20名も無き被検体774号+2013/02/04(月) 16:55:24.66 ID:8Vqn82FeI

事務員「まぁ、その道のエキスパートですから」
勇者「はぁ……」
事務員「あまり深く考えず、直感で選んで大丈夫だとは思いますよ?」
勇者「そう言うもん、ですか」
事務員「希望を聞いてからこう言うのもなんですがね」
事務員「ここに登録されてる僧侶だけでも相当な数です。才能もレベルも、性格だってまちまちです」
事務員「ただ、皆様勇者様に着いていきたい、役に立ちたい、一緒に魔王を倒したいという……」
事務員「志は同じですよ」
勇者「あ……」

事務員「貴方は希望の光ですから、勇者様」




21名も無き被検体774号+2013/02/04(月) 17:25:01.99 ID:Hw/UiPIp0

事務員を仲間にしようぜ




22名も無き被検体774号+2013/02/04(月) 17:31:55.86 ID:S5UP3EdX0

直感で選んじゃうのかwww




25名も無き被検体774号+2013/02/04(月) 18:17:58.19 ID:G6CSV7KI0

勇者「……」
事務員「期待は重いですか?」
勇者「……いえ、俺は勇者ですから」
事務員「そうですね……世に一人しか存在を許されぬ、選ばれし印をその拳に握る者。汝の名は勇者……」

勇者「……?」
事務員「気にしないで下さい。古い吟遊詩人の……詩の一説です」
事務員「話を戻します。直感で選べ、と言うのは、勿論冗談では無いんですが……」
事務員「ご希望ならば、私が適当な人材をチョイスしますよ?」
勇者「……いえ、俺が選びます……選ばせてもらいます」
勇者「多分、誰を選んでも、きっと光は射すんです。俺は……勇者ですから」

事務員「……」
勇者「そうする運命を……誰でも無い俺が握っている、んです……よね?」
事務員「……流石、勇者様ですね」ニコ
勇者「なるほど……直感。そう言う意味では正解ですね」

事務員「では、まずは僧侶でよろしいですか?」




26名も無き被検体774号+2013/02/04(月) 18:26:47.34 ID:G6CSV7KI0

勇者「はい。後……もう一人前衛が欲しいな」
事務員「戦士、武闘家……ですね」
勇者「……では、戦士で。後、やっぱり……魔法使い、ですかね」
事務員「了承しました。では、名簿をお渡しします。それぞれ一覧にしてあります」

勇者「…………」ペラペラ

事務員「気になる方が居られましたら、この部屋へお呼びしますので……決定は一度、会ってからをお勧めしますよ。文字だけでは分かりかねますから」
勇者「そうですね……では、レベルが1の彼と……こちらと……」
事務員「(ほう……)お言葉ですが、即戦力にはなりませんよ?勇者様もまだレベル1。最初は……心強い方の方がよろしいのでは?」

勇者「いえ……良いんです。確かに未知数ですが……」
勇者「一緒に高め合って、光をつかみ取りたい」
事務員「(……ニッ)」




27名も無き被検体774号+2013/02/04(月) 18:33:32.48 ID:G6CSV7KI0

事務員「……では、この方達をお呼びします。最初はどなたから?」
勇者「全員一辺にお願いします」
事務員「……ふむ」
勇者「俺の直感……信じます」
事務員「分かりました。ではこちらの部屋では手狭ですね。酒場の方へと集めますので少々お時間よろしいですか」
勇者「お願いします」

15分後

ザワザワ…
ダレダ、ダレヲヨブンダロウ
オレダワタシダダマレオレダ…

事務員「勇者様、準備が整いました……どうぞ」

キィ…

シーン……

ざわざわざわ……

勇者(選ばなかった人には申し訳ないが……)チラチラ
勇者(壁にもたれてる彼……良い体つきだな。しなやかな良い筋肉だ)
勇者(魔法使いは……あれだな目の奥に何か宿してる感じだ。年若い娘だが……ちりちりと魔力の波動を感じる)
勇者(僧侶は……あいつか。ちょっと気が弱そうだけど……)

勇者「では……貴方と、貴女と……貴女に。お願いできますか」

戦士「……ああ」
魔法使い「いい目、してますね勇者様」
僧侶「わ、わわわわ、私、ですか……!?」

勇者「はい。お名前を伺っても?」ニコ




28名も無き被検体774号+2013/02/04(月) 18:40:44.23 ID:G6CSV7KI0

戦士「戦士だ」
勇者「うん……宜しく」
戦士「ああ」

勇者(寡黙そうだが……近くで見るとやはり良い身体だな。握手も力強かった。面構えも良い)

魔法使い「魔法使いよ……宜しく」
勇者「こちらこそ……君は、炎に特化してる様だね」
魔法使い「……!」
勇者「違った?」
魔法使い「いいえ……正解よ。流石ね」ニッ

勇者(情熱的な色……当たったか。自身に満ちあふれてる感じだな。期待できそうだ)
勇者(そして美人だ)

僧侶「あ、あの……私なんかでよろしいのでしょうか……?僧侶、と申します……あ、あの……」
勇者「そんなに緊張しないで……」クス
僧侶「あ、はい……あの、すみませ……あ、じゃなくて。お願いします!」

勇者(ふむ……普通に見えるが……神の加護、か?握手から伝わるこの安らぐ感じ……)
勇者(そして可愛い)

勇者「改めて、勇者です。宜しく」




33名も無き被検体774号+2013/02/04(月) 19:43:27.45 ID:G6CSV7KI0

勇者「では、お世話になりました」
事務員「貴方達の行く道に光あらんことを」ニコ

事務員(まだ小さな光……小さな背。でも……あの子達ならきっと)
事務員(古の腐った縁を……腐ったこの世界の不条理を……)
事務員(光で、照らしてくれる)

事務員「さて、私も行きますか……ああ、いけないその前に、あの子起こさなきゃ……」

旅籠

勇者「さて、とりあえず食事にしようか。ここの飯は旨いよ」
戦士「暢気だな。魔王を倒す旅にでようと言う勇者が……街から出る前に食事だと?」
勇者「今の俺たちの力量を知ることは大事だろ、戦士。自己紹介もかねて、な」
魔法使い「そうよ、腹が減っては戦は出来ぬ。私、グラタンと赤ワイン」
勇者「流石に酒は駄目だろ、まだ正午前だ」
魔法使い「けーち」
僧侶「あ、あの、私もお酒はどうかと……あ、えっと、ミートソースのパスタと、ピッツァマルゲリータと……プリン」
勇者「良く食うね、僧侶……でもプリンは後ね?」
僧侶「……はい」ムゥ

戦士「……カレー。甘口」

勇者「えっ」
魔法使い「えっ」
僧侶「えっ」

戦士「………」ムス




34名も無き被検体774号+2013/02/04(月) 19:45:13.16 ID:Hw/UiPIp0

戦士可愛い




40名も無き被検体774号+2013/02/04(月) 23:14:42.90 ID:G6CSV7KI0

勇者「じゃあ改めて……自己紹介と行こうか。お腹もふくれたしね」
魔法使い「ああ、お腹いっぱい……コーヒーもらって良い?」
勇者「あ、じゃあ俺も。僧侶は……プリン?」
僧侶「は、はい!それとチーズケーキとバナナジュースも良いですか?」
戦士「腹壊すぞ……俺はイチゴのパフェ」

勇者「えっ」
僧侶「えっ」シマッタソレモタベタイカモ…
魔法使い「ぷっ」ツイカスレバ、ソウリョ

戦士「……」ムス

勇者「ええと……良いかな?」

オマタセシマシター

勇者「じゃあ、俺から……勇者、レベル1。獲物はこれ」シャキン
僧侶「それは……光の剣!?」
魔法使い「……失礼な言い方だけど、すごいレア物持ってるわね。あら?でもこれ……」
戦士「……ぼろぼろだな」




41名も無き被検体774号+2013/02/04(月) 23:22:50.26 ID:G6CSV7KI0

勇者「ああ。親父の形見らしい……親父は、先代、元勇者と言う」
勇者「母の話によると、元勇者も、元々勇者も……まあ、要するに代々語り継がれて来たって奴だ」

戦士「魔王を倒した剣か?」
勇者「どうだかな。確かに相当使い込んであるんだろうが」
魔法使い「私は剣とかには詳しくないけど……これ、新しい傷じゃ無いんでしょう?」
僧侶「そのようですね……光の残照は感じます……が、とても少ないです」
戦士「歴戦の勇者が震ってこそ……真価を発揮する代物か?」

勇者「どうだかな……って言うより、そんなの分かるのか?僧侶……」
僧侶「……微かに力、光は確かに感じますけど……正直、それほど威力があるようには見えませんね」
魔法使い「ねぇ、勇者と戦士は……魔法について詳しいの?」
勇者「ん? ……恥ずかしながら、それほど。俺は……初期の回復魔法ぐらいしか」
戦士「俺にはさっぱりだ」
魔法使い「ふうん……まあ、そうよね、まあ良いわ」

勇者「なんだよ、ハッキリ言えよ」
魔法使い「後で説明するわ。とりあえず自己紹介、しちゃいましょ」




42名も無き被検体774号+2013/02/04(月) 23:29:54.48 ID:G6CSV7KI0

勇者「ああ……まあ、とにかく形見でもあるし……僧侶が言うようになんかしらの力は感じるんだけどな」
勇者「とりあえず、鉄の剣よりは軽くて扱いやすいんだ。手になじむというか」
勇者「で、まぁ……俺もまだレベルは1だ。七光りに頼るぐらいが丁度良いって訳だ」
戦士「成る程な」

勇者「で、さっきも言ったけど、魔法については初期の回復魔法が使えるぐらい」
勇者「多少の魔力があるのはわかってるが、当然ながら本職さんの足下にも及ばない」
勇者「これぐらい、かな」

戦士「では、次は俺だな」
戦士「戦士だ。俺もレベルは1。登録所の事務員も言っていたが、王のお触れを聞いて登録したばかりだ」
戦士「実戦経験は……乏しい。無いに等しい。まさか、自分が選ばれるとは正直思っていなかった」
戦士「だが……それなりに鍛錬は積んできたつもりだ。勇者の光の剣ほどでは無いが、俺の獲物も使い込んである」
戦士「この国の騎士だった父から譲り受けた鋼の剣……当分、新調しなくても大丈夫だろう」
勇者「……良く研がれてるな。良い剣だ」
戦士「ああ」

僧侶「あの……勇者様の光の剣は、手入れしないのですか?」
勇者「……鍛えられる鍛冶屋が存在しないらしい」
僧侶「……え?」




43名も無き被検体774号+2013/02/04(月) 23:36:18.34 ID:G6CSV7KI0

魔法使い「魔法剣の扱いはとてもデリケートで難しいのよ」
魔法使い「知識として存在は知ってても、どうにも出来ない場合が多いの」
魔法使い「鍛冶の知識と、魔法の知識、確かな技術……」
魔法使い「それ以上の何かを知り、持っている者にしか……できないの」
勇者「……詳しいな」
魔法使い「自己紹介ついでにその辺も話すわね」

魔法使い「私の両親は共に大魔導師とまでは行かないけど……まあ、二人とも結構良い魔法使いだったのよ」
魔法使い「勿論、私の師でもあるわ。家には膨大な量の魔法関係の本があったから、知識はかなりの物だと自負してる」
魔法使い「まあ……私のレベルも1だからね。胸を張って言えないのが……ちょっと恥ずかしいけど」

僧侶「凄い……」
魔法使い「あら、興味ある?」
僧侶「も、勿論です……!」
魔法使い「ふふ、そうよね……機会があれば家にいらっしゃい。ここからはだいぶん、遠いけどね」
僧侶「は……はい…ッ!!」きらきら
魔法使い「で、さっき勇者様に言い当てられた通り、炎の魔法が得意よ」
魔法使い「講釈は後にして……さ、次どうぞ?」




44名も無き被検体774号+2013/02/04(月) 23:41:23.14 ID:G6CSV7KI0

僧侶「あ、私は僧侶……癒やしの魔法を専門にしています」
僧侶「この町に来るまでは教会に遣えていました……レベルは皆様と同じ、1です」
僧侶「一応回復専門ですが……弓は得意です」

魔法使い「……意外」
僧侶「そ、そうですか……?」
戦士「その細腕で……?」
僧侶「あ、その……勇者様ほどではありませんが……」
僧侶「これを、つかいます」ス…
勇者「随分と細いな……それにちょっとしつれ……うわ、軽ッ」

僧侶「これは、エルフの弓です……その、あの……私、孤児でして」
僧侶「神父様に拾われた時に、その……私の傍に置いてあったと……」
魔法使い「ああ、成る程……」
僧侶「……?なにか……?」
魔法使い「……ううん、なんでも。心優しいエルフからの贈り物なのかな、って」




45名も無き被検体774号+2013/02/04(月) 23:47:07.86 ID:G6CSV7KI0

僧侶「ロマンチック、ですね。でも……もしかしたら、形見とかそう言うのかも知れないし」
僧侶「大事にしたくて……練習したんです」
勇者「……なんか、暴露させちゃってごめん」
僧侶「いいえ。お気になさらず……これから一緒に旅をする仲間ですから」ニコ

魔法使い「一通り終わったし……良いかしら?」
戦士「なんだ?」
魔法使い「さっきの魔法の話、ね。ちょっと長くなるけど良いかしら?」
勇者「ああ、構わない。知識が増えるのはマイナスにはならない」
魔法使い「じゃあ……まず最初に。魔法には属性があるのはわかるわよね?」
勇者「炎とか、水とかだろ?」
魔法使い「そう。そして人……人だけじゃ無いわね、魔物も、生きとし生けるモノ全てにあるのよ」

戦士「……?」
魔法使い「まだ何も難しい話してないわよ。眉間に皺寄せないでよね」クスクス
戦士「……チョコパフェ。糖分が不足すると頭が回らん」ムス
勇者「まだ食うの!?」
僧侶「あ、私ジャンボパフェ!」
勇者「……その細身の身体の何処に入るんだ」




46名も無き被検体774号+2013/02/04(月) 23:53:41.98 ID:G6CSV7KI0

魔法使い「さっき、勇者様が私を見て炎に特化する……要するに、私の属性は、火。炎」
勇者「俺は魔法に詳しいわけでは無いからな……何となくイメージって言うか……直感?」
僧侶「正しいですよ、勇者様。ちなみに私は水です」
勇者「水……」
僧侶「そうです。水を見ると何を思い浮かべますか?優しい、とか……癒される、とか……」
勇者「確かに、そう言うイメージは持ちやすいな」

魔法使い「そう。人にイメージを関連づけるのに何が一番早いか分かる?」
勇者「う、ううん……と」
魔法使い「初対面、話していない。勿論、人となりも分からない、となれば?」
勇者「外見……」

魔法使い「まぁ……そうね。及第点。表情とか、態度からも感じ取れるわよね」
戦士「堂々としていれば強そうに見え、怯えていれば弱々しくみえると言う事か」
魔法使い「そうそう。そういうのもあるけど……一番簡単なのは色だと思わない?」
勇者「色……」

魔法使い「勇者様は、じっと私の瞳をのぞき込んでいた。どうして?」
勇者「……意思の強そうな女の人に見えた。恥ずかしいけど……情熱的な印象をうけたな」
魔法使い「ふふ、嬉しいわね。そう……私の瞳は赤。炎の色は?」
勇者「……! 赤」




47名も無き被検体774号+2013/02/05(火) 00:03:18.98 ID:f30NN4ks0

ふむふむ




49名も無き被検体774号+2013/02/05(火) 00:26:07.46 ID:AVaynCUL0

おもろい




50名も無き被検体774号+2013/02/05(火) 08:56:44.62 ID:DT9mWhj70

勇者「僧侶は……蒼、戦士は……翠か。て、事は……?」
魔法使い「僧侶は水の加護、癒やしの力。戦士は大地の加護」

戦士「大地?」
僧侶「そうです。とても力強い大地の加護を受けてらっしゃいます。大陸を渡る風や、緑の芽吹き。母なる大地が死に絶えた場所ではどちらも死んでしまう……とても、暖かい力です」

戦士「………」ムス
僧侶「……ど、どうなさいました?」アセ
魔法使い「あはは、照れなくても良いのに」
勇者・僧侶(照れてる顔なのかっ)

魔法使い「100%瞳の色で判断できるわけじゃ無いんだけど……貴女には分かるのね、僧侶」
僧侶「はい……分かる、と言うより……感じます。そして勇者様は……金の双眸をお持ちです。間違いなく、輝く光の加護を」
勇者「へぇ……」
僧侶「……人の肉体は、闇と光、両方で形成されていると言われています」

勇者「ん?それは……どういうこと?」




51名も無き被検体774号+2013/02/05(火) 09:14:12.96 ID:DT9mWhj70

僧侶「光と闇の獣。汝の名は人間」
魔法使い「…………」

勇者「獣?」
僧侶「はい。現し身、所謂肉体は闇で。精神は光で。だから、人はとても弱く、強くもなれる」

勇者「………???」

戦士「……プリン・ア・ラモード」
勇者(もう糖分消費したのかよ)
僧侶(……流石に恥ずかしい)ケドタベタイドウシヨウ
魔法使い「コーヒーお変わりね」

勇者「ええと……?属性が二つある、って事?」
魔法使い「そうじゃ無いわ。んー…説明が難しいわね」
魔法使い「たとえ話と思えば良いわ」
魔法使い「人はどちらにもなれる。選び取ることが出来る」
魔法使い「闇を選べば悪になれる。光を選べば善になる」

勇者「あ……なんとなくわかりやすいかも」




52名も無き被検体774号+2013/02/05(火) 09:20:10.32 ID:DT9mWhj70

魔法使い「人は唯一、種族を捨てられる生き物なのよ」
勇者「……?」

魔法使い「人は闇の手を取り契約することで、魔物に転じることが出来る唯一の種なの」
勇者「……何?」

魔法使い「魔物やエルフ、所謂人以外の種族は、生まれついたそれから転じることは出来ないの。人間にはなれない」
僧侶「人は、とても強くとても弱い。だけど、無限の可能性を秘めているのです。故に、光と闇の獣と呼ばれるのです」

戦士「そんな話は聞いたことが無い」
魔法使い「……でしょうね。私もはっきりとは知らないわ。古書でかじった程度」
僧侶「古い……おとぎ話の本を神父様が持っていらしたのです。偉そうに話してしまいましたが、神話の一説なのかもしれません。でも……」

魔法使い「言い得て妙、て感じかしらね?」
僧侶「そう、ですね……」
魔法使い「まあ、でもちょっと脱線したわね」
僧侶「ア……すみません」




54名も無き被検体774号+2013/02/05(火) 09:33:51.17 ID:DT9mWhj70

勇者「いや……難しいけど、知ってて損は無い話だし……単純に興味がある」
魔法使い「ええと……話を戻しましょ。勇者様の属性は光」
勇者「うん」
魔法使い「さっきの光と闇の話はいったん忘れてね」
魔法使い「光の属性って言うのは、勇者しか持ち得ないものなの」

勇者「そうなのか?」

魔法使い「ええ、きっとレベルが上がれば光属性の魔法を使えるようになると思うけど」
魔法使い「どんなに優れた魔法使いや僧侶でも、光の呪文だけは行使できないのよ」
僧侶「回復魔法、と言えば誤解されがちですが……癒やしの力に長けて居るのは一般的には水や緑の加護なのです」
僧侶「加護、と言うのは契約と思って下されば良いかと」

戦士「俺に魔法の力は無いぞ」
魔法使い「命は産まれる時に、精霊と契約すると言われるわ。ソレが属性として体内に残留して加護となるのよ」




55名も無き被検体774号+2013/02/05(火) 09:44:50.06 ID:DT9mWhj70

魔法使い「戦士の場合は優れた筋肉とか、その力。大地の守護を受けていればそれは強靱。魔法は使えなくても充分に恵まれてるでしょ?」
戦士「ふむ」

魔法使い「勇者様は光の精霊と唯一契約できる、選ばれた人間って事。……世界に一人しか存在できないのはその所為なのよ」
勇者「ああ……それは知っている」
勇者「勇者が存在するのは、魔王を倒すためだ」

僧侶「…………」

勇者「俺の使命だからな」
魔法使い「……そうね。だから、頑張らなくちゃね」
戦士「その通りだ」
僧侶「はい」

僧侶(今は……まだ)
魔法使い(話すべきじゃ無いわね)

勇者「さて……じゃあそろそろ」
戦士「ああ、行くか?」
僧侶「行きましょう」
魔法使い「旅の始まりね」




56名も無き被検体774号+2013/02/05(火) 09:49:29.94 ID:DT9mWhj70

その頃

??「勇者は世界に一人しか存在できない」
??「勇者が産まれると言う事は、魔王もまた、産まれると言う事」
??「希望と絶望」
??「光と闇」
??「表裏一体」
??「腐った世界の腐った不条理」
??「運命の子は、まだ限りなく遠くて、果てしなく近いよ」
??「今はまだ……ね」

旅籠

勇者「……いきなり路銀が0に近いってどういうこと」
魔法使い「食べ過ぎなのよあんた達……今夜の私の酒代無いじゃ無い!」
戦士「………」ムス
僧侶「ご、ごめんなさい、ごめんなさい!」




57名も無き被検体774号+2013/02/05(火) 09:58:13.26 ID:DT9mWhj70

勇者「と、とりあえず……レベルアップを兼ねて隣の町を目指そうか」
戦士「無理は禁物だな。今夜は……野営か」
魔法使い「そうなるわね……森が近くにあったはずよね?」
僧侶「森の中で野営ですか……危なくありませんか?」
戦士「俺がいる。守ってやる」
魔法使い(レベル1だけどね……)
僧侶「そ、そうですね!勇者様もいらっしゃいますし!」
勇者「とりあえず、この川沿いを進もう。森に突き当たる」

……
………

僧侶「美しい流れですね」テクテク
魔法使い「一見平和に見えるわね」
戦士「油断するなよ」
魔法使い「そうよ、僧侶……あ、そんなにのぞき込むとあぶな……」
僧侶「大丈夫ですよ……きゃっ」

ばっしゃーん!




58名も無き被検体774号+2013/02/05(火) 10:04:28.85 ID:DT9mWhj70

僧侶「吃驚した……」
勇者「………」
戦士「………」
魔法使い「………」
僧侶「あれ、どうしたんですか」
勇者「おい、なんで濡れてないんだ」
僧侶「え?あれ……ほんとだ冷たくない……!!」ズズズ……

ズルズルズル……

魔法使い「!!僧侶、後ろ!!」

水の中から、モンスターが現れた

僧侶「……ッ(しまった、弓が…ッ)」
魔法使い「頭下げて! ……ッ炎の手よ、その拳で焼き尽くせッ」
勇者「……ッ」

ジュウウ……ギャアア……ッ

モンスターは霧になり、消え失せた

ばしゃあああんッ

僧侶「きゃッ ……冷たいッ」
戦士「……どうなってるんだ?」
勇者「話は後だ……僧侶、ほら捕まって」
僧侶「あ、あぁ……すみません……」

魔法使い(この子……まさか……)




59名も無き被検体774号+2013/02/05(火) 10:13:44.11 ID:DT9mWhj70

勇者「なるべく隊列を崩さず、水辺から遠いところを歩こう……引きずり込まれる訳には……」
戦士「勇者、先頭を行け。殿は俺が」
魔法使い「僧侶、大丈夫?ほら、こっち」
僧侶「あ、はい……すみません……くしゅんッ」
勇者「ゆっくり進もう。日が陰れば野営の準備だ。森の中で安全そうな場所を探すんだ」

………
…………

森の中

勇者「流石に……実戦は……違うな」
勇者(距離にすれば……大して始まりの街から離れていない)
勇者(しかし……疲労感が半端ない)

戦士「レベルも少しは上がった。僧侶と魔法使いを休ませないとな」
戦士(無理をさせる訳にはいかんだろうな……この辺でストップか)
戦士(魔法力とやら、無限ではないのだろうし)

魔法使い「そうね……次、モンスターの群れに襲われたら……やばいかな」
魔法使い(MPが切れるほど消費したのは初めてだわ)
魔法使い(これが……戦い)

僧侶「うぅ、足が痛い……」
僧侶(それに、寒い……火に当たりたい)
僧侶(でも、足を引っ張るわけには……ッ)

勇者「良し、今日はここまでにしよう。戦士、野営の準備を」
戦士「分かった。魔法使いと僧侶は休んでろ」
魔法使い「……ありがと」
僧侶「す、すみません……」




60名も無き被検体774号+2013/02/05(火) 10:16:54.00 ID:DT9mWhj70

……
………

僧侶「あ、あの、私達も何かお手伝いを……」
魔法使い「無理しちゃ駄目よ、私達体力無いんだから……」
僧侶「あぅ……でも……」
魔法使い「私達の仕事は、MPを回復させること。足を引っ張らないこと」

僧侶「……はい」シュン

魔法使い「ねえ僧侶、貴女……」
僧侶「はい……?」
勇者「良し、火が付いた。二人とも、こっちへ」
魔法使い「いえ、良いわ」

僧侶「……? あ、ハイ、行きましょう魔法使いさん」




61名も無き被検体774号+2013/02/05(火) 10:20:44.08 ID:DT9mWhj70

パチパチパチ……

僧侶「暖かい……」
魔法使い「ここ……そんなに離れてないわよね」
勇者「……」
戦士「焦って命を落とす方が愚かだ。俺たちの力はまだまだ未熟だ」
戦士「勇者の判断は正しい……それに、ここは良い場所だ」
魔法使い「そうね……美しい森だわ」

僧侶「……安心しました」
勇者「ん?」
僧侶「戦士さんが良いと言うのなら、大地の愛に満ちあふれて居るんですよ。安全……かどうかはわかりませんけど、安心できる場所です」
魔法使い「……」
勇者「ああ、成る程。戦士には大地の加護があるから分かるのか……」
戦士「……」ムス
勇者「(あ。照れた)」
魔法使い「(照れたわね)」

僧侶「(戦士さん可愛い)」




62名も無き被検体774号+2013/02/05(火) 10:29:31.14 ID:DT9mWhj70

勇者「準備してきた非常食で今日は……凌げるが問題は明日からだな」
勇者「(明日の夜には目的の街につけるか……?焦りは禁物。いや、しかし……)」

戦士「それも問題無いだろう」
勇者「?」
戦士「……生きるための殺生の権利は誰にでも等しい」
僧侶「………」ビク
戦士「幸い、豊かな森だ。狩猟に出れば良い」
勇者「狩りか、しかし……」
戦士「得意なのだろう、弓」
僧侶「はい……仰りたいことは、わかります」
勇者「ああ……」
魔法使い「モンスターは倒すのに、動物は殺せないと?」
僧侶「……ッ」
勇者「魔法使い、よせ」
魔法使い「……」

戦士「僧侶」
僧侶「はい……いえ、はい。大丈夫です……」
勇者「……じゃあ、明日の朝、戦士と僧侶に狩りに行ってもらおうか」
勇者「その間に俺と魔法使いで片付けとか済まそうか」
魔法使い「……」
勇者「じゃあ、今日はもう休もう。とりあえず俺が見張るから、三人は休んでくれ」




63名も無き被検体774号+2013/02/05(火) 10:33:52.28 ID:DT9mWhj70

勇者(三人は……休んだか。寝息が聞こえる……それだけ、森が静かだって事か)
勇者(それほど街から離れていないのに……光が遠い。寂しい物だ)
勇者(レベルも少しは上がった……無理ができる程俺たちは強くない)
勇者(焦るな。俺は……勇者だ)
勇者(大丈夫だ。しかし……)

勇者(魔法使い……僧侶が川に落ちてからどうにも様子がおかしかった)
勇者(僧侶が……水に濡れていないのを見て……顔が青くなってた)
勇者(随分苛々してた様だったが……)
勇者(街に着いたら、ゆっくり話そう)




64名も無き被検体774号+2013/02/05(火) 10:41:44.49 ID:DT9mWhj70

魔法使い(……眠れない。初めての実戦で興奮してる)
魔法使い(それだけ……じゃない。僧侶、あの子……)

魔法使い(魔物がいたから……その後は……)
魔法使い(……ッ 嫉妬してる!?この私が…!?)
魔法使い(落ち着くのよ、魔法使い。私は、炎の担い手!)
魔法使い(……私だって…ッ)
魔法使い(勇者は、今日は聞いてこなかった。心配そうに……私を見てた)
魔法使い(気付かれた……かな)


魔法使い(休まなきゃ。ちゃんと休んで……聞かれたら、冷静に説明するのよ)
魔法使い(冷静に……ッ)




65名も無き被検体774号+2013/02/05(火) 10:45:19.75 ID:DT9mWhj70

僧侶(弱肉強食……わかってます)
僧侶(生きるためには、食べなくてはいけない)
僧侶(……神よ、お許し下さい)

僧侶(私だけじゃ無い。勇者様、魔法使いさん、戦士さん……)
僧侶(みんなが生きて、強くなって……)
僧侶(魔王を倒す……)

僧侶(勇者様……ああ、お願いするの、忘れた)
僧侶(神父様のお話が本当なら……いいえ、神父様は……嘘など)
僧侶(神様……人の子に与える試練とは、かくも厳しい物なのですか…?)
僧侶(……私達を、おまも……り……く、だ……)スウスウ




66名も無き被検体774号+2013/02/05(火) 10:49:38.54 ID:DT9mWhj70

戦士(まだ腕がしびれているな)
戦士(……命を屠ると言う事は、重いんだな)
戦士(狩りは頻繁に行ってきた。食べるために仕方ない。命の摂理……)
戦士(人に害をなすから、殺す。食べるためでも無く。自分を、仲間を守るため)
戦士(そんな俺が……大地の加護を受ける、か)
戦士(……)

戦士(皮肉な物だ)
戦士(魔法だの、加護だの、精霊だの……)
戦士(良く解らん。わからん、が……)
戦士(世界とはそう言うものなのだろう)
戦士(……休むか。勇者とかわってやらねばな)




67名も無き被検体774号+2013/02/05(火) 10:55:55.07 ID:DT9mWhj70

森の上空

??「悩みなさい、思いなさい」
??「それが生きると言う事」
??「……なんてね」

??「ああ、時間食っちゃった。あの子……無事だったかな?」
??「久しぶりに元の姿に戻ったら……なんか変な感じ」
??「さて、戻らないと」
??「勇者君、頑張るのよ?君なら、きっと……」

??「ちょっと……楽しかったな、人間ごっこ」
??「人間ごっこ、か……皮肉ねぇ」
??「あの事務員の女の子にはかわいそうな事しちゃったけど……」
??「まぁ、生きてるし大丈夫でしょ」
??「……生きてる、か」
??「やっぱり、皮肉ね」

バッサバッサバッサ………


そして、夜は更ける―――




68名も無き被検体774号+2013/02/05(火) 11:03:31.45 ID:DT9mWhj70



戦士「起きたか」
僧侶「はい…おはようございます」
戦士「では行くか……大丈夫か」
僧侶「……はい」
戦士「……む」
僧侶「あ………」

ピピピ……チチチ……
戦士「………」
僧侶(鳥が……戦士さんの肩に)
戦士「食うには小さいな」
僧侶「……」ビクッ

戦士「僧侶」
僧侶「は……ハイ」
戦士「生きるためだ。無駄な殺生はしない」
僧侶「はい……」
戦士「必要な分を、必要なだけ。屠った命は、無駄にしない」
僧侶「……」
戦士「感謝を込めて、全部食う。それが……礼儀だ」
僧侶「……!はい」

戦士「そう言いながら、俺たちは無益にモンスターの命を奪う」
僧侶「……戦士さん、それは」
戦士「聞いてくれ」
僧侶「……」
戦士「守るためだ」
僧侶「……」
戦士「生きるためだ。命の重さに差違は無い」
僧侶「ハイ」
戦士「矛盾してるが……それが、生きると言う事なのだと思う」
僧侶「……ハイ」

戦士「……すまん。言い訳だ。自分を正当化しているだけだ」
僧侶「いいえ……貴方が、惨い方で無いのは、わかります」




69名も無き被検体774号+2013/02/05(火) 11:06:46.25 ID:DT9mWhj70

僧侶「それは……動物たちが教えてくれます。その手に剣を持ち、命を屠ろうとも」
僧侶「心優しく、強くいらっしゃる……誠に、大地の加護を受けるに相応しい……素敵な方だと思います」
戦士「……」
僧侶「行きましょう、戦士さん。私達が生きるために」
戦士「……ありがとう」ニッ
僧侶(どきッ)
僧侶(笑顔……優しいんですね)
僧侶(戦士さん……)




70名も無き被検体774号+2013/02/05(火) 11:14:13.31 ID:DT9mWhj70

勇者「おはよう、魔法使い」
魔法使い「……おはよう」
勇者「よく眠れ……なかったみたいだね」
魔法使い「……ごめんなさい」
勇者「なんで謝るの……ああ、火起こすの手伝ってくれる?」
魔法使い「ええ……」
魔法使い「旅、始まったばかりなのに……管理もできないなんてね、身体の」ボッ
勇者「ありがとう……どちらかと言うと心だろう?」
魔法使い「!」

勇者「僧侶が川に落ちて濡れていなかったことと、関係ある? ……よね」
魔法使い「……優れた加護を受ける者はね、干渉を受けないの」
勇者「?」
魔法使い「私が炎の優れた加護を持っているとすれば、私の身体は如何なる炎にも焼かれることは無いの」

勇者「あ……じゃあ、僧侶は……あれ、でも……」
魔法使い「自然の物は別。ああ……言い方が悪かったわね」
魔法使い「自然の力で産まれた炎……たとえば、こうして道具で起こした火。暖かさを感じるわ。身を暖めてくれる。指に触れれば火傷する」
魔法使い「優れた炎の加護を受けた魔物に炎の魔法が効かなくても、その屍肉を火であぶれば食べられるようになる」

勇者「……たとえがちょっとえぐいな。わかりやすいけど」
勇者「魔法の炎で焼かれることは無い、って事だな」
魔法使い「……そうね」




71名も無き被検体774号+2013/02/05(火) 11:22:31.11 ID:DT9mWhj70

勇者「僧侶の水の加護、が……そういうことか」
勇者(最初、落ちたとき……濡れていなかったのは水の魔物の干渉の範囲。曰く、優れた加護を持つ僧侶は……)
勇者(その水の干渉を受けず、濡れなかった)
勇者(その後、自然の水に戻ったときには……冷たさも感じてた。ずぶ濡れになってた)

勇者「……成る程」
魔法使い「理解したみたいね」
勇者「理屈は分かった。まあ……目の前で見たしな」
魔法使い「あの子の身体は、水の干渉を受けない……優れた癒し手になるわ。流石勇者様ね」

勇者「……君は?」
魔法使い「残酷ね、聞くの?」
勇者「……すまない」
魔法使い「……炎よ」ボッ
勇者「!?」
魔法使い「よく見て……ッ ぐ…ッ」ジュウ…ッ
勇者「おい、やめろ……ッ」
魔法使い「……言葉にさせないで頂戴ッ」

勇者(威力は押さえたんだろうが……魔法使いの腕に火傷の跡が)
勇者(………)

勇者「気持ちは分かるが……馬鹿野郎」
魔法使い「……」
勇者「回復するぞ」パァッ
魔法使い「……ごめんなさい。でも…ッ」
勇者「鍛錬……とか、レベルがあがれば……」
魔法使い「素質の問題よ。契約だもの」

魔法使い「……本当、残酷ね、勇者様は」
勇者「すまん……が、自棄にはなるな。俺の直感を信じろ、魔法使い」
魔法使い「……え?」




72 忍法帖【Lv=39,xxxPT】(1+0:8) 2013/02/05(火) 11:27:54.89 ID:w6PKlkE70

勇者がえらい男前や…w
支援




73名も無き被検体774号+2013/02/05(火) 11:28:45.15 ID:DT9mWhj70

勇者「自信に満ちた目をしてた。情熱的な何かを宿す目」
魔法使い「……」
勇者「羨み、怨んで曇らさないでくれ」
魔法使い「……」
勇者「簡単に、すっきり解決とはいかんだろうが……」
勇者「認める強さも、君にはあると思う……あって欲しい」
魔法使い「……!」
魔法使い「認める、強さ」
勇者「プライドが許さないとか言うなよ?」
魔法使い「そ…ッ そんなちっぽけなプライド持ち合わせてないわよ!」
勇者「あははは、そりゃ失礼」
魔法使い(……勇者は、やはり勇者なのね)
魔法使い(笑顔が……眩しい)

戦士「帰ったぞ」
僧侶「ただいまです」
魔法使い「…ッ」ビク
勇者「おお、ごくろ……て、え……」
僧侶「熊さん、仕留めちゃいました」
戦士「勇者、解体するの手伝え」ドサッ
勇者(デケェ…何日分だよ……)
僧侶「お腹いっぱいになりますねぇ」フフ
魔法使い(……僧侶、恐ろしい子)




75名も無き被検体774号+2013/02/05(火) 11:42:17.64 ID:DT9mWhj70

魔王城

??「ただ~いまぁ~!側近~!」ダキッ
側近「のわ、なんだなんだ……ッ」ダキッ
??「ただいま、ってば」
側近「お、おぅ、お帰り……て、早いな……あいつは?」
??「貴方に早く会いたくて、ダーリン♪」ホッペニチュー

??「……無事に旅立ったわよ。仲間も申し分なし」
側近「そ、か」
??「浮かない顔ね」
側近「お前が言うか、泣きそうな顔して」
??「……」ギュ
側近「……心配すんな。大丈夫だ今度こそ……」ギュ。ナデナデ

??「そうね……あの子なら」
側近「で、お前なんでそんな格好してんの。誘ってんですか」
??「あ、やっぱそそる?事務員ちゃんの制服、そのまま着て来ちゃった♪」ムナモトチラッ
側近「背中破れてんぞ」オウフ、セクシー
??「だってー羽出さなきゃ飛べないし」モットミル?
側近「そりゃそーだろうが、だからって」ミタイデスオネガイシマス
??「……人間の服、久しぶりだったからねぇ」ザンネン、キガエチャイマス、マホウデ、エイッ
側近「堪能したか、魔導将軍」アアアアアア、モッタイナイ

魔導将軍「うん……なんか寂しいね。嬉しいはずなのに」




76名も無き被検体774号+2013/02/05(火) 11:48:56.14 ID:DT9mWhj70

側近「……だな」
魔導将軍「魔王様は?」
側近「……そろそろ、やばいな」
魔導将軍「そっか……」
側近「最後かもな」

魔導将軍「……ん」
側近「今日は……一緒に寝るぞ」
魔導将軍「いやんえっち♪」
側近「……多分、明日はもう」
魔導将軍「……」ギュ

側近「喜べよ、魔導将軍……俺たちは喜ばなきゃいけねぇだろ?」
側近「泣くな、喜ぶんだ……喜ばなきゃいけねぇんだ!」
魔導将軍「分かってる。わかってるよ……!でも、側近…ッ」
側近「……祈ってやれ。運命の子の為に」
魔導将軍「この、腐った世の中に、光を……ッ」ウワアアアアアン




77名も無き被検体774号+2013/02/05(火) 12:02:46.09 ID:f30NN4ks0

この先何が待ってるんだ…
純粋に楽しんでいますよ




78名も無き被検体774号+2013/02/05(火) 12:03:46.05 ID:TkAuT5wyP

楽しいです




79名も無き被検体774号+2013/02/05(火) 12:36:29.03 ID:DT9mWhj70

数ヶ月後

勇者「街だ。街が見えた!」
魔法使い「酒!酒!お風呂!」
僧侶「ごはん……おやつ……」
戦士「……俺も、おやつ」

町長「おぉ、これは勇者様!ようこそいらっしゃいました!」
勇者「あぁ、町長、か……とりあえず、宿、どこ……」
魔法使い「風呂、先だってば…いや、酒……」
僧侶「ご飯、ごはん……うぅぅう」
戦士「糖分が足りん……」

町長「え、あ、あの……」テイウカコイツラクサイ
町長「ゆ、勇者様御一行を宿へ案内しろッ湯を沸かし、宴の用意だ!」ツライタビダッタンダロウガ……ホントウニクサインデスケド

……
………
…………
女湯
魔法使い「生き返るー!!」チャポーン
僧侶「魔法使いさん、早く出ましょう……お腹すいて、死んじゃう」グゥ

男湯
戦士「……至福」カポーン
勇者「戦士、先に身体洗えよ!匂いが……ッ」オユニヨゴレガッ




80名も無き被検体774号+2013/02/05(火) 12:38:46.75 ID:DT9mWhj70

……
………
…………

勇者「では、一月ぶりの街での宴に」
戦士「温かい風呂に」
魔法使い「美味しい食事に」
僧侶「暖かいベッドに」

「「「「乾杯!」」」」

勇者「……いや、しかし参ったな」モグモグ
戦士「ゾンビとだけはもう戦わん」ムシャムシャ
魔法使い「だから下がれって言ったのに……魔法の詠唱中に飛び出していく戦士が悪い」ノウキンメ
僧侶「で、でもまさか切ったら爆発するとは……」センシサンノセイジャナイデス
勇者「腐敗ガスが飛散、まさに悲惨」ドヤ
戦士「剣が汚れた」ウマイコトイッタツモリカ?
魔法使い「しかも道に迷うとか」チズミナサイヨ
僧侶「あれは魔法使いさんの所為ですよ」イキナリニゲダスンダモノ
魔法使い「だ、誰だって混乱するわよ、あんな汚物頭から被ったら…」アンタモサケンデタデショ




83名も無き被検体774号+2013/02/05(火) 12:58:21.46 ID:DT9mWhj70

勇者「まぁまぁ、無事に着いたし匂いも取れたし」ウマカッタ。コーヒー
魔法使い「結果オーライ?暢気ねぇ」ワタシワイン
僧侶「良いじゃありませんか、久しぶりに布団で休めるんですし」パフェー、フタツー、イチゴトチョコ
戦士「ところで……ここから先は?」サケハダメダトイッタダロ、アホ

勇者「うん……それなんだけど」
勇者「さっき、町長に北の塔に行ってくれないかと頼まれた」
魔法使い「北? ……この町って、大陸の最北端じゃない、塔なんて……」
勇者「……船で渡るんだ」
僧侶「船、ですか……」
勇者「ああ、用意はしてくれるらしい。古いとはいってたけどね」
戦士「理由は?」
勇者「黒い影の目撃が増えてる。今のところ害は無いが、大きな翼を持っているらしい」
僧侶「魔物……ですかね」




84名も無き被検体774号+2013/02/05(火) 13:02:41.35 ID:DT9mWhj70

魔法使い「害が無いとは言え……放っておけない、わね」
勇者「聞いた以上ね」
勇者「多数のコウモリを伴って飛来するらしい。住民が怯えてる」
戦士「そこに現れた光の勇者様にすがる以上の安心は無いな」
僧侶「コウモリ……というと、サキュバスの使いですかね、一般的には」
僧侶「魔王の居城も………北の果て、最果ての地」
勇者「ここは魔王の城から近くは無い。が……」
魔法使い「遠くも無い」
戦士「レベルは……もう少し上げておいた方が良いだろうな」
勇者「うん……丁度良いだろう」
魔法使い「たかが、数ヶ月前は……四人そろってピイピイ言ってたのにねぇ」




85名も無き被検体774号+2013/02/05(火) 13:08:36.77 ID:DT9mWhj70

勇者「……俺たちは確かに強くなった。だけど満足するレベルってのはどこだ?」
僧侶「分かりませんね……己の限界を感じられるまで、でしょうか」
戦士「レベル上限まで言ったところで、それは安心とイコールじゃ無い」
魔法使い「どこまで行っても不確定な物よ、満足なんて。諦めない限りね」
勇者「安心は……魔王を倒したときに実感する物だと、俺は思う。世界に平和をもたらすこと」
勇者「一つ、皆に質問したい……が、答えは今言わないで欲しい」
戦士「……?」
勇者「俺も、俺なりに考えたんだ。だけど……正解があるのか否か、答えが一つなのかすら分からない」




87名も無き被検体774号+2013/02/05(火) 13:19:25.03 ID:DT9mWhj70

勇者「この旅の間、皆には色々な事を教えてもらった」
勇者「街から街へ。色々な経験をし、知識を増やした」
勇者「そして……原点が分からなくなった」
僧侶「原点……」

勇者「始まりは……どこだ?」

魔法使い「無謀な問いね……」
勇者「……僧侶、覚えてるか?」
僧侶「はい……?」
勇者「初めて野営をした次の日。俺に勇者の印を見せてほしいと言ったときの、話だ」
僧侶「勿論、です」


……
………
…………




88名も無き被検体774号+2013/02/05(火) 13:27:55.54 ID:DT9mWhj70

僧侶「勇者様、一つお願いがあるのですが……よろしいでしょうか?」
勇者「うん……?何かな」
僧侶「勇者の印を……お見せ戴けないかと」
勇者「ああ……別に良いけど」
僧侶(右手の手のひらに……光る、剣の印)
僧侶「とても……強い力を感じます。混じり気なしの光、そのもの」

勇者「……前に、君と魔法使いが言ってたよね。なんだっけ……光の属性は勇者だけ、だとか」
僧侶「はい……あのとき、説明しようかと思ったのですが……」
僧侶「勇者様は、勇者が世界に一人しか存在しないこと。そして、その選ばれし勇者だけが光を使役できることは……」
勇者「俺は…恥ずかしながら、属性だとか、加護だとかそういうのは知らなかった」
勇者「勇者が世界に一人だと言う事は知ってた。それは親父……元勇者が死んだって事だからね」
僧侶「はい……」
勇者「先に一つ、聞きたい。勇者は……勇者からしか産まれないのか?」
僧侶「はい、と確かに応えることはできません。今の勇者様のケース以外を確かにこの目で見たわけではないので……」




90名も無き被検体774号+2013/02/05(火) 13:32:57.73 ID:DT9mWhj70

勇者「そうか……」
僧侶「ですが、勇者が産まれると言う事は、魔王もまた……産まれると言う事なのです」

勇者「!?」

僧侶「それが新たな誕生なのか、復活なのかは分かりません」
僧侶「勇者と言う存在がある限り、魔王もあるのです。逆も……然りでしょう」
勇者「もし、もし……俺が死んだら…?」
僧侶「何年か、何十年か、何百年か……いつかまた、勇者様がお生まれになるのでしょうね」
勇者「……じゃあ、死ねないな」
僧侶「勇者様…?」
勇者「俺が魔王を倒して、終わりにしなきゃいけない」
僧侶「……はい、しかし」

勇者「魔王はまた、復活する?」
僧侶「………」




91名も無き被検体774号+2013/02/05(火) 13:41:03.40 ID:DT9mWhj70

勇者「俺の親父は強かった……らしい。母曰く、だが」
僧侶「……存じております。お話の上で、ですが」
勇者「ああ。倒しきれなくて復活したとすれば……俺は、親父以上に強くならなければいけない」
勇者「俺がしくじると、時代の勇者に迷惑がかかる」
僧侶「……強く、なりましょう、勇者様」
勇者「ああ……そうだな」
僧侶「まだ、魔王に目立った動きはありません。しかし……」
勇者「魔物を野放しにするわけにも行かないからな」
僧侶「はい。人の子の身に、時間は無限ではありません。でも……」
勇者「焦らず、確実に。だが迅速に」
僧侶「はい。平和をもたらしましょう」




92名も無き被検体774号+2013/02/05(火) 13:43:43.77 ID:DT9mWhj70

……
………
…………

魔法使い(そんな話をしてたのね)
戦士「……」ムゥ
僧侶「戦士さん…どうしたのですか?」
戦士「その話は……おかしく無いか?」
勇者「そう……あのときは気がつかなかった。否、深く考えなかった」

魔法使い「………」
僧侶「………」
勇者「僧侶も何も言わなかった」
勇者「多分……僧侶も魔法使いも、博識だ。気付いていたんだろう」
勇者「戦士が、今言ったとおりだ」

勇者「時間が合わないんだよ」




93名も無き被検体774号+2013/02/05(火) 13:49:14.58 ID:DT9mWhj70

勇者「俺は、勇者の印を持って生まれたと母が言ってた。て、事は」
勇者「親父は遅くても俺が腹の中に居る間に死んでたことになる」
勇者「だが、産まれたときからこの印がある、と言う事は……」
魔法使い「魔王が存在する故に、勇者が産まれるのだとしたら」
魔法使い「既に魔王は復活、ないし産まれていた」
勇者「……そうだ。俺は、確かに16歳だ。親父は……人間だ。元勇者だ」
勇者「俺は、母から何時も聞かされていた。親父は元勇者。前魔王を倒したのだと」




94名も無き被検体774号+2013/02/05(火) 13:54:16.85 ID:DT9mWhj70

戦士「……勇者が産まれたから、魔王が産まれると言うのは?」
僧侶「それも時間が合いません。勇者様は……人間です」
僧侶「まだ、16歳です」
僧侶「魔王が復活したのは……何時ですか?」

戦士「……王が出したお触れの内容だ。魔王が復活して…既に」
魔法使い「50年は軽く超えた。私達は、勇者のお父様が先代の勇者だとは知らなかった」
僧侶「勇者の血を引く者しか、勇者になれないとしたら」




95名も無き被検体774号+2013/02/05(火) 13:59:53.62 ID:DT9mWhj70

僧侶「何時、貴方のお父様とお母様は、貴方を授かったのでしょうか、勇者様」

魔法使い「僧侶……!?」
僧侶「これは私の勝手な妄想です。あり得ない話です。ですが……」
僧侶「50年前。勇者様が授かり、前勇者様が天に召された」
僧侶「そして、お母様が貴方を連れて、時を超えていらした」

勇者「………」
戦士「………」
魔法使い「………あり得ないと言い切れないわね。説明は付く」
魔法使い「でも、そんな事を認めてしまうと、何でもこじつけられるわよ」
魔法使い「お腹の中で50年、暖めてた、とかね」
僧侶「そう、ですね……」




96名も無き被検体774号+2013/02/05(火) 14:04:23.12 ID:DT9mWhj70

戦士「……王は知っていたのか?」
勇者「え?」
戦士「お前の父が前勇者だと言う事を、だ」
戦士「知らねば、あのお触れには納得がいく」
戦士「たとえば、お前の母が勇者の印を授かった息子を連れて、16年前にあの国に来た」
戦士「王国は無条件で手厚く保護するだろう。確かな印を持っているのだから」

魔法使い「お触れの説明は付くけど、勇者様の出生の謎の解決にはなってないわよ、戦士」
僧侶「……知らぬ事は恥ではありませんよ、皆様」
勇者「は?」
僧侶「わからないなら、聞きに行けば良いんです。北の塔に出向いた後」
僧侶「レベルアップを兼ねて、私達の街に戻りましょう?」
僧侶「船も貸して戴けるんですし、距離的に陸を行くより近いです」
魔法使い「……はぁ、まあそうだけど」




97名も無き被検体774号+2013/02/05(火) 14:07:12.24 ID:DT9mWhj70

僧侶「北の塔を攻略後、魔王の城に出向くなら」
僧侶「その前に世界を見て回りましょう」
僧侶「……もしかしたら、魔王と勇者様のその……不思議な出生の秘密を」
勇者「解く鍵が見つかるかもしれない、か……」
魔法使い「ふむ」
戦士「……時間があるか?」

僧侶「大丈夫です。多分……」
魔法使い(僧侶……多分、まだ何か隠してるわね)
魔法使い(……後で問い詰めてみるか)




98名も無き被検体774号+2013/02/05(火) 14:10:43.39 ID:DT9mWhj70

勇者「………良し。答えを今出さないで欲しいと言ったのは俺だ」
勇者「今日はゆっくり休んで、明日、北の塔に出発しよう」
勇者「午前中に道具や装備の補充、準備を整えてくれ」
勇者「北の塔にも……答えの欠片が落ちているかもしれないな」
魔法使い「そうね……とりあえず目の前の問題から片付けましょうか」
僧侶「……はい」
戦士「俺はもう少し、鍛錬をしてくる」ガタッ
勇者「俺は………部屋へ戻るよ」ガタン
魔法使い(……今しか無いわね)
魔法使い「僧侶、ちょっと良い?」
僧侶「はい……お部屋で、良いですよね」
魔法使い(……分かってるみたいね)




99名も無き被検体774号+2013/02/05(火) 14:15:13.95 ID:DT9mWhj70

僧侶と魔法使いの部屋

魔法使い「貴女……何か知ってるわよね?」
僧侶「そうですね……多分、魔法使いさんより、少しだけ」
魔法使い「……教えて貰えるのかしら」
僧侶「全部、お教えします……が、勇者様と戦士さんには…」
魔法使い「黙っておけと?」
僧侶「はい……それから、時間を下さい」
魔法使い「は!?」
僧侶「今、全てを告げるわけには。ですが……少しだけ」
魔法使い「なんなのよ、それ……」
僧侶「……私、幾つに見えます?」
魔法使い「アンタ……何言って」
僧侶「知りたく、ないんですか?」
魔法使い「…ッ ……勇者様と同じぐらい、か…もう少し下。見た目は、ね」
僧侶「ですよね。やはり、気がついていらっしゃいましたか?」

魔法使い「………人じゃ無いでしょ、貴女」
僧侶「………はい」




100名も無き被検体774号+2013/02/05(火) 14:21:50.92 ID:DT9mWhj70

魔法使い「………」
僧侶「……私は、孤児です」
魔法使い「ええ……」
僧侶「神父様に幼い頃、保護されました。エルフの弓を抱いて、泣いていたそうです」
僧侶「神父様は、亡くなる前に仰いました。私を抱いて息絶えていたのが、多分母……水の加護を持つ、エルフの娘だったそうです」
魔法使い「……私、あの初めての野営の日、貴女を羨んだわ。優れた加護を持つ、癒やしの手である貴女に」
僧侶「………」
魔法使い「確かに、人であっても……素晴らしい加護を受ける事はあるでしょう。だけど…」
魔法使い「エルフの血を引いているのならば、納得させやすかった。私とは……人、とは違うのだもの」
僧侶「……」




101名も無き被検体774号+2013/02/05(火) 14:29:44.12 ID:DT9mWhj70

僧侶「私は……そうですね。多分、60歳ほどだと思います」
僧侶「前魔王、そして、前勇者様の命の火の……消えていくのを、感じることが出来たんです」
僧侶「その頃の私は、知識もなかったので、今から考えると、ですが……」
僧侶「多分……」
魔法使い「その先は、今は言えない、って言うのね?」
僧侶「確信はないんです。さっき仮説として申し上げたのも、本気です」
魔法使い「……?」
僧侶「16年前に、確かに勇者様の命の芽吹きを感じ取ったんです」
僧侶「なので……まだ、分からないから、言えない、んです」
魔法使い「さっき、全部教えるって言ったじゃないの」
僧侶「……確かに、全部は申し上げていません。ですが……」
僧侶「分からないのも、本当なんです」
魔法使い「……エルフの言う事は難解だって聞くけど、確かね」
僧侶「私はハーフエルフですよ。多分、ですけど。父を知らないので」
魔法使い「え?でも……」
僧侶「エルフは、癒やしの魔法は使えません。ご存じでしょ?」
魔法使い「あ……!」




102名も無き被検体774号+2013/02/05(火) 14:36:44.72 ID:DT9mWhj70

僧侶「癒やしの魔法は、弱くて強い、人間の特権です」
僧侶「初級魔法講座で習いますよ」クス
魔法使い「……ああ、もう認めるわ」
僧侶「はい?」
魔法使い「貴女には勝てないわ……ねぇ」
僧侶「??」
魔法使い「この旅が終わったら、本当に家にいらっしゃいよ」
僧侶「あ…是非!」
魔法使い「その代わり、私にも色々教えてよ?」
僧侶「勿論です! ……あ、あの」
魔法使い「ん?」
僧侶「その、私がハーフエルフ、多分、て事は……その」
魔法使い「ああ、内緒にしとけって話ね」
魔法使い「言わないわよ、信じなさい」
僧侶「は、はい……その、自分の口から、言いたいんです」




103名も無き被検体774号+2013/02/05(火) 14:42:29.10 ID:DT9mWhj70

勇者の部屋

勇者(考えても答えは出ない)
勇者(……分かってる、んだ。だが……)
勇者(くそ…ッ)
勇者(………)

コンコン

勇者「……はい?」
戦士「まだ起きてたか」
勇者「ああ……鍛錬は終わったのか?」
戦士「考えるな、と言うのは無理だろうが」
勇者「ああ……」
戦士「魔法使いの言うとおりだ。目先の事を片付けよう」
戦士「で、だ……最悪、世界を回っても答えが見つからなくても」
勇者「……?」
戦士「魔王に聞けば分かるんじゃないか?」
勇者「………」ポカーン
戦士「なんだ、その馬鹿面は」
勇者「……脳筋スゲェ」ポカーン
戦士「……」ムス
勇者「いや……うん、ありがとう」
戦士「フン。さっさと休めよ」
勇者「ああ……ああああああああ!」ガバッ
戦士「な、なんだ」ビク
勇者「町長に呼ばれてたの忘れてた!」バタバタッバタン!
戦士「……人の事言えるのか、あいつは」クックック




104名も無き被検体774号+2013/02/05(火) 14:49:16.86 ID:DT9mWhj70

魔王城

??「久しぶりね、魔導将軍」
魔導将軍「あ………ッ」
??「……側近は?」
魔導将軍「今……一人で」
??「そう……今日、貴女と話す時間はあるのかな」
魔導将軍「残念だけど……無理かな。今朝、出発したみたいだから」
??「行くのね」
魔導将軍「うん……后様はまだ駄目だよ」
后「そう、だね……まだ」
魔導将軍「大丈夫だよ。戻るから」
后「うん……」
魔導将軍「死ねないからね、戻る迄は」
后「………」
魔導将軍「後で、話そうね」
后「うん、そうだね……」
魔導将軍「大丈夫。私達とは違う」
后「特異点……?」
魔導将軍「そう。やっと」
后「前代未聞」フフ
魔導将軍「やっと断ち切れる……と、良いな」
后「……そう、だね」
魔導将軍「……行くね。後で」
后「うん、後で」

バッサバッサバッサバッサ………

后「……この腐った世の中に、光を」




106名も無き被検体774号+2013/02/05(火) 15:12:04.79 ID:DT9mWhj70

魔法使い「……ねぇ」
勇者「……なぁ」
戦士「僧侶、大丈夫か?」サスサス。フナヨイハツライナ
僧侶「あ、ぁう……す、すみませ……ッ」オーエー……モウハクモノナイ
魔法使い「塔のてっぺん、見えないけど」
勇者「見えないな」
戦士「我慢するな、ほら水」ヨシヨシ
僧侶「あ、ありがとうございます…」ゴクゴク……ッ ウ、オーエー…モ、ダメ
魔法使い「これ上るの!?」
勇者「……無理かな」
戦士「…おぶって上るか」ホラツカマレ
僧侶「あ、歩けます…」ハズカシイ…
魔法使い「諦め早ッ」
勇者「いや……入り口が見当たらん」
魔法使い「え?」
僧侶「え?」
戦士「え?」

勇者「いや……まじで」




107名も無き被検体774号+2013/02/05(火) 15:17:21.24 ID:DT9mWhj70

??「足で上ろうったって無理よ~落ちたら死んじゃうわよ」

勇者「!? 何処から…ッ」

バッサバッサバッサ……スタッ

勇者「後ろか…ッ」バッ、シャキッ
魔導将軍「はいはい、物騒な物しまってね、別に攻撃する気ないから」
戦士「お前……何者だ?」グッ
魔法使い「そんな言葉……信じられると思うの?」スー、シンコキュウ
魔導将軍「あらあら。余裕ないなぁ……」
僧侶「あ、貴女は……待って下さい、皆さん!」

魔導将軍「うん、僧侶ちゃんには隠せないよねぇ」
勇者「……し、知り合い、か?」
僧侶「…………」
魔法使い「……何で、名前まで」
魔導将軍「戦士君に魔法使いちゃんも落ち着いて、ね?」
戦士「むぅ……」

魔導将軍「さて、勇者君」
勇者「………僧侶、こいつは…誰だ?」

僧侶「……皆様、知っている方、ですよ?」




109名も無き被検体774号+2013/02/05(火) 15:32:04.04 ID:DT9mWhj70

僧侶「お久しぶりです……事務員さん」
魔導将軍「見違えたわね、みんな」ニコ

勇者「じ……」
魔法使い「事務員!?」
戦士「……まさか」
僧侶「……」
魔導将軍「答えから言うと、正解……でもさ、僧侶ちゃん、一つだけ質問。ね?」
僧侶「……何でしょう」
魔導将軍「あの時、私は完璧に魔族の力を封印してた。どうして分かったの?」
僧侶「……魔力、は関係ありませんよ。事務員さんと貴女が同じ、と……」
魔導将軍「感じ取った、ね。流石ね……」
僧侶「驚いているんですよ?私……まさか、って…まさか、魔族だったなんて」
魔導将軍「うん、そうね……心臓、ばくばく言ってるモンね」
僧侶「!!」
戦士「僧侶……俺の後ろへ」ス…




110名も無き被検体774号+2013/02/05(火) 15:38:14.85 ID:DT9mWhj70

僧侶(……心臓が飛び出しそう。これほど……強い、力……)
魔法使い(殺気は感じない……なのに、何なの、この…圧倒される…!!)
戦士(肌を刺すぴりぴりしたこの力……隙が、ない)
勇者(これが…事務員!? そして、魔族……魔王の……手下…?)

魔導将軍「そんな黙り込まなくても……もう」
魔導将軍「まあ、予定通り会えて良かったわ…みんな、見違えたわね」
勇者「何が……目的で、あの街に姿を現した…?否」
勇者「何故、あんな……何がしたいんだ!」
魔導将軍「落ち着きなさい、勇者君。貴方は勇者なのよ?」
魔導将軍「光に導かれし運命の子。その君が取り乱してどうするのよ」

勇者「く……ッ」

魔導将軍「あの街に行ったのは、君たちをここへ呼び出すため」
魔導将軍「あんなこと、って……始まりの街の事務員に化けた目的、ね?」
魔導将軍「勿論、魔王様を討伐してもらうためよ……さて。他に質問は?」




111名も無き被検体774号+2013/02/05(火) 15:44:29.05 ID:DT9mWhj70

魔法使い「ふ、ふざけないでよ!貴女、魔王の手先なんでしょ!?」
勇者(何が……何が目的なんだ?)
僧侶(………)ビクビク
戦士(魔王は、これ以上…ッ)

魔導将軍「あー、まぁ、ねぇ…うーんと。色々教えてあげたいけど」
魔導将軍「残念ながらあんまり時間が無いのよねー」
魔導将軍「質問は一人三つまで。ね?魔法使いちゃんの今のはサービスしとくわ」

勇者「……本当に戦闘する意思はないんだな?」ス……
魔法使い(勇者!?剣を下ろすなんて……ッ)
魔導将軍「そう言ったでしょ?……今のもサービスしとくわ」
勇者(…確かに殺気は感じない。信じて……良いのか?)
僧侶「……大丈夫ですよ。もし、襲うつもりなら私を真っ先に攻撃したでしょうし」
僧侶「手の内を明かしませんよね?事務員さん」
魔導将軍「流石聡明ね、僧侶ちゃん……ちなみに、私は魔導将軍よ」
魔法使い「魔導将軍……」
魔法使い(こいつ……こいつも炎の使い手……でも、この力は……ッ私との、差は……)

魔導将軍「ねぇ、質問……本当にないの?」




112名も無き被検体774号+2013/02/05(火) 15:49:11.89 ID:DT9mWhj70

戦士「……僧侶は、どうしてお前の正体がわかったんだ?」
僧侶「!!」ビクッ
魔導将軍「そうねぇ……」チラ
僧侶「……」
魔導将軍「それは後で直接聞きなさい。説明するには時間がかかるし……僧侶ちゃんの口から聞いた方が信じれるでしょ」
魔法使い(こいつ……僧侶の正体を知ってる…!)
勇者「お前は、魔王の手下で間違いないんだな?」
魔導将軍「んー、ちょっと違う。私は魔王様の仲間。君たちと一緒だね」
勇者「…ッ 一緒にするな!」
魔導将軍「やだ、睨まないでよぅ……寂しいなぁ」
魔法使い「魔王は……どうして世界を滅ぼそうとするの?自分の縄張りで大人しくしていれば良いじゃない!」
魔法使い「北の果ての果て、なんて……普通の人間にはたどり着けないのよ!?」
魔導将軍「でも、君たちはたどり着く。そして、魔王を倒すの」
勇者「………!?」




113名も無き被検体774号+2013/02/05(火) 15:54:18.87 ID:DT9mWhj70

魔導将軍「……ああ、一人三つって言ったけど、駄目ね、ギリギリ。時間が無いわ」
魔導将軍「御免、嘘になっちゃった。信用してもらおうと思って嘘吐くつもりはなかったんだどなぁ…」
魔導将軍「あのね、魔王様は世界を滅ぼすなんて一言も言ってないよ?」
戦士「……!?」
魔導将軍「それは……君たち人間の大いなる勘違い。でも、これだけは言える」
魔導将軍「勇者は、魔王を倒す」
魔導将軍「………あー、やばい。もう戻らなきゃ」バサッ
勇者「…ッまて……!」
魔導将軍「………大きくなったね、勇者君」
勇者「……!?」
魔導将軍「ここから、ずっと北。最果ての街のさらに奥、最果ての城。魔王様の居場所」
魔導将軍「また、後でね?」
勇者「……ッ 待て…ッ」
戦士「やめろ、追うな…ッ」
魔法使い「………」
僧侶「………」




117名も無き被検体774号+2013/02/05(火) 20:14:34.11 ID:DT9mWhj70

勇者(どういうことだ……大きくなった?あいつと……事務員とあったのはつい数ヶ月前だ)
勇者(いや、そもそも……事務員…なのか?いや……でも僧侶が……)
勇者(………僧侶に)バッ

魔法使い(……僧侶には分かる、ていうのは理解できる。あの話を聞いたから)
魔法使い(でもどうして……あいつがそれを知ってるの!?)
魔法使い(……ッ力の、差…ッ私は……ッ 僧侶ッ)バッ

戦士(どういうことだ……あいつは、僧侶の口から聞け、と言った)
戦士(それよりも、あいつの言っていたことは、一体……!?)
戦士(魔王は……滅ぼすとは…言っていない?勘違い…!? …僧侶!)バッ

僧侶「……そんな、一斉に振り向かれなくても」
勇者「僧侶」
魔法使い「僧侶……」
戦士「……そう、りょ」

僧侶「ハイ……知っている事は全て、お答えします」
僧侶「魔法使いさん、約束……守って下さったんですね。ありがとう……ございます」




128名も無き被検体774号+2013/02/06(水) 00:33:30.01 ID:tlUoAAAJ0

勇者「魔法使い…?」
魔法使い「……」フイ
戦士「何か、知ってるのか」

僧侶「魔法使いさんは、私の……その、正体に気付かれていたんです」
僧侶「言わないで欲しいとお願いしてただけです。あの……ごめんなさい」
戦士「正体、って……なんだ。僧侶、お前まさか……ッ」
僧侶「ええと……あの、私が魔物の仲間だったとか、そういうのじゃないですよ?」
僧侶「そりゃ、私……人間、じゃないですけど……」

勇者「!?」
戦士「人間じゃない、だと!?」
魔法使い「………」

僧侶(そりゃ……驚きます、よね)




130名も無き被検体774号+2013/02/06(水) 00:41:55.84 ID:tlUoAAAJ0

僧侶(戦士さん……)チラ
僧侶(……疑われるのも辛いけど)
僧侶(嫌われるのはもっと怖い)

僧侶(でも………!)

僧侶「私は、ハーフエルフです……多分、ですが」
勇者「ハーフ、エルフ?」
戦士「………」
僧侶「順番に、お話しします」

僧侶「この……エルフの弓と共に、とある森の奥の教会の傍で、神父様に拾われ、育てられました」
僧侶「私を抱いて息絶えていた水の加護を持つエルフの娘が、私の母だと思います」
僧侶「父はわかりません。恐らく人の子であると推測はできますが……」
僧侶「神父様は亡くなる直前に、それを私に教えてくれました」
戦士「……どうして、父親が人の子だとわかる?エルフ族は人に干渉しない、と聞いたことがあるぞ」ギロッ
魔法使い「……ッ戦士、それは……」
僧侶「良いんです、魔法使いさん。ちゃんと順番に話しますから」
僧侶(戦士さんに睨まれると……心が、痛い)

勇者「……」




131名も無き被検体774号+2013/02/06(水) 00:48:19.07 ID:tlUoAAAJ0

僧侶「エルフは、確かに人の子に干渉するのを嫌います」
僧侶「……人より遙かに長い寿命を持つと言われていますから、嫌うと言うより、干渉すべきでないと言う考えなのかもしれません」

勇者「そうなのか……?」
僧侶「……はい。文献での知識、なので確かなことはわかりませんが」
僧侶「私は、自分以外のエルフ……ハーフエルフも含めて、ですが」
僧侶「会ったことがないので」
僧侶「血の半分が人の子であろうと言う根拠は……」

僧侶「癒やしの魔法は、人間だけに許される特権だから、です」
魔法使い「……私もすっかり忘れてたんだけど」
魔法使い「魔法に携わる者なら、知ってて当たり前の知識なのよ」
魔法使い「もし僧侶がエルフだったり、エルフと魔族のハーフだったりした場合」
魔法使い「……回復魔法は使えないの」

魔法使い「だから……僧侶は……魔物の仲間なんかじゃないのよ!」
魔法使い「いい加減、睨むのやめなさい! …ッ仲間に、そんな目……向けないで!戦士!」

戦士「………ッ」




132名も無き被検体774号+2013/02/06(水) 00:53:26.47 ID:Uxc+iLCi0

これは面白い
楽しみが増えた




133名も無き被検体774号+2013/02/06(水) 00:54:19.66 ID:tlUoAAAJ0

僧侶(泣いちゃ駄目。まだ駄目)
僧侶(神父様にも言われた。何かを訴えるとき、謝るときや、真実を伝えるとき……)
僧侶(涙は、疑いの元になる……ッ)グ…ッ

勇者「……僧侶が、人じゃない、ハーフエルフ、だと言うのは分かった」
勇者「でも、どうして隠してたんだ?」
勇者「魔族の仲間だと疑われるのが……いやだったのか?」

僧侶「いいえ……そういうわけではないんです。その……」
僧侶「私は……既に、60年ほど生きています」
戦士「!?」
勇者「ろ……く、じゅ…うねん?」
僧侶「……はい。50年ほど前、前魔王の気配と、前勇者様の気配が失われるのを感じました」
僧侶「その時の私はまだ幼かったので、本当に感じただけだったのですが」
僧侶「そういう……何かを感じる、と言う力に、長けている、んでしょうね」
僧侶「だからさっき、事務員さ……魔導将軍の事を、知っている気配だと感じた、んです」
魔法使い「魔族だとは分からなかったと言っていたわね。あれは……どういうこと?」




135名も無き被検体774号+2013/02/06(水) 00:59:48.23 ID:tlUoAAAJ0

僧侶「始まりの街で会った事務員さんと、さっき目の前にいた魔導将軍が同一人物であると感じた、んです」
僧侶「……魔導将軍から感じる魔力は、凄まじいものでした」
魔法使い「……」
勇者「……」
戦士「……そうだな、それは俺にも感じた。魔力には疎いはずの俺にも…分かるほど」
僧侶「はい。あれだけの魔力の持ち主ならば、彼女の言うとおり、完全に魔族の力を封印していた、と言うのも……納得できませんか?」
勇者「……成る程」
僧侶「そして、勇者様」
勇者「なんだ……?」
僧侶「私は、16年前、貴方の命の芽吹きを確かに感じました」
僧侶「なので……先日、私が申し上げた仮説……貴方のお母様が、時を超えていらしたのではないかと言う、あれ……」
僧侶「……割と、本気なのですよ」
勇者「……そ、んな」
魔法使い「……」
戦士「……」




137名も無き被検体774号+2013/02/06(水) 01:07:11.83 ID:tlUoAAAJ0

僧侶「魔法使いさんにお話ししたのは、ここまでです。ね?」
魔法使い「ええ……そして、勇者様と戦士に黙ってろと言われたから、私は言わなかった」
僧侶「はい。ありがとうございます」
魔法使い「で……僧侶、貴女あの時、言えるのはここまで、って言ったわよね」
魔法使い「続き……今日は聞かせて貰えるのかしら?」
僧侶「……はい、勿論です」

僧侶(ごめんなさい、戦士さん、魔法使いさん……勇者様)

勇者「その前に……」
僧侶「はい?」
勇者「一つだけ、聞かせてくれ」
勇者「さっき僧侶は、どうして奴……魔導将軍の、危害を加える気は無い、って奴を信じた?」
戦士「……ああ、それは俺も聞きたい」チャキ
魔法使い「……ッ戦士」
戦士「密通を疑われてもしょうが無いだろう、魔法使い。あれほど……実力差を感じながら」
戦士「緊張に震えているのは……伝わった。だが……恐怖は伝わらなかった。僧侶、応えろ」
戦士「……返答次第で、斬る」チャキン

僧侶(……切っ先から伝わる、戦士さんの殺気と、戸惑いと……これは、悲しみ?)
僧侶(動けば、首をかききられるな……)
僧侶(……悲しみ…どうして?)

僧侶「言ったとおり、なんです、戦士さん」




138名も無き被検体774号+2013/02/06(水) 01:12:33.31 ID:tlUoAAAJ0

僧侶「彼女……魔導将軍は、私が感じる事を知っていました。気付いていました」
僧侶「手の内を明かす……私の口から、事務員さんが魔導将軍であるとばらしたくなければ」
僧侶「私の口を封じます……力の差は歴然です。容易いです」
僧侶「貴方達を恐怖で支配してから、ゆっくり……言葉を、告げられますよ」
魔法使い「……それに、もし仲間を殺された私達が激昂して襲いかかったら」
魔法使い「一瞬で私達、全員皆殺しにされてたわよ」
勇者「……ああ、そうだな。そうしたら、彼女の目的が達成されない」
僧侶「はい。だから魔導将軍は、話にきた……殺気を感じませんでした。だから……」
戦士「……ッしかし!」
魔法使い「しつこいわね、この脳筋!理解しなさいよ!」
勇者「魔法使い……落ち着け」
戦士「……ッ 頭を、冷やしてくる…ッ」クルッ スタスタスタ
僧侶「あ……戦士さん…ッ」




139名も無き被検体774号+2013/02/06(水) 01:18:07.53 ID:tlUoAAAJ0

魔法使い「放っておきなさい、僧侶……すぐ戻ってくるわよ」
僧侶「でも……」
勇者「俺が見てくるさ。魔法使い、僧侶を頼む」スタスタスタ
僧侶「……」
僧侶(泣いちゃ……駄目ッ)グス
魔法使い「……大丈夫よ。二人なら……モンスターが出たってどうにかするわ」フゥ
僧侶(グス……ひっく)
魔法使い「僧侶……」ギュ
僧侶「……ッ」
魔法使い「……大丈夫。大丈夫よ。ちゃんと……二人とも貴女を信じてる」
魔法使い「私達は仲間……大事な仲間でしょ?」
僧侶「…ッ ま、ほ……つか……さ………ッ」
魔法使い「……」ナデナデ
僧侶「わ、わかってます……信じて、くれるって信じて……ッ」
魔法使い(……僧侶)
僧侶「でも、痛い……痛いんです。胸が……戦士さん、に、にら、にらまれ……ッ」
僧侶「……戦士さんから、悲しみを感じ、ました……そしたら、胸……ッ いた、く……て!」




140名も無き被検体774号+2013/02/06(水) 01:21:49.45 ID:tlUoAAAJ0

魔法使い「……僧侶、貴女」
僧侶「はい……?」ヒック
魔法使い「戦士が好きなのね?」
僧侶「……!?」ビクッ
魔法使い「……違う?」
僧侶(戦士さんが、好き……ああ、そうか、だから……)
僧侶(だから……戦士さんに、嫌われるのが怖いんだ)
僧侶「……多分。良く、わかりません、けど……多分……」
魔法使い「……貴女、こんなに聡いのに、そういうのには鈍感なのね」クス
僧侶「………」
魔法使い「大丈夫。戻って来てまだぐだぐだ言う様なら」
魔法使い「私があの脳筋、丸焦げにしてやるわ」クス
僧侶「……そ、それは、駄目です」クスクス




141名も無き被検体774号+2013/02/06(水) 01:27:12.17 ID:tlUoAAAJ0

魔法使い「ほら、泣き止みなさい。まだ……全部聞いてないわよ」
僧侶「……はい!」ゴシゴシ
魔法使い「あいつら何処まで行ったのかしらね……」
魔法使い(勇者がいるから、宥めて帰ってくると思うけど)
僧侶「遅いですね……あ」

戦士「………」
勇者「……ごめん、大丈夫だったか?」
魔法使い「遅いわよ」
勇者「ひとまず、街へ戻ろう。今……モンスターに襲われるのはまずい」
勇者「……じき、夜も明ける」
魔法使い「そうね……船で続きを話しましょう」
勇者「ああ……良し、戻ろう」

勇者(士気がガタガタだ。魔導将軍……お前の狙いは、これなのか?)
勇者(しかし……引っかかる)
勇者(勇者は魔王を倒す……何故、魔王の手先がそんな事を?)




142名も無き被検体774号+2013/02/06(水) 01:38:24.47 ID:tlUoAAAJ0

船上・甲板

魔法使い「……何を話してたの?」
勇者「ん?」
魔法使い「ん、じゃ無いでしょ」
勇者「まあ……色々」
魔法使い「話してくれないの?」
勇者「……そう言う訳じゃ無い、が……言いにくいな」
魔法使い「………」

……
………
…………

戦士(感じる、気づく……ッしかし!)
戦士(疑ってるわけじゃない。信じたい……だが…)
戦士(なんだ? ……喉が、苦しい)スタスタ
勇者「おい、戦士!待て!」スタスタ
戦士「……勇者か」
勇者「気持ちは分かるが……あれは無いだろう、戦士」
勇者「仲間割れ……させるのが目的だとすれば、思うつぼだぞ」
戦士「! …お前」
勇者「俺だって信じたい。僧侶は、仲間だからな」
戦士「……仲間、か」
勇者「魔導将軍とやらの目的や真意はわからん。が……少なくとも僧侶は……」
戦士「ああ……あいつは、嘘は言わないだろうな」
勇者「お前、分かって……」

戦士「……エルフは嘘をつけないんだそうだ」
勇者「は?」
戦士「種族の特徴だ。精霊と優れた契約を結べるという恩恵の代わりの制約」
戦士「……思い出したんだ。いつかの街で、僧侶が教えてくれた」
勇者「戦士……」
戦士「さっき言っただろう。エルフは人に干渉しないと聞いたことがあると」
勇者「ああ……」
戦士「その話を教えてくれたのも、僧侶だ」

勇者「……」
戦士「この世界のどこかに、エルフの隠れ里があるという」
戦士「地上であり地上で無い、祝福された楽園」
戦士「この旅が終われば、可能ならば訪ねてみたい、と」
戦士「……僧侶が、言ってた」




143名も無き被検体774号+2013/02/06(水) 01:45:44.89 ID:tlUoAAAJ0

戦士「僧侶は大事な仲間だ、勇者」
勇者「…ああ」
戦士「だが……いや、信じてる。だが…ッ」
勇者「裏切られるのが怖いのか?」
戦士「いや……そうじゃない。よくわからん」
勇者「……?」
戦士「何となく……喉が苦しい」
戦士「胸が締め付けられるようだ」


……
………
…………

魔法使い「……はぁ」
勇者「なんだよ、その間抜けな声は」
魔法使い「馬鹿ねぇ、ほんとに…」
勇者「おい」
魔法使い「貴方は信じてないの、僧侶のこと」
勇者「いや、そんな事はない。俺は……魔導将軍の言葉が、気になるだけだ」
勇者「僧侶の説明に、納得できないところが会ったわけじゃないんだが……」
勇者「……そうだな。パズルのピースが欠けてて、気持ちが悪い」
魔法使い「まあ……言ってることは分かるわ。まだ……真実にはほど遠い感じ」
勇者「ああ。僧侶の話も途中で終わってるしな」
勇者「だからといって……僧侶に全ての答えを求めるのも……おかしな話だ」
魔法使い「僧侶が全てのピースを持ってる事はあり得ないわよ」
魔法使い「だから世界を回る、んでしょ」

勇者「……時間はあるのか?」
魔法使い「魔導将軍も、そんな事言ってたわね」
魔法使い「時間が無い」
勇者「ああ……それより、僧侶は?」
魔法使い「部屋で休んでる」
勇者「ああ。船酔いか……話を聞くのは戻ってからだな」
魔法使い「そうね……」




144名も無き被検体774号+2013/02/06(水) 01:52:38.80 ID:tlUoAAAJ0

魔法使い(頑張りなさい、僧侶)
勇者「……何笑ってんだよ、お前は」
魔法使い「ん? ……何でもないわ」
勇者「戦士も部屋か?」
魔法使い「さっき僧侶の様子を見てくるって」
勇者「!おい……」
魔法使い「仲間を信じなさい、勇者様」
勇者「………」
魔法使い「大丈夫よ……あの二人は」フフ
勇者「お前……何企んでる?」
魔法使い「内緒」

勇者「魔法使い」ジッ
魔法使い「……好き」
勇者「!?」ドキッ
魔法使い「僧侶はね、戦士が好きなのよ」
魔法使い「野暮ってもんよ?」
勇者「……街に着くまで甲板にいるしかないのか」ドキドキ。フイ
魔法使い「何想像してんの、あの奥手同士がどうにか出来ると思ってんの?えっち」カオアカイヨ
勇者「……ッ ち、違うわッ そんなんじゃねぇよ!」バカタレ
魔法使い「あははは…ッ」マッカダ、マッカ
勇者「……!」シランッ

勇者(……吃驚、した。くそ、なんだこれ)ドキドキ
魔法使い(この馬鹿。バカバカバカ。もう、鈍いのばっかり!)ドキドキ




147 忍法帖【Lv=40,xxxPT】(1+0:8) 2013/02/06(水) 02:47:54.12 ID:IoTmu0r+0

ニヤニヤしたのは俺だけじゃないはず…




152名も無き被検体774号+2013/02/06(水) 08:53:54.74 ID:xYYKrcYL0

みんな可愛い




153名も無き被検体774号+2013/02/06(水) 10:40:43.79 ID:tlUoAAAJ0

船室

僧侶(うぅ……横になっても気持ち悪い)
僧侶(お話、しなきゃいけないのに……)
僧侶(……うぇ)グター

コンコン

僧侶「はい………」
戦士「入るぞ」ガチャ
僧侶「せ、戦士さ……ッ」ガバッ
戦士「……横になってろ。辛いんだろう」
僧侶「……すみません」コロン

戦士「………」
僧侶「………」
戦士「………」
僧侶「………」
戦士「………」
僧侶「………」
戦士「………」
僧侶「………」

僧侶(く、空気が重い……)

戦士「僧侶」
僧侶「………ハイ」
戦士「俺は……お前を信じてる。仲間だと……思ってる」
僧侶「……………ハイ。ありがとうございます」




154名も無き被検体774号+2013/02/06(水) 10:49:36.32 ID:tlUoAAAJ0

戦士「………」
僧侶「………」
戦士「俺は……いや」
僧侶「………」
戦士「以前、エルフの話をしてくれたな」
僧侶「ハイ。確か……立ち寄った街の教会に、美しいエルフのモニュメントがあったんでしたね」

戦士「そうだ……お前によく似てた」
僧侶「え……」
戦士「慈愛に満ちた可憐な表情だった。お前の話を聞きながら……僧侶はエルフみたいだと思った」
僧侶「戦士さん……あ、あの」
戦士「褒めてるんだ……いや、偉そうだな。その。なんて言うか」

僧侶(あれ、ドキドキする。心臓、飛び出しそう……)ドキドキ

戦士「……俺は、魔法とか属性とか、良く解らん」
戦士「魔導将軍の話を聞いて……お前に剣を向けたこと、後悔はしていない」
僧侶「……ハイ」

僧侶(魔導将軍……彼女と対峙したときも……心臓が飛び出しそうだった)

戦士「俺の……俺たちの目的は魔王を倒すことだ」
僧侶「ハイ」




155名も無き被検体774号+2013/02/06(水) 10:53:46.88 ID:tlUoAAAJ0

戦士「魔導将軍の言っていたことはさっぱりわからん。魔法使い曰く、俺は脳筋だからな」
僧侶「い、いえ、あのそれは!」
戦士「良い。本当のことだ。己が聡い等、思ったことも無い」
戦士「だが……ん……どう、旨く言葉を紡いだら良いのかわからん。だが」
戦士「この旅が終わって、エルフの里を訪ねて見たいとお前が言ったとき」
戦士「……その隣にいたいと、思ったんだ」

僧侶(……心臓が飛び出しそう。なのに……嫌じゃ、ない)

戦士「もし、お前が……魔物の仲間だったとしたら、それは叶わない」
戦士「俺は……それが、嫌、だ」
僧侶「……戦士さん」




156名も無き被検体774号+2013/02/06(水) 11:00:15.32 ID:tlUoAAAJ0

戦士「…喉が苦しかった。胸が締め付けられる様だった」
僧侶(……胸、苦しい。涙が……)ポロポロポロ
戦士「これが何なのかわからん。わからん、が……」
戦士「……泣かないで欲しい。笑っていて欲しい。隣で」

僧侶「う、ぅ………うええええッ」ポロポロポロ
戦士「ああ、だから……ッ」ギュ!アレ、オレナニシテルンダ
僧侶「ヒック、ヒック……」センシサン、アタタカイ
戦士「……魔王を倒して、一緒に……エルフの里を探そう。何年、かかってもいいから」ナデナデ。ヒッコミツカンドウシヨウ
僧侶「………」ウエエエエエ
戦士「……い、嫌なのか?」ヨシヨシ
僧侶「ち、違いますッ」ブンブンブンッ

僧侶「嬉しいです、死んでも良いくらい」ニコ




157名も無き被検体774号+2013/02/06(水) 11:04:11.87 ID:tlUoAAAJ0

戦士「阿呆、俺が困る」
僧侶「でも……私……」
戦士「ハーフエルフだから、か?」
僧侶「……ハイ」
戦士「…何時までも若いお前の、可憐な顔を見れるのなら俺は幸せなのかもな」
僧侶「え……」カァッ

戦士「……残すのは、辛いが」
僧侶「まだまだ、先の………話です」
僧侶「それまでに、一杯……一緒に、その……」

戦士「……」グイッギュ!
僧侶「あ……ッ」
戦士「………」チュ
僧侶「…ぁ ……」

……
………
…………




159名も無き被検体774号+2013/02/06(水) 11:11:40.87 ID:tlUoAAAJ0

北の街。船着き場

魔法使い「………朝、ね」ネムイ
勇者「朝だな」ネムイナ
戦士「……すまん」ソウリョ、オヒメサマダッコナウ
僧侶「スゥスゥ……」

魔法使い「で……なんで僧侶は起きないのかしら?あんた、まさか……ッ」
戦士「な、なんだ!くっついてる間に寝てたんだから仕方ないだろう!」
戦士「抱きついたまま離れないし、起こしても起きないし、抱き上げて船から下ろすしか!」

勇者「珍しく饒舌」
魔法使い「顔真っ赤」
戦士「……泣かしてしまったからな。疲れたんだろう」
勇者「激しいなおい」
魔法使い「!!あ、あんたなんて事……ッ」ホノオヨ!
戦士「お、おい、待て!魔法使い、早まるな!」
僧侶(むにゃー…)
勇者「……とにかく、俺たちも休もう。先に町長の所に報告に行ってくる」
魔法使い「そうね……私もお風呂入って一回寝よう」
戦士「……僧侶を寝かしてくる」モヤサレルカトオモッタ

勇者「いったん解散だな。3時間後に旅籠で集まろう」




160名も無き被検体774号+2013/02/06(水) 11:17:43.84 ID:tlUoAAAJ0

魔王城

后「おかえりなさい、魔導将軍」
魔導将軍「ただいま……間に合った、かな」
后「……話してる時間は、無いね」
魔導将軍「ああ、私また……嘘吐いちゃったね」
后「ううん……良いの。また、って?」
魔導将軍「あの子達にも……時間、無くて」
后「……そっか。大丈夫……後は、私が」
魔導将軍「そうね……ごめんね」
后「大丈夫よ……ありがとう、魔導将軍」
魔導将軍「じゃあ……行くね」
后「うん………後で」

后「……もう、少し」
后「ごめんね………」
后「………すぐに、行くから」




161名も無き被検体774号+2013/02/06(水) 11:25:12.88 ID:tlUoAAAJ0

旅籠

勇者「あれ、俺が最後か……すまん」
魔法使い「随分長い間町長と話してたのね……寝てないでしょ」
僧侶「大丈夫ですか…?」
勇者「ああ、平気……では無いけど。まあ……大丈夫だよ」
戦士「とりあえず座れ……町長はなんと?」
勇者「魔導将軍の事は……一応撃退した事にしておいた。まさか……本当の事は言えないしな」
魔法使い「……そうね」
勇者「信じさせるのに一苦労だ。それに……」
僧侶「目的を達成したでしょうから、もう来ない……でしょう」
戦士「………」

勇者「ああ。俺もそう思う。後、船を貸してくれる様に頼んでおいた」
勇者「……これで、世界を回れる。魔王を……倒しにいける」
僧侶「……」
戦士「……」
魔法使い「……浮かない顔ね、皆」




162名も無き被検体774号+2013/02/06(水) 11:40:19.54 ID:tlUoAAAJ0

勇者「僧侶、話の続きを聞かせてくれるね?」
僧侶「はい。勿論です」
魔法使い「情報を整理しましょう。欠けたピースは少なくないわ」

戦士「目に見えている確かな事から確認しよう。まず、王様が魔王討伐のお触れを出した」
僧侶「勇者様が魔王討伐に出られるので、その補佐をする者を募集する、ですね」

魔法使い「前勇者に倒された筈の魔王が復活、ないし、新たに産まれたのが50年ほど前よ」

勇者「前勇者は俺の親父だ。だが、登録所に集まった皆は、その事実を知らなかった」

僧侶「私達三人が選ばれたのは……偶然、ですよね?」

魔法使い「……魔導将軍は、魔族の力を封印し事務員になりすましていた」
戦士「しかし……封印していたのなら、下手な小細工は不可能じゃ無いのか?」




163名も無き被検体774号+2013/02/06(水) 11:44:33.43 ID:tlUoAAAJ0

勇者「少なからず俺も魔力はある……いくらレベルが1だったとしても」
勇者「……事務員は人間にしか見えなかった。力の差は……先日の時点でも歴然だったんだ」
勇者「まあ…それすらも未熟で解り得なかったと言われてしまえば、それまでなら」
僧侶「いえ……でも、あの場には私が居ました。だから……」
魔法使い「魔導将軍の封印は完璧だった、て事ね」
僧侶「はい。勇者様と事務員さ…魔導将軍が奥の部屋にいらっしゃる間」
僧侶「私達も同じ建物内に居ましたから……何かあれば、わかります」
戦士「しかし、封印していたなら……僧侶の力はいつ見抜いたんだ?」




164名も無き被検体774号+2013/02/06(水) 11:49:17.04 ID:tlUoAAAJ0

魔法使い「推測、だけど……」
魔法使い「登録に行ったとき、皆握手しなかった?あの事務員と」
僧侶「しましたね……」
戦士「したな」
魔法使い「……それじゃないかな」

戦士「?」

魔法使い「あの時は、勇者様についていきたい。私はこれだけがんばれる。認めて欲しいって」
魔法使い「誰もが思ってたはず。しかも、私達はとても未熟だった」
魔法使い「触れ合ったことで、漏れ出した物を情報として拾うぐらいは…封印してたって、容易いことじゃないかしら」
僧侶「……そうですね。私自身、この力を……人間である事務員さんに、漏れないように隠す、つもりにはならなかった」
戦士「……ふむ」




165名も無き被検体774号+2013/02/06(水) 11:56:22.11 ID:tlUoAAAJ0

勇者「どうしたら良いのか迷っていたら直感で選べ、と言われたんだ」
勇者「それも困難ならチョイスしても良いとは言われたが、断った」
勇者「俺はまず、名簿からレベル1の人だけを選んで、集めてもらった」
勇者「その時点で強ければ、旅は楽だったろうけど……共に高め合って行きたかったんだ」
勇者「そして……言われた通り、直感で選んだ」

魔法使い「何か仕組まれた……訳では無いわよね」
戦士「選びあぐねる勇者の背を押しただけ、だな」
僧侶「勇者様を信じた、んですね……魔導将軍は」

勇者「……え?」




166名も無き被検体774号+2013/02/06(水) 12:00:29.65 ID:tlUoAAAJ0

僧侶「北の塔での……魔導将軍の言葉に繋がる気が…しません?」
僧侶「勇者は、魔王を倒す」
魔法使い「……あいつは魔王の手先なんでしょ?なんで、そんな事…」
戦士「本人曰く、仲間、だがな」
勇者「……俺も揺動かと思ったが」

僧侶「嘘を吐いているようには……見えませんでした。どこか……悲しそうでした」
魔法使い「……その話はとりあえず置いておきましょ。順番に、ね」
戦士「そうだな。見える物も見えなくなる」




168名も無き被検体774号+2013/02/06(水) 12:04:55.01 ID:tlUoAAAJ0

魔法使い「あの日、こうやって旅籠で食事しながら話してて」
魔法使い「勇者様のお父様が、前勇者だと知った」
勇者「あの時……僧侶と魔法使いは矛盾に気がついてたのか?」
魔法使い「おかしいな、とは思ったけど……まだ言うべきじゃ無いと思ったの」
魔法使い「勇者様は多分、そういうことに殆どの知識を持っていない」
魔法使い「今混乱させちゃ駄目かなって。それに………」
魔法使い「……僧侶の能力の方が気になった、のが大きいかな」
僧侶「……すみません」
勇者「………」




169名も無き被検体774号+2013/02/06(水) 12:08:12.32 ID:tlUoAAAJ0

僧侶「私は……前にも言いましたが、もし、時を超えていらしたなら」
僧侶「……可能ならば、の前提付きですけど」
僧侶「それも、何かの運命なのかと思ったんです」
僧侶「運命は、変えられません……多分。後は、魔法使いさんと一緒です」
僧侶「まだ、知識の乏しかったであろう勇者様を混乱させては……と」

勇者「……ごめん、なんか、気を遣わせた、な」
魔法使い「謝らないといけないのは私達よ、勇者様」
魔法使い「結果、こうして………迷路に迷い込んだんだもの」
戦士「それは……違うだろう」




172名も無き被検体774号+2013/02/06(水) 12:44:31.02 ID:wQxLxe3s0

戦士と僧侶で見事泣いた俺にはよ魔法使いと鈍感勇者を




173名も無き被検体774号+2013/02/06(水) 12:46:24.81 ID:JTR0ikWl0

純情だなwww




178名も無き被検体774号+2013/02/06(水) 13:31:32.47 ID:tlUoAAAJ0

戦士「その時その時、選択肢を選び取った結果が今、だろう」
戦士「今、迷路に迷い込んだ事すらも必然じゃないのか」
戦士「今から俺たちはさらに結果を求めて、出さなくてはいけない」
戦士「……魔王を倒し、平和を。望む結果はそれの筈だ」
勇者「……お前は格好良いなぁ、戦士」

戦士「……」ムス

魔法使い(照れた)
勇者(照れた)
僧侶(戦士さん…)カコイイ

戦士「と……とにかくここからが一番ややこしい問題なんだろう!勇者!」
勇者「あ? …ああ、うん。そうだな」
勇者「遅ればせながら、だが……俺も、矛盾に気がついた」
勇者「考えても考えても堂々巡りだ」
勇者「この間、質問の答えは後で聞かせて欲しいと言った」
勇者「……撤回、するよ」




179名も無き被検体774号+2013/02/06(水) 13:35:18.80 ID:tlUoAAAJ0

魔法使い「え……?」
勇者「あ、いや……その。今、こうやって一緒に考えて出す答えは」
勇者「聞きたいんだが…勿論。この間戦士と話してて……」
勇者「世界を回って、ピースの欠片が見つからなければ」
勇者「魔王に聞けば良いって言われたからな」

僧侶「……」ポカーン
魔法使い「……」ポカーン
戦士「……」ムス

勇者「……ほら、みんな同じ反応するだろ?戦士」クスクス
僧侶「あ…でも、凄い、凄いです、戦士さん!」
僧侶「それが一番確かですよ!」
戦士「そ、そうか……僧侶が、そういうなら」テレ

魔法使い(うわ、わかりやすく照れた!)
魔法使い「まあ……魔王に聞く、てのも、確かに欠片を埋める一つの方法でしょうけど」
魔法使い「……魔王が、最後のピースを持ってるとは限らないんじゃ無いかしら?」
勇者「うん……それも分かってる」




180名も無き被検体774号+2013/02/06(水) 13:40:50.73 ID:tlUoAAAJ0

勇者「俺たちだけで出した答えが必ずしも正解じゃ無いな、って……思ったんだ」
勇者「……撤回、てのもおかしいな、御免」
勇者「……よし、とりあえず、俺たちの意見を統合して、答えをだそう。話し合いを……続けよう」
僧侶「…ハイ」

魔法使い「そうね、ええと……私達は、それぞれ矛盾に気がついた。矛盾とは?」

僧侶「時間が、あわない」
戦士「魔王が復活、ないし産まれたのは50年前」
勇者「親父である元勇者は、人間だ。そして、俺は確かに16年前に産まれてる」
僧侶「はい…命の喪失と、誕生。確かに感じました」

魔法使い「ちょっと待って……待って……ええと……」
戦士「どうした?」




181名も無き被検体774号+2013/02/06(水) 13:45:18.70 ID:tlUoAAAJ0

魔法使い「僧侶、貴女は確かに……16年前、勇者様が産まれるのを感じた」
僧侶「? …ハイ、そうです」
魔法使い「で、前魔王、前勇者の命の炎が消えたのを感じたのが、およそ50年前」
僧侶「はい」

勇者「……?」

魔法使い「50年前、魔王が復活、ないし産まれてる、のよね?」
僧侶「……あ!」
魔法使い「それは、どうやって判断したの?」
僧侶「……私、魔王の誕生は、感じていません」
戦士「……何?」
僧侶「いえ、でも……魔王の誕生を感じる、事は…出来ないのかも……」

魔法使い「もう一度聞くわよ。じゃあ、どうやって、誰が……魔王が復活したと判断したの?」

勇者「………」
戦士「………」
僧侶「………」




182名も無き被検体774号+2013/02/06(水) 13:54:12.73 ID:tlUoAAAJ0

魔法使い「魔王がいるかぎり、勇者は産まれる」
魔法使い「……魔王が復活した時点で、勇者が産まれると。同時であると仮定したら」
魔法使い「魔王は、16年前に復活した事に………ならない?」
僧侶「どちらが先か分からない以上、確かに……仮定、ですが……」
僧侶「勇者が産まれた時点で、魔王が復活する、とも言えますね」

勇者「なん、だよ……それ。俺が産まれたから…?」

戦士「違う、勇者。そうでは無い」
魔法使い「……御免。卵が先か鶏が先か、だわ、これじゃ」
僧侶「でも……良い線行ってる気がしませんか。私が……話そうと思っていた事よりも」
僧侶「真実に近い気がします」

勇者「……ああ、そうだ。僧侶の話を……聞くのがまだだった」
魔法使い「勇者、ちょっと休憩しない?顔色が……」
魔法使い(真っ青だわ……)

勇者「………」
勇者「いや、大丈夫だ。こんな事で……ショックを受けていられない」
勇者「もし、俺の…勇者という命の所為で魔王が……産まれるなら」
勇者「俺が断ち切れば良いだけだ」




183名も無き被検体774号+2013/02/06(水) 13:57:53.64 ID:tlUoAAAJ0

僧侶「……私の仮説は、外れている気が……いえ、多分外れてます」

僧侶「私は……勇者のお母様がエルフか、もしくはその……要するに、人では無いのでは、と」
僧侶「……思っていたんです。そうすれば、時を超えても、何でも、その……」
魔法使い「矛盾を強引に追いやれる、ね」
僧侶「はい……ですが、勇者様は人間です……回復魔法が使えます。でも」
勇者「……」
僧侶「勇者、と言う存在は、そんな枠を超えていらっしゃるのではないかと……」
僧侶「…旨く説明できません。すみません。どう、言っても……傷つけてしまうような、気がして」
戦士「僧侶……」
勇者「……大丈夫だ、と言うのは簡単だ。多分……混乱してる」
勇者「だけど……」




184名も無き被検体774号+2013/02/06(水) 14:01:38.49 ID:tlUoAAAJ0

勇者「……怖がって逃げてたら、先には進まない。俺は……逃げない」
勇者「続けてくれ、僧侶」

僧侶「……誰にも持ち得ない、光の加護。勇者の印からは、混じり気なしの光を感じました」
僧侶「光そのもの、運命に導かれし、選ばれた子……汝の名は勇者」
僧侶「光と闇の獣、汝の名は、人間」

僧侶「勇者は、人間です。選ばれた特別な存在です。強くも弱くもある、人間です」
僧侶「でも……勇者は、特別なんです」

僧侶「そんな風に、知っている知識と言葉を並べると、矛盾だらけなんです」




186名も無き被検体774号+2013/02/06(水) 14:10:12.86 ID:tlUoAAAJ0

僧侶「そして……魔導将軍のあの言葉」

僧侶「勇者は、魔王を倒す」
魔法使い「魔導将軍は、言い切った。魔王の仲間だと言いながら」

勇者「……俺の存在意義はどこだ?」

魔法使い「勇者!?」
勇者「…自棄になってるわけじゃ無い、魔法使い」
勇者「問題はもう一つある。魔導将軍のもう一つの言葉だ」
戦士「……魔王は、人を滅ぼすなんて言っていない。人間の大きな勘違い」
勇者「そうだ。俺たちは何処で、魔王が人を滅ぼそうとしていると聞いた?」

魔法使い「でも、モンスターが……」
勇者「前魔王が倒された時、モンスターは居なくなったか、僧侶」
僧侶「………ッ いい、え……」

戦士「……なんだと?」




187名も無き被検体774号+2013/02/06(水) 14:15:13.96 ID:tlUoAAAJ0

僧侶「私は…前魔王の命の炎が消えたのを感じました。魔物の気配は……弱く、なりました」
僧侶「ですが……消えては……いません………」
魔法使い「…………」
戦士「…………」

勇者「今は……どうだ」
僧侶「あの当時、まだ幼かったので、ハッキリとは言えませんが……」
僧侶「確かに、徐々に強く……」
魔法使い「魔王の居城に近づいているからって言う可能性は?」
僧侶「それは……何とも……」
勇者「……はじまりの街へ、戻ろう」

戦士「……勇者?」
勇者「あそこは、ここより遠い。もし力が弱まっていくのなら土地柄だと判断も出来る」
勇者「王に、話を聞くことも出来る」
勇者「……俺の母さんも、いる」
戦士「……決まりだな。話すだけでは……正直、埒があかん」
魔法使い「そうね……」

僧侶「でも……無駄ではありませんでしたよ」
魔法使い「当然よ。私達は、逃げない!」
戦士「そうだ。俺たちは……」
勇者「真実を手に入れ、今度こそ魔王を……倒す!」




193名も無き被検体774号+2013/02/06(水) 14:35:18.06 ID:tlUoAAAJ0

宿屋 僧侶と魔法使いの部屋

ゴソゴソ…
僧侶(魔法使いさん……? 眠れない、のかな)
僧侶「……大丈夫、ですか」
魔法使い「あ……ごめん起こしちゃった…?」
僧侶「いえ、私も……何だか、眠れなくて」
魔法使い「そう……私、ちょっと……出てくるわ」
僧侶「どちらへ…?」
魔法使い「酒場……つきあう?」
僧侶「お酒ですか……いいえ。お邪魔でしょう?」
魔法使い「……え、え?」ドキ
僧侶「さっき旅籠を出るとき、勇者様、一人で飲みに行かれましたもんね」ニコニコ

魔法使い「……随分余裕ね、アンタ」
僧侶「は、はい!?」
魔法使い「戦士とくっついたからって…ッ」
僧侶「く、くくく、くっついたって、そんな!!」マッカッカ
魔法使い「……で、やったの?」
僧侶「………は!?な、ななななな、なに、なにを、ですか!」

魔法使い「白状しなさい!」ガバッ
僧侶「きゃ、ちょっと…ッ押し倒さないで下さい!」キャー
魔法使い「ん……?」チョット、コレハ……ムニ
僧侶「ど、何処触って…ッ」イヤー
魔法使い「………負けた」ショボーン
僧侶「何が、ですか……」ハナレテクダサイ、ヨイショ

魔法使い「……戦士、くそ、いい目見やがって脳筋の癖に…」
僧侶「何の話です……ほら、早く行かないと勇者さんに会えませんよ?」
魔法使い「え、べ、別にあいつに会う為に行くわけじゃ…ッ」
魔法使い「お、お酒が飲みたいだけよッ」スタスタバタンッ
僧侶「ふふ、いってらっしゃい……」

僧侶「でも……いい目、って何だろう?」
僧侶(明日……戦士さんに聞いてみよう)




194名も無き被検体774号+2013/02/06(水) 14:54:34.10 ID:tlUoAAAJ0

酒場

勇者(……分からないことだらけだ)
勇者(魔王を完全に倒す方法なんて……あるんだろうか)
勇者(………母さん)
勇者(母さんは……何か、知っているのか?)
勇者(………俺に出来ること、あるのか?)
勇者(僧侶は……俺が死んでも、魔王が居る限り、勇者はまた産まれると言った)
勇者(……俺自身は逃げられる。しかし)
勇者(そんな事は……できない。したく、ない)

キィ……パタン

勇者(……やはり、魔王を完全に…倒すしかない)
勇者(しかし…復活では無く、新たに産まれるのだとしたら……ッ)

魔法使い「なんて顔してるのよ……」トナリ、イイワヨネ
勇者「……魔法使い?眠ったんじゃ」
魔法使い「寝れないわよ……」
勇者「だな……僧侶は?」
魔法使い「起こしちゃった……のか、起きてたのか」ワインチョウダイ
勇者「そうか……」オレモオカワリ

魔法使い「………」
勇者「………」
魔法使い「戦士は鍛錬?」
勇者「だろうな……」
魔法使い「………」
勇者「………」




195名も無き被検体774号+2013/02/06(水) 14:58:39.05 ID:IQNTYa8f0

俺「……」




196名も無き被検体774号+2013/02/06(水) 15:06:29.07 ID:tlUoAAAJ0

魔法使い「……怖い?」
勇者「何がだ」
魔法使い「真実を知ること、かな」
勇者「怖くない……と、言えば嘘だな」
勇者「怖いよ。でも、知る権利がある。知らなきゃいけない……何より、知りたい」
魔法使い「………」

勇者「俺は、勇者だからな」
魔法使い「……僧侶が、言ってたこと」
勇者「気にするな、か?」
魔法使い「いいえ……流石に、言えないわそんなこと」
勇者「そうだな」
魔法使い「私は……いえ、私も。あれが真実に近いんだろうなと思うわ」
勇者「私……も?」




197名も無き被検体774号+2013/02/06(水) 15:12:48.18 ID:tlUoAAAJ0

魔法使い「多分、戦士も……貴方も」
魔法使い「そんなに長い時間じゃ無いけど、僧侶と一緒に居て…」
魔法使い「僧侶の、感じる力って……推測だけど」
魔法使い「それをそれ、これをこれ、って……そのまま、文字通り、形通りに」
魔法使い「すとん、って受け止める力、だと思うの」

勇者「……うん」

真穂使い「わかりにくい、かな」
勇者「いや……寧ろ、それ以外の表現が思いつかないな」
魔法使い「うん……だから……」
勇者「真実に近い、か」
魔法使い「そう……でも、所詮近い、だけ。言葉は悪いのだけど」
勇者「ああ……真実そのものは、俺たちの目で確かめるべきだ、だろ?」
魔法使い「……確かめたい、かしらね」

勇者「確かめなくちゃいけない。そうでないと……見失う」
魔法使い「見失う……」
勇者「そうだ。俺は……自分を、勇者である意味を見失う」
魔法使い「………」




198名も無き被検体774号+2013/02/06(水) 15:20:59.10 ID:tlUoAAAJ0

勇者「……心配、してくれてたんだろ。ごめんな、魔法使い」
魔法使い「当たり前、でしょ……仲間なんだから」
勇者「見失うわけにはいかないな。俺自身の事も……お前の事も」

魔法使い「え……」ドキ
勇者「大事な仲間だからな」
魔法使い「あ、ええ……そうね」…ソウヨネ
勇者「なあ、魔法使い」
魔法使い「……何よ」

勇者「………」ジィ
魔法使い「………」ジィ
勇者「魔法使い……」
魔法使い「は、い……」ドキドキ
勇者「………」カタニアタマ、トン
魔法使い「ど、う……したの、よ」ドキドキドキドキドキ


勇者「………きも、ちわる……ぃ」ノミスギタ
魔法使い「………はぁ!?」
勇者「う、ぇ………」
魔法使い「ちょ、ちょっと!勇者!?」


……
………
…………




199名も無き被検体774号+2013/02/06(水) 15:39:29.48 ID:tlUoAAAJ0

朝。船着き場

僧侶「おはようござ……どうしたんですか、勇者様!?」カオ、マッサオ…
魔法使い「おはよう。阿呆は放っておきなさい」サ、フネニノリコムワヨ。スタスタ
戦士「……勇者、肩を貸すからさっさと歩け」オマエマダサケクサイ
勇者「……すみません」ユラサナイデ…

……
………
…………

僧侶「明日の朝には着くそうですね」
魔法使い「そうね……船酔い、大丈夫?」
僧侶「ええ、慣れたのと……船酔いに効くハーブを町長から戴きましたので」
魔法使い「……ハーブ?」
僧侶「薬草酒です。二日酔いにも効くそうですよ?はい、お裾分け」

魔法使い「……誰かさんにあげたら良いじゃない」ムッ
僧侶「ですから、お願いしますね?」
魔法使い「……ッ なんで、私が!」

僧侶「あ、戦士さんとお約束してるので、失礼します」ニコ。スタスタ
魔法使い「ちょ、ちょっと……ッ」

……
………
…………




200名も無き被検体774号+2013/02/06(水) 15:40:39.86 ID:tlUoAAAJ0

船室

勇者(………)グター

コンコン

勇者(………)グター

……ゴンゴンッバタン!

勇者(!)ビクッ
魔法使い「……情けないわね、全く!」
勇者「ま、魔法使い……」カ、カオガコワイ
魔法使い「ほら、薬草酒。二日酔いに効くんですって」サッサトノミナサイコノバカタレ
勇者「……用意、してくれたのか」…スゴイニオイガスルンデスケド
魔法使い「私じゃ無いわ、僧侶よ。船酔いにも効くんですって」ダカラサッサトノメッテイッテンデショ
勇者「そ、そうか……ありがとう……」ツカ、コレムカエザケッテヤツジャ
魔法使い「……じゃあ、戻るわ」フイッ

勇者「(ごくごく……うえ、まずッ) ……げほ、げほげほごほッ」
魔法使い「ちょ、だいじょ……ッ」
勇者「げほげほ…ッ ま、ほうつか……ッ」グイッ
魔法使い「な、なによ!?」ヒッパンナイデヨッ
勇者「昨日は、悪かった」
魔法使い「……良いわよ、もう。そりゃ……悩みもする、わよね……良いわよ」
勇者「ん、いや……それもあるんだけど」
魔法使い「何……てか、離してよ」
勇者「嫌だ」
魔法使い「は!?」


勇者「……昨日、お前の顔見て、話してると…落ち着いて……まあ、それで酔いも回ったんだけど」
魔法使い「……はぁ」
勇者「俺……」ダキッ
魔法使い「!?」ビクッ

勇者「魔王倒すから」
勇者「魔導将軍の言葉に従うみたいで嫌だけど」
勇者「倒して、倒しきって」

勇者「……勇者は、俺で最後にするから」
魔法使い「………」




201名も無き被検体774号+2013/02/06(水) 15:48:07.25 ID:pPsoI6wP0

おもしろい




202名も無き被検体774号+2013/02/06(水) 15:48:54.50 ID:tlUoAAAJ0

勇者「そしたら」
魔法使い「……そしたら?」

勇者「俺、勇者じゃ無くなるけど」
魔法使い「………」
勇者「ただの、俺になる、けど」
魔法使い「………」

勇者「ああ、もう、苦手だこう言うの!くそッ」オデコニチュッ
魔法使い「!?」

勇者「……それでも、良い?」クソハズカシイカオアツイアツイアツイ
魔法使い「……だ、だって、あんた…今でも充分……」カオモエソウ
魔法使い「……勇者らしくないわよ。いや、凄く立派な勇者だと思うわ!?だけど…」
魔法使い「飲み過ぎて吐いたり、二日酔いでぐったりしたり……」
魔法使い「でも、そんな……勇者らしくない、そう言うあんたも……」
魔法使い「……いえ、そんなアンタだから。ていうか、あああもう!」
魔法使い「あんたが、アンタだから、好きなのよ!」チュッ!

勇者「まほうつか……ッ 」……クチビルヤワラケェ、チュ、チュ
魔法使い「ぁ、ン……ッ」




203名も無き被検体774号+2013/02/06(水) 15:56:33.80 ID:tlUoAAAJ0

勇者「……ん、なぁ、魔法使い」
魔法使い「な、によ……」
勇者「明日、街に着くまで…」ギュ
魔法使い「……」
勇者「こうして、眠らせて……(スゥ、ス……)」
魔法使い「……え、ちょ……ッ (寝ちゃった…?)」ギュ
魔法使い「……ほんと、馬鹿ね……」ギュウ

……
………
…………

甲板

戦士「…で、一服盛ったと?」コワイナオマエ
僧侶「人聞き悪いです、戦士さん」コワクナイデス、プゥ
戦士「その、薬草酒に何か混ぜたんだろ?」スネナイスネナイ。ナデナデ
僧侶「睡眠草をちょっとだけ。寝るに限りますよ、二日酔いは」モットー

戦士「……船酔いも寝るに限ると思うんだが。ふらふらしてるだろ」パ。ササエテタテヲハナシテミル
僧侶「え?そんな事は……あ」フラフラフラ
戦士「眠いだろ」ガシ。モタレトケ
僧侶「くっついてるから、気持ち良いです…」ハイ。スリスリ
戦士「……眠いって言うんだ、それ」ヨイショ、ダッコ
僧侶「きゃッ」キャー

戦士「俺たちも部屋に戻るぞ。今のうちに……ゆっくり眠ろう」チュ
僧侶「はい……そうですね」エヘ

……
………
…………




204名も無き被検体774号+2013/02/06(水) 16:03:30.25 ID:tlUoAAAJ0

魔王城

??「…………」
側近「……これ、何時まで続くんだ?」
??「…………」
魔導将軍「そんなに長くは続かないわよ」
??「…………」
側近「だよな」
??「…………」
魔導将軍「大丈夫。今回は……」
??「…………」
側近「特異点、か?」
??「…………」
魔導将軍「そ……どうなるかはわかんないけど」
??「…………」
側近「そうか。じゃあ、俺たちの時より…」
??「…………」
魔導将軍「そうね……きっと、近づける」
??「…………」
側近「断ち切れるか?」
??「…………」
魔導将軍「どうかしらね。でも、亀裂ぐらいは」
??「………ぅ」
側近「…そろそろ、后様も必要だな」
??「………ゥ」
魔導将軍「まだ……ぎりぎりまで…ッ」
??「………ウ」
側近「ああ……ッ泣くなよ、魔導将軍!」
??「……ゥウ」
魔導将軍「あんたもね、ダーリン♪」
??「…………」
側近「阿呆……俺たちは……」
??「…………」
魔導将軍「そう……喜ばないと、ね」




205名も無き被検体774号+2013/02/06(水) 16:10:09.11 ID:tlUoAAAJ0

はじまりの街。国王の間

王「よくぞ戻った、勇者よ! おぬし達が旅だったのがまだ数ヶ月前とは…思えぬ程の成長ぶり!」
王「見違えたぞ!素晴らしい!」
勇者「お褒めにあずかり、光栄です」
王「して、本日はどうしたのじゃ?わざわざこの国に戻ってくるとは…」
勇者「はい……王様に一つ、お尋ねしたい事がございます」
王「ふむ…?」

勇者「その目的を達し次第、魔王の居城へと乗り込みます」
王「……重要な、事なのじゃな?」
王「わざわざ旅の足を止め、儂に会う為に戻りくるほどの案件か」
勇者「はい……お許し戴けるのでしたら、どうぞお人払いを」

王「うむ……良し、下がれ!」
王「……これで良いか」
勇者「ありがとうございます」




206名も無き被検体774号+2013/02/06(水) 16:21:37.58 ID:tlUoAAAJ0

勇者「王様…母がこの国に訪れ、私が旅立つまでの話を……教えていただけませんか」
王「ふむ……良いだろう。長くなる……そなたも、仲間の皆も楽にし面を上げるが良い」

王「16年前じゃ。そなたの母が、乳飲み子のそなたを連れ、謁見を申し出た」
王「門兵の話を聞くと、その幼子の手には確かに、勇者の印が刻まれているという」
王「儂はすぐに人払いをし、娘に会った」
王「娘は、上質な布でそなたの身体をくるみ、愛おしそうに抱いておった」
王「話はこうじゃ」

王「この子は光に導かれし、運命の子、勇者である。そして、己の息子であると」
王「それ以外の一切を聞かず、この国に住まわせて欲しい」
王「そして16迄育てし後、勇者として旅立たせて欲しいと」

勇者「………」

王「儂は無条件で受け入れた。勇者の印を持つ幼子じゃ。光の加護を持つ、運命の子じゃ」
王「疑うべくもない。住居を与え、生活に必要な金銭を与えた」




208名も無き被検体774号+2013/02/06(水) 16:27:18.21 ID:tlUoAAAJ0

王「娘は、そなたを育てるために必要な分以外の一切を受け取らなかった」
王「……そなたの身をくるんでいた織物を見て、すぐに高貴な血筋だろうとはわかっておった、がの」
王「故の事情があるのだろうと、詮索はせずに居た」

王「娘は、こうも言った」
王「50年ほど昔に、魔王が復活したのだと。その魔王を倒すべく産まれた息子を差し出すのは心苦しいと」
王「だが……運命には逆らえない。しかし、この子は確かに、魔王を倒すのだと」
王「自信を持って、告げたのだ」
王「人の口に戸は立てられまい?勇者誕生の話は、既に世界中に広まっておった」

王「そして……16年という長い月日が流れ、娘は立派な母に。お主は精悍な若者に育った」
王「そなたの誕生日の数日前。改めて儂はお触れを出したのじゃ」




210名も無き被検体774号+2013/02/06(水) 16:37:45.91 ID:tlUoAAAJ0

王「内容は良く、知っておろう?」
王「50年以上もの昔に復活した、魔王を倒すべく、勇者がこの度討伐へと立ち上がる事となった」
王「故に我こそはと思う者は立ち上がり、勇者の手助けをせよ……とな」
勇者「……はい」

王「ここ何十年もの間に、魔物の数は増え、力をつけだして来たとの報告は各地から受けておった」
王「娘の話を聞いて、得心したのだ。成る程、魔王の復活か、とな」
王「だが、勇者は再び生を得た!前勇者が昔成し遂げた偉業を再度……どうか、世に平和をもたらして欲しい」
勇者「はい……必ずや」

王「ふむ、しかし……こんな話を聞きに参ったのか?」
勇者「少しでも真実を掴むためでございます。叶うならば……二度の復活を許さぬ為に」
王「……そうか。そうじゃな」

王「期待しておるぞ、勇者よ、その仲間達よ!」
王「絶えぬ平和を……!」




211名も無き被検体774号+2013/02/06(水) 16:43:51.94 ID:tlUoAAAJ0

はじまりの街

勇者「……どう思う」
僧侶「お母様に、お会いするべきかと」

魔法使い「そうね、話を聞く限り……勇者様のお母様が鍵を握ってる」
戦士「…あれほどすんなり、信じるものなのか?」
僧侶「それは……仕方ありませんよ。目の前に運命の印を突きつけられれば」
僧侶「しかもそれは、平和の為に欠かせないもの」
魔法使い「浮き足立つ…と言えば言葉は悪いけど」
戦士「……筋の通った物語を読むようなものか」
勇者「……家へ、行こう」

勇者(母さん……)
魔法使い(漸く……パーツが揃う…?いえ、でもまだ……)
僧侶(近づいているのは分かる……だけど…この、不安……いえ。寂寥感は…なんだろう?)
戦士(いよいよ……か……守れるか。否……守る!)




212名も無き被検体774号+2013/02/06(水) 16:52:30.95 ID:tlUoAAAJ0

勇者「母さん……ただいま」
キィ

シーン……
勇者「母さん……?母さん!」
魔法使い「勇者様?」
僧侶「お母様は……?いらっしゃらない?」
戦士「……でかけている、のでは?」
勇者「……いや、母は、滅多に家を空けたりは…」
魔法使い「お買い物ぐらいは、行くでしょ……帰ることを知らせてた訳でも無いんだし」
勇者「そうか……そうだな」

戦士「……楽観視はしない方が良い。最悪の事態も…想定すべきだ」
魔法使い「戦士!」
僧侶「……大丈夫ですよ、皆さん。不穏な気配は……感じられません」
僧侶「寧ろ……優しく包まれるような…大きくて、暖かい…気配がします」
魔法使い「良い家で育ったのね、勇者様」
僧侶「……母の愛、ですかね」
勇者「……ありがとう」

勇者「良し、帰りを待とう……適当に座っててくれ」
勇者「母さんが帰るまでに……情報の整理だ」




213名も無き被検体774号+2013/02/06(水) 16:57:45.30 ID:hSi43/z+0

魔法使いが興奮して物色したりアレしたりですねわかります




214名も無き被検体774号+2013/02/06(水) 17:00:23.11 ID:tlUoAAAJ0

魔法使い「とは言っても……もう、後は……お母様に聞く位しか」
僧侶「一つ、大きな問題が残ってますよ……魔王は人を滅ぼすか否か」

戦士「……そうだ。僧侶、モンスターの気配はどうだった?」
勇者「王の話からは……分からなかったな。信じ込んでると言えばそれまでだが」
僧侶「そうですね、お母様のお話を疑いなく飲み込んで居られました。それに…」
僧侶「モンスターの気配は、確実に強くなっています。あの時、旅立ったときとは……格段に」
戦士「何…?」

魔法使い「……王様の信じ込みも、強ち間違ってない?」
僧侶「はい……魔王が滅し、モンスターの力が弱った。復活に際し、徐々に力をつけた、とすれば」
僧侶「いえ、多分……確実に、その通りです」
勇者「……じゃあ、母さんは」
魔法使い「伏せるべき所は伏せて、全て真実を伝えた、って事?」
戦士「そう判断するのは早いだろう……母君に聞いてからだ」

勇者「……しかし、それが真実だとして」
勇者「魔王が人間を滅ぼそうとしてる、と言う事には繋がらないぞ」




215名も無き被検体774号+2013/02/06(水) 17:06:07.02 ID:tlUoAAAJ0

魔法使い「人間の大いなる勘違い、だったかしら……魔導将軍が、言ってたの」
僧侶「モンスターが強くなっていけば……勘違いするには…事足りる」
戦士「………しかし」
勇者「母さん……か」
僧侶「………」

魔法使い「ねぇ、勇者のお母様って、どんな人?」
戦士「なんだ、こんな時に」
魔法使い「良いじゃないの。これ以上……私達だけでぐちゃぐちゃ考えたって」
魔法使い「正直……どうにもならないわよ」

魔法使い(近くて、遠い……もどかしい。けど……進むしか無い)
僧侶(なんだろう……寂しい……とても。この家は、暖かいのに…何故?)
戦士(守るだけだ。信じるものに向かって進むだけだ。だが……すっきりしない)


勇者「母さんは……優しい人だったよ。だけど、何時も寂しそうだったな」




216名も無き被検体774号+2013/02/06(水) 17:12:11.95 ID:tlUoAAAJ0

勇者「柔らかく笑って…さっき僧侶が言ったように、暖かく包んでくれるような人だった」
勇者「でも、その笑顔が……寂しそうに見える、んだよな」
僧侶「……貴方の事を、愛していらっしゃったんでしょう。勇者として……送り出さなければいけない運命に…」
僧侶「寂しさを、感じておられた、のかも……」
僧侶「羨ましいです……」
魔法使い「!(そうだ、僧侶は…ッ) あ、ごめん、あの…ッ」
僧侶「謝らないで下さい、魔法使いさん……義理の父が居ましたから」
魔法使い「………ご、めん」
僧侶「もう……」クスクス

勇者「………遅い」
戦士「勇者?」
勇者「俺……ちょっと探してく……ッ」ズキンッ
勇者「痛……ッ」
魔法使い「勇者!?」ガタンッ
勇者「なんだ、これ……ペンダント…?」チカッ
僧侶「……光って、ます」

??「……う、しゃ……ゆう……しゃ」

魔法使い「何か、聞こえる……」
勇者「ペンダントから……この声は、母さん!」




217名も無き被検体774号+2013/02/06(水) 17:18:09.38 ID:Iw81iY0H0

伏線キタコレ




218名も無き被検体774号+2013/02/06(水) 17:18:59.76 ID:tlUoAAAJ0

??「勇者……聞こえる?」
勇者「母さん、母さんだね!?今、どこに……ッ」
母「ああ、良かった。通じたね……でも、時間が無いから落ち着いて聞いて?」

魔法使い(また……時間が無い……)

母「今ね、私は……魔王城に居るの」
勇者「な……ッ 攫われたのか!?」
母「……聞いて。あのね、い………ま……」
勇者「母さん!すぐ……ッすぐに助けに行くから!」
母「……… ごめ、 …ね……」

スゥ…

僧侶「光が……消えた」
戦士「……マジックアイテム、の類か?」
僧侶「……いえ、ただのペンダントの様です……今、は」

勇者「母さん!母さん!」

魔法使い「勇者様、落ち着いて! ……今は?」
僧侶「……お母様の気配だけ、感じます」
勇者「……糞ッ くそ、魔王め……ッ許さない……ッ」

僧侶(おかしい……この家には、お母様の守りの力…暖かい、愛情しか感じないのに…)

戦士「行くしか……無いのか」
勇者「すぐに出発だ! ……糞、船で……ここから……ッ」
僧侶「……待って!」




219名も無き被検体774号+2013/02/06(水) 17:22:17.93 ID:tlUoAAAJ0

勇者「僧侶、今は……ッ 母さんが!」
僧侶「待って下さい、これ……まだ光ってます!」
勇者「!?」
魔法使い「……な、にこれ……この、魔力……ッ」
戦士「ぐ、う……ッ」
勇者「僧侶、貸して……それ…ッかあさ……ッ」グッ

「「「「!!」」」」

勇者達は、暖かい光に包まれた

……
………
…………




220名も無き被検体774号+2013/02/06(水) 17:29:20.28 ID:tlUoAAAJ0

勇者「………う、ぅ…」
魔法使い「勇者様!」
僧侶「気付きましたか…」
戦士「………」
勇者「!!みんな……ここ、は……」

??「ごめんね、無茶しちゃった」

勇者「………母さん!」
魔法使い「勇者様がペンダントに触れた瞬間に、眩い光に包まれて……気がついたらここにいたの」
僧侶「……そして、この方…貴方のお母様がいらっしゃいました」
僧侶「あの光は…お母様の魔法だったのですね」
戦士「…転移術と言うそうだ」
勇者「え……でも、それじゃ……ここは……」

母「うん、そう……魔王城だよ」
母「間に合って良かった。ギリギリだけど……」

勇者「どう…いう、事だよ」
勇者「ああ、いや…そんな事より、母さん、無事だったんだね!?」
母「もう、落ち着いてっていったのに……」クス
魔法使い「お母様……聞きたいことが」
僧侶「教えて…くださいますか?」
母「うん。全部、教えてあげる。まあ……もっとも、嫌でも知る事になっちゃうんだけど」
戦士「……?」
母「とりあえず…ちょっと移動して良いかな」

母「時間が、無いの」




221名も無き被検体774号+2013/02/06(水) 17:38:09.65 ID:tlUoAAAJ0

母「歩きながら話すね」
母「本当は、勇者には格好良く乗り込んで来て欲しかったんだけどね」
母「本当に……時間が無いんだ」
魔法使い「……時間が無いって、あの…どういう…?」

母「……魔王が、復活するの」

勇者「!?」
僧侶「…魔王は、まだ復活してなかった…のですか?」
母「正確には……復活準備が終わる、かな」
戦士「復活準備が終わると……どうなる?」

母「………」
勇者「母さん!」

母「順番に、ね?」




223名も無き被検体774号+2013/02/06(水) 17:50:50.61 ID:tlUoAAAJ0

母「僧侶ちゃんは、気付いてるよね?」
僧侶「………ハイ」
勇者「何……?」

母「勇者、取り乱さないと約束して」
勇者「……」
母「勇者?」
勇者「……ッ わかったよ」
母「今の私は、魔族だよ。そして魔王の仲間……」

僧侶(………ッ仲間!?)

魔法使い「ちょ、僧侶、どういうこと!?」
僧侶「わ、わかりません、わかりません!魔族であるという、ことは……でもッ」
戦士「どういうことだ……!?」
勇者「な……ん、で……母さん………が………」
母「…さ、ついた。ここだよ」

母「開けるよ?」
勇者「母さん!」

キィ

母「紹介するね側近と、魔導将軍。魔導将軍はあったことあるよね」
母「それから……あれが、魔王」


母「魔王で、私の旦那様で、貴方の……お父さんだよ、勇者」




224名も無き被検体774号+2013/02/06(水) 17:54:13.46 ID:tlUoAAAJ0

側近「后様、帰ったか……間に合ったな」
魔導将軍「間に合ったって言うか、間に合わしたって言うか……でしょ」
魔導将軍「久しぶりねぇ、勇者君達?」
側近「うっわぁ……本当に魔王様そっくりじゃねぇか……」
后「ただいま……ああ、もう本当にぎりぎりだったね」

后「魔王……ただいま。帰ったよ……ほら、勇者が、来たよ?」

魔王「………ゥ」

魔導将軍「早速で悪いけど、助けて、后様」
側近「俺達二人じゃもう限界だ……情けねぇけど」
后「うん……そうだね、そうしないと……話す時間、無いしね」




226名も無き被検体774号+2013/02/06(水) 18:01:08.97 ID:tlUoAAAJ0

僧侶(これが……魔王……そして、元、ゆう…しゃ……?)
魔法使い(馬鹿な……ッなんなの、この魔力……ッこんなの、どうやったって……!)
戦士(どういう事だ……三人が……魔王を、押さえ込んでいる……!?)

勇者「う、ぅ………うわああああああああああああああああ!」

后「ああ、もう…取り乱さないでって言ったのに」
側近「いや、無茶だから」
魔導将軍「后様は昔から、さらっと酷いよね」

勇者「なんだ、なんなんだよ一体!」
勇者「その、死体みたいなのが……魔王!?俺の父だと!?」
勇者「母さんが……魔族って……どういう事だよ!!」

側近「うっわぁ、なんか反応まで魔王様そっくりだし ……笑えねぇな」
魔導将軍「側近」
側近「……すまん」

母「ごめんね、勇者。でも本当なのほら……魔王の右手、見て?」ヒョイ

魔法使い「勇者の……印!?まさか!」
戦士「勇者は一人しか存在しないんだろう…!?」
僧侶「……いえ、光が感じられませんどころか……」


后「勇者は光に導かれし運命の子」
后「魔王は闇に抱かれし運命の子」
后「光と闇の獣」
后「汝の名は」


勇者「……にん、げん」




227名も無き被検体774号+2013/02/06(水) 18:09:42.16 ID:tlUoAAAJ0

后「良く出来ました……っと、こんな格好の侭で御免ね」
魔導将軍「まあ、我慢してちょうだい …魔王様、押さえとかないとさ」
側近「全部吹き飛ばしちまうからなぁ……」
后「大丈夫、最後までちゃんと、話すぐらいは持つから」
后「後は……ちゃんと知って、ね?」

僧侶(ちゃんと、知る……?どういう…意味?)
魔法使い(魔王を押さえる……魔力を全力でぶつけて復活を阻止してる、て事!?何故…)
戦士(魔王は……人を滅ぼす…いや、大いなる勘違い…!?何だ!?)

勇者「……だ、だから何なんだ!人間が……なんだって言うんだ!」
后「うん……説明、するね。質問…全部応えられないかもしれないから」
后「聞いてね」




228名も無き被検体774号+2013/02/06(水) 18:13:30.22 ID:tlUoAAAJ0

后「私達は……勇者と旅を共にする仲間だった」
魔導将軍「今でも仲間でしょ」
側近「ちゃちゃ入れんなよ、魔導将軍」
后「…ふふ、で……今の君たちみたいに、魔王の元までたどり着いた」

后「ちょーっと、強引な手段使っちゃったけど」
魔導将軍「……ちょっと?」
側近「だから、突っ込むなってば」

后「本当ならね、持つはずだったんだ。勇者が、魔王と対峙するまで」
后「今まで、そうして繰り返されてきたんだけど」
后「今回は……違ったんだよね。初めて」

魔導将軍「特異点」

后「そう。前代未聞」
側近「お前さんだよ、僧侶」

僧侶「……私!?」




229名も無き被検体774号+2013/02/06(水) 18:20:54.44 ID:tlUoAAAJ0

后「そう、ハーフエルフの癒やしの娘」
僧侶「……」

后「…貴方が仲間であると言う事実が、今までと唯一違う点」
魔導将軍「この腐った世界の腐った不条理を断ち切れる、唯一の亀裂」
側近「……確定なのか?」

后「どうかな。なってみないとわかんないけど」
后「とにかく、今までと違ってる事は、確か」
后「…話、戻すね」
后「私達は、こうして、今の貴方達と同じように」
后「…良く解らない言葉の羅列を聞かされた」
后「私は……水の癒し手、僧侶」
魔導将軍「炎の魔法使い」
側近「緑の戦士、だ」


勇者「………」




243名も無き被検体774号+2013/02/06(水) 22:32:20.84 ID:wQxLxe3s0

早く!早く続きをくれえええええ




244名も無き被検体774号+2013/02/06(水) 22:47:16.20 ID:tlUoAAAJ0

后「そして、魔王は勇者」

后「正直、訳が分からないよね」
后「でも、それで良い。貴方達は……後に、知る」
魔導将軍「永劫に繰り返されたろう、行為」
側近「……もう、分かるだろ。俺たちの目の前に居た魔王は………」

后「同じ。貴方と同じ。魔王と同じ」
后「右手に、勇者の印を持っていた」

后「私の、愛しい魔王と同じ」
后「光は跡形も無く枯れ、闇に焼き尽くされた、漆黒の剣の印」
后「なぜなら………勇者は、魔王の眼前に」

后「そう、貴方……愛しい、私の子供……汝の名は、勇者」




245名も無き被検体774号+2013/02/06(水) 22:53:47.06 ID:tlUoAAAJ0

僧侶「………勇者は、世界に一人しか存在できない」
僧侶(まさか……)

魔法使い「光は…光の加護を受けられるのは、勇者だけ」
魔法使い(そんな……)

戦士「……勇者は、魔王を倒す」
戦士(馬鹿な……)

勇者「そして……魔王に」
勇者(なった、のか……?)


后「優秀だね、貴方達は」
側近「……俺たちも同じだったろ、后様」
魔導将軍「そうだっけ?側近もう少し、パニクってなかったっけ」

后「正確にはちょっと違うかな」
后「勇者は魔王を倒す。倒すんだけど」
后「……魔王は勇者の光を奪い去る」
后「勇者は、魔王の闇を手に入れる」

后「光と闇」
魔導将軍「表裏一体」
側近「弱くもあり強くもある」

后「汝の名は、人間」

后「勇者が滅び、魔王が産まれる」
魔導将軍「魔王が滅び、勇者が産まれる」
側近「腐った世の中の、腐った不条理 ………理解、したか?」

后「……繰り返される、運命の輪」




246名も無き被検体774号+2013/02/06(水) 22:53:51.66 ID:xYYKrcYL0

勇者は魔王になる運命ってことか?




247名も無き被検体774号+2013/02/06(水) 22:55:53.74 ID:Iw81iY0H0

新しいサイクルだな




248名も無き被検体774号+2013/02/06(水) 23:01:48.53 ID:tlUoAAAJ0

后「……さて、時間が無いね」
側近「泣くな、魔導将軍。喜べ……俺たちは喜ばなくちゃいけない」
魔導将軍「わ……ッ 分かってる、わよ…!」

勇者「……ッ どういうことだよ!俺が……魔王になるのを、喜ぶのか!?」

后「…ごめんね、勇者。でも、魔王はこれでやっと解放されるの」
后「魔王を解放するためには、貴方が……魔王になるしかないの」
后「……もし、それを否とすれば……この世界は、存在した事実を失う」

僧侶「……世界が滅びる、と…言う事ですか」
后「うーん、まあ、そうかな」
魔法使い「そんな……ッ」
戦士「……お前達が、前勇者と旅をしているときに、その選択肢を選び取ることだってできただろう!」




251名も無き被検体774号+2013/02/06(水) 23:07:45.99 ID:tlUoAAAJ0

后「うんそうだね、ご尤も」
魔導将軍「私達も、そう思ったよ、勿論」
側近「何で俺たちだけ、ってな」
后「だったら、どうして……勇者が産まれるの?」
后「何代も、何代も語り継がれる、勇者と魔王の戦い」
后「誰かが選択肢を間違えれば、終わっていた世界」

勇者「……勇者は、世界を救う、んだ」
僧侶「勇者様!」
戦士「勇者……」
魔法使い「………!」

勇者「勇者は、世界を救う。勇者は魔王を倒す……魔王は、人を……世界を、滅ぼす」

后「…自分の子供に、こんな事を選ばせる私は、親失格だよね」
后「魔王が解放されるのは、嬉しい」
后「でもね、私達が喜んでいるのはね…」
魔導将軍「喜ばなくてはいけない理由があるからよ」
側近「そう。ここからは、前と違う……」

勇者「この腐った世界の腐った不条理を断ち切れる、唯一の亀裂……特異点」




252名も無き被検体774号+2013/02/06(水) 23:12:02.31 ID:xYYKrcYL0

深いのぉ…




253名も無き被検体774号+2013/02/06(水) 23:13:53.96 ID:UyUz2swnO

俺こうゆうの好きw




254名も無き被検体774号+2013/02/06(水) 23:15:43.37 ID:tlUoAAAJ0

僧侶「!!」

后「そう……僧侶ちゃんの、存在」
魔導将軍「私達は、人間から……魔王様の力で魔に変じた」
側近「人間は唯一、闇を選び取り、魔に変じる事ができる」

戦士「……ッ 待て、それじゃ…ッ」
后「繰り返される腐った不条理に、射した一条の光……ああ、もう駄目ね、限界だわ」
魔導将軍「心配しなくても大丈夫よ、貴方達は、ちゃんと知る事ができる。全てを…… ……魔王様、くッ」
側近「俺たちが知る事のできなかった分まで、ぜーんぶ、な……ッ くそ、もう……ッ」

バチバチバチッ

魔法使い「あ……あ、ま……魔王が……ッ」
戦士「立ち上がる……ッ!?」

后「勇者!滅びを選ぶなら、それも構わない!それも……ッ」
魔導将軍「それでも、変わる! ……勇者、選ぶのよ!」
側近「……ッ この腐った世界に、光……ッ を!」

魔王「………お前が、勇者か」
バチバチバチッ
勇者「あ、 ……あ……」
バチバチバチッ
魔王「さあ、我が手を取れ」
バチバチバチッ
勇者「………ッ」
バチバチバチッ
魔王「光と闇は、表裏一体。どちらを欠いても存在できぬ」
バチバチバチッ

勇者「……拒否権は無いんだな」




255 【Dnews4vip1359891986499941】 2013/02/06(水) 23:16:48.89 ID:aQWp63260

スレタイキターーー




256名も無き被検体774号+2013/02/06(水) 23:17:51.87 ID:PyF/fVuL0

かっけえww




257名も無き被検体774号+2013/02/06(水) 23:18:27.86 ID:xYYKrcYL0

ゾクゾクってきた




258名も無き被検体774号+2013/02/06(水) 23:18:51.07 ID:tlUoAAAJ0

魔王「ああ……世界は美しい」

勇者「俺は……魔王を、倒す!」

バチバチバチッ!
パキン……ッ


……
………
…………




261名も無き被検体774号+2013/02/06(水) 23:27:15.18 ID:tlUoAAAJ0

??「………さま、 ……さま」
魔王「う……うん……?」
??「魔王様、お目覚めですか?」
魔王(………ッ)ガバッ
僧侶「勇者様!」
魔法使い「勇者……さま…!」
戦士「……勇者、大丈夫か」
魔王「え………俺? …え?魔王…?」

魔王(ここは……ベッドの上?)
魔王(ああ、そうか、俺は………)
魔王(そうか……もう、勇者じゃ無いのか……)

??「お加減、如何ですか?」
魔王「…君、は?」
使用人「この…代々の魔王様にお仕えし、城を守っております、使用人と申します」
魔王「え?はい……?」
使用人「貴方は、いえ……貴方達は、お知りになる」
魔王「君が……全てを教えてくれる、と?」
使用人「私の知る限りはなんなりと……ですが」
魔王「?」
使用人「お食事を先に……色々、お話もあるでしょう。どうぞ……」
魔王「あ……」
使用人「失礼致します」スタスタ、パタン




262名も無き被検体774号+2013/02/06(水) 23:30:12.73 ID:tlUoAAAJ0

僧侶「……良かった、目、覚めて……」フエ
魔法使い「勇者、様……勇者様!」ダキッ
戦士「……覚えて、いるか?」ナクナソウリョ
魔王「ああ……何となく…」マホウツカイ、ウレシイケドクルシイ
魔王「あ!勇者の印……! ……ッ 真っ黒、だな」
戦士「……僧侶」
僧侶「ハイ……」
魔王「……僧侶、君は……感じた?」
僧侶「ハイ、色々と……感じ、見………知り、ました」

僧侶「もう……魔王様、とお呼びするべきでしょうか」




263名も無き被検体774号+2013/02/06(水) 23:31:13.48 ID:XUAhvtYo0

どーなんの




264名も無き被検体774号+2013/02/06(水) 23:31:51.98 ID:gSOnRboyP

いいストーリーだ…




265名も無き被検体774号+2013/02/06(水) 23:33:05.77 ID:UyUz2swnO

ここまでは前世代と同じ展開だな
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4047269336/




266 忍法帖【Lv=40,xxxPT】(1+0:8) 2013/02/06(水) 23:34:47.66 ID:1uyQYZ7H0

なんとも洗練されたストーリーだ
夜中にとんでもないスレを開いてしまった




267名も無き被検体774号+2013/02/06(水) 23:35:53.24 ID:tlUoAAAJ0

魔王「……そうだな。俺は魔王を……倒した」
魔王「世界を……守ったんだ」

僧侶「ハイ……貴方は、誠に……輝かしい、光の勇者様でありました」

魔王「!!母さんは……ッ魔導将軍と、側近は……!?」
僧侶「……魔王を含め、あの方々は……失われました」

魔王「う……し、なわれた?」
魔法使い「………」
戦士「………」

僧侶「悠久の空の彼方へ還り、この……世界へ孵るのだと」
魔法使い「…貴方のお母様が、貴方に……伝えて、と」
戦士「そして……ありがとう、と」

魔王「………ッ」




271名も無き被検体774号+2013/02/06(水) 23:47:13.98 ID:tlUoAAAJ0

僧侶「……恐らく」
僧侶「あの方達も、こうして……同じ経験をなぞってこられたのでしょう」
僧侶「……ゆ、魔王様のお力でその身を闇に染め」
僧侶「来るべき、次代の勇者様に……真実をお伝えするために」
魔王「………」

戦士「……特異点」
魔王「戦士?」
戦士「唯一以前と…今までと違う点……僧侶の存在だ」

魔王「………」
僧侶「………」
魔法使い「………」

魔王「この腐った世界の腐った不条理を断ち切れる、唯一の亀裂…か」




272 忍法帖【Lv=40,xxxPT】(1+0:8) 2013/02/06(水) 23:48:13.04 ID:1uyQYZ7H0

F5連打ああああぁぁぁぁぁあ!!!!!




273名も無き被検体774号+2013/02/06(水) 23:51:38.58 ID:UyUz2swnO

ここからが真骨頂!!!!!!!!!!!!!!!!!




274名も無き被検体774号+2013/02/06(水) 23:52:10.52 ID:tlUoAAAJ0

魔法使い「繰り返し、繰り返し……修復を許さなかった物語のページを」
魔法使い「書き換える可能性が出てきた、って事ね」
僧侶「一字一句違えば……それは、別の物語になり得る可能性がある」
僧侶「しかし……」
魔王「可能性は可能性に過ぎず、決定では無い」
戦士「……俺は」
戦士「お前達と共にあり、次代への……希望があるのなら」
戦士「闇に身を染めても構わん……だが!」

僧侶「………私は、人ではありません。魔へと……変じる事は、できません」




275名も無き被検体774号+2013/02/06(水) 23:53:25.93 ID:Iw81iY0H0

盛り上がってきたーーーー




276名も無き被検体774号+2013/02/06(水) 23:56:39.61 ID:tlUoAAAJ0

魔法使い「……ねぇ、魔王の子が勇者、と決まったわけじゃ無いんでしょ!?」
魔法使い「ま、魔王が…子供を作らなければ良いだけじゃないの!?」

僧侶「……確証はありませんよ、魔法使いさん」
僧侶「幸い……か、どうか分かりませんが、魔王様を除いた私達の身体に……まだ、変化はありません」
僧侶「このまま……魔王様だけを置いて、私達の世界に帰ったところで」
僧侶「もし、どこかで……勇者様が産まれたら」

僧侶「……魔王様の復活を、止める人がいなければ、世界は、失われます」
僧侶「勇者様……魔王様が、救った世界が……滅びます」

魔法使い「………」
戦士「………」




278名も無き被検体774号+2013/02/07(木) 00:02:14.37 ID:QudjTzFw0

戦士「選ばざるを、得ないのか……ッ」
魔法使い「………」
僧侶「私は、ハーフエルフですから」
僧侶「人よりは、遙かに永い時間を生きることが出来ます」
僧侶「戦士さん……以前、話しましたよね?」
戦士「……?」
僧侶「残すのは、辛いと」
戦士「……ッ ああ」

僧侶「解決……しましたよ?」ポロポロポロ
戦士「じゃ、じゃあ……何故、泣くんだ!」ギュ
僧侶「人より、永く生きられますが……魔族の様に、永劫に近い生は持ち得ません」ポロポロ
僧侶「私が……残して行く、側になっちゃいます、ね……」フェ……ウワアァァン
魔法使い「……ッ」ヒック
魔王「……」オマエガナクナ、マホウツカイ……グス




280名も無き被検体774号+2013/02/07(木) 00:03:19.96 ID:T0/CqUev0

俺まで悲しくなってきちまったじゃねえか…




282名も無き被検体774号+2013/02/07(木) 00:07:17.76 ID:QudjTzFw0

戦士「……ゆう……魔王」
魔王「……なんだ」
戦士「俺を、魔族にしてくれ」
魔王「……おい」
戦士「それから、お前と魔法使いに、子供が出来る迄の間に」
戦士「僧侶と旅に出ることを許してくれ」
魔法使い「な、ななななな、なに、なにいってんのよ、戦士!?」

戦士「……来るべき時には、必ず戻る」
魔法使い「戦士!ちょっと、あんた……ッ 聞いてるの!?」
戦士「じゃあ…お前は、国へ帰るのか?」

魔法使い「……じょ、うだんでしょ……私は……魔王様の力で魔族に、なるのよ!」
魔王「お、おいおいおい、お前ら落ち着けよ!」
魔法使い「……選び取るのは、私よ!自分よ……この、手でちゃんと……選ぶのよ!」

魔法使い「それとも、な、何よ!私と、その……ッ こ、子供…ッ作るのは……!!」
魔王「あああああ、分かった!分かったから黙れ! 嫌じゃ無い!嫌じゃ無いから!」




284名も無き被検体774号+2013/02/07(木) 00:10:49.20 ID:QudjTzFw0

魔法使い「……仮説、だけど」
魔法使い「もし、勇者の子が、次の勇者になるなら……」

魔法使い「……わ、私、しか……いないでよ!?」
魔法使い「折角勇者様が……アンタが守った、この世界を」
魔法使い「最悪の形で、終わらせる訳に……いかないじゃない!」
魔王「うん……いや、だから、わかったから……黙って……」ギュ。スゲェハズカシインダケド

コンコン、カチャ
使用人「お話はお済みですか?」
「「「「!!!!」」」」マッカッカ




285名も無き被検体774号+2013/02/07(木) 00:13:39.28 ID:QudjTzFw0

使用人「私の事はお気になさらず、どうそ……お食事の準備ができましたので」

魔王(つったって、なぁ……)
僧侶(は、はずかしい……)
魔法使い(アナガアッタラハイリタイ……)
戦士(………何も考えまい)

魔王「使用人、ちょっと聞きたいんだが」
使用人「はい、何でしょう?」
魔王「……こいつらを、魔族にしようと思えば、どうすれば良いんだ?」




287名も無き被検体774号+2013/02/07(木) 00:17:59.95 ID:QudjTzFw0

使用人「ああ……簡単です」
魔王「簡単?」
使用人「はい、願えば良いのです。願えば……必ず、叶います」
魔王「……そうか」
使用人「ですが、ひとまず……お食事に」
魔王「あ、ああ……」
僧侶「あ!あの、使用人さん!もう一つだけ……」
使用人「はい…?」
僧侶「これ……勇者様の持っていらした光の剣なんですが……」
使用人「………!! これは!?」
魔王「相変わらずぼろぼろだな……ん? これ……」
僧侶「はい……」




288名も無き被検体774号+2013/02/07(木) 00:26:20.78 ID:QudjTzFw0

僧侶「勇者様が、魔王を……倒されたとき。私達は、勇者様の身体から発する激しい光に包まれました」
僧侶「そうして……その一部がこの剣に吸い込まれたのです」

使用人「………まぁ」
魔法使い「……?」
僧侶「光が……あの方達と共に失われた後には、私達と……これだけが残されていたんです」
魔王「………」

使用人「特異点……そうですか」

僧侶「……?」
使用人「以前の時、は。この剣に、亀裂が一つ増えました」
使用人「そして、刀身の光は……消えゆく魔王様方と共に、微かの残照を残し、失われたのです」

僧侶「……違う」
魔王「ああ……光は」
僧侶「この剣から失われた筈の光は……完全に、では無いですが、かなり取り戻されています」

使用人「はい……刀身の傷は、変わりませんがね」
使用人「優れた鍛冶師に任せれば……かつての輝きを取り戻すかもしれません」
戦士「………そうか、これも」

魔法使い「この腐った世界の腐った不条理を断ち切れる、唯一の亀裂の一部!」




291名も無き被検体774号+2013/02/07(木) 00:31:21.73 ID:xdF4z5uM0

おお…そうくるか
寝れないぞこれ!




292名も無き被検体774号+2013/02/07(木) 00:34:31.36 ID:QudjTzFw0

魔王「……そうか、ふふ……変わった、んだな」
戦士「ああ……俺たちは無駄じゃ無かった」
魔法使い「違うわよ、戦士……一歩前進、て言うの」
使用人「……では、お席にどうぞ」

……
………
…………
数年後

魔王「おい、后。癒し手と側近は?」
后「旅支度中よ!魔王様も手伝いなさいよ!」
魔王「ああ……そうか、今日…立つのか」
后「……寂しい?」
魔王「そりゃ……な。て、お前、それ何持ってんだよ」
后「ん?おくるみ」
魔王「……おくるみ?ただの毛布じゃねぇか」
后「子供が生まれた必要でしょ-?使用人に頼んで作ってもらったのよ!」
后「最高級の糸で編んだ、あったかいの! ……綺麗な、水色でしょ」
魔王「……ああ、まぁ」
后「貴方も……こういうのに大事に包まれて、抱かれて……」

魔王「……!お前……」
后「記憶力は良いのよ、私」

后「いざとなれば売れる!最高級品!」
魔王「……おい!」
后「……冗談よ」




293名も無き被検体774号+2013/02/07(木) 00:40:38.94 ID:QudjTzFw0

魔王「うん…綺麗な色だ」
后「そ……癒し手の…瞳と一緒の色にしたの」
魔王「成る程、ね」
癒し手「あ、魔王様、后様!」
側近「癒し手、走るな、転ぶ!」
癒し手「魔王様……后様。旅立ちを許してくれて、ありがとうございました」

魔王「気にするな……エルフの里、見つかると良いな」
癒し手「はい……願えば、叶いますよ」
魔王「……そうだな」
側近「魔王……行ってくる」
魔王「ああ」
側近「…すぐ、知らせろよ」
魔王「分かってるよ」
后「私、外まで見送るわ」
魔王「ああ、頼んだ……じゃあ、二人とも。また後で、な?」

癒し手「はい!」
側近「留守は頼んだ……魔王、執務サボるなよ」

魔王「……ッうるせぇ、早くいけ!」




294名も無き被検体774号+2013/02/07(木) 00:47:00.02 ID:QudjTzFw0

魔王「……いった、か」
魔王「……子供か」

……
………
………

魔王「一ヶ月?」
使用人「人の子の時間にしてほぼ、ですが」
魔王「そうか……」

使用人「次代の勇者が産まれてから、復活準備に入るまで」
使用人「ほぼ、それぐらいしか、魔王様のお体は……絶えられません」
使用人「闇に身を染めたとは言え……元勇者ですから」
使用人「微かな、光の残照は……貴方を、苦しめます」
使用人「その後は……」

魔王「ああ、分かってる……后と側近の魔力で押さえてもらうしか無い、んだな」
使用人「……はい。ですが」
魔王「ん?」

使用人「そこに、癒し手様のお力が加わった場合は……未知数です」
魔王「……良いも悪いも、な」
使用人「……ハイ」

使用人「特異点の存在により」
使用人「前后様も……」
魔王「……転移術、とやらで俺たちを強引に連れてきた、な」
使用人「ハイ」

魔王「そうか……わかった。ありがとう……下がってくれ」

……
………
…………

魔王「一ヶ月、か……」
魔王「……親父の顔なんか、覚えてないもんな」




295名も無き被検体774号+2013/02/07(木) 00:51:02.24 ID:QudjTzFw0

后「どうしたの、魔王」
魔王「ん?いや……ああ、そうだ、后」
后「何?」
魔王「これ……やるよ」
后「……これ、あの時の……ペンダント」
魔王「ああ……母さんが俺に…旅立ちの時に貸してくれたんだ」
魔王「親父からもらった大事なものだから、返してねって言われたけど……」

后「………」

魔王「もし、子供が生まれたら……否、いいさ」
魔王「后の、好きにしたら良い」

后「魔王………」
魔王「大丈夫だ……次代は無理でも、その次がある」




296名も無き被検体774号+2013/02/07(木) 00:51:16.00 ID:CP8D9rqrO

がんばって!




299名も無き被検体774号+2013/02/07(木) 01:05:46.42 ID:QudjTzFw0

魔王「この腐った世界の腐った不条理を断ち切れる、唯一の亀裂……」
魔王「俺たちは確かに、それを刻んだんだ」
后「そうね……願えば必ず……」
魔王「ああ……叶うんだ」


遠くて近い、未来―――

勇者「ええと……君は…」
??「あ、はい!あの、まだ……レベル1の、魔法使いなんですけど……」
??「知識と、魔力には自信があります!それに…鍛冶も得意です!」


おしまい




300名も無き被検体774号+2013/02/07(木) 01:07:20.49 ID:QudjTzFw0

長い時間オツキアイありがとうございました!
題名考えて、なんとなーく勇者が魔王で~って考えて
そのまま勢いでスレ立てたので
考え考え書いてたら遅くなりました。

見て下さってありがとうございました!




302名も無き被検体774号+2013/02/07(木) 01:10:07.49 ID:RWBSclqY0

えー…
僧侶がハーフエルフであることがこれからどうなってくのか気になってたのに…!
一乙!




307名も無き被検体774号+2013/02/07(木) 01:12:04.24 ID:QudjTzFw0

>>302
その辺は次に書く予定です
(もう予定にしちゃったり)

すぐ書き出すかどうかは未定ですが
魔王「ああ……世界は美しい」
に、続けます……多分




305名も無き被検体774号+2013/02/07(木) 01:11:27.45 ID:xdF4z5uM0

うおー!
次の世代で完結しちゃう系なのか!?
>>1乙!
楽しませてもらったぜ!




311 忍法帖【Lv=40,xxxPT】(1+0:8) 2013/02/07(木) 01:19:43.54 ID:ysBh5e1E0

ここでは前章のみだったということか…
続き楽しみにしてる




313名も無き被検体774号+2013/02/07(木) 01:23:55.02 ID:CP8D9rqrO

乙!
続き楽しみにしてるよ~
今度こそ皆ハッピーエンドでね~!




324名も無き被検体774号+2013/02/07(木) 09:54:25.40 ID:GD7MxM240

もう>>1居ないかな?
僧侶と戦士が好きな俺が拙いながらもイメージ描いてみた。次スレに期待を込めて
i.imgur.com/EaLfkVa.jpg


i.imgur.com/LzEfRiP.jpg




648名も無き被検体774号+2013/02/14(木) 11:33:31.45 ID:mRIeBBWm0

>>1 >>324
GJ




320名も無き被検体774号+2013/02/07(木) 03:47:16.18 ID:alLzf4EP0

ようやく読み終えた
>>1
すごく面白かった!
次にも期待してるよ!
魔法使いも可愛かった




315名も無き被検体774号+2013/02/07(木) 01:35:09.50 ID:LIivjX/O0

スレタイが裸の大将で再生される




316 忍法帖【Lv=40,xxxPT】(1+0:8) 2013/02/07(木) 01:36:36.57 ID:ysBh5e1E0

>>315
やめろインプットされちまうじゃねーかwww




350惣菜屋2013/02/07(木) 16:50:09.72 ID:h7dkFAFS0

>>315
お前のせいでくそっ




352名も無き被検体774号+2013/02/07(木) 17:39:31.94 ID:PNXK50ffP

>>350
「きょ、拒否権は、な、ないんだな」






次スレ:勇者「拒否権はないんだな」 【番外編】
引用元:勇者「拒否権はないんだな」
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