1:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/12/20(木) 22:20:50.21 ID:uJgvNdQB0
気まぐれシェフの気まぐれランチが食べたい。
そう思った俺は、気まぐれで有名なシェフがいる店へと足を運んでみた。
店について、メニューを開くと
そこには「気まぐれシェフのランチ」の一文だけがあった。
話によると
気まぐれシェフには、気まぐれる日と気まぐれない日があるらしく
どうやら今日は気まぐれる日だったらしい。運が良い。
3:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/12/20(木) 22:21:24.29 ID:uJgvNdQB0
そう頼む俺に、笑顔で答えるシェフ。
この店にウェイターは存在しない。気まぐれでクビにしてしまうからだ。
「忘れないでくれよ」
そう念を押す。
オーダーしても料理が出てくるかどうかも気まぐれで決まるのだ。
実に徹底した気まぐれっぷりだ。
気に入った。
4:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/12/20(木) 22:22:01.12 ID:uJgvNdQB0
気まぐれシェフが気まぐれていない日は、一体どんな料理が出てくるのだろうか。
そう思った私は、ホールをうろうろしてたシェフ(気まぐれ中)にこう聞いてみた。
「卵かけご飯って料理の内に含まれるのかな?」
シェフは、しばらく考えた後
厨房に入り、戻ってきた時にどんぶりを携えていた。
5:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/12/20(木) 22:22:46.22 ID:uJgvNdQB0
そこには、卵抜きの卵かけご飯(遺伝子組み変えでない)があった。
なるほど。どうやらこれが答えらしい。
俺は胸のつっかえがとれるような気持ちで席を立ち、
左手にどんぶりを持つと、勢いよくシェフの頭にぶちまけた。
「ごちそうさま。いくらだい?」
そう聞くとシェフは言った。
「いらないよ。そういう気分なんだ」
最後の最後まで気まぐれというわけか。
徹底した気まぐれっぷりだった。
6:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/12/20(木) 22:23:25.24 ID:uJgvNdQB0
俺は軽く礼をして、コートに袖を通すと
「1200円だよ。」
とシェフが言ってきた。
ふふ。どうやらさっきの言葉は気まぐれだったらしい。
終わり。
9:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/12/20(木) 22:24:48.19 ID:uJgvNdQB0
一人の男がいた。名はヒロシ。
彼はプロの麻雀打ちだった。
彼と対戦して自信を喪失した者は数知れない。
彼の通った後は草木一つ残らない。
そう。彼はプロの麻雀打ちなのだ。
10:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/12/20(木) 22:25:19.72 ID:uJgvNdQB0
プロの麻雀打ちに取って、何より大切なのは金を絞れる相手を探すこと。
彼はこの技術に長けていた。
いつものように、馴染みの居酒屋に行き、あたりを見渡す。
「1,2,3,4,5,6……」
どうやら今日はあたりのようだった。
カモが両手に収まらないほど居たのだ。
ヒロシはひとしきり観察すると
一番裕福そうな服を着た男に、狙いを定めた。
11:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/12/20(木) 22:25:50.47 ID:uJgvNdQB0
だが、ここで一つ問題が起きた。
ヒロシは一度も麻雀を打ったことがなかったのだ。
もっぱらやるのは、ゲームセンターの脱衣麻雀ぐらいだ。
それすらも満足に勝てない。(CPUの天和率90%)
だが、そんな事気にしない。
ヒロシはプロの麻雀打ちなのだ。
12:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/12/20(木) 22:26:25.02 ID:uJgvNdQB0
ヒロシは事前に抜け目なく仕入れて来た知識を再確認する。
これも勝つためには必須の作業だ。
カランコロンカラ。
サイコロが振られ、親が決まる。
さぁ、勝負の始まりだ。
14:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/12/20(木) 22:26:56.41 ID:uJgvNdQB0
ヒロシはそう言うと、いきなりつばめ返しの動作に入った。
先制攻撃だ。
だがヒロシ達が打っていたのは全自動卓だった。
これじゃツバメ返しの意味がない。
ヒロシはその事に気づくと、動揺のあまり山を盛大にはじき飛ばしてしまった。
飛び散った牌が三人の顔を直撃する。
だがヒロシはあわてない。
不測の事態に上手く対応するのもプロの必須条件だ。
15:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/12/20(木) 22:27:33.07 ID:uJgvNdQB0
ヒロシはそう言うと、足元にあったゴミ箱を盛大に蹴飛ばした。
逆切れすることによって、非難の対象をヒロシ→ゴミ箱へと移し変えたのだ。
これによって、先ほどの失態は完全に無かったことになった。
鮮やかすぎる手際に三人が息を飲む。
無事4000点ずつ皆に支払い、事無きを得たヒロシが言った。
「さぁ、勝負はここからだ」
熱い夜はまだまだ続く。(続かない)
終わり。
16:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/12/20(木) 22:30:07.27 ID:5UbTtUdT0
17:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/12/20(木) 22:30:57.77 ID:uJgvNdQB0
観覧車に一人の女が乗っていた。
名はカズコ。
一人と書いたが正確に言えば、爆弾と一緒だった。
カズコ(35)は爆弾が仕掛けられた観覧車に偶然乗り合わせてしまったのだ。
どうしてこんな目にあってしまうのか。
一人で観覧車に乗ってる時点で悲劇であるのに、これ以上重ねられても困るというものだ。
18:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/12/20(木) 22:31:35.59 ID:uJgvNdQB0
爆弾を解除できる人間は居ない。当然彼氏も居ない。
だが、無情にも爆弾のカウントダウンは進む。
このまま進むと、おそらく九時の方向に居るこの観覧車が三時に差し掛かる前に
爆発してしまうだろう。
そう考えた彼女は、爆弾の解体を試みる事にした。
とりあえず手持ちのバックから使えそうな物を探ってみる。
爪切り、噛みかけのガム、ヘアピン、ニッパー、六角レンチ、液体窒素、暗視スコープ。
どうも使える道具は限られているようだ。
これは慎重に行かなければ即爆発してしまうだろう。
19:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/12/20(木) 22:32:30.96 ID:uJgvNdQB0
赤と青の配線が見える。
おそらくどちらかがダミーでどちらかが本物だ。
カズコの勘がそう告げる。
赤か。青か。
カズコは人生において二者択一を多く経験してきた。
そのどれもが走馬灯として彼女の脳裏に映りだす。
21:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/12/20(木) 22:33:16.58 ID:uJgvNdQB0
自分は二者択一を迫られる時は、いつだってまず周りを見渡したことを。
ケチャップかマヨネーズか選べない時はソースをかけた。
指輪もネックレスも似合わない時はピアスをつけた。
ガチャピンもムックも気に入らない時はわくわくさんを選んだ。
そうやって常に第三の選択肢を選んできた。
そうだ。これなんだ。
彼女はそう確信すると
爆弾の赤と青の配線以外を全て切ってしまった。
22:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/12/20(木) 22:34:32.57 ID:uJgvNdQB0
私の人生は、いつもこうやって過ごしてきた。
カズコは自分の行動に
悔いはなかった。
数秒後。
「タイマー停止いたします」
狭い室内にそう、機械声が響いた。
23:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/12/20(木) 22:35:02.91 ID:uJgvNdQB0
カズコは小さくガッツポーズをした。
彼女は成功したのだ。
人生。経験に勝る物はない。
カズコはそう笑った
5分後。
無事、爆死体として発見されたカズコの顔は
とても誇らしげだった。
終わり。
24:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/12/20(木) 22:35:38.61 ID:yR7svwWU0
クソワロタ
28:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/12/20(木) 22:43:49.05 ID:uJgvNdQB0
天才発明博士が居た。
彼は有り余る才能と溢れんばかりの情熱でいくつもの大発明を成してきた。
実用化された特許は数知れない。
まさに世紀の大発明家だった。
そんな彼には一つの悩みがあった。
それは一人で行う耳掃除の限界についてだった。
29:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/12/20(木) 22:44:23.42 ID:uJgvNdQB0
特に好きだったのが、散々右耳をいじってから左耳にシフトした瞬間の
えも言われぬ快感だった。
ある日、彼は自分の耳を完全に掃除したいと思い立った。
どうすればそんな事が可能なのか。
彼は悩んだ。
そして見つけた。わかった。発明した。
自分の体を米粒程度の小ささにする薬を。
これなら、自分の耳の中に入って思うがままに掃除ができる。
博士は歓喜に震えた。
30:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/12/20(木) 22:45:00.66 ID:uJgvNdQB0
驚愕の事実に気づいてしまった。
自分が小さくなっても自分の耳には入れない事を。
博士は絶望した。
なんということだ。
完璧なる発明と全能なる才能が生んだ悲劇。
まさに究極の頭脳が生んだ完全なる矛盾だった。
31:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/12/20(木) 22:45:49.95 ID:uJgvNdQB0
自分が一人しか居ないからいけないのだ。
そう結論に至った博士がまた作った。
クローン作る機械、名付けて「クローンツクール」(※クローンを作る機械)
これなら自分が小さくなりつつ、自分の耳を存分に綺麗にできる。
博士はウキウキしながら、クローンの耳へと入って行った。
「どうだ?ほれほれ。きもちいいか?わし」
垢をスコップで掘りながら自問自答する博士。
32:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/12/20(木) 22:46:21.58 ID:uJgvNdQB0
クローンがいくら博士と同等の存在であろうと、クローンの時点でそれは博士そのものではないのだ。
またもや究極なるロジックスパイラル。
矛盾の檻にとらわれた博士に待ち受けるのは闇よりも深く暗い絶望だった。
博士は諦めない。
幼少の頃から「うちの子はすごい」と言われ続けてきた聡明なる天才がついにそのヴェールを脱ぐ。
特定の人間と感覚を完全に共有する機械。
「感覚繋ぐ君」
これさえあれば耳かきの快楽を共有できる。
33:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/12/20(木) 22:47:25.24 ID:uJgvNdQB0
前回の失敗を踏まえて未来を予測する。
「他人の耳かきをして快楽を共有したところで自分の耳は汚いままだ」
というわけで作った。
特定の相手と意識を交換する機械。
「眼と眼が合う瞬間好きだと気付いた君」
さらにさらに博士は余念を怠らない。
移し替えた後に、もう一人生まれてしまう博士の処理の問題。
博士は作った。
異次元世界に物を飛ばす事ができる機械。
「どないやねん(α3.141592)」
これさえあれば邪魔なクローンは即座に始末できる。
34:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/12/20(木) 22:47:56.07 ID:uJgvNdQB0
何も憂うことは無い。
思う存分耳かきを楽しめる。
さぁ、ショーの始まりだ。
博士は初めにクローンを作った。
その後、すぐにクローンによって異次元に飛ばされてしまった。
終わり。
35:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/12/20(木) 22:49:13.51 ID:hDkastUZ0
わけわからんが
38:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/12/20(木) 22:51:50.03 ID:uzjGiN2/0
41:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/12/20(木) 23:01:36.35 ID:uJgvNdQB0
ある町内に伝説の男がいた。
名はヒデオ。
どこにでもいるような平凡な男であるヒデオは
ある時期になると一転、町内の注目の的である。
それは「選挙」が間もなくに迫った時だ。
ヒデオは成人してから選挙と名がつく物は何でも行った。
だが、彼が投票した人物は必ず落選した。
投票率、落選率共に100パーセント。
それが彼の有名たる由縁だ。
43:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/12/20(木) 23:03:11.99 ID:uJgvNdQB0
ある時は当選予想率98%の大物議員も落選した。
(代わりに一発逆転を狙った42歳(無所属無職)が当選した)
当然、彼が有名になると
「こんなのオカルトだ。ただの結果論だ」
という意見も出てきた。
44:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/12/20(木) 23:04:54.03 ID:uJgvNdQB0
しかし、結果論であろうと
彼が投票した相手が落選するのは「事実」なのだ。
ならばこれはもう「卵か先か、ヒデオが先か」
という哲学的な問題になってきてしまう(言うまでも無くヒデオが先)
そんな彼には、当然のごとく献金という名のワイロがやまほど届く。
もちろん選挙のライバルに投票を願う議員側の物だ。
しかしヒデオは受け取らない。
献金の額が百万、一千万、一億とその桁がどれだけあがろうと
ヒデオはその一切を断った。
45:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/12/20(木) 23:05:43.56 ID:uJgvNdQB0
誰にもその身を好きにさせない。
孤高の投票ニスト。
ヒデオが好むのはこの世界でただ一つ。
自由な投票なのだ。
だが、ある噂が街中をかけまわった。
「もし彼が投票に行かなければどうだ?」
嘘の投票日を教え、彼に投票をさせないという計画を立てたらどうなるのか。
これは面白いと思った町人が街ぐるみで選挙日のねつ造を始めた。
選挙ポスターに実際の投票日より後の日付をねつ造し、彼を騙しにかかったのだ。
46:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/12/20(木) 23:06:21.40 ID:uJgvNdQB0
計画は成功した。
選挙日になっても彼は投票に現れなかった。
テレビ、新聞などを見ない彼はいともたやすく騙されてしまったのだ。
その結果、その区の当選者は事前予想第一位の大物議員だった。
彼はその事を知らずに、嘘の選挙日に投票しに現れた。
計画はまだ終わっていない。
誰も不幸にならずに終わるには、彼に嘘と気付かれてはいけないのだ。
偽装投票所で投票紙を受け取り、ヒデオが帰って行ったのを見届けた後
町人はほっと、一息ついた。
計画は今、終わったのだった。
47:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/12/20(木) 23:06:53.09 ID:uJgvNdQB0
その区の大物議員が捕まった。
罪状は不正献金疑惑。
繰り上がりとして、その区の第二候補者が当確となった。
そのニュースを公民館で見ていた町人たちはざわめいた。
「ヒデオが投票した紙持ってる奴いるか?」
誰かがそう言った。
誰だ誰だ。とそれぞれが周りを見渡す。
すると、後ろの方で震えながら手を挙げる男が居た。
左手には紙が握ってあった。
見せてみろ。
と隣の男が紙を取って見ると
そこには大物議員の名前がはっきりと記されていた。
終わり。
48:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/12/20(木) 23:14:04.68 ID:hDkastUZ0
乙
49:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/12/20(木) 23:17:23.81 ID:934MyYwy0
なかなかだった。また何か
50:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/12/20(木) 23:23:13.51 ID:uJgvNdQB0
51:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/12/20(木) 23:24:47.24 ID:iLyFW7Us0
引用元:男「新ジャンル考えた。不条理ショートショート」
おもろい。
深夜食堂っぽい。
才能ないよ
>>1は星新一にインスパイアされてると見た
これほどの良作を〝「才能ない」〟と言ってのける超越的な文才の持ち主。実に面白い書いてみせろ。
作品が少なすぎるのが珠に傷。あともう一つほど書いてあれば、非常にバランスの良いものになっていただろう。自分のタイミングで切り上げてしまったのがもったいない、最初からどれだけ作品を投下するか決めておけばよかったものを。
オチが平坦過ぎて全部読める
ショートショートの良さは質素であことなのに発明品の名前や()のような余計な文で台無しにしてる。
あと考察が甘い、閉鎖空間で爆弾が爆発したのに表情がわかる遺体ってどうよ?
そんなもんかなぁ